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悪役令嬢後宮物語  作者: 涼風
いちねんめ
120/243

議会、名もなき花の追及

皆様が待ちに待った(?)、シェイラのターンですよー!

クリスマス更新をご覧になってない方は、一話前からどうぞ!


「ま……まだだ!」


 マグノム夫人の支配は、長くは続かない。証人席でメルセス侯爵が、赤黒い顔をして叫ぶ。


「オレグに、ライノに、ベルに、紅薔薇と繋がりがなくとも。オレグに指示を出していた『何者か』が、紅薔薇と繋がっていないと、証明できたわけではない!」

「ほぅ。件の『赤銀の髪』の男と紅薔薇様に繋がりがあった可能性を、メルセス候は指摘されるわけですか?」


 ストレシア侯爵が、面白そうに切り返す。


「そう慌てずとも、そこのハイゼット家の嫡男殿が、その人物について調べてくださるそうだ。紅薔薇様の断罪はこの程度にして、明らかな規律違反を重ねたそなたらについての審議に移った方が、時間の使い方としては有効に思えるが」

「な……いくらストレシア侯といえど、無礼な!」

「少なくとも、そなたが陛下と宰相閣下の了承印もない『処刑嘆願』を、ろくな審理もないままに受理した事実は変わるまい?」

「王国の『悪』、クレスターの娘を断罪するのに、審理など必要ない!!」


 追い詰められたメルセス侯爵は、もはや、建前を取り繕う余裕も無くしている。ハーライ侯爵がそれに乗っかった。


「そうとも! そこの小娘がどれほど悪名高く、多くの者たちを弄んで不幸にしてきたか、ここにお集まりの方々はよくご存知のはず!」

「明らかな『悪』相手にも、丁寧に審理を尽くしてきたこれまでが、そもそも間違いだったのだ。なまじ頭の切れるそ奴らは、こうしてこちらが隙を見せれば、屁理屈を駆使して反撃してくる。そして、自分たちにとって邪魔な正しい者を、逆に破滅へと追い込むのだ。それを防ぐため、反撃させぬよう、迅速に事を進めようとした我らは、間違ってはいない!」


 ぶわり、と。無言のまま、議会の方々から、怒気が爆発した。

 王の席に座る、ジュークを筆頭に。宰相ヴォルツ、後宮組のみならず、議会席に座る貴族たちも、かなりの数が怒りを露わにしている。

 デュアリスが壁際で、盛大なため息をついた。


「オマエら基準の正誤は、この際どうでもいいが。少なくとも王国の法基準では誤りだから、今問題になってるんだろ」

「黙れ! 『悪』の元締めの分際で、屁理屈を!」

「控えよ、メルセス候!」

「いいえ、閣下、陛下。騙されてはなりません。こ奴らこそが、王国を蝕む元凶なのです!!」


 メルセス侯爵の言いたいことを要約すれば、「そもそも『紅薔薇』は悪人なのだから、処刑は正しい結論であって、そこに至るまでの過程は関係ない」になるのだろうか。……そんな理屈で人間の首が飛ばせるなら、今頃この国は生首だらけだ。ディアナが考える筋合いではないが、ここまで法を軽視する男がよく調停局の局長補佐にまでなることができたなと、一周回って感心してしまう。


 唾を飛ばして喚くメルセス侯爵を前に、後宮組の雰囲気が、三段飛ばしでどんどん、どんどん怖くなる。どれほどの修羅場でも、これまで微笑みを絶やさなかったライアからすら笑顔が消えて、ディアナはぞぞぞと背筋が寒くなった。


「……よくもまぁ、知りもしないで、勝手なことを」

「素直に罪をお認めになれば、もう少し楽な終焉も選べたでしょうに」

「それとも、ここまで来たらもういっそ跡形も残らないほどに、消え去りたいということでしょうか?」


 ライア、ヨランダ、レティシアが、ここまで平坦な声で話す様を、ディアナは初めて目の当たりにした。『花』の名を冠する側室たちが、一様に臨界突破して激怒しているその姿は、メルセス侯爵が彼女たちの逆鱗に触れたと知らしめるには充分だ。


「皆様、お忘れではありませんか?」

「後宮からの証言者は、まだ終わりではありませんよ」


 ライアとヨランダが、注目を集め。レティシアが促すその先には。


「あくまでも、あなた様方は。ディアナ様に罪を被せることを、おやめにならないのですね」


 悲しそうな、けれども芯の通った声で話す、シェイラがいた。

 促されるままに進み出て、シェイラは議会に向かって、口を開く。


「後宮の調査で、ディアナ様が私の誘拐を企てた『主犯』だという訴えは誤りだと、明かされたかと思います。ですが、今証言台に立っていらっしゃる方々は、いずれも納得してくださらない。……蛇足とはなりますが、私からも証言させてくださいませ」

「被害者であるそなたの話が、蛇足であろうはずはない。詳しく話してくれ」


 促すユーストル侯爵に、膝を折って謝意を示し、シェイラは大きく息を吸い込んだ。


「私が後宮より連れ出されたのは、『星見の宴』が終わり、皆様が寝静まられた頃のことにございました。そこにおりますベルにより、言葉巧みに部屋より連れ出され、後宮の中でもほとんど人通りがない場所へと誘導されたのです。おかしいと気がついて、部屋に戻ろうとしたときは、もう手遅れでした。……妙な臭いのする布で鼻と口を覆われて、意識が遠のいてしまったのです」


 人間の意識を即座に奪う、吸入接種系の薬でも使われたのだろうか。そういった強い薬は副作用や後遺症が命に関わるものも多いので、資格がある者しか使えない決まりにはなっているが、ライノとオレグが実行犯たちの背後にいるなら、入手することも可能だ。

 その薬が使われたシェイラ本人も心配ではあるが。カイが救い出してくれ、王都まで送り届け、クリスとも顔合わせしたのなら、何か重大な問題があれば伝えているはずである。シェイラがここに、見た感じぴんぴんして立っているのを見ても、薬はシェイラを必要以上には苦しめなかったようだ。

 ディアナが個人的に心配しているその下で、シェイラの話は続いている。


「意識が戻ったとき、私は、どこかの森の中にある廃小屋のようなところに、転がされておりました。幸い無力な小娘と思われたようで、拘束されることもなく。――そして小屋の中には、私を攫ったと思われる、六人の男性がいたのです」


 誘拐犯の数は、エドワードが下町の酒場で調べてくれた分とも、ユーノス騎士の部下が記していた記録とも一致する。誘拐犯の人数云々の話がされていたのは、後宮組が議会に乗り込んでくる前だから、シェイラがクレスター家と証言の内容を合わせたと邪推する者はいないだろう。……実際のところ、今の議会の展開が、どこからどこまで打ち合わせされたものなのか、ディアナもはっきりと読み切ることができない。後宮組がやってきた辺りから、ディアナをして想定外の連続なのだ。


「誘拐犯たちは、私が目を覚ましたことに気がつかないまま、話し続けておりました。状況がよく分からなかった私は、しばらく眠ったフリをして、彼らの会話に耳を傾けたのです」

「それはまた、なかなかに度胸のあることを」

「どう動くにせよ、何も知らないままでは自殺行為に違いありませんから。……そして、彼らが、私を後宮から連れ出し、夜を待って殺そうとしていることを知りました」


 そんな計画を知って、さぞ恐ろしかったはずなのに、シェイラから恐怖は感じられない。話す言葉はしっかりしていて、声にも震えは見られなかった。

 シェイラはぎゅっと、胸の前で手を組む。


「己を殺そうと企んでいる男たちを前に、恐ろしくなかったと申せば嘘になります。ですが……話を聞いているうちに、私は疑問に思ったのです。六人の男のうち、五人は私を今すぐ殺したいようでしたのに、残りの一人が反対し、計画を修正していた。よくよく聞けば、彼らが私を攫ったのは、とある人物に雇われたからのようで、その者は私を『いつ』殺すかなど、指示していなかったそうなのです。にもかかわらず、その一人の判断で、彼らは王都を抜けてもなお馬車を走らせ、この廃小屋に潜伏し、夜を待って殺害しようとしている。同じように金で雇われただけの誘拐犯にしては、その男は不自然でした」


 シェイラは、その境遇から侮られて無意味に蔑まれることも多いが、二年前までは国でも五本の指に入る貿易商、カレルド商会の跡継ぎとして、高度な教育を受けてきた娘だ。カレルド商会はもともと、異国の珍しい品々をエルグランド王国に広め、同時にエルグランド独自の文化を他国に紹介し、文化、経済両面での『架け橋』となった功績が認められて、貴族位を与えられた。そこの跡継ぎ娘が、外面磨きだけに終始していたわけもなく。実のところシェイラは、本人無自覚ながら非常に論理的な思考の持ち主で、違和感の正体や矛盾を見抜く洞察力に優れている。


(シェイラがその気になって考えたらたぶん、『ディー』の正体なんてあっさり見抜かれたと思うのよね……)


 もちろんディアナとて、シェイラがびっくりするほど頭の良い少女だと、知り合ってそう経たないうちに分かっていた。だから敢えて、『ディー』の設定について細かいことを決めなかったのだ。下手に設定を組み上げて矛盾を突かれたら、なんだか藪蛇になりそうな予感がしたから。ひたすら、ただひたすらに、「顔を見られてシェイラに怖がられるのは嫌だ」で押し通した。……そうやって誤魔化し続けたことが良かったのかどうか、こうなっては分からないけれど。


 ただの誘拐の被害者、毒にも薬にもならないと思われていた『寵姫』から出てくる『誘拐犯』たちの内実に、驚きを隠せない議会がざわめいている。聴衆たちを負かすかのように、シェイラは声を張り上げた。


「男たちの様子を窺ううちに、その不自然な男が、たった一人で見張りをする時間帯がやってきました。私が眠っていると油断した男は、誰も聞く者がいない小屋の中で、本音を漏らしたのです。『『侯爵』の指示もなしに、殺したらまずい』と」


 どよめきが起こり、皆の視線が証言台に立つ『侯爵』――ハーライ侯爵とメルセス侯爵両名に向いた。

 明らかな疑いの眼差しに刺された二人は、高速で首を横に振る。


「違う――違う! 私たちではない!」

「ど……どうせそこの娘が、誘拐された恐怖の中で、『伯爵』を『侯爵』と聞き違えたのだろう」

「つ、つまり! これは『紅薔薇』個人の罪ではなく、クレスター家ぐるみの、」

「――ほぉ?」


 鉄をも溶かすマグマを瞬間的に岩にするほど凍え切っているのに、『楽しそう』ですらある声など、普通に生きていて耳にできるものではない。

 壁際のデュアリスが発した、たった一言の相槌に、議会の空気が一瞬で凍らされた。


「で? カレルド嬢の誘拐が、俺たちぐるみだったら何だ? 処刑(ギロチン)嘆願に、俺の名前を加えるか?」

「言っておきますけど。今回のアンタたちが、『クレスター伯爵令嬢』としての『ディアナ』ではなく、側室筆頭『紅薔薇』を主に標的にしたようだったから、私たちはまだ平和的に、こうして対処してるんですよ。ここで『クレスター』に的を切り換えるつもりなら、こちらもそのつもりで、『クレスター』全体への攻撃の意思表示とみなして動きます。奇しくもストレシア嬢が仰ったように、組織の頂点への侮辱は組織全体への侮辱ですから」

「と、いうか。俺たちが『悪』だから、それに連なるディアナの首も理由なしにはねて良い、っていう無茶苦茶な暴言を、敢えて見逃してやったのがまだ分からんのか。忘れているようだから言っておくが、我ら『クレスター』は此度の件の収拾について、陛下から全面的に任されてるんだぞ。その我らを侮辱することは、そのまま陛下への不敬だって、理解した上での発言なんだろうな?」


 ハーライ侯爵とメルセス侯爵が、青ざめたまま、国王席のジュークを仰ぎ見た。

 彼らの視線を受けたジュークはといえば。


「不敬云々を持ち出すのであれば、そもそも、側室筆頭であり貴族位にある紅薔薇を、私の了承なく処刑しようとした時点で既に、王権を軽んじる不敬行為だったのではないか?」


 相も変わらず、『何を今更』な風情でさらりと返す。王の怒りを受けたと、二人の侯爵はさらに顔色を悪くしているが、それこそ今更だ。


「へ、陛下! 誤解にございます。我らは決して、誘拐の実行犯などという下賤の輩と、繋がってはおりません!」

「陛下を軽んじるつもりも、もとより! 陛下の御名を頂かぬまま、処刑を行うはずもございませんでしょう!」

「……言い訳はもう、聞き飽きた。そなたらがどのように弁明しようと、国の法に則ることなく、国の名を使って、私情により紅薔薇を殺害しようとしたことは変わらぬ」

「違います!!」


 ハーライ侯爵が証言台から転がり降りて、ジュークの真下で膝をつく。


「陛下。ハーライの名と、我が良心に誓って申し上げます。確かに私は、『紅薔薇派』に属する側室の侍女が、外部の協力者と共に、シェイラ・カレルド嬢を誘拐しようとしていると事前に知りつつ、王国に仇なす『紅薔薇』捕縛のため、尊い犠牲と敢えてその罪を見逃しました。ユーノス騎士も、国を憂えるがこそ、誘拐の現場を見届け、捕縛を引き受けてくれたのです。――ですが、我らは決して! そこの三人とも、実行犯の六人とも、繋がってはおりません!!」

「左様です、陛下! カレルド嬢の誘拐を見届けただけで、私がそんな、下賤の者共と同列に思われるのは心外にございます!」


 ハーライ侯爵に続き、ユーノス騎士も彼の隣に膝をついて、切々と言い募る。ジュークはじっと、彼らを眺める。


「要するに、ハーライ。そなた、誘拐計画を事前に知りつつ、それを見逃したことは、認めるのだな?」

「それもこれも、王国の毒となる『紅薔薇』を、確実に捕らえんがため!」

「――認めるのだな?」


『お前の身勝手な動機は聞いていない』という、ジュークの押し殺した怒りが聞こえてくるかのような問い掛けに、ハーライ侯爵は青ざめたまま、ぎくしゃくと頷いた。

 一人証言台に残されたメルセス侯爵は、ぶんぶんと大きく首を横に振る。


「話が違うぞ、ハーライ候! そなた、この誘拐は確かに『紅薔薇』が計画したことと、その証拠も揃っていると、豪語していたではないか!」

「この誘拐の主犯は『紅薔薇』だ。それは間違いない!」

「ふざけるな! 誘拐の現場をぬけぬけ見届けておきながら、そのような言い訳が通じると思うのか!」

「ユーノスは見届けただけで、手は出していない! 協力者に数えられるはずもなかろう!」

「……いや、王宮侵入ルートを確保した時点で、思いっきり手出ししてるし、協力してますけど」


 エドワードの真っ当な突っ込みに頷いてくれたのは、見守り態勢に入っている議員の皆様だけで、当の本人たちには届かなかったようだ。ひょろ長メルセス侯爵が、証言台から飛び降り、恰幅の良いハーライ侯爵の胸ぐらを掴む。……どうやら、興奮したときの、彼の癖らしい。


「そなたが! そなたが、確実に『紅薔薇』を追い落とし、破滅させることができると言ったから! 陛下も宰相も黙らせることができる、確実な悪事だと言い切ったから、私は協力したのだぞ!」

「間違ってはおらぬだろう! 側室の誘拐は、殺害は重罪だ! それを企んだのは『紅薔薇』だ! 王国法に則れば、死罪も妥当! 何が間違っている!!」

「そなたが正しいならば、何故、我らはこれほど追い込まれているのだ! 第一聞いておらぬぞ。そなた、この『誘拐』を最初から知りつつ、敢えて見逃していたのか!? そんな大切なこと、何故ここまで黙っていた!!」

「この期に及んで何を言い出すか。後宮にいる側室を、ただの侍女一人の手引きで王宮外まで連れ出せるなど、あり得ぬこと。私はただ、『紅薔薇』の罪を確かなものにするために、ユーノス騎士に命じて王宮内の警備を少し緩めたに過ぎぬ。――常識で考えれば分かることを、我らの調査書にろくに目を通しもしないまま、処刑嘆願書に署名したのはそなたの方だ!」

「貴様……! よくもそのように恥知らずなことを、」

「どっちもどっちだ、馬鹿が」


 この場の大多数の心情を、よく通るデュアリスの声が代弁した。凍える魔王声は、頭に血が昇った二人の侯爵を、一瞬で我に返らせたようだ。

 やれやれと、額を指で抑えながら、壁際からデュアリスが進み出る。


「話をまとめると。ハーライ候は、ベル、ライノ、オレグの三名による『カレルド嬢誘拐計画』を最初から知りつつ、それが実行に移されれば、確実に現『紅薔薇』を罪に問うことができると考えた。計画には素人目に見ても穴があり、それを埋めるために警備を担う王宮騎士団の小団長、ユーノスを抱き込んで、敢えて侵入経路を作ってやり、計画が実行されるのを見届け、ベルを捕らえて。最初から計画を知っていたんなら、おそらくこの『側室シェイラ・カレルド誘拐に関する調査報告書』も予め作ってあったんだろうな。で、準備万端整えてから、意気揚々と現『紅薔薇』、ディアナの捕縛に赴いたわけだ」

「わ、私はそのようなこと、知らなかった!」

「今見た感じ、それは嘘じゃなさそうだな、メルセス候。けど、それでもお前が馬鹿で、調停局局長補佐として不適格だって事実は揺らがねぇよ。悪事と知りつつ敢えて動いたなら頭の出来としては救いがあるが、今の絵に描いたような仲間割れを見る限り、お前の言動全部『本音』だろ。法の守護者としての役割も担うはずの調停局で、万一局長が暴走したらそれを食い止めなきゃならん立場のお前が、『心証黒だから証拠はいらん』なんて堂々と言ってどうするんだ」


 ドがつく正論過ぎて、こればかりは左右を越えて、誰もが深々と頷いている。メルセス侯爵ががくがくと震え、ついにはがくりと崩れ落ちた。

『敵』の一角を落とした、デュアリスは、そのままもう一人、ハーライ侯爵に狙いを定める。


「ハーライ候よ。そなた先程から、誘拐計画を『知っていた』とさも当たり前のように言っているが。そもそも、どこで知った?」

「な、は……?」

「念のため言うけど、カレルド嬢が後宮から攫われ、その主犯としてディアナが捕らえられるなんて、そなたらが『悪』扱いする我らですら、予測していなかったんだぞ。『悪の帝王』とされている我らを出し抜いた計画を、何故そなたが事前に知り、計画の穴すら見抜いて警備をいじるなんてことができたのか、その辺もうちょい詳しく聞いてみたいものだな」

「そ、それは、後宮の動きを、」

「後宮の動きはマグノム夫人だって注視していたはずだ。なんたって女官長なんだからな。――左様でしょう?」

「無論のことです。誓って申し上げますが、そのような兆候は見当たりませんでした」


 マグノム夫人に即答され、ハーライ侯爵がぐっと詰まる。

 デュアリスの言葉は、飄々としていながら切れ味鋭く、ハーライ侯爵を逃さない。


「この場合、考えられる可能性は二つだよな。一つは、ハーライ候自身が、カレルド嬢の誘拐を企んだ『主犯』であり、『紅薔薇』に罪を被せることを目論んでいた場合だ。自分が計画立案した張本人なら、そりゃ知っていて当然」

「違う! 私は断じて、そのようなことはしておらん!!」

「なら、二つ目だな。ハーライ候、そなたはどこかで、この『誘拐計画』について、聞く機会があったんだ。……それもおそらく、『現『紅薔薇』、ディアナ・クレスターが、『寵姫』の誘拐を画策している』という内容で」


 ハーライ侯爵の目が、みるみる大きく見開かれ。真冬だというのに、大量の汗が、顔中に浮かび、流れ落ちていく。

 彼の様子に、デュアリスは、大きく息を吐き出した。


「この期に及んで、そいつの名前を出さないということは。たぶんそいつは、万が一の場合そなたの処罰を止め、軽減させることができる地位にいるんだろう。絶対に名前を出さない代わりに、後ろ盾になってやるとでも言われたか? ……ハーライ候、確かそなたは、家格の割に王宮での地位はそう高くなかったよな」


 内務省副大臣補佐、という地位は、その響きほど重要ではない。内務省はその職域の広さから、副大臣の数も多く、『補佐』とは要するに彼らの使い走りに過ぎないのだ。上の方の地位であることは確かでも、侯爵位、しかもアズール内乱を生き延びた古参貴族家の当主が就くには、いささか低いという感覚が一般的だろう。現に、さっきまで仲間割れしていたメルセス侯爵はあれだけ無能なのに、調停局の局長補佐という二番手の地位にいる。

 ちなみに同じ副大臣補佐でも、仕事内容が大きく違う財務省と外務省ではそれほど低い地位とは思われないのだから、考えてみれば不公平な話だ。……ひょっとして。


「もしも、本当に現『紅薔薇』が『寵姫』の誘拐と殺害を企てたなら。それを先頭に立って暴き、裁くことは、確かにとんでもない功績になる。副大臣飛び越えて、大臣補佐になるのだって夢じゃない」

「そ、それ、は……」

「成功すれば、一足飛びに出世。上手くいかなくても、守ってくれる『誰か』がいる。だからこれほど無謀な、穴だらけの『紅薔薇主犯説』を堂々と主張できた。……そういうことか」

「べ、紅薔薇が計画したのだろう! そこの三人は、我々とは繋がりのない者たちだ。後宮の革新派をまとめる紅薔薇ならそやつらを動かせても、我々にそんなことはできん!!」

「我々、ってのは『保守派』のことか? ……大多数が既に、『一括りにすんな』って顔で睨んでるけどな」


 デュアリスの翡翠の瞳に見据えられ、議会の右側が居心地悪そうに揺れた。ほんの少し、哀れみの目で、デュアリスはハーライ侯爵を見つめる。


「賭けても良いが。お前を庇うなんて自殺行為、ここに集まった方々は誰一人、なさらないと思うぞ」

「そ、そんなはずはない!」

「むしろ、なんでそんな自信満々に、庇ってもらえると思い込んでるんだ? ここでお前を庇えば、もれなく方々から『関係者』扱いされることが分かり切っているのに、そんなお優しい自己犠牲精神を発揮する馬鹿がどこにいるんだよ。後宮を管轄する内務省の副大臣補佐でありながら、側室誘拐を『敢えて見逃した』なんて自供する輩に、庇いどころもないし」

「それは、王国のために」

「素朴な疑問なんだがな。何でカレルド嬢の誘拐を見逃すことが、『王国のため』になるんだ? 誘拐計画を知って、即座に侍女(ベル)を捕縛できる位置にユーノスの小団を配置したなら、その気になればカレルド嬢が連れ出される前に、ベルもろともに誘拐犯全員を捕縛することだってできただろ。ひょっとしたら、馬車で待機してたライノとオレグもな。そうやって実行犯全員捕らえて、カレルド嬢を救って、その上で『紅薔薇様の御ために』なスローガン的動機を聞き出したって、お前らの理屈なら、ディアナを捕縛することは可能だったんじゃないのか?」


 心の底から不思議そうなデュアリスの問いに、ハーライ侯爵と、ついでにユーノス騎士も、見事な「その発想はなかった」という顔になる。頭が痛くなったらしいデュアリスは、ついにため息をついて顔を覆った。


「……まぁ、ハーライ候の娘も側室だし、『寵姫』とか噂されたことがあるカレルド嬢が邪魔なのは確かで、『紅薔薇派』が片付けてくれるなら願ったり叶ったり、って短絡的な思考が働いたんだろうことは分かるが。『寵姫』がいなくなって、その殺害すらディアナに被せて罪を重くできるなら、なおさらお前らにとっては利点(メリット)しかねぇしな。理屈は分かるが――頼むから、もうちょい考えて動けよ。暴けば暴くほど、『馬鹿』しか言えなくなるこっちの身にもなれ」


 デュアリスとエドワードが調査し、組み立てた仮説は、『『寵姫』を誘拐し、その罪を側室筆頭『紅薔薇』に被せて、邪魔な二人をもろともに始末する、保守派による計画』だった。しかし、シェイラの証言で相手の牙城が崩れ、明らかになった真実は、『そんな難しい計画立ててません。『紅薔薇』が『寵姫』を誘拐しようとしていると聞いて、それなら『紅薔薇』捕縛できるじゃん、首切れるじゃん! と張り切りました』という、浅はかすぎるハーライ侯爵の先走り。こんなものは悪事とすら呼べない。デュアリスではなくとも頭痛がする。

 しばしの間をおいて、何とか気持ちを立て直したと思われるデュアリスが、ハーライ侯爵に悪魔の微笑みを見せた。


「――で? 短絡的思考しかできないそなたでも、さすがにここまで来れば、『トカゲの尻尾』として利用されただけだってことは飲み込めたと思うんだが。『紅薔薇による、『寵姫』誘拐計画』を囁いた奴の名前を、ここで証言する気にはならんか?」

「な……にを」

「さっきまでは、お前と、調査書に署名(サイン)した奴らと、調停局側の連中と、あぁもちろんユーノスの次男坊も、これから一生雨水啜るしかない人生に堕とすつもり満々だったんだが。ここでお前の『上』を吐くなら、たまにパンくらいはかじれるようにしてやる」

「く、クレスター伯! 私は、そのような企みは、知らなかった!」

「らしいなぁ、メルセス候。『知らなかった』で済むことでもないが。心配しなくても、お前の処分は、余罪の追及が終わってからになるだろうよ。――天に恥じることがないなら、堂々としてろ」


 この状況で堂々とできたら、逆にその神経の強さは尊敬できる。非常に効果的な『黙れ』を聞いて、ディアナはしみじみと、貴族らしい言い回しにはバリエーションが多いなと思った。

 白い顔色で案の定黙ったメルセス侯爵はともかく。デュアリスの揺さぶりに、大いに心が揺れたらしいハーライ侯爵は、何度か議会の右側に視線を泳がせて。

 ……泳がせて、しかし、口を開くことはなく、ぐっと声を詰まらせ俯いた。

 彼の様子を、注意深く見定めたデュアリスは、どうやらここで口を割らせることは不可能だと判断したようで、会話の対象をハーライ侯爵からシェイラへと切り換えた。


「割り込んで済まなかった、カレルド嬢」

「あ……いえ、とんでもございません」

「嬢の証言一つで、こいつらがここまで崩れたんだ。分かっちゃいたが、やはり当事者の証言というのは重い。この場に来てくださったこと、感謝する」

「そのような。ありがたいお言葉にございます、クレスター伯爵様。……あの、」

「ん? どうかしたか?」

「その、伯爵様がお尋ねになった、ハーライ侯爵様の『上』にいらっしゃる方ですが。――もしかしたら、分かるかもしれません」


 突如落とされた、シェイラの爆弾発言に。

 受けたデュアリスが素で目を丸くし、議会にも大きなどよめきが走った。

 ヴォルツと、その上でジュークも、大きく身を乗り出している。


「どういうことだ、カレルド嬢?」

「逃げ出す隙を窺うために、私はずっと、眠ったフリを続けていたのですが。その『侯爵』と呟いた男が一度外に出て、しばらくしてから戻ってきて、一人の間に何かを読んでいる気配を感じたのです。小さい、紙のようなものでした」

「それは、もしかして」

「えぇ。『侯爵』からの指示ではないかと、私も考えました。そこで、男が紙を隠した場所を確認して……日が暮れ、誘拐犯たちが全員、夕食のために小屋の外に出た隙に、その場所にあったものを持ち、逃げ出したのです」

「……思い切ったことをしたな」


 デュアリスの言葉に、ディアナも内心で大きく頷く。普段のシェイラからは考えられない、とんでもない行動力だ。

 シェイラは、サッシュに吊してあったらしい袋から、手のひらで包める程度の何かを取り出す。


「こちらが、その隠し場所にあった紙です」

「……私が読んでもよろしいか?」

「はい。伯爵様にお願いしたく存じます」


 シェイラの了承を受け、さらにジュークが頷いたのを確認して、デュアリスは小さく折り畳んであったらしい紙を開いて目を通す。――通して、うっすらと、笑った。


「『王は、紅薔薇処刑について、その罪を公にする必要があると、臨時の議会を召集されることとなった。時刻は、明日午前十時。ついてはその席で、紅薔薇による寵姫殺害を問いただす。予定通り夜が更けたら、シェイラ・カレルドを殺害せよ。但し、彼女の死は、誰が見ても『紅薔薇派』が仕組んだことと、思わせねばならん。具体的な工作は、お前に一任する』か。……なるほどな。確かにこれは、この誘拐がその実『紅薔薇派』以外によって為されていたと示す、決定的な証拠になる」


 呟くようなデュアリスの声が、議会の隅々にまで響き渡ったのは、それだけ周囲が静かだったからだ。

 誰もが――議員席に座る貴族の誰もが、誘拐されていた『被害者』が、こんな決定的な証拠を手に、『主犯』とされている者を救いにやって来るなんて、ちらとも想像していなかったことだろう。ディアナとて、カイがシェイラの救出を請け負ってくれたからこそ、シェイラの無事を、また会えることを信じることはできたけれど、彼女がまさかこんなものを持ち帰ってくるなんて、完全に想定の範囲外だった。この場の静寂は、それだけ集まった者たちが驚き、言葉を無くしている証だ。

 証拠の紙を、元通り丁寧に折り畳みながら、デュアリスがシェイラに、紛れもない微笑みを見せる。魔王の冷笑と名高いその笑顔こそ、デュアリスが本当に嬉しいときの表情で。


「シェイラ・カレルド嬢。側室『紅薔薇』、ディアナ・クレスターの父として、あなたに心からの敬意を表する。誘拐され、いつ殺されるかも分からない状況で、よくぞ冷静に判断し、我が娘の無実の証拠を持ち帰ってくださった」

「何を仰るのですか、伯爵様」


 その魔王の冷笑を真正面から受けて、朗らかな笑みを返すシェイラは、今この瞬間、その非凡な才を、分かる形で王国の全貴族に見せつけた。


「私は攫われたその瞬間から、これがディアナ様の計画だなどと、考えすらしませんでした。貴族として、民を守る存在として、誰よりも誇り高く。困っている者を見捨てることができない、お優しさと慈愛に溢れ。王国のため、民のため、苦しむ私たちのためにと、どれほど苦しくても、前を向き続ける。この世の理不尽を己の身一つで引き受けようとなさるほどに、『世界』と『人』を愛していらっしゃるお方が、他人の命を犠牲に権勢を得ようなどと企まれるわけがない。その証拠が目の前にあるのに、手を伸ばさないことこそ愚行です」

「シェイラ嬢……」

「申し訳ありません、伯爵様。これほどお優しく、澄んだお心をお持ちのディアナ様を手放されること、伯爵家の皆々様はさぞかし、お辛かったことと存じます。……皆様の嘆きの上にディアナ様と出逢えたことを、浅ましくも喜ぶ私を、どうかお許しくださいませ」


 ――泣くな。

 ディアナは必死に、己に言い聞かせる。


『星見の宴』で、『氷炎の薔薇姫』全開で、シェイラの膳をひっくり返して。何か言いたげなシェイラも、鼻で笑って無視をして。シェイラの『紅薔薇』への好意も、『ディー』として築き上げてきた信頼も、全部土足で踏みつけるような真似をして。……嫌われることも、「二度と声も聞きたくない」と言われることも、覚悟していた。

 嫌われても、怖がられても。シェイラに、生きていて欲しかったから。幸せに、笑っていて欲しかったから。

 シェイラが誘拐されたと聞いたときも。ただ、彼女が生きてさえいてくれたら、それだけで良いと思っていた。そんな我が儘のためにカイを振り回して、「それで良い」と言ってくれる彼に甘えて。


 そうして、帰ってきてくれたシェイラは。疲れているだろうに、義務でもないのに、ディアナの無実を示す証拠を、この場に自ら運んでくれて。「信じている」と、「出逢えて嬉しい」と、最初から今まで変わることのない気持ちを伝えてくれる。

 喪うことを覚悟して。けれど今、ディアナは真実実感する。


(ひとは、生きる限り。本当の意味で、何も喪ったりしない。出逢いも、別れも、通じ合ったことも、分かり合えなかったことも。全部全部、手に入れながら、私たちは生きていくんだ――)


 シェイラに嫌われたかもしれないと、あのとき感じた胸の痛みも。

 それが杞憂だったと知って、泣きたくなるほどの喜びに震える、今この瞬間も。

 これほどにかけがえのない、『ディアナ』を彩る一部になる。


 じっと、発する言葉も見つからず、シェイラと、彼女と向き合うデュアリスを眺めるディアナ。そんな彼女の視線を感じたらしいデュアリスがふと振り向いて、優しく『父』の顔で笑う。


「ありがとう、シェイラ嬢。ディアナを後宮に送ってから、正直私たちも、これで良かったのかと迷うことの連続だった。……だが、今の娘の顔を見れば分かる。あなたや、そちらにおいでの方々と出逢うことができた後宮は、ディアナにとって必要なものだった。――ディアナを引き留めなかったことは、間違いではなかったと」

「クレスター、伯爵さま……」

「ディアナと仲良くしてくれて、好きになってくれて、本当にありがとう。親馬鹿かもしれないけれど、お礼を言わせて欲しい」

「そんな、そのような」


 ぶんぶんと、大きく首を横に振って、泣きながらシェイラは笑った。


「伯爵様は本当に、ディアナ様にそっくりでいらっしゃいます」

「ほぅ。そうかな?」

「はい。言いたいことを、したいことを、いつも先にしてしまわれる。ディアナ様に出逢えた幸運に、それを生み出してくださった伯爵様に、私こそお礼を申し上げねばなりませんのに」

「こんな美しくも愛らしいお嬢さんからのお礼なら、喜んで受けたいところだが。できればそれは、またの機会にしよう。――エドワード」

「はい、父上」

「ハイゼットと協力して、この紙の筆跡鑑定を。……これで『侯爵』が分かれば良いが」

「そうですね。必ずしも『侯爵』本人が書いた紙とは限らないわけですから」


 親子二人の懸念はもっともで、シェイラが持ち帰ってくれた紙は、『紅薔薇派』が実質この件の黒幕でないことは示してくれても、『侯爵』の正体を探るには弱い。

 悩む二人におずおずと、再びシェイラが声を掛ける。


「あの、伯爵様。……こちらを」

「シェイラ嬢? ――これは、」


 絶句したデュアリスに一つ頷いて、シェイラは議会に集まった人々にもよく見えるよう、『それ』を頭上に高く掲げた。


「こちらは、その『指示』の紙と同じところにあったものです。私を王都まで送ってくださった『旅人』の方は、王国全土を巡っていらっしゃるからか、『これ』についても、知識をお持ちでした」


 言いながら、シェイラが高く掲げたもの。それは――。


(鈴……? に、見えるけど)


 シェイラの指で摘まめるほどの大きさしかない、小さな鈴だった。遠くから見たディアナにはそれくらいしか分からないが、デュアリスが言葉を失う『それ』がただの鈴でないことは明らかである。


「こちらの鈴は、普段は柔らかい布にくるんで、音が出ないように持ち歩きます。何故なら、こうして『三回』鳴らすことで――」


 議会場の、中央で。不気味なほどしんと静まった、その場所で。

 シェイラは、鈴に繋がった紐を持ち、ゆっくりと、その手を往復させる。


 リン、リン。リーン。


 三回目の音と共に、シェイラの手から、鈴は離れ。議会場の床を、ころころ転がって、止まった。

 誰かが疑問の声を上げるより先に、この場には恐ろしく不釣り合いな、『とある音』が聞こえてくる。


 バサリ、バサリ――それは、翼持つ生き物が、空を自在に飛ぶときに発する、羽の音。


 優雅な羽ばたきと共に、後宮組が現れてからずっと開かれたままだった議会場の正面扉から、艶やかな茶色の羽毛が美しい鳥が、一直線に飛び込んできた。大きさにして人間の顔ほどのその鳥は、エクス(ちょう)と呼ばれる。

 一羽のエクス鳥は、迷うことなくシェイラが転がした鈴へと辿り着き、嘴に咥えて……そこで初めて、きょろきょろ周囲を見回すと、ばさりと飛び上がった。

 鳥は、無言のまま自分を見つめる数多の目に構うことなく、大きく議会場の中を旋回して――やがてその中の一人へと、降下を始めた。


 鳥が目指すその人は、これまでの『無関係』で『傍観者』の表情を消し去って、現実が信じられない様子で、逃げることもできずにただ、椅子に貼りついている。

 彼の膝に降り、鈴をぽとりと落としたエクス鳥は、褒めてくれとでもいうかのように、一声高く、ピィ! と鳴いた。


 その人物を確認したシェイラは、その春空の瞳を、ぞっとするほど鋭く光らせて――。


「あなた様のお顔には、覚えがございます。ご側室、マーシア様のお父上、ココット侯爵様。私を誘拐し、『侯爵』からの指示を仰いでいた男が持っていたその鈴を、何故その子があなたの元へ運んだのか。――ご説明を、願えますでしょうか」


 その鈴のような声を硬質に響かせ、狙い定めた男を糾弾した。





今年の更新は、これでおしまいの予定です。

とても楽しい2015年を過ごすことができたのは、ひとえに読者の皆様がいてくださったから。心から感謝を申し上げます。


ところで、ちらっと感想欄にあった「新年特別更新は?」についてですが。

……ふふふ、今はまだ言えませんよ。気になる方はどうぞ、年末までの涼風の活動報告やTwitterに注目していてください。

ではでは!


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