12月15日:我が名を恐れよ、我が根源を畏れよ
古戦場帰り、お土産は次の古戦場の有利属性と開催月の報せ。
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眼下を見れば、大きな鋼の塊から何かがキラキラと薄明かりの中で輝きながら飛び散っていく。アラドヴァルから伝わってきた確かな手応え、溶断は成し遂げられたということだ。
「さて……こっからどうするか」
今俺は重力方向変化のスキルと、落下速度加速のスキルを組み合わせて天地真逆に落ちたとことで空高くまで打ち上げられた状態にある。
当然、スキルの効果時間が切れたら正しい方向……つまり地面に落ちることになる。
「もう一発いけるか?」
地上では、俺の腕刃破壊に合わせて他の面々も一気に攻勢に移ろうとしているようだ。よく見えないが偶然にも俯瞰視点なので動きを見てればなんとなく分かるものだ……うーん、こう見るとやはりカローシスの負担めっちゃデカくね? ってなるな……なんかあの人だけ前にも後ろにも魔法撃ちまくってるのが見える、一人だけ二面作戦してるんだよな。
おっと、無重律の恩寵の効果時間が終わったらしい。上に向かって落ちる浮遊感が段々と消失し、今度は下に向かっての浮遊感が身体に適用される。慣れないと結構気持ち悪い感覚なのだが、生憎空中目潰しスプレーバトラーでもある俺からすれば自然落下の浮遊感はひどく慣れ親しんだものだ。
ちなみに空中目潰しスプレーバトラーとはグラビティ・グラフィティという芸術点を競うはずなのに何故か対人要素を入れたせいで初手で相手の目をスプレーで塗りつぶした方が勝つ、という素っ頓狂な方向にエクストリームな進化を遂げた「上空からスカイダイビングしながら虚空にスプレーで絵を描く」という最初からなんか素っ頓狂な方向性のゲーム、及びそのプレイヤー(対人勢)を指す。
いやもうゲーム性が生まれてから死ぬまでずっと迷子なんだわ。
とはいえどんなゲームであろうと基本的に上空から落ちたら死ぬ。泥掘り初見突破の時のように落下を攻撃判定にして幸運食いしばりを狙うのがベターなわけだが……いやー、流石にトマホーク相手にHP1で立ち回りたくねぇ。
絶対アレまだまだ技を隠してるだろう、そもそもあの斬り傷の正体も分かってないし全く追い詰めた感じもしない。十中八九、あの全身衝撃波を腕か尻尾に一点集中してブッ放すんだろうけど……多分通常技判定なんだよな。
追い詰められて使う初見殺し技は多分だけどもっと理不尽な予感がする。そもそもトマホークって名前からしてなーんかダブルミーニングっぽいというか……
と、
「ぬふぁ!?」
どこからか飛んできた光の矢が俺の股間───ギリギリで気づいて体を捻ったので右の腰骨辺りに───命中した。
瞬間、俺の身体にエフェクトが纏わりつく……成る程、落下ダメージ軽減。流石にカローシスの射程じゃここまでは届かないし、股間に対する妄念を感じたホーミング……ディプスロか。
「戦闘中にふざけやがって……」
いやオールウェイズふざけてるから通常運転なのか? 免許を取り上げろ免許を。
だが遺憾ながら魔法の性能だけは信頼できるのがディプスロの度し難いところだ。これで落下死のリスクをほとんど考えなくて良くなった以上は、こちらも全力で攻勢に参加すべきだろう。
「アラドヴァル!!」
銀の炎に燃え盛る剣の名を叫べば、その勢いがさらに増したように輝くアラドヴァル。前々から疑ってるんだけど音声認証でなんか反応するようになってない? たまに話しかけてるけど今のところ返答は無いが……
狙うはやはり頭か? 本当にマトモな生物なのか怪しいが、頭を潰されて無傷な生物はいないだろう……多分。いやたまにコアが本体で頭はただの擬態デース、みたいなタイプもいるから安易な確信は危険か? それにヤシロバードが頭を重点的に攻撃している、割り込むと最悪フレンドリーファイアの危険もある。
もう時間がない、頭はヤシロバードに譲る事にする。狙うのは地上のサバイバアルやウル・イディム氏が狙いづらい上半身!!
落下による加速だけで十分な威力が出せる、スキルはむしろ着地してからの立ち回りに回した方がいい。構えは大上段、だがそのまま振り下ろしても弾かれるだけなので斬るというよりも引っ掻くように……狙うは背中! 刻むぜ逃げ傷、晒せ恥!!
「イメージ的に魚に包丁入れる感じィー!!」
◇
トマホークは思考していた。
それは情緒や感情といったものとは無縁な、歪んだ合理と異質な優先事項に基づいた行動方針だ。
真なる竜種とは、生きとし生ける命の"恐怖"が大敵として形を取ったものだ。その起源となる第一の真なる竜が黄金の龍王への畏怖を基としていたからこそ、以降の"恐怖"も龍の形を取っているに過ぎない。
───真なる竜種の本質は、竜の持つ「性質」にこそある。
迷宮の闇に潜んでいた第五の竜が無間の暗闇をその本質としたように。大海の新たな暴君たる第七の竜が圧倒の威圧を本質とするように。
第十の竜の本質も竜であることそのものではなく、全身が鋭利な刃物であることにこそある。
そしてもう一つ、真なる竜種はその存在を指す名前にも意味がある。例えば巨大化、縮小化、磁気発生など……とある物語になぞらえた技を持つ第五の竜が「ガリバー」の名を持つように。
「ギィリロロロロロロロ………」
トマホーク。その本質は切る為の斧であり………
「ギィリリリリリリリリリリァァァァァァアア!!!」
神代のさらに前、あるいはその起源。地球文明の歴史に登場した飛翔する爆芯とのダブルミーニングである。
"飛来する物体"と"抉り切り裂く"恐怖を肉体とする竜の咆哮と同時、その背より生えていた金属塊としか言いようのない刃の羽が……分離した。
「なっ!?」
驚愕の声は誰が上げたものか、誰もが前のめりの攻勢から咄嗟の回避に動くよりも早く。
「ギャラララララララララッッッ!!!」
金属を砕かんばかりに擦り合わせたような不協和音の轟く叫びと共に、トマホークの背中より「射出」された誘導刃翼が竜に挑む者達へと襲いかかった。
全ては、己の存在意義を示す為。生きとし命に己という恐怖を刻む為。それだけがドラゴンの生きる意味なのだから。
◇◇◇←こういう感じに複数の刃物が繋がってる感じの翼が分離して射出された。
気合いで小惑星基地を押し返したおニューなあいつの背中にあるやつを思い浮かべると分かりやすいかと
・巡航自律刃翼
Dragonic Launched Cruising Wing、即ち竜が発射する追尾式の刃翼。
トマホークがトマホークたる理由でありトマホークをトマホークたらしめる存在の象徴。
全身を駆動させた超振動とそれに伴う肉体加熱などただの"身震い"に過ぎず、全身の刃殻を用いた攻撃も身体的特徴の活用に過ぎない。
トマホークの本質は「自分に向かって飛んでくる何か」の恐ろしさと、「突き立って切り裂かれる痛み」への恐れの複合であり、即ち投擲された刃物への恐怖そのものである。
暗闇に閉じ込められる孤独と焦燥の具現たる第五の竜や彼我の差に基づく不利への不安である第七の竜などとは異なり、どちらかというと文明寄りな恐怖を根源とする真なる竜種……それがトマホーク。
だから二足歩行なのです、だから前脚ではなく腕なのです。その竜は「投擲」という手指と腕を持つ二足歩行の命達の恐怖から生まれたもの……人に近しい悪意を持つドラゴンなのです。
ちなみにゲームシステム的な理由としてはプレイヤー間での剣聖人気が反映された竜種。
あーあ、お前らが剣聖剣聖うるさいから遠隔操作で刃を飛ばすドラゴンが生まれちゃいました。
では死ぬが良い。




