「自然と、自然風」
夕方、公園の片隅で巻きついた蔓を見上げる夫婦。
「あ、勘違いしてる」
睦美ちゃんが嬉しそうに、変わった花を見上げる。
「勘違い?」
「あれね、暗くなってから咲くお花なの」
初めて見る花は、レースみたいに白い糸を広げている。
俺は別に花の名前なんて知らないし、
店へのアプローチに植えている花も
睦美ちゃんの指示通りに手入れしているだけだ。
夕方に降ったひどい雨で、外は一度暗くなった。
花はそれを夜だと、勘違いしたらしい。
「あれ、何?」
「カラスウリ。知らない?」
「初めて見た。ヘンな形」
「誠司君に他の感想を求めるのは、間違ってる気がする」
すみませんね、情緒ってもんがなくて。
夕立前の薄曇を夜だと勘違いした間抜けな花は
蔓を一生懸命木に巻きつけている。
「あれって、植えてあるの?」
手入れしているにしてはずいぶん雑な植え込みの中だ。
「ううん、雑草になると思う。
管理してる人が贔屓して、抜かないでいるんじゃない?」
そんな粋な気遣いをする人もいるのか。
贔屓されて引き抜かれなかった雑草を、もう一度見上げる。
一生懸命咲いてるんだから、こんなのもいいよな。
「うちも花が咲く雑草ってやつ、咲かせる?」
「だめっ!コンセプトは小さいイングリッシュガーデン!」
雑草をうっとり見上げてた睦美ちゃんが
とんでもないという顔をする。
はいはい、わかりました。
昨日、カタログで花の苗取り寄せてたもんね。
植えつけるの、俺なんでしょ




