繋がる刻(とき)
今回、少し長めです。
心身ともに余裕があれば、今日にでもアルシオレーネの花壇へ行って、彼女と話をしようと思っていた。
しかしながら、今のディアナは第一に『エルグランド王国国使団』の長であり、その立場を蔑ろにはできないのだ。
「これは……昨日も派手だったけれど、今朝もまた派手ね」
「やり口を変えてきましたねぇ。こちらの後宮には随分とお暇な方々が多いようで」
「てか、イジメ超やり慣れてるよね。エルグランド王国の後宮より分かり易くて直接的だけど、ねちっこかろうが渇いてようが、イジメはイジメでしょ」
淡々と感想を述べるディアナ、リタ、カイの眼前に散らばっているのは、薄汚れた衣服類。それもディアナたちのものではなく(撒き餌にした下着類以外、エルグランド国使団のものは外干ししていないので汚されようがない)、誰のものかは不明だが、明らかにスタンザ女性の衣類だ。飾り気のないシンプルなローブから、色鮮やかな室内着まで、見事に汚れた状態で廊下にばら撒かれている。どうやら、連日の嫌がらせの犯人たちは、掃除だけではディアナたちに大したダメージは与えられないと踏んだらしい。
「……しかし、ここまで来ると、一種の執念のようなものを感じてしまいますね」
掃除道具と洗濯物回収用の籠を取りに行っていた王宮組が戻ってくる。ミアの呟きに、侍女たちがそれぞれ頷いた。
「いくら着るものに困っていないとはいえ、自分の服を汚してまで嫌がらせしようとするなんて、通常の精神状態では無理ですよ」
「何がそんなに憎いんですかねぇ。初対面のご挨拶以来、特に接点もありませんのに」
「接点がないからこそ、勝手に恨みを募らせるっていうのもあるんじゃない?」
「あぁ……ディアナ様のことを勝手に悪女だと判断して排除しようとする、いつものパターン?」
「あなたたち……割と取り繕わなくなってきたわね。別に構わないけれど」
ユーリ、ルリィ、アイナ、ロザリーのコメントに苦笑しつつ突っ込むと、代表してユーリから呆れの視線が返された。
「ほとんど毎日、『それは貴族令嬢として明らかに間違っています』というお振る舞いをされるディアナ様をお世話申し上げるのに、取り繕っていては効率が悪いと判断したまでですが」
「分かってるし、別に気にしてないってば。言っておきますけれど、わたくしだってこんな状況じゃなきゃ、一応は貴族令嬢の化けの皮くらい、ちゃんと被れるんですからね」
「……ペラッペラに薄い上、少し風が吹けばすぐ剥がれる化けの皮ですけれど」
「ちょっとリタ、何か言った?」
「まぁまぁ、貴族令嬢らしからぬディアナ様にご意見申し上げるのはこの辺にしましょう」
対人スキル達人級のルリィが、絶妙のタイミングで止めに入ってくる。ちなみに、ディアナがくだらないことを話している間に、手の空いていたカイ、ミア、アイナ、ロザリーがささっと動いて、散らばっていた汚れものを籠にまとめ、廊下を掃き出していた。……実に有能な国使団員である。
廊下そのものは昨日ほど汚れているわけではないので、そのまま四人に掃除を任せ、ディアナは改めてルリィを見た。
「――今日の嫌がらせも、やっぱりヴィヴィアン様の仕業なのかしら?」
「籠を取りに行くときにすれ違いつつクスクス笑ってきた方々のお顔を見るに、間違い無いでしょう」
ルリィの断言には力があった。彼女がここまで言うということは、少なくとも部屋荒らし以降の〝嫌がらせ〟の主犯はヴィヴィアン・クスプレオなのだろう。
――『紅薔薇の間』の諜報担当ルリィは、情報収集の玄人だ。年齢一桁の頃からエルグランドの王宮で揉まれてきた彼女は、その気になればどんな場所からでも情報を吸い上げてくる。
今回は国も異なり、ルリィ自身にも〝エルグランド国使団員〟という肩書がついたことで動きづらい部分は確かにあったようだが……それでも、彼女がひと度本気を出せば、必要な情報は半日で充分に集めることができたらしい。
連日の〝嫌がらせ〟がルリィの反骨心と侍女魂に火をつけたのか、彼女が燃えに燃えた結果、ならず者騒動を片付けて後宮の部屋に帰ってきたディアナを出迎えたのは、「嫌がらせの主犯が分かりました」と報告するルリィだった、というわけである。昨日の今日どころか朝の夜な即答状態に、報告を受けたディアナはもちろんのこと、ユーリですら目に見えて驚いていた。
ちなみに、ルリィの一連の諜報作戦に付き合わされたカイ曰く、「ルリィさんは絶対、王宮で侍女やってるの間違ってる」だそうなので、裏社会の非常識が日常の彼ですら思いもしない方法であったことは間違いない。「危険なことはなかった」と断言していたので詳細は聞いていないが、異国で、危ない橋を渡ることなく、どうやって難易度マックスの情報を入手したのか、別の意味でとても気になる。後学のためにも、落ち着いたらぜひ教えて欲しいものだ。
そんなこんなで、ルリィが得た情報を組み合わせ、留守番役の全員で推理して導き出した結論こそ――。
「まぁね……嫌がらせが始まったタイミングとか、イヤミを言ってくる方々とか、嫌がらせ現場でよく見かける侍女さんとか、諸々の情報から総合的に判断すれば、ヴィヴィアン様の可能性が一番高いなとは思っていたけれど。たかがあの程度の言い争いでここまで粘着されるとも思ってなかったわ」
「状況証拠があまりにもクスプレオ様を示し過ぎておりましたから、逆にどなたかが彼女を陥れるべく仕組んだ罠という線すら考えておいででしたものね、ディアナ様」
「私も正直、ヴィヴィアン・クスプレオ様が首謀者の可能性は五分五分だと考えておりましたが……」
難しい顔のルリィに、理解の意を込めてディアナは頷いた。
「分かっているわ。――まさか、ヴィヴィアン様が後宮内で最上に近い権勢を誇っておいでの方だったとはね」
初めてヴィヴィアンと顔を合わせたとき、建前の身分と実質的な地位にかなりの開きがありそうだと感じたディアナの勘は正しかったわけだ。とはいえ、現在の勢力図で頂点に近い地位を得ているとまでは思わなかった。側室の連れ子が後宮で強大な権力を得るなんて、さすがにエルグランド人の発想では思いつかない。
――ルリィが得た情報によると、表向き、現在の第一寵姫はヴィヴィアンの母であるイライザ・クスプレオとされているものの、皇帝陛下がイライザの部屋を訪れる際は、必ずと言って良いほど娘のヴィヴィアンも呼ばれているらしい。外聞ゆえ召し上げられてこそいないが、ヴィヴィアンは実質、皇帝陛下の寵姫も同然。母子で皇帝陛下の寝所に侍っていることは後宮中が察している、いわば公然の秘事なのだという。
なかなかに爛れた閨事情ではあるが、皇帝陛下とヴィヴィアンに血の繋がりはないわけだから、生物倫理的には問題ない。社会倫理的には微妙だけれど、あくまでもエルグランドの価値観に則ればという前提なので、スタンザでそこを指摘する意味もなければ必要もないだろう。――重要なのは、その爛れた閨事情により、ヴィヴィアンが単なる側室の連れ子以上の権勢を得ているという事実だ。
「ヴィヴィアン様が後宮の実質的な頂点なら、堂々と嫌がらせをするのも道理よね。諫める人も、弱みを握って足を引っ張ろうとするライバルも存在しないのに、隠れてコソコソする必要ないもの」
「ディアナ様がいらっしゃるまでの後宮で、リリアーヌ様がやりたい放題でいらしたようなもの、ですものね」
「なるほど。言うなれば今のクスプレオ様は、昨年夏以前の牡丹様状態というわけですか」
「……そうなんだろうけど、わたくし別に、リリアーヌ様の足を引っ張りたくて引っ張ってるわけじゃないわよ? 必要に迫られて、やむなくそうしてるだけ」
リタとユーリの例えは分かり易かったが、分かり易いだけに複雑だ。構図としてはその通りだが、ディアナはリリアーヌと権力を争いたいわけではない。結果的にそうなってしまっているのは確かだとしても。
――それはともかく。
「二日目の部屋荒らしから続く一連の嫌がらせが、ヴィヴィアン様の意向なのは確かだとして。……毒草混入が綺麗になくなった理由は、まだ不明よね?」
「部屋荒らしと入れ替わるように毒草混入が無くなったということは、逆説的に考えれば〝毒草混入はヴィヴィアン様の意向ではなかった〟ということになりますが」
「それはそうなんだろうけど、別にヴィヴィアン様が嫌がらせをし始めたからって、自分がしてた嫌がらせを止める必要はないでしょ? むしろ〝頂点のヴィヴィアン様が嫌がらせしてるなら〟ってエスカレートしそうなものだけど」
「あー……マリス前女官長に取り入るため、頼まれてもいないイジメが横行したみたいに、ですか?」
「えぇ」
ミアを気遣ってか、ヒソヒソ声で聞いてきたリタに、こちらもヒソヒソと応じる。嵌められて弱みを握られたに等しいとはいえ、結果的にマリス前女官長に加担したことを、ミアは今でも自身の罪として深く悔いているのだ。わざわざ聞かせることもないだろう。
「――スタンザ後宮の実質的な権力図としては、ヴィヴィアン様、イライザ様でツートップ。その下に、イライザ様のように頻繁ではないけれど定期的に皇帝陛下のご寵愛を受けている方々。その更に下に、今はもう陛下の訪れはないけれど、かつてはご寵愛を受けて皇子皇女殿下を授かっている方々と続いて……最も多く最も下の地位に、陛下の気まぐれで召し上げられたものの、ほとんどご寵愛を受けたことがないご側室方、となるわけね。エルグランド王国の後宮のようにきちんと一人ひとりの序列が定まっているわけではなく、大まかな区分ごとに分かれて、地位が下に行くほど属する側室方が増えていく、って認識で間違いない?」
「はい、相違ございません。……まぁ中には、ディアナ様のお食事に毒を混入させた可能性のあるランチア様のように、愛情ではなくお金で陛下のご興味を引き、自らの部屋へ訪れるよう仕向ける側室方もいらっしゃるようですが」
「なるほど。スタンザ後宮の権勢は陛下のご寵愛次第ではあるけれど、その〝ご寵愛〟もお金で買えなくはないわけね」
「ある意味、地位をお金で買っているようなものですねぇ」
明け透けなリタの相槌に、苦笑しつつ頷いて。
「権力図はそんな感じだと認識しておくとして、それぞれの側室方の関係性はどうなのかしら。ヴィヴィアン様にお味方している側室方がそれなりにおいでなのは、嫌がらせの雰囲気的に確かだろうけど」
「確かにそれなりの数はいらっしゃいますが、全員が権力図で言えば一番下の、ほとんど何の力も持たないに等しい側室方ですよ。頂点のクスプレオ様に媚び諂うことで、おこぼれを頂戴しようと目論んでおいでなのでしょう」
「力の弱い者が強大かつ巨大な組織で生き抜くには、独りでいるより強いリーダーについて群れた方が有利だものね。『紅薔薇派』だってそういう生存本能でできたようなものだし」
「それはそうかもしれませんが、ディアナ様は『紅薔薇派』の側室方を動員して気にいらない方をいじめたりはなさいませんから、クスプレオ様と一緒にはできません」
「まぁ、その部分は確かに違うわね。――ところでルリィ、ヴィヴィアン様のように、他の側室方をまとめて派閥を作っている上位の側室はおいでなの?」
「個人で仲の良い側室方は大勢いらっしゃいますが、派閥といえるほど大きな集団を築いておいでなのは、私がこれまで聞き及んだ限りヴィヴィアン・クスプレオ様だけです」
「ということは、派閥争いの線も消えたわね。……ますます分からないわ。ランチア様なのか、それとも他の方なのか、別に犯人は誰でも良いけれど、食事に毒を盛るなんて攻撃力としては最高級の嫌がらせを、どうして突然止めたのかしら」
憶測だけならいくらでもできる。たとえば……毒を混入させた〝誰か〟がヴィヴィアンのことを嫌いに嫌っており、嫌がらせ対象が被ることすら我慢ならず、彼女がディアナと揉めたのを知って手を引いた、とか。そもそも最初に毒を混入させたのもヴィヴィアン一派の〝誰か〟で、リーダーのヴィヴィアン自らがディアナへ攻撃し出したので、毒を盛る動機が消え失せた、とか。
だが、いくら憶測したところで、それが事実に掠っていなければ無意味だ。憶測に基づいた対策では、皆の命を確実に守ることはできない。
一度、深く呼吸して。ディアナは改めてルリィを見る。
「何はともあれ、ありがとう、ルリィ。本当に助かったわ」
「勿体ないお言葉です。しかし、これで終わりにするつもりはございません」
完璧な礼を執ったルリィの瞳は、淑やかな仕草とは裏腹に爛々と煌めいていた。
「やはり異国では、なかなか思うようには動けませんが。引き続き、有益な情報を得られるよう、努めてまいります」
「……頼りにしているけれど、お願いだから危険なことはしないでね」
「私はディアナ様ほど無理無茶無謀と隣合わせに生きてはおりませんので、ご安心を」
「もしかしなくても、今のは皮肉ね?」
「いいえ、ディアナ様。今のルリィの言葉は、世間一般では〝正論〟と申します」
「ユーリさんに賛成ですね」
侍女三人にやり込められてむくれるディアナを、掃除を終えたカイと王宮組が、笑いながら見守っていた――。
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「――にしても、ここがスタンザで良かったわ。エルグランドだとそろそろ水が冷たいから、大量に洗濯するのは辛い季節だもの」
「それは同感だけど……ディー、ホントにこれ全部洗うの?」
「この辺は一枚一枚丁寧に手洗いしなくても、まとめてざっくり擦ればある程度汚れは落ちるでしょ? これなら、私でも手伝えるもの」
「……ここまで来ると詐欺だよね、クレスター家が貴族やってるの」
朝食後、いつものように後宮の散策に出たディアナは、今日はいつもと違って汚れても良い地味な服を纏い、山のような洗濯物の入った洗濯籠を抱えて、敷地の端にある人気のない洗濯場へとやって来ていた。本日の嫌がらせで廊下にばら撒かれていた衣類を洗濯するためだ。
散乱していた洗濯物の種類は多く、手分けして洗うにも時間がかかる。別にディアナたちが汚したわけではないのでそのまま洗濯場に放置していても問題はないのだろうけれど、これ見よがしに置きっぱなしにして「国使団に汚された」なんて難癖をつけられても面倒だ。洗濯するにも手間のかかりそうな高価な衣類はスタンザの専門家に任せるとして、雑に扱っても問題ない下着類だけでも洗って干しておけば、仮に難癖をつけられても「我々が汚したわけではありませんが、部屋の前に落ちていたのは確かなので、洗って干しておきましたよ〈余計な手間をかけさせたくせに、これ以上ゴチャゴチャ言う気か?〉」と一言で話を終わらせることが可能になる。午前のディアナは言うなれば空き時間な訳だし、このフリータイムを有意義に使うことで相手の攻撃を一つでも封じられるなら、洗濯くらい何ということもない。
昨日と同じく、単独行動をするならと護衛を申し出てくれたカイは、洗濯場でいそいそと水桶に水を張り、洗い板を立てかけるディアナを見て、とてつもなく珍妙な顔をしていた。
「……俺の記憶が正しければ、エルグランド王国の貴族階級にとって、洗濯って数ある家事の中でも一番下の扱いで、使用人の中でも屋敷に上がることすら許されない下男下女が担当する仕事とされているよね?」
「詳しいのね?」
「貴族の屋敷に使用人として潜入する仕事が入ったときは、まず洗濯係の応募から調べるから」
「なるほど。――まぁ一般的にはそうみたいだけど、ウチでそんなこと言ってたら、家事の手が回らなくなるもの。腐っても古参貴族家の邸宅だからそれなりに部屋数はあるわけで、部屋数に比例してベッドシーツだとかカーテンだとかもあるのに、『洗濯は下男下女の仕事』なんて言ってられないわ。というか、まずそもそも論として、クレスターの使用人に〝下男下女〟はいないしね」
「そういやそうだった。……ってことは、」
「夜会や茶会用のドレス類は、さすがに専門の職人にお任せするけれど。特に技術とか要らない服やシーツとかの洗濯は、普通にみんなでやってるわ。この間の〝里帰り〟のときは、シェイラに気を遣わせちゃ悪いって理由で私は外れたけど」
「あぁうん、ディーが洗濯してたら、シェイラさんは間違いなく手伝っただろうからね」
「私はともかく、正妃教育が始まるシェイラの手を荒れさせるわけにはいかないもの」
「忘れてるみたいだけど、ディーも『紅薔薇様』なんだから、〝里帰り〟で手が荒れるのはマズいよ」
「……確かに。そっか、それもあって『洗濯はダメ』だったのね」
今更ながら納得しつつ、まぁこの量をざっと洗うだけなら目立って手荒れすることもないだろうと、ディアナは普通に洗濯を始める。ディアナの様子を眺めていたカイも、苦笑しつつ水桶に水を張り、同じように洗い始めた。洗濯係に扮することもあると言うだけあって、その手つきは本職のそれだ。
「……本当に、あなたって何でもできるのね」
「生活に必要なことは、一通りね。じゃないと生きていけないし」
「ソラ様に教えて頂いたの?」
「いや、家事の類は父さん以外に教わることも多かったよ。父さん、元々はエルグランドの人間じゃないから、あの国の生活習慣には疎いところもあったみたいでさ」
「そう考えると凄い方よね、ソラ様。エルグランドへいらしたのがいつ頃にせよ、そこから言葉を覚えて、生活習慣に馴染んで、並行してあなたを育てられたのだもの」
「……うん。俺も心から感謝してるし、尊敬してる。子どもの頃から父さんみたいになりたかったけど、大人になるにつれ父さんの凄さが分かって、絶対真似できないなとも思うようになったよ」
カイが心中を素直に吐露するのは、とても珍しい。思わず手を止めてその表情を窺うと、彼は少しはにかんだ笑みを浮かべていた。
「それでもやっぱり、父さんは俺の理想で、目標だから。敵わないなと思いつつ追いかけるのは止められないし、いつか絶対追いついて、追い越したいって……性懲りなく挑み続けちゃうんだよねぇ。無謀なんだろうけどさ」
「……そんなこと、ないと思う」
カイが見せてくれた思わぬ姿に、何故か心が浮き立って、顔が熱くなる。静かに深く息を吸ってから、ディアナは敢えてゆっくりと微笑んだ。
「私、クレスターでカイがソラ様と真剣勝負してるところ見て、心から『凄い』って思ったもの。誰よりもソラ様の強さを知っているカイが、ソラ様から本気の威圧をかけられて、それでもまるで怯まず堂々と挑んでた。……今はまだ技術や経験値で敵わなくても、気持ちで負けない強さがあるあなたなら、いつか絶対、理想を現実にできる日が来るわ」
「ディー……」
目を丸くしたカイが、次の瞬間、魂ごと吸い込まれそうな美しい笑顔になる。真正面から見てしまった〝それ〟に、体の動きどころか呼吸まで止まった。
微笑んだまま、カイが無言で、こちらに手を伸ばしてくる。どんどん近づいてくる腕を認識しながらも、ここからどう動くべきか、ディアナはまるで判断できずにいた。
カイとの距離が近いのも、触れ合えば彼の優しさを感じられて落ち着くのも、いつものことなのに。どうして今日に限って、これほど緊張してしまうのか――。
「……残念。誰か来る」
髪に触れる直前でカイの手は止まり、視線が洗い場に繋がる通路を向いた。原因不明の金縛りが解けて、ディアナは思わず深呼吸してしまう。
(ほんっと、このひとのこういうところ、タチが悪い……)
文句はギリギリ心中に留めて、深呼吸で何とか鼓動と気持ちを静めてから、ディアナもカイの視線の先を追った。
「誰かしら? ヴィヴィアン様付きの侍女さんとかだと面倒ね」
「いや。この気配は――」
《……ディアナ様、ですか?》
通路の先から大きな水桶を抱えて現れたのは、質素な衣装に身を包んだアルシオレーネ。……なるほど、今日は朝から良い天気だから、花壇に撒くための水を汲みにきたわけか。
近づいてきたアルシオレーネは、目の前の光景が信じられない様子で、目を極限まで丸くしていた。
《おはようございます、レーネ様》
《おはよう、ございます……。ディアナ様、あの、こちらで何を……?》
《見ての通り、洗濯です》
今のディアナを見て、洗濯以外の家事をしていると判断する要素はないだろう。ありのままを答えに、アルシオレーネはついに口までぽかんと開けた。
《あの、失礼ですが……エルグランド王国では、高貴な方であっても洗濯などという辛い水仕事をなさるのでしょうか?》
《いいえ、そんなことはありませんよ。よほど収入に余裕がなく、使用人を雇うことすらままならないお家であれば話は別ですが、基本的に洗濯は使用人たちの仕事でしょうね》
《でしたら、ディアナ様も、洗濯とは縁のない暮らしをしておいででしょうに……》
《あ、いえ。我が家の場合、特に貧乏というわけではないのですが、諸々の事情から使用人の数が平均よりかなり少ないもので。どんな家事も一通りはこなせるように、両親から教わったのです。わたくしにできる家事が増えれば、家の皆の負担を少しでも減らせますから》
《……ですが、それはあくまでもお家の方々のためであって、国使としていらした異国で洗濯婦の如き扱いを受けるためではないでしょう。エルグランド王国の準王族という高貴なご身分のお方が、スタンザ帝国との友好を築くべくわざわざ訪れてくださったというのに、このような非道な仕打ちを平然となさるなんて》
大きな水桶を抱えながらわなわな震えるアルシオレーネは、どうやら本気で憤っている。廊下に洗濯物をばら撒かれはしたが、それを洗っているのはディアナが自発的にしていることなので、そこまで怒ってもらうのは逆に申し訳ない。
《レーネ様がお気になさることではありませんよ。期間限定とは申せ、見知らぬ異国の女が後宮の一室を占有しているのですから、不愉快に思われる方がいらっしゃるのも分かりますゆえ》
《いいえ。曲がりなりにも後宮に住う側室として、異国の国使様に不躾な振る舞いを繰り返しているこの現状を、無関係だと素通りすることはできません。……ディアナ様がご寛容でいらっしゃるからこそ大事になっていないだけで、とうの昔に大きな外交問題に発展していてもおかしくない状況ですのに》
《まぁ……外交問題に発展したところで、国力の差は歴然ですからね。仮にわたくしが騒ぎ立て、エルグランド王国へ報告を入れて国同士の問題へ発展し、最悪の展開として武力衝突にまで及んだとしても、帝国としては痛くも痒くもないと、皆様お考えなのでしょう》
《――それは、真実のお話ですか?》
不意に、アルシオレーネの声音が変わった。――確かな覚悟でこちらの〝内側〟へと踏み込もうとする、強さと深さを宿した声だ。
『通詞』を発動させているカイが、これまでとは違う警戒の気配を醸し出す。にわかに緊迫した洗い場で、ディアナもまた真正面からアルシオレーネと向き合った。
《真実、とは如何なる意味にございましょう?》
《……私の父は、若い頃、スタンザにはない植物を研究するため、単身エルグランド王国へ渡ったことがあるそうです。エルグランドで得た様々な学びを、父は幼い私の寝物語に、たくさん話してくれました》
……予想、していなかったわけではない。アルシオレーネが育てている花は、マァリとモモノを交配させた新種。マァリはともかく、モモノをスタンザ帝国で手に入れるのは難しい。若かりし頃のテバラン博士がマァリと掛け合わせるエルグランドの植物を探していたのだとしたら、第三者を介して手当たり次第にエルグランドの植物を仕入れるより、マァリ片手に自ら海を越える方が遥かに効率的だ。
《ディアナ様とお会いしてから、父の話を思い返すことが多くなりました。幼い私にとって、それはまるで夢のような冒険物語……美しい港町、穏やかで親切な人々、肥沃な大地と恵みの大河――》
《……》
《父は、常々申しておりました。あれほど広大で豊かな土地を、数百年の長きに渡って戦なく治めている国の力が弱いわけも、統治者が愚かであるわけもないと。無力で無策に見せかけてこそいるが――エルグランド王国に手を出したが最後、滅ぼされるのはスタンザ帝国の方だと》
《……博士は、随分とエルグランド王国を高く買ってくださっているようですね》
《私は、父の買い被りとは思えません。ディアナ様がこの国の者に寛容でいてくださるのも、国力の差に怖気づいているわけでは決してなく……単純に、様子を見ていらっしゃるだけではないのですか? その気になれば、いつでも潰すことはできるから》
駆け引きゼロな、直球にもほどがあるこの内容を、直接ディアナにぶつけるアルシオレーネは、実に勇気のある娘だ。彼女や、彼女の父のように考える者は、スタンザ帝国はもちろんエルグランド王国にもほとんど存在しないだろう。レーネの語る言葉がエルグランド側にとってスタンザに知られたくない〝真実〟だとしたら、口封じにいつ殺されてもおかしくない。
視線を逸らさないアルシオレーネに――ディアナは柔らかく、微笑んだ。
《仮に、レーネ様の仰ることが〝真実〟なのだとしたら……どうなさいますか?》
《国のためを思うなら、今すぐヴィヴィアン様をお諌めするべきなのでしょうが……私如きが何を進言申し上げたところで、さしたる効果があるとも思えません。それどころか、ヴィヴィアン様の不興を買ったが最後、バルルーン家や父にまで類が及ぶ可能性も……》
言葉を紡ぐにつれ、アルシオレーネは己の無力に打ちひしがれていく。さすが、隠れることなく堂々としているだけあって、ヴィヴィアンがエルグランド国使団へ危害を加えていることは後宮中が知るところとなっているらしい。
それにしても――アルシオレーネ個人だけでなく、バルルーン家にまで類が及びかねないとは。
《ヴィヴィアン様は皇女殿下ではなく、ご側室イライザ・クスプレオ様がお連れになったご令嬢であると伺っておりますが……後宮内のみならず、側室方のご実家までヴィヴィアン様の意向一つで行く末が変わるとなれば、そのお力はかなりのものですね。ましてや、バルルーン家はスタンザ帝国きっての名家でございましょう?》
《如何な歴史ある名家といえど、時の皇帝陛下のお心を掴めねば、その座は簡単に奪われます。ヴィヴィアン様は、血を分けた実の娘である皇女殿下方にも増して、皇帝陛下の愛情を注がれておいでですから……ヴィヴィアン様が一言、皇帝陛下に『バルルーンの娘に侮辱された』とでも仰せになれば、陛下は即座にバルルーン一族を追放し、奴隷身分へ堕とされることも厭わないでしょう。――ヴィヴィアン様の不興を買ってしまったことで、皇宮どころか皇都に居られなくなった方々は、決して少なくありません》
《それは、なかなかですね……》
どうやらスタンザ帝国では、皇帝の寵愛を得て政に口を出すのが当然のこととして成り立っているらしい。ヴィヴィアンの場合は男女の情愛だろうけれど、男であってもひたすら皇帝にとって都合の良い存在であり続けることで、寵臣の立場は狙えるはず。皇帝陛下に気に入られることで、ほとんど無条件に権力が得られるシステムならば、そりゃ後宮は側室で溢れるだろうし、毒殺が横行するのも自然である。
に、しても。
《それほど権勢を誇るヴィヴィアン様が、わたくしを、エルグランド国使団を忌み嫌っておいでなら、スタンザ後宮全体から怒涛の攻撃を受けてもまるでおかしくないはずですが……ヴィヴィアン様のご機嫌を損ねぬよう、ご意向に添おうと心掛けるのであれば、わたくしへの嫌がらせに加担するのが最も手っ取り早いでしょう?》
《いいえ、とんでもない。そのようなことをすれば、却ってヴィヴィアン様のお怒りを買ってしまいます》
《と、仰いますと?》
《ヴィヴィアン様は、ご自身の攻撃対象に横から手出しされることを、何より厭われるのです。内に入れられたご友人方なら話は別ですが、さして親しくもない者と攻撃相手を〝共有〟するのは、我慢がならないようでして》
《……幼子が玩具を独り占めしたがるようなもの、でしょうか?》
《近くはあるかと……かつて、ヴィヴィアン様に便乗して同じ相手に嫌がらせを繰り返していた者が、逆にヴィヴィアン様のご機嫌を損ねてしまい、ご実家もろとも潰されておしまいになったことがあったそうです。それゆえ後宮の者は、ヴィヴィアン様が新しい〝玩具〟を見つけられた際は、一切の手出しをしないようになったのだとか》
アルシオレーネの言葉は伝聞調だったので、おそらく実際にその事件が起こったのは、彼女が後宮へ上がる前なのだろう。昔の事件をきっかけにできた暗黙のルール――さすがにそんなものを、噂話から拾うのは不可能だ。
(……そういうことだったのね)
ずっと疑問だった毒草消失の謎が、アルシオレーネの話でようやく解けた。スタンザ二日目の朝と昼、ディアナたちの膳に毒を仕込んだ何者かは、その日の夕方にヴィヴィアンの一派がエルグランド国使団に嫌がらせをしたのを見て、手を引かざるを得なかったのだ。――ヴィヴィアンがディアナに狙いを定めた以上、このまま毒草攻撃を続ければ彼女の〝玩具〟を共有することとなり、下手をすれば自身にヴィヴィアンの矛先が向きかねない。そんな危険な橋は渡れなかった、ということか。
《――ありがとうございます、レーネ様》
上辺だけではない心からの笑みを浮かべ、ディアナは実感を込めて礼を述べた。突然のことに理解が追いつかないらしいアルシオレーネからは、戸惑いの気配が返ってくる。
《え……えと、あの、》
《この後宮に参ってから、我々の身に起こっていた様々な出来事には、いくつかの謎がありました。所詮は異国のことと構わずにおくことは可能ですが、謎を謎のままにしておけば、いつかそれらが牙を剥いて、我らを……わたくしの大切な仲間を傷つけたかもしれません》
《……はい、分かります》
《我々は謎の解明に向け、可能な限りの努力を続けて参りましたが、文化も社会通念も言葉も違う異国では、どうしても限界がありました。……今、レーネ様にお話を伺わなければ、きっともっと時間がかかったはずです》
《私の話が……ディアナ様のお役に立ったのでしょうか?》
《えぇ、この上ないほどに》
ディアナの言葉に嘘がないことが分かったのだろう。アルシオレーネは、安堵した様子で微笑んだ。もともと可憐な印象が強い彼女が打ち解けた笑みを浮かべる様は、蕾がふと綻ぶような愛らしさに満ちている。
(これは確かに、何年かかっても諦められないわね……)
アルシオレーネは聡明で、何よりとても素直だ。市井の生まれ育ちであるからか、上流階級あるあるな〝自身の感情を騙し、隠す〟ことがない。それは生まれ持った気質だろうけれど、バルルーン家の養女となり、後宮に上がって皇帝の側室身分となってなおその気質を保っていられるのは、彼女自身がそうあろうと努力しているからで。
己の心に、世界に、いつも感じたまま素直であり続けること――人はそれを、〝誠実〟と呼ぶ。嘘のない瞳に、ありのままの好意を映して見つめられる日々は……きっと〝彼〟にとってかけがえのないものだったに違いない。
(レーネ様の心にまだ、〝彼〟と共にある未来を望む気持ちが残っているのなら――!)
諦められる、わけがない。――諦めてたまるものか。
《――ところで、レーネ様》
話を変えたことが分かるように声の調子を変えて、ディアナはアルシオレーネに語りかける。
《そちらは、花壇に撒くための水を入れる桶ですよね? 申し訳ありません、お引き留めしてしまって》
《いいえ、そのような……あの、ディアナ様。よろしければ私も、お洗濯、お手伝いさせてください》
《お気持ちはありがたいですが……もしもお手伝い頂いてる様を誰ぞに見られてしまったら、レーネ様のお立場を危うくしてしまいます。――今日は良い天気ですから、花たちはレーネ様の運ぶ水を待ち焦がれていることでしょう。わたくしは大丈夫ですから、どうぞ花壇のお世話をなさってくださいませ》
《ですが……》
《テバラン博士が精魂込めて生み出された新種のお花を、枯らすようなことがあってはなりませんもの。……そうだ、テバラン博士といえば》
何気ない雑談を装いながら、ディアナは笑顔で〝本題〟をぶつけた。
《イフターヌには、テバラン博士のような方が大勢いらっしゃるのですね。――昨日、ブラッド殿という皇都警備隊の方とお話しする機会があったのですが、彼も幼い頃、近所に住む学者先生に学問を教わっていたそうです》
――からん。
アルシオレーネの手から滑り落ちた空の水桶が、石畳にぶつかって乾いた音を立てた。桶を落とした張本人は、自分の手が空っぽになったことも、落ちた桶が足にぶつかりながら不格好に踊っていることにもまるで気づかず、くりっとした愛らしい目を驚愕に見開いて、がたがたと震えている。
《皇都、警備隊……?》
《皇帝陛下のお膝元をお守りする兵士殿でいらっしゃるだけあって、お見事な剣捌きでした。剣の腕に秀でておいでなだけでなく、身分に関係なく皇都に住む民を思い遣るお心をお持ちで……ブラッド殿のような方がいてくださる限り、イフターヌは安泰でしょうね》
《そんな……!》
テバラン家が火災に巻き込まれるまで、ブラッドは博士の助手として働いていた。アルシオレーネが知るブラッドは、軍や剣といった荒事とは無縁の人だったはずだ。
そんな彼が、皇都を守る警備隊の一員に名を連ねている。その事実が意味するところは、聡明なアルシオレーネなら手に取るように分かるだろう。名ばかりの兵士ではなく実力も伴っているとなれば尚更に、彼の真意は一つしかない。
――驚愕に震えるアルシオレーネの瞳が、隠しきれない彼への思慕に、捨てようとして捨てきれなかった願に、ゆっくりと輝き出す。確かに愛された過去だけを縁に残りの命を生きようとしていた彼女の心が今、確かに希望を抱いて〝未来〟を向いた。
《レーネ様――》
《あ……》
呼びかけに我に返ったらしいアルシオレーネは、視線が合った瞬間に瞳を伏せ、くるりと身体を反転させる。
《も、申し訳ありません、ディアナ様。私、急用を思い出しまして……本日は、これにて失礼致します》
《え、あの……!》
呼び止める隙もなく、アルシオレーネは駆け去っていった。深窓の令嬢なら全速力で走ったところでたかが知れているだろうけれど、さすが市井育ちなだけあって、なかなかの速さだ。地味とはいえ裾の長いドレスを着ている今のディアナでは、ちょっと追いつけそうにない。
アルシオレーネが落とした水桶を拾い、ディアナはずっと静かに会話の行方を見守ってくれていたカイを振り返った。視線が合ったカイは、ディアナの瞳を見た瞬間に全てを察したようで、盛大に苦笑う。
「シェイラさんと王様の時も思ったけどさ、難易度高いカップルの仲立ちするの、ひょっとしてディーの趣味だったりする?」
「趣味ってわけじゃないけど、お互いの気持ちは重なっているのに、身分だとか社会通念だとか、そんな移りゆくモノに阻まれて手を取り合えないなんて虚しいじゃない」
「人の気持ちだって、案外移ろうものだと思うけど?」
「どちらも移りゆくものなら、〝今〟重なってる気持ちを優先させた方が建設的でしょ。それに、移ろうかどうかは人によるわ。レーネ様の気持ちも、ブラッド殿の気持ちも、そんな簡単に変わるとは思えない」
「……ま、確かに堅くて重い感じではあるよね。それの良し悪しは置いといて」
ゆっくりと息を吐いたカイは、おもむろに立ち上がると、静かにディアナへと近づいた。
「――ま、しょうがないよね。ここまで条件が綺麗に揃っちゃ、ディーが首突っ込まずにいられるワケないし。今回は突破口がはっきりしてる分、シェイラさんと王様よりはまだマシと思うしかないか」
「……ありがとう、カイ。――ごめんね、いつもワガママを自重できなくて」
「謝ることないよ。〝それ〟がディーだもん。むしろ、ここで見て見ぬフリしようとする方が、無理してるんじゃないかって心配になる」
こちらを見つめる、カイの瞳はとても優しい。星を散りばめたような、この紫紺の瞳に見つめられるたび、ディアナの胸はいっぱいになって……近頃は何故か、泣きたいくらい切なくなるのだ。
その理由はきっと、振り返れば驚くほど近くにあって――けれど、ディアナの中の〝何か〟が、怒りにも似た強い決意で、振り返ることを禁じてもいた。
(気付いちゃ、いけない。――開けては、いけない)
〝あの日〟封じたこの〝箱〟を――決して開けてはいけないのだ。
開けてしまったら最後、〝今〟には永遠に戻れなくなるから。
「……本当に、ありがとう」
だからただ、微笑みだけを返して……ディアナは、波立つ心を落ち着ける。
「――さ、早いところ洗濯を終わらせて、部屋へ戻らないとね。レーネ様のことを皆に話して、どうすればブラッド殿と手を取り合えるのか、具体策を考えましょう」
「りょーかい」
大丈夫。何もなければまだ、このままで居られるのだから。
――何も、なければ。
活動報告に書くほどのことでもないのでこちらでお知らせしますが、今週の土曜日(9/19)から来週火曜日(9/22)までの4連休、悪役令嬢後宮物語本編を毎日更新致します。時間はいつも通り、朝9時を予定しております。(話数的に年越ししちゃうなら、更新頻度を上げれば良いじゃない――という短絡的思考だと突っ込んではいけません)
皆様のシルバーウィークのお楽しみに、そっと加えて頂ければ光栄です。




