第一章<25> 巨蟲強襲
色々忙しくなるこのごろ。眠気ばかりが溜まる日々。
さあ、僕の明日はどっちだ!?
《グラッツ渓谷》に突入したのは早朝五時だった。
ここは野生生物が少ない。もともと《ブザウ大森林》が近いせいもあり、生物が住みよい環境ではないのだ。
しかしながら化け物はいる。主に《地獄》から溢れ出てきたものが多い。最近のデータはおよそ一年前となるが、ディエルゴと呼ばれる巨大な化け物が棲息していたという。成人男性くらいの大きさの、節足動物のような胴を持ち、巨大な芋虫みたいな下半身を持つ、非常にアンバランスな化け物だ。おおよそこの世の生物とは思えない気持ち悪い化け物だが、こいつはすでに討伐報告が上がっている。繁殖している可能性も含め除去作業が一年前の探索時に行われているはずなので、まずいないだろう。
ユキトは自分の端末でデータを閲覧していたが、そろそろ限界が近かったので、隙間から顔を出した。流れる風景を楽しむわけでもない。単純に気持ち悪いだけだ。
というか吐いた。
渓谷に入ってから馬車がガッタガッタ揺れる。それはもうガッタガッタ揺れる。気持ち悪いことこの上ない。
一瞬、一人降りて走った方がいいんじゃないだろうかという考えもよぎるほどには参っていた。
「うぷ……くそ……気持ちわりぃ……」
まあ、今日は別に吐いても怒られない。
理由は簡単だ。
「お……おおおあぁ……頭がぁぁぁ」
「おえぇぇぇ……」
「がぁぁ……死ぬぅぅぅ……」
単純に二日酔いが多い。
しかし緊張感がなさ過ぎるのも問題だ。まあ、まともな奴もいるし大丈夫だろうが。慢心は足を掬われる原因にもなりかねない。
常時気を張れとは言わんがもう少し自覚を持つべきだろう。人様のことをどうこう言えた義理でもないんだが。壁にもたれ掛かり、「あー」とだらしのない声を上げているユキトだ。大差ない。
「――だらしないですね」
凛とした声に顔を持ち上げる。それすら億劫。勘弁してほしい。
視線は冷え切っていた。
まるで虫でも見るかのような目だ。
「……蒼樹か。なに? 飼い主からの伝言?」
「……総代を侮辱するなら斬ります」
「おお怖い。あんな唐変木のどこだいいんだか。……で、なんの用?」
「個人的な忠告です。わたくしは総代の意向に従いますが、もし貴方が凶刃を振るうならば、その時はわたくしたち《蛇竜》の全てを注ぎ込んでも貴方を誅します」
「へえ……出来るの?」
「貴方は本当に不愉快な方ですね」
「僕は蘇芳が嫌いだからね」
「わたくしも貴方は嫌いです」
「そりゃいい。じゃあとっとと離れてくれよ。僕は今気分が悪いんだから、近寄るとそれこそ斬っちゃうよ?」
蒼樹が腰の剣に手を掛けた。ユキトは肩を竦めた。
「冗談だよ」
「質の悪い冗談ですね」
「さて……と」
ユキトは身体を起こすと、蒼樹が警戒の色を濃くしたが、気にすることなく馬車の外に顔を出す。
吐いた。
「……うえ……あーダメ気持ち悪い……」
「……」
蒼樹が半眼で見下ろしていた。
「なにさ?」
「いえ……なんだか自分が馬鹿みたいで」
「……あ、そ」
「わたくしから言いたいことはそれだけですので。それでは、お大事に」
「うん」
蒼樹は颯爽と去って行った。
遠回しに馬鹿にされた気分だ。
しかし蒼樹も真面目というか愚直というか。彼女なりに釘を刺しておくつもりだったんだろうが、いささか《白い死神》という異名に先入観を抱きすぎな気がする。
顔に出さないのは立派だが、ビビりすぎだ。僕が仕向けているというのもあるんだが。面白いし。
ま、蘇芳なんかからの話を聞いていれば無理もないか。どうせ人のことを散々異常者だの殺人鬼だの歩く殺戮兵器だの言いたい放題言ってるんだろう。間違っちゃいないが、蘇芳には言われたくない。本当にムカつく野郎だ。
とはいえあの連中からどう思われようが僕には関係ないんだが。
う、とまた吐き気の波が押し寄せてきたので、手で抑えて堪える。
どうにも、今日は馬車がゲロ臭い。
とっとと森に着いてほしい。切に願った。
◆◇◆◇◆
まあ、そう上手くはいかないのが世の常だ。
「――こ、鎧殻蟲だ!」
始まりは誰とも知らない声だった。
皆が口々にヤバいだの逃げろだのと叫ぶ。やかましい。馬車の中が恐慌状態になりつつあるなか、数名が落ち着いた様子で外に向かった。ユキトもそれに続く。
新鮮な空気だ。
深呼吸をする。
「やけに落ち着いてんのなお前」
隣でシモンが苦笑いを浮かべていた。
「まあ、焦っても仕方ないしな」
「おや、珍しい。砲台型ですね」
「だっはっはっ! いいね! っつーことは子蟲もいるぜ! わんさかいるぜ!」
「やれやれ……なにが楽しいんでしょうかまったく」
ソレストは嬉しそうに笑う。実に楽しそうである。その隣で呆れたように肩を竦めるキルシュだが、その表情はやはり楽しそうだった。要するに彼らもまた戦闘狂の脳筋組だ。
キィィィィィ……という金切り声のような嫌な鳴き声が響いた。ユキトは自然体のままそれを眺める。
「来るぞ」
ズオン! という音が響き、こちら目掛けて飛来するのは巨大な土の塊だった。それはユキトの乗っていた馬車の近くに落ちて、地面に減り込み、一部は爆散した。
馬が恐怖に嘶く。
幸いにして馬も馬車も無傷だった。
砲台型と呼ばれる種類の鎧殻蟲の戦い方がこれだ。
奴らは移動をしない代わりに地面に根を張り張り付く。そして地中から土や岩などを巻き上げ体内で濃縮し丸めて、大砲のような角からそれを打ち出す。まさに生きた大砲だ。
ちなみに鎧殻蟲にしては珍しい部類で、親である砲台型鎧殻蟲は自らの食料を必要としない。必要な栄養は地中から賄っているようだ。
主に食料を必要としているのは奴らの子どもだ。鈍重な親とは異なり、子どもは捕食に特化している。巨大な蜂のような姿で、手には鉤爪を持つ。これで獲物を掴み引き裂き食らい付くわけだ。
親は砲丸で獲物を潰し、子がそれを喰らう。そして子はいずれ違う土地で根を張り親となり子のために獲物を潰す。とてもよく出来たサイクルだ。
「羽音だ」
「そろそろ来ますね」
ユキトの呟きにキルシュが答える。
同時に上空から子蟲の大群が強襲してきた。かなり多い。太陽が覆われてしまうほどには多い。
鋭利な鉤爪が獲物を求めている。獰猛な顎は獲物にしゃぶりつきたいと粘液を撒き散らしている。子蟲といえど小虫ではない。一噛みで人を殺傷出来るくらいには大きく、屈強な体躯をしている。
羽音を撒き散らし、飛び交うそれを、ユキトは刀を抜きざまに一匹真っ二つにした。体液に濡れた刀を一度空振りして、周囲を見回す。
「……シエルたちを探さないとな」
ユキトは呟くなり走る。
確か後ろの馬車に乗っていたはずだ。その周辺にいることは間違いないだろう。
子蟲を斬り殺しながら、百メートルほど後ろの馬車に向かって走ったが、すぐに速度を落とした。どうやら杞憂なようだ。
「――どォォォるァァァァァァ!」
一人阿保みたいに暴れ回っている奴がいた。
「ぬあっはっはァ! 足りねェ足りねェ!」
巨大な熊……じゃないアルグだった。
対の戟をブンブン振り回している。そのたびにザックサックと子蟲が斬り刻まれていった。アルグの足元はすでに子蟲の体液で池が出来ていた。つーかあいつ馬鹿だろ。
頬をポリポリ掻いていると、隣から子蟲が襲来したので蹴りでいなして叩き斬った。
「ん? おおユキ坊! どうした?」
「いや、大丈夫かなって」
「足りねェくらいだ! くっそー先越されたからなァ」
「親玉か?」
「Shaaaaaaaaaaaaaaa――――!」
「やかましいッ!」アルグが戟を叩きつけ、子蟲を粉砕した。「なんの話だっけ?」
「先越されたって」
「おお。《蛇竜》が行っちまった! 超はえェのあいつら」
「さいで。じゃあ他はお留守番か」
「おおよ! だからここで暴れてんだァ!」
「じゃあ頑張れよ」
「おお! --おぉうらぁぁッ!」
にっと笑うアルグに背を向け、もう一人の巨漢に近付く。
「ようサルファ」
「ユキト君か。君たちの会話は気味が悪いな」
「なんで?」
「敵を殺戮しながら普通に喋っているからだよ。他のダンジョンメイカーの立つ瀬がない」
「そういうあんたも似たようなものじゃないか」
「そうかな……っと、う……羅ァ……ッ!」
「ほれ見ろ」
「まあ、ね……確かにそうだ」
「それより、三人娘は……あそこか」
聞くより早く、その姿を捉える。
「ああ。一応近くから見ているけど、頑張ってるよ」
「……」
「不満かい?」
「いや、あんたがいるなら安心だよ。感謝してる」
「でも不満そうだ」
「……どちらかと言えば不安、なんだろうな」
「気持ちはなんとなく解るよ。でも……」
「解ってる。解ってるよ」
解っているからこそ、やる瀬ない。
だからこそ出来ることをするのだ。そう決めたんだ。
彼女たちは懸命に戦っている。彼女たちの戦うところを見るのは初めてだ。まだ拙いし荒削りなところが多いものの、なかなかいい戦い方だ。
シエルは槍だ。少々装飾気味だが、実用性はそこそこと見られるその槍で、敵を貫く。意外に肝が据わっているようで、敵を正面から突いた。身体は硬いが体内までは硬くない。口という体内への扉が開いている以上、真正面から戦うのは正解だ。
しかし惜しいかな、力が足りないため殺し切れていない。子蟲は真正面お獲物を喰らおうと前に飛び掛かろうとする。
その横合いからアニエが飛び掛かった。剣だ。音叉のように枝分かれしたような不思議な形状。意味があるのかは解らないが、その斬撃はなかなかに鋭かった。
子蟲の……というか鎧殻蟲においての弱点である間接部分。首と胴の間を切断し、子蟲は少しのたうって絶命した。
シエルが足止めをしていたからこそ、狙いが定まったわけだ。いい連携だ。Bランクくらいにはすぐに上がれるのではないだろうか。
ユキトは少し安堵に息を漏らしたが、突然アニエの背後から別の子蟲が奇襲を掛けてきた。ユキトは懐から投擲用の短剣を抜き放ち、投げ飛ばす。短剣は真っ直ぐに飛び、子蟲の左の複眼に刺さった。
ほぼ同時に子蟲の右の複眼に突き刺さる矢。どうやら投げなくてもよかったようだ。
悲鳴を上げ、地面に墜ちる子蟲。
アニエが振り向きざまに間接に剣を突き立てて仕留めた。引き抜くと、恨めしそうにこちらを睨みつけてきた。
「余計なお世話だと言っているね」
クックッと忍び笑いをするサルファ。
「解ってるよ」
「思いのほかいい連携だ」
「そうだな」
リュカの弓矢は普段の言動とは裏腹にいい腕前をしている。混戦状態で、動き回りながら撃っていることも含めれば、子蟲の眼を狙って撃ち抜くなどなかなか出来ることじゃない。
素直に称賛する。
「第二射だ、ユキト君」
サルファの声に重なるように、地鳴りのような音が響く。でかい。やけに二発目が遅いと思えばあんなでかいの作ってやがったのか。
まあ、でかさも問題だがそれよりも、
「あの弾道……直撃だな」
「早い起動修正だ。さすがだな」
「――ちょっとあんたたち!」
サルファと二人して鎧殻蟲の弾道修正に感嘆の意を表していると、アニエが慌てた様子で叫んでいた。
「どうした?」
「どうしたじゃないわよ! 早く離れないとぺしゃんこになるわよ!」
「そんなに焦るなよ。まだあの弾は上向きだ」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「じゃあどういう問題だよ?」
「ああああああもうなんかムカツクうぅぅぅ!」
首を傾げるユキトにアニエが頭を抱えた。ちょっと楽しい。
笑いを堪えていると、後ろから手が伸びてきた。両頬を挟まれ、ぐりぐりされる。理由が解っていたので甘んじていたが、あまりにしつこいのですぐに折れた。
「はなへ」
「ユッキーてば女の子いぢめちゃダメよぅ?」
「わーったわーったからはなへ」
頬が解放される。
「なんにせよナイスタイミングだユフィンリー。あれいこうか」
「むぅー」
口をすぼめて不機嫌な顔になるユフィンリー。いい年こいて阿保みたいな面だと思ったが、口には出さないでおいた。主に自分のために。
「なんだよ」
「ユフィって呼んでくれなきゃやってあげなーい」
「そうか。サルファ、頼むわ」
「ん? 構わないが」
「あぁんもうユッキーのドケチー! いいわよやるわよやってやるわよバーカバーカ!」
ホントにガキみたいな女だ。うん。
ユフィンリーはしぶしぶといった様子で背中に担いでいた長柄の斧を構える。彼女は軽々と持っているが、あの斧はアルグでも「ちょ……これはさすがにムリ振れない」と言ったくらいには重たい。
「アニエ、下がってな」
「え? え?」
意味が解らないといった様子のアニエの肩をサルファが引く。それを確認し、ユフィンリーに近寄る。まだ頬を膨らませている。いくつだあんた。
準備は出来ているようなので、ユキトは笑みをもって合図とした。
「ユフィ、行くよ」
「……ユッキーったらぁ……激ラブ!」
意味解らん。
まあ機嫌は直ったようだ。どこまで本気かは解らんが。
ユキトはユフィンリー目掛けて飛び掛かる。そしてユフィンリーは満面の笑みで斧をぶん回した。怖い。絵面的に。
斧の柄に足を掛け、飛び上がる。自分自身の跳躍にユフィンリーの膂力と斧の遠心力が加わり、一直線に空を目掛けて飛ぶ。サルファやアルグなどは「おーおー景気いいねェ」とか言って呑気に笑っていたが、唖然とした表情の奴の方が多かった。まあ、気にせず上空を目指す。
結構な高度まで昇ったようで、周囲がよく見渡せた。
鎧殻蟲の足元には三人の人影が見えた。一つは蘇芳で一つは蒼樹。もう一つは……同じ《蛇竜》のものだろう。太刀筋に見覚えがある。名前など記憶していないが、確か幹部連中では一番強い奴だったはずだ。
鎧殻蟲はあいつらに任せれば問題ないだろう。
こっちはこっちでするべきことをするだけだ。
既に折り返して落下の最中の岩の砲丸。ユフィンリーのスイングの精度もなかなかのものだ。もう目と鼻の先に見えている。
ユキトは刀を構えた。手首を捻って、身体に近付ける。
戻る力を利用し、流れるように剣を振るう。鍛えぬかれた一閃一閃が文字通り空を裂き、音を裂く。
飛燕流神速剣術《鳴動》。
どれだけ凝縮されてようが土石を固めただけの砲丸。一気に亀裂が走り、鈍く光る銀の線を引きながら、砲丸はただの土くれに戻った。
《鳴動》はもともと地を這う無数の斬撃。先代は練り上げられた殺気が衝撃波ととなってどうのこうのと説明していたが、どうでもいい。とにかく《鳴動》は大地を斬る。
大地は土だ。砲丸だって土だ。浮いてようが地上に張り付いていようが、土であるなら斬れる。
ユキトは身体が落下を始めるのを感じる。
このまま着地するのは面白くない。刀を構え直す。猛禽が餌を取る際翼を畳む姿を真似て、身体を真っ直ぐにした。空気の抵抗を減らし、急降下する。こういうことをするから先代に「お前なんぞ猛禽だ猛禽」と言われるのだろう。自嘲の笑みが零れる。
別にそれでいい。飛燕の名は継げなかったのだ。継ぐ気もなかった。
舞い踊る燕の隣で、僕は猛り狂おう。
今も昔も、それだけが僕の存在証明だ。
「――飛燕流……《爆壊》」
原理は《鳴動》と同じ。
ただ《爆壊》はその斬撃を一点に集中させる。
それは斬撃を超え爆撃。斬るのではなく破壊するのだ。
ユキトの容赦ない一撃は子蟲を跡形もなく消し去った。同時に周囲の子蟲も衝撃で吹き飛ぶ。一部は身体をばっくりと削られて、そのまま絶命した。
立ち上がり、周囲を確認する。結構片付いてきたようだ。曲がりなりにもAランクのダンジョンメイカーが多いわけだし、これくらいで苦戦はしないだろう。今回はアルグやサルファといった名だたる面子が揃っているのだから尚更だ。
一息つくと、遥か向こうで金切り声が鳴り響いた。すぐに地響きと土煙があがる。どうやら向こうも決着がついたようだ。
親が絶命したことに気付いた子蟲が、散り散りに逃げはじめる。誰も追うことはしなかった。放っておけばいずれ成体となって生き物を襲うかもしれないが、それも自然の循環だ。だいたい、鎧殻蟲を駆逐するなんてことは土台無理な話なので、あれくらい放っておいて構わない。
それに今の目的はあくまで《死薔薇の園》に向かうことだ。余計な体力を使ってまで子蟲退治に勤しむような奴はいない。
周囲の安全を確認した後、刀を納める。
背後から肩をポンと叩かれて振り返った。アルグだった。
「お疲れさん。ド派手にいったなァ」
「そうでもないけど」
「アイゼンがあっちで叫んでるぜ? オレより目立ってんじゃねーって」
「ほっとけばいいだろ」
《刃の血盟》の盟主であるアイゼンは、血気盛んな男で有名だ。ああいう手合いは早死にするのが多いが、Sランクという実力が彼を生かしている。もはや生きた伝説扱いだ。《CoE》という組織はもともとそういうアイゼンファンの集まりなのだ。
「喧嘩売って来るぜ?」
「それはやだな……」
げんなりだ。
「お、戻ってきたな」
「ん……」
蘇芳が部下とともに戻ってきた。怪我はないようで残念だ。
ユキトは特に気に留めないでいたが、過敏に反応していたのはアイゼンだった。というか戻ってくるなり速攻で突っ掛かっていった。
「ヘイヘイヘイヘイ! 蘇芳サンよ狡いぜ! どうすんのこのオレの鬱憤! 欲求不満!」
「……知らん」
「あーもうヤダー! つーまーんーねーえー!」
ガキかあいつ。
戦闘狂、という意味ではアイゼンは最も重症だ。常に血が沸騰している感じ。なんで生きてるんだろう。
さしもの蘇芳も面倒臭そうにしている。いい気味だし、しばらく眺めていることにした。
睨まれた。
おおこわ。こちらに飛び火しないうちにとっとと退散しよう。
にしても、この先も大事無く行ければいいのだが。どうなることやら。
そんな一抹の不安は拭いきれずにいた。




