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悪役令嬢後宮物語  作者: 涼風
にねんめ
196/243

思わぬ真実

久々に、推敲が不十分です……!

誤字脱字等ありましたら、ご指摘、よろしくお願いします!


 リディルとの密かなお茶会から、三日後。

 正妃教育のスケジュールを調整してもらい、三日前と同じく午後のお茶の時間を空けたシェイラは、リディル、ナーシャと三人で卓を囲んでいた。

 場所は、ナーシャの部屋から一番近い庭。奥まっていて死角も多く、それほど広いものではないので、人払いも容易だ。

 ナーシャが体調を理由に断るようなら、これ幸いとリディルとともに見舞いへと出向くつもりでいたが、どうやらナーシャは本気で体調不良を隠し通すつもりらしく、シェイラからの誘いに快諾の返事を寄越してきた。……その並々ならぬ決意が、こうなってみると実に不安だ。


「――ナーシャ様、リディル様。ようこそお越しくださいました」


 けれど、間違ってもそんな不安を表には出せない。シェイラは朗らかな表情で、準備の整った庭に揃って現れた二人を出迎える。溌剌とした笑みを浮かべるリディルの横でおっとりと微笑むナーシャは、明らかに側室会議のときより痩せて、化粧で誤魔化しているようだが顔色も悪かった。

 ひとまず席を勧め、全員が座ったところでレイにお茶を注いでもらいながら、シェイラは穏やかに切り出す。


「今日は、ワガママを言ってしまってごめんなさい。最近、なかなかお二人とお会いできなくて、少し寂しくなってしまったのです」

「まぁ、そのように水臭いことを仰らないでくださいな。シェイラ様のお立場上、昨年とは違って自由な時間が少なくなってしまうのは、致し方のないことですわ。一息入れたいときは、どうぞご遠慮なく仰って」

「ありがとうございます。お優しいお言葉を頂けて、安心致しました」


 形式的な挨拶が済んだところで、お茶を注いだカップから、すっきりとした爽やかな香りが立ち上った。シェイラとリディルの会話に耳を傾けるばかりだったナーシャの表情が、ふと動く。


「この、お茶は……」

「良い香りでしょう? 『里帰り』の際、紅薔薇様に教えて頂いたのです」


 ナーシャの味の好みが変わったことだけは、『側室会議』の一幕でシェイラが察していてもおかしくはない。柑橘系のフルーツティーを好むようになったのなら、爽やかな香りで飲み口がさっぱりしているこのハーブティーは、ナーシャの口に合うはずだ。ディアナがブレンドしたこのお茶は、シェイラはもちろんのことカイも特に気に入っていて(好き嫌いは特にないと言う彼だが、しばらく一緒に過ごせば好みくらいは分かる。シェイラでも分かるくらいだから、ディアナはおそらくもっと分かっている)、後宮に戻った後も淹れられるよう、ディアナは多めに作って持ってきていた。そして、「作り過ぎちゃったから」と、シェイラにお裾分けしてくれていたのだ。

 カップを手に取ったナーシャは、しばらく香りを楽しんでから、ゆっくりとカップに口をつける。

 そのまま一口、こくりと飲んで。


「おい、しい……」

「本当ですか? 良かった」


 さすがは、ディアナ特製のハーブティーである。遠く離れていてもこうして支えてくれる彼女には、本当に感謝しかない。

 ナーシャがお茶を飲んだことで、リディルもほっと安堵している。二人の気持ちがほぐれたのを確認し、シェイラは目でレイに合図した。頷いたレイが一度下がり、そう時間を空けず、皿をいくつか乗せたカートを押して戻ってくる。


「シェイラ様、お待たせ致しました」

「ありがとう、レイ。――ナーシャ様、リディル様。今日のお茶菓子は、いつもと少し趣向を変えてみましたの」

「そうなのですか? ――あら、すごい」


 大小様々な大きさの皿に乗っているのは、味も食感も匂いも様々な〝お菓子〟だ。貴族の茶会に出てくるオーソドックスなものだけではなく、昨今庶民の間で流行しているという塩気の強いものや、ビネガーに漬けた野菜、果物まるままなど、一種類の量はそれほど多くないものの、十種を軽く超えて集まれば結構な量になる。三人分ならば充分を超えて、むしろ多過ぎるくらいだろう。


「よくこんなの思いつかれましたわね、シェイラ様」

「お二人を実験台にしているようで恐縮ですが、お茶会の作法などを習ううちに、実は〝お茶菓子〟の制約がそれほど厳格でないことに気がつきまして。古くからの形式に則ったお茶会では、焼き菓子やムースといった甘いものと、フィンガーフード類がお約束のようですけれど、〝絶対にそれでなければいけない〟といった決まりごとは特にないようなのです。ならば、こういった庶民の間で流行っている軽食を取り入れていくのも良いのではと思いつき、こうして実践した次第です」

「面白い趣向ですわね。ワクワクします」


 リディルに続いてナーシャも頷いてくれ、シェイラは内心で胸を撫で下ろす。今話した言葉は嘘ではないが全てでもなく、一番の目的はもちろん、多種多様な〝お菓子〟のどれをナーシャが選ぶか観察し、なるべく彼女の味の好みを把握することにあった。

 ディアナも心配していたが、〝食が細る〟というのは馬鹿にできない。人間は命を維持するための動力源を、ほとんど食事から得ているのだ。食が崩れれば、それだけで体調はがくりと悪化する。

 ナーシャの味の好みが分かれば、密かに厨房へと伝え、ナーシャが食べやすい食事を用意してもらうこともできる。現時点でナーシャの食が細くなっていることを厨房側は知らず(異変を外部へと漏らさないため、余った食事は部屋で処分し、空の皿だけを返す徹底ぶりらしい)、それゆえにナーシャの献立も以前と変わらないが、具体的に味や食感、匂いを提示できるようになれば、少なくとも今よりは食べられるようになるはずだ。


 ――お茶とお菓子が出揃ったところで、合間合間に雑談を挟みながら、しばらくの間はゆったりとお茶を楽しむ。その間、不自然ではない程度にナーシャを観察し、彼女が手を伸ばしている〝お菓子〟をチェックして。


(やっぱり……好んでお召し上がりになっているのは、果物ね。あと、後味のさっぱりしたゼリー類と、ビネガー漬けの野菜もお気に召されたみたい)


 以前はよく食べていたクッキーやマフィンといった焼き菓子類には、手どころか目すら向けない。塩気の強い菓子も、あまり好きではないようだ。


(後味や喉越しもさっぱりしているものがお好きになったのかしら。だとしたら、今のお食事は確かに酷ね)


 これはエルグランド王国の伝統食全般に言えることだが、基本的にこの国の料理は味が濃く、後まで残るものが多い。野菜のビネガー漬けなどさっぱりしたものがないわけではないけれど、どちらかといえば前菜や付け合わせに出てくるもので、メインにそういった味が用いられることは稀だ。お茶会のフィンガーフードも、具の味付けは濃いのが普通である。

 ましてや、王国の中心、伝統と様式の殿堂である王宮で出てくる食事ともなれば、最高級の美食であることは明らかで。エルグランド王国の美食の概念とすっきり、さっぱりが噛み合わないとなれば、特別に注文でもしない限り、今のナーシャが好む味付けの料理は、おそらくほとんど出てこないだろう。


(うん。これでひとまず、ナーシャ様の食は改善できそう。後は――)


 ナーシャの食を弱らせている、大元の原因を解消できれば、言うことはない。

 ――全員がカップのお茶を飲み干したタイミングで、リディルがにこやかに切り出した。


「それにしても、三人でのお茶会は本当に久々ですね。確か、『里帰り』を終えて帰ってすぐくらいの時期ではありませんでした?」

「えぇ、そうでした。それぞれ新しくなったお部屋を見せ合って、それからお茶をしましたね」

「ナーシャ様とシェイラ様のお部屋が以前の倍以上になっていて、本当に驚きましたわ。――とはいえ、ナーシャ様はお父上様の業績を鑑みれば当たり前の処遇であり、シェイラ様も昨年度末の活躍で王宮と後宮に貢献されたわけですから、やはり妥当な待遇なのでしょうけれど」

「いいえ、そんな。ナーシャ様はともかく私は、ディ、いえ、紅薔薇様のご温情で大きいお部屋を賜われたようなものですから」

「あら。それだって、シェイラ様が紅薔薇様へかけられた嫌疑を見事に晴らされたからでしょう? ご恩情というより、ごく普通の御礼なのでは?」

「ならば、畏れ多くもありがたいことです……」


 人払いを済ませているとはいえ、どこで誰が聞いているかも分からない戸外だ。リディルは社交的で明るい性格だが決して浅慮ではなく、どちらかといえば注意深い。万一を考えて、〝シェイラが密かに正妃教育を受けている〟事実を徹底的にぼかしてくれていることは、すぐに察することができた。

 ……そしてやはり、ナーシャの様子はおかしい。お茶を飲み、〝お菓子〟を食べられたのは良しとして、お茶会にはつきものな会話に加わろうとせず、心ここに在らずな風情でどこか遠くを見つめている。

 密かにリディルと視線を交わし、シェイラは真正面から突っ込むことにした。


「――ナーシャ様? どうかなさいました?」

「え……え?」

「何やら物想いに耽っていらっしゃるようでしたので。何か心配事でもおありなのかしらと思ったのですけれど」

「お気遣い……ありがとうございます」


 笑みを浮かべたナーシャだが、その表情はどこか儚げで物寂しい。……何となく、これまでにはなかった〝壁〟を感じる。


「とても良い陽気で、少し眠くなってしまったようです。失礼を致しました」

「いえ、失礼などではありませんよ」

「ナーシャ様、最近、朝にお誘いしてもお休みのことが多いですけれど。もしかして、あまり眠れていらっしゃらないの?」


 シェイラに続き、リディルも正面から突撃することにしたらしい。ナーシャの様子からして、遠回しに尋ねても流されて終わると判断したのだろう。こういうときは正攻法が一番強い。

 リディルに直で疑問をぶつけられたナーシャは、少しの間、沈黙して。


「眠れていないようなことは、ないのですが。確かに、ここしばらく、怠惰な生活を送ってしまっていたかもしれません。――いけませんね、実家でないからといって普段の習慣を崩しては」

「そんな、怠惰などと。朝が遅くなってしまうのは、夜の眠りが浅いゆえと聞いたことがあります。もしくは、体調に何か異変が起こっている兆候(サイン)である可能性もありますわ」

「怠惰なんて言葉で、ご自身を追い詰めるのはお止めになって。ナーシャ様は少し、ご自分に厳しすぎます」

「お優しいお言葉、本当にありがたく存じます。……でも、この程度の物言い、厳しいうちに入りません。本来であれば、私はもっともっと己を律して、厳しくあらねばならないのですから」

「ナーシャ様……私から見たナーシャ様は、もう充分に頑張っていらっしゃいますよ?」


 ナーシャはいつも大人しく、控えめかつ穏やかだが、だからといって意思が弱いわけでは決してない。平民の生まれでありながら、母の再婚という運命の悪戯によって貴族の娘となり、それからわずか数年で後宮でも通用する、貴族令嬢としての礼儀作法や振る舞い方を身につけた。意思の弱い娘では到底成し得ないことだ。

 だからこそ……頑なに己を〝怠惰〟だと思い込んでしまえば、無理をしてしまうことは目に見えて。それではいけないと、シェイラの胸中を警告の音がよぎる。


「ナーシャ様はいつだって、クロケット男爵家のためにと励んでいらっしゃったではありませんか。もしもお疲れが出て、睡眠が不安定になるようなことがあったとしても、それは怠惰とは違います。――己を律するために厳しくあることと、必要以上に自分をいじめることは別だと、私は思いますよ」

「シェイラ様……」

「ご自身でお認めになることが難しいようなら、私が申し上げます。――ナーシャ様は、本当によく頑張っておいでだと」

「シェイラ様の仰る通りですわ。ナーシャ様、自律心旺盛なのも結構ですが、頑張っているご自分を認め、肯定することもまた、大切なことよ」

「リディル様、まで……」


 カップに視線を落としたナーシャは、何かと葛藤しているように、シェイラには見えた。――助けを求める心とそれを戒める自己がぶつかり合っているかの如く、そのヘイゼルの瞳が複雑に揺れる。

 しばらく無言のまま、シェイラはリディルとともに、ナーシャの様子を見守って。

 ……やがて、何かを決意した様子のナーシャが、ゆっくりと視線を上向けた。


「シェイラ様、リディル様」


 ナーシャの強い、覚悟の瞳が、二人を射抜く。


「私、は――っ!!」

「!!」


 変化は、一瞬だった。ナーシャの頭がぐらりと傾いだかと思うと、身体から魂が抜け去ったかの如く、全身から力が抜ける。ふらりと椅子から落ちそうになったナーシャを、近くで様子を見ていたレイが駆け寄って支えた。


「ナーシャさまっ!?」

「どうなさったの!?」


 レイ一人では倒れる勢いを殺すのがやっとだ。シェイラとリディルは即座に立ち上がり、両側から回り込んで、リディルがナーシャの肩を、シェイラがレイを支えることで、何とか彼女が椅子から落ちるのを防ぐ。それほどの騒ぎの中でもナーシャは微動だにせず、完全に意識を失っているのが分かった。


「マリカ! すぐに応援を呼んで!」

「はい!」


 密かに死角で待機していたマリカが、レイの指示で駆け出していく。ナーシャの体調が良くないことを考慮し、万が一のことを考えて、マリカも側に控えさせていたのだ。……できれば、マリカの出番はない方が良かったけれど。


(上に立つ者ならば、常に最悪を考えて準備せねばならない……そう教わって、教えの通りに動いたけれど、想定の〝最悪〟が現実になるのは、あまり気分の良いものじゃないわね)


 ――シェイラが複雑な心地を飲み込んでいる間に、マリカが呼んできた侍女たちの手によってナーシャは速やかに自室へと運ばれ、寝台へと横たえられた。成り行きでナーシャの部屋まで同行したシェイラとリディルの前で、ナーシャ付きの侍女二人が、あたふたしながらお湯を汲んだり額に冷たいタオルを置いたりと、ナーシャの介抱をする。

 室内が慌ただしい中、不意に廊下と繋がる扉が叩かれた。侍女たちが対応するのは難しそうだったので、近くにいたリディルが扉を開ける。


「どちら様で……マグノム夫人?」

「先触れなしに失礼致します、リディル様。――ナーシャ様のお具合が芳しくないと報告を受け、ご様子を拝見に参りました」

「え……」


 驚いた様子で、リディルがシェイラを振り返った。視線を受けたシェイラは、こくりと頷く。


「ありがとうございます、マグノム夫人」

「お礼など。こちらこそ、ご連絡に感謝致します」

「シェイラ様!?」


 分かり易いリディルの問いに、シェイラは緩やかに、首を横に振った。


「ナーシャ様のお心を尊重するのであれば、胸中一つに収めるべきなのでしょうけれど……お命に関わる事案を、何の力もない私たちだけで抱えるのは、あまりにリスクが高過ぎます。万一の事態に陥っても、私どもではお医者様をお頼みすることすらできないのですから」

「それは、そうですけれど」

「マグノム夫人にお知らせしたことで、私はナーシャ様に恨まれてしまうかもしれません。――ですが私は、私個人への恨みつらみより、ナーシャ様のお命の方が大事です」


 情に流されて、一番大切なものを見失うわけにはいかない。今、この場で何よりも優先すべきは、間違いなくナーシャの命だ。己の体調不良について外部へ漏らしたくないというナーシャの意思はもちろん大切だが、それを最優先にするかどうかは、時と場合による。

 ――リディルからナーシャの様子についての相談を受けてすぐ、シェイラはマグノム夫人を呼び、その内容を報告していた。マグノム夫人も薄々は何かおかしいと感じていたようで(ディアナの助言を受け、ナーシャ付きの侍女にこまめに様子を尋ねていたが、どうもその受け答えがはっきりしないらしかった)、シェイラの話を聞いた上で、先程のお茶会で何が起こっても対応できるよう、人員を配置していたのだ。マリカがすぐさま他の侍女を呼べたのも、マグノム夫人の采配あってこそである。

 もちろん、マグノム夫人には「ナーシャは自身の状態を誰にも知られたくないと思っている」とも話してある。ナーシャの気持ちを汲んだマグノム夫人は、現段階ではこの件を他へは伝えず、ナーシャを運んでくれた侍女たちにも他言無用を命じてくれていた。

 そんな、できる女官長の登場に、ナーシャ付きの侍女たちは青い顔で俯いてしまった。


「にょ、女官長様……」

「こ、れは、あの……」

「話は後です。まずはナーシャ様の御身を優先に。お顔の色が悪いようですから、温石を用意して――」


 マグノム夫人の指示で侍女たちは別人のようにキビキビと動き出し、指示された物品を取りに退出していく。残ったマグノム夫人とリディルで、ナーシャの布団をもっと分厚いものへ変えるなど、俄かに動き出した室内で。


〈――ご正妃様〉


 リディルとともにマグノム夫人を手伝おうと一歩踏み出したところで、静かな、しかしはっきりとした強い声で呼び止められる。……今のところ、シェイラを〝正妃〟と呼ぶ人は一人しかいない。

 シェイラは、マグノム夫人の邪魔にならないよう壁伝いに歩き、寝台からやや離れたところで立ち止まった。


「ソラ様、いらっしゃったのですね」

〈少し前より、様子を拝見しておりました。……それで、少々、気になることがございまして〉


 庭などの戸外ならともかく、建物の中であれば、彼ら隠密はどこにでも潜むことができる。――特に、ディアナ曰く「泥棒さん大歓喜」なこの後宮であれば、彼らが覗き見できない場所は存在しないと言っても良いくらいらしいから、騒ぎを聞きつけたソラがこの部屋の様子を窺っていたとしても不自然ではないが。


(わざわざこの状況で、ソラ様が声を掛けられるのは、とても不自然よね……)


 室内には、ソラの存在を知らないリディルもいるのだ。もちろん、リディルに届くような声量で話してはいないけれど、玄人(プロ)中の玄人(プロ)であるソラは、よほどのことがなければ、こんな中途半端に顔を見せるような真似はしないはず。


「気になること……ですか?」

〈はい。急ぎ、お知らせすべきかと〉

「何でしょう?」

〈今、このお部屋には、ご正妃様を含め、四名の方がいらっしゃいます。……しかし、『探索』にて探ってみると、〝五人分〟の気配を察知できるのです〉

「ご、にん?」


 それは、つまり。ソラのようにどこかに潜み、この部屋の様子を窺っている何者かが存在するということか。

 もしくは……。


〈うち四人は、はっきりと〝人〟の気配を成しておりますが、残りの一人は未だ成熟しきっていない、薄ぼんやりとした気配です。私がこの距離で深く『探索』してようやく見つけられた程度には、まだ弱く、薄く、儚い。……しかしながら、確かな一つの〝命〟として鼓動しております〉

「え……えと、それは、どういう」

〈――要するに。〝人〟として形を為す前の、成熟途中の〝命〟が今、このお部屋に存在するということです〉


 ソラの言葉を、耳で聞いて。

 頭に入れて、咀嚼して。

 導き出された、その、まさかの結論は――!!


「ナーシャ様が、ご懐妊……!?」


 想定外の状況に、シェイラはただただ真っ白になり、呆然と立ち尽くした。


不意に出てきてめっちゃ喋る黒獅子さん……

エルグランド王国では反則級なチートを惜しげもなくお使いになる黒獅子さん……

主要キャラ達にとっては大変頼りになるお味方なのですが、彼の存在は真面目にチートで物語のパワーバランスが崩れかねないので、何気に作者泣かせなんですよね黒獅子さん……!!

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― 新着の感想 ―
[一言] おめでたかー
[良い点] 黒獅子さん色々な意味でブレーカーだわ。 [一言] ナーシャさんは幸せになってほしいですね。
[良い点] やっぱりね。前回の予想大当たり(笑)
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