表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/47

11 決着はついたはずですが?


「一体、何が……?」



 何が起きたのか目で追いきれなかったらしく、アナスタシア様は困惑した顔で副審の旗を見た。


 同じように、観客席の生徒たちもわけがわからないという顔をしている。



「うむ。さすがメリディアナ嬢、見事な破壊光線魔法と光学迷彩魔法だったな!」



 妙な沈黙を埋めるように、セオドア殿下が言葉を発した。


「え……ひ、光属性って、治癒魔法などでは……?」


「マクシーナ嬢。光属性は百年生まれてこなかったほどの希少さゆえ誤解されやすいのだが、他の属性の魔力と比べてものすごく汎用性が高いのだ」


 なぜか解説を始めるセオドア殿下。


「説明すると、メリディアナ嬢はまず、どれが『将軍』か〈透視魔法(クレアボヤンス)〉で看破。次に『影武者』五体を〈破壊者の光デストロイヤーズ・レイ〉で破壊し、そちらにマクシーナ嬢の注意が奪われた瞬間〈迷彩光(カモフラージュ・レイ)〉で皆の目を欺きながら移動して『将軍』を確保したのだ」

「そうそう。移動に〈光速移動魔法(テレポーテーション)〉も使っていたよね」

「うむ。さすが光属性の魔力、光学迷彩が上手すぎる」

「魔力感知魔法の使える俺たちでも集中してないとわからないよね。で、あとは『将軍』を破壊して『心臓』を取り出したわけだ」


 交互に解説(?)するセオドア殿下とルーク殿下。

 でも説明は合っている。

 魔法に関してはそろって学園最上位の成績を修めているだけある。

 魔法の成績は二年生()()で一番のマクシーナ様でも、実はルーク殿下の足元にも及ばないそうだ。


「なるほど、そういうことですか……失礼いたしましたわ。わたくしの不勉強でした」


 アナスタシア様も解説を聞いて納得したのか、溜息をついて、スッ……と青い旗を上げた。



「うおおおおおおお!!!!」



 沈黙を破る誰かの歓声。

 そして観客席はざわめきに満ちる。

 

「ま、まって! そんなの、何も見えなかったわ!?」


 マクシーナ様が食い下がる。


「私は認めないわ! こんなの……この女、魔法の授業を選択もしていないのに!」

「は? メリディアナは中等部在学中に一級魔導士の試験に合格してるんだよ。魔法医師の免許も持ってるし、高等部の授業レベルはとっくに越えてる。それぐらい調べなかったわけ?」

「……ル……ルーク殿下……そんなぁ……!?」


 勝手に個人情報をばらさないでくださいルーク殿下。

 

「で、でも!

 ね、ねぇ、みんな……!

 この女がどういう女か、女子のみんなは知っているわよね!?」


 呼び掛けられて、観客席の女子生徒たちの顔がひきつる。

 マクシーナ様とウィール宰相の権力は怖い。けど、王子たちを敵に回したくもない。主審アナスタシア様の顔に泥を塗るのも怖い。……そんな顔だ。


「こら! マクシーナ嬢、いい加減にしないかっ!」

「最悪。この期に及んで往生際わるっ!」

「マクシーナ・ウィール、注意します。判定を愚弄することは神聖なる決闘を汚すことです」


 セオドア殿下とルーク殿下とアナスタシア様の立て続けの苦言。

 誰にも味方になってもらえず、マクシーナ様は唇を噛む。


「……なんでよ……知らないわよっ!」


 魔杖を私に向けてブンッと振り下ろす。


「!!」


 まるで獰猛な獣のように、処刑車輪が転がり跳ねて私に襲いかかってきた。



「……〈火球(ファイアボール)〉!」



 私はとっさに手から火球魔法を放つ。

 ドガガガガガガガッ……。

 勢いを殺すべく立て続けに十数個ほど火球をぶつける。

 光と高温は相性がいいので得意な魔法の一つだ。


「ちょっ……なっ何よ、それぇっ!?」


 高温と衝撃で不格好に変形した処刑車輪は、不規則な動きで転がり、フィールドを囲む魔法防壁に衝突して倒れた。

 観客たちにも副審たちにも影響はない。

 魔法防壁がまだ残っていて良かった……!


「焦った……ちょっとマクシーナ様! 危ないじゃないですか!」


 怪我人が出なくて良かったですけど!

 我が国の歴史的文化財(処刑車輪)がボコボコになってしまいましたけど!

 そもそも大事な家宝を学校に持ってこないでください!


 再び誰かの歓声があがり、それに交じって、ネガティブなざわつきが漏れ聞こえる。


「えっ、ちょっ……負けたの……? こんなに応援動員しておいて?」

「ふだん、いばり散らしてるくせに……」

「あんなにあっさり……?」

「かっこわる……」


 アナスタシア様は険しい顔でマクシーナ様の前に立った。


「マクシーナ・ウィール」


 あくまで冷徹な、絶対零度の生徒会長の声。


「決着後にもかかわらず対戦相手に攻撃。

 危険行為と見なし、厳重処分対象として査問委員会に挙げます。

 よって、処分が決定するまでは謹慎となるでしょう」


(ま、さすがにこれは、かばいきれないか)


 決着はすでについていたし、一歩間違えば大事故だったのだから。


 ただ当のマクシーナ様は、魔杖を抱きしめるように握りしめて、放心してブツブツと何事か呟いている。

 眉をひそめたアナスタシア様が「危険なのでこの魔杖は一度生徒会で預かります」と手を伸ばす。


(終わりかな……もう、何もしてこないよね?)


 私は息をつき、火球で焦げた手袋を外そうと手元に目を落とした。


「うるさい、わよ!」

「っっ!!」


(ん? ……え!?)


 顔を上げるとマクシーナ様がアナスタシア様を魔杖で殴り飛ばしていた。

 こん棒より太く長い魔杖の打撃を腹部に食らって飛ばされたアナスタシア様が地面に落ちる。


「え……アナスタシア様!」

「おまえなんて……おまえなんて!」


 マクシーナ様が奇声をあげて私の方に向かって走ってくる。

 目が……血で染め上げたように赤く変色している。


(え、待って、これ……)


 魔力が暴風のように彼女の身体を取り巻いている。


(これ……魔力暴走!?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ