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恐怖が恐怖に乗った恐怖と一緒に走ってくる


人と馬、果たしてどちらが速いのか。そんなものは決まっている、馬だ。

人類最速がどれだけ足を動かしたところで、地上にて「動かねば死ぬ」ような爆烈燃費の四本脚から繰り出される疾走は、たかが二本足のホモ・サピエンスの脚力でどうこうなるものではない。


だが、ここはファンタジー……レイ氏の乗騎となった緋鹿毛楯無(ひかげたてなし)は巨体と速度を両立した怪物巨馬であり……


そして俺は先生(世界最速)を除けば世界最速の人類(プレイヤー)である。


「あのっ、本当に乗らなくて……」


「大丈夫大丈夫! 俺速いから!!」


「ヴァルルルルルォン!!」


ハハハハハクソ馬がよぉ! タフネスで勝とうが単純速度でテメーみたいな巨体(デブ)に走り負けるかよぉ!!


何故か俺はこの馬にやたら嫌われている……いや、嫌われているというかコミュニケーション手段が「噛む」か「どつく」しかないというか。

だがその馬力(パワー)は本物だ、いやむしろ真贋で考慮する事が馬鹿馬鹿しい程に強い。


まず基本的にプレイヤーは喧嘩を売られる側だ。刻傷や呪い(マーキング)みたいな別枠の補正がなければまず遭遇した時点でモンスターのヘイトを買うことにな?。あれ、売ってるのか? 買ってるのか? まぁいいや。


だがこれがモンスター間の話になると変わってくる。例えばドラクルス・ディノサーベラス"緋色の傷(スカーレッド)"。聞いた話じゃエクゾーディナリーですらないレアエネミー扱いらしいあの爆熱環境破壊生物は今や、樹海という環境における頂点捕食者だ。本来のエクゾーディナリーモンスター"死闘の傷(スカーデッド)"すら遭遇を避けると聞いている(どこの誰か知らないがこの二体を戦わせようとしたアホ、もとい天才がいたらしい)


つまり、強いモンスターは格下のモンスターに対して呪い(マーキング)と同様の行動を取らせる。

そして緋鹿毛楯無ことアルマアロゴ・ヘタイロンは頂点……とは言わずともそこに片足踏み込んでいる程度には強い。で、さらにその上に隠し最上位職業に就職したレイ氏がライドオンしてるわけで。


「シンボルエンカウント型のボスラッシュ……」


「え?」


「いやなんでもないよ」


つまり、爆走する俺と緋鹿毛楯無(onレイ氏)という「関わったらやべぇ」連中に対して、大半のモンスターは視界に入っただけでも逃走し始めるのだった。


「ところで目的地は分かってたりするの?」


「はい。鉱人族(ドワーフ)の方々にもお話を聞いて、それらしい場所を」


その場所、名を「大断傷(だいだんしょう)」と言うらしい。読んで字の如く極北のクレバスの如く地面を切り裂く巨大な亀裂、あるいは巨大な大陸規模の傷。

何故土地に対して「傷」という名がつけられたのか。鉱人族達はこの大陸の真実を知っているのか? 否、もっとシンプルな理由であるが故にその場所は「傷」の名を冠するに至る。


「……それが、ここです」


「見た目は単なる亀裂って感じだが………」


底は見えないが、試しに降りてみるのも………ん? なんか……見え……あ、なんかデジャブ。具体的に思い出すならこう、巨大ビーム兵器の砲身を覗き込んだ時に奥から迫ってくる光を見てしまった時みたいな………


ニッチなシチュエーションだけど砲身の内部から破壊工作するミッションとかだとそれなりに見かけるよね。って死ぬ死ぬ死ぬ!!


「ちょおわっ!?」


全力でのけぞった直後、亀裂の奥底から溢れ出した白と黒が混ざった光が地上へと溢れ出す。レーザーとかビームに近い性質なのか、亀裂の形そのままに空へと放たれていった光は数秒程すると、薄れるように霧散していった………あー、なるほど?


「今も瘡蓋(かさぶた)になっていない的な」


「大丈夫、ですか?」


アレ俺じゃなくても当たったら消し飛ぶタイプの即死ギミックだろうなぁ……

この大陸の下で寝てる奴らの事を鑑みるに恐らくこれはアイテールがエレボスに刻み込んだ傷、ということになるのだろう。水と油どころか白と黒レベルで混ざらない宿敵から受けたダメージは今なお混ざらぬ光となって噴き出すのだろう。


「十中八九、ここが「白き傷」なんだろうけど……」


「どう、すればいいんでしょうね……」


白き傷に浸せ、という太極の剣からレイ氏に提示されたなんらかのクエスト。具体的に「浸す」とはどうすればいいのか? 吹き上がる傷ビームに突っ込めばいいのか、それとも下まで降りる必要があるのか。降りるとしたら定期的に飛んでくる傷ビームをどうにかしないといけないわけだが………生憎、都合よく光熱系攻撃を無効化する手段は持っていないし、さらに言えばこれちょっとやそっと防いだところで死ぬ気がする。


「いや、違うな……」


これはレイ氏に、というかレイ氏の持つ武器防具を持つ者が挑むことを前提とした課題だ。つまりそもそもの大前提として「太極の剣」と「双理の鎧」が手元にあることが前提………いや、そもそも太極の剣というか神魔の剣って本当に一人しか獲得できないのか? いや、規格外戦術機獣がワンオフなことを考えるとこのゲームの運営はそれくらいやらかす気がする……だが、それはそれとしてたった一人で挑む調整にするだろうか。


前々から思っていたのだがこのゲーム、バランス調整が変なところであべこべなのだ。異常なほど世界観に忠実かと思えば、異常なまでにバランス調整に執心している時がある。例を挙げるなら残骸街道のオーバドレス・ゴーレムだな、あのサイズを戦術機無しで攻略する場合は相当苦心するだろうが脳天直撃ギミックという解決法と、そこに至るまでの「そこそこの苦労はあるけど挑むだけの価値はある」ルート構築……


「ならどっちだ?」


「……?」


世界観重視か、攻略重視か。世界観重視だとするとシンプルに双理の鎧を着たプレイヤーを下に叩き落とせば覚醒するとかそんな感じで……いや、流石にそれは……うーん………………


「あの、サンラク君……」


「ん?」


「その、実は………少し、考えがあります」


ほう。

レイ氏が提案した「考え」とは。

どっちの意味でも別名「神の殴り合いの果て」



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― 新着の感想 ―
こういう考察も踏まえて楽しい。
[良い点] エンカウント型ボスラッシュなんて斬新ですね(^^) なおプレイヤー側
[気になる点] 傷にサンラクが降りてみた→ビームを仰け反ってかわす→ヒロインちゃん「大丈夫ですか?」 サンラク逝ったの?戻ったの?わからん
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