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お喋りバードは自由に生きたい  作者: Mikura
貴族の飼鳥

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24.セイリアの秘密

アロイスの秘密部屋にて、秘密のお話




 隠し部屋に入って直ぐ私は広い台の上に乗り、アロイスが椅子に座って向かい合う。この台は材料が載せられていた場所なので、ちょっと実験材料になったような気分になった。……この部屋に止まり木を入れてもらうことはできないかな。アロイスに頼んでみよう。



「……君をそこに乗せるのはなんだか……この部屋には止まり木が要るな」


「おお……」



 頼む前にアロイスがそう言ってくれた。思っていた通りの願いを叶えてくれるらしいアロイスにうんうんと頷いて同意を示しておく。同じことを考えていたなんてすごいな。とても気が合うじゃないか、などと考えている私に真面目な顔をしたアロイスが「では話してくれ」と言ったあと黙ってこちらを見るだけになったので、私はまだどれから話すべきか迷いつつ口を開いた。

 ……やっぱり、最初はさっきのテオバルトの従魔契約失敗についてだよね?



「テオバルトの件はね、とても簡単なことで……私の方が能力が高いから、従魔にできなかったんだよ」



 以前に聞いた話では、魔物より優れたところを見せつけて、勝てないと思った心の隙間に入り込むような魔術だとかそういうものだったと思う。テオバルトと私の間には越えられないステータスの壁があるので、従魔にできるはずもない。そのように説明すると、訝し気な目をしたアロイスに、何故そんなことが分かるのかと問われた。



「……私、【鑑定】持ってるんだよね」


「は?」


「【鑑定】のスキルでテオバルトを見たら、私の能力が全部テオバルトの上だったんだよ」



 口が半開きになって驚きで固まっているアロイスに、畳みかけるように黄金スライムの話もする。異常成長する黄金スライムを雛の頃に倒したことがあること。それで自分の能力値が大変なことになっているということ。アロイスのステータスも知っていること。アロイスは話を聞くうちにどんどん瞼が閉じていって、唇を親指でなぞりながらずっと何かを考えていた。

 私は緊張しつつ、話すべきだと思うことを話していく。転生のことは最後だ。まずはこの世界での私について、私もどれほど規格外なのか知りたい。



「能力値の表示は、運以外がSSで……」


「エスエス?……あぁ、SSか。君、貴族文字も知ってるんだな。どこで知ったんだか……」



 ……そういえば、モンスター屋に習った文字は五十音と数字だけだった気がする。ほんと自然にアルファベットが鑑定で出た所為で気づかなかったけど。アルファベットは貴族文字と言って、学園で習う文字らしい。アロイスにもなじみ深いものではないので直ぐには思いつかなかったようだ。



「SSか…………は?SS?」


「運だけはSだったよ」


「……………………セイリア、それは誰にも言わない方がいいな」



 能力値は基本的にG~Aで表されるもので、例外は勇者と呼ばれるような実力者がSという値を持っているくらいらしい。SSなんて恐ろしいものなんだとか。……SS~って、横にそれ以上を示すような記号が見えたことは、アロイスの精神衛生のためにも言わない方がいいのかもしれない。

 とにかく私は規格外中の規格外、チートもいいところってことが分かった。【異界の経験】と【天の贈り物】の一緒にしてはいけないようなコンボが決まってしまったのが原因だと思われる。この能力値ならテオバルトに襲撃されたとき、ベッドじゃなくて床に落ちてもきっとノーダメージだったに違いない。



「ちょっと規格外すぎて頭がついていかないな……」


「もう一つあるんだけど後にした方がいい?」


「……まだあるのか。それなら今聞く。またこんな風に驚かされるのは頭が痛くなりそうだ」



 すでに頭が痛そうな顔をしているアロイスに追い打ちをかけるようで悪いのだけど、聞くと言われたから話すことにする。

 一度深く息を吸って、吐いた。これを話すのは勇気がいる。でもアロイスに話せなかったら、私はきっともう誰にもこの秘密を話すことが出来ず、抱えて生きていくしかない。相談できる相手がいるなら、その方が絶対に気持ちが楽になると思うのだ。そしてアロイスになら、私は気兼ねなく相談できると思える。



「………アロイス、異世界って信じる?」


「君が異世界という言葉を知っていることに驚きだな……数百年に一度、異世界人が訪れることは古い書物にはいくらでも載っている。存在するとは思うが、それがどうした?」


「私、異世界で人間だった記憶があるの。死んだと思ったら鳥だったの」



 今日一番、アロイスが驚いた顔をした。ヒュッと息を飲んだ後全ての動作を、それこそ呼吸すら止めて固まること数秒。ゆっくりと目を閉じ谷より深いため息を吐いたアロイスが「……なるほど」と呟いた。

その反応に私が驚いた。疑うとか混乱するとかそういう反応ならわかる。それなのに納得されてしまって、私が混乱しそうだ。



「えっと……アロイス?もっとほら、疑うとか驚くとか…何か思わないの?突拍子もない話してる自覚あるんだよ、私」


「説明のつかないことが全部説明できるような理由だった。あまりにも魔物らしくないが、人間の常識はない。それは君が別世界の人間だからだと思えば納得出来る」



 人間の言葉を自由に操る。本を読む。人の気持ちを察する。全く聞いたことのないような音楽を歌う。普通の魔物にはあり得ない全ての出来事は、まったく違う文化で生きてきた人間の意識を持っているなら理解できると言われた。

 アロイスも私のことを魔物だと思えなくて、同じ人間と話しているような感覚に陥ることは多々あったらしい。それでも見た目はカナリーバードだし、人間の常識もないし、魔物以外に当てはまる存在がなかったとか。



「君は人間だったんだな」



 その言葉に、私はちょっとだけ泣きそうな気分になった。この目から涙は流れない。でもきゅっと胸がしまったような気がしたのだ。

 ……この姿になって、物扱いされることはあったけど……人間扱いされたのは初めてだ。



「セイリア。君はカナリーバードの見た目をした、異世界の人間なんだな」


「……そうだね。中身はそうだよ。だからこの世界のことは何も知らないの」


「そうだろうな。よし、私は君にこの世界の常識を教える。だから君は私に異世界のことを話してくれ」



 そういうアロイスの目は子供らしくキラキラと期待に輝いていて、裏がない。異世界人に会えるなんて私は幸運だ、とステータス上の運はCしかない少年が言う。

 そんなアロイスに、私は心底安堵して、そして彼となら仲良くやっていけるだろうと確信した。



「アロイス、アロイス。頭下げて」


「……?なんだ?」



 アロイスの顔が近づく。私は少し頭を伸ばして、彼の額に自分の頭をくっつけた。



「約束しよう。私はアロイスに、アロイスは私に、お互いの世界を教える。約束」


「……あぁ、約束しよう。私はセイリアに、セイリアは私に。お互いの世界を教える。それが終わるまで離れない、約束だ」



 この日ようやく、私はアロイスを信頼できる友だと思えるようになった。

 ………隠し事がないって、気が楽だ。今日はとても清々しい気分で眠れる気がする。



よし、これで二部は終わりです。次は三部になる…予定でございます。



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― 新着の感想 ―
もし領主一家が店に来ていなければ、モンスター屋とこうなっていた可能性が微レ存…?
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