part23
滑り込みセーフ(アウト)
いやもうホントすいまっせんしたぁぁ!(スライディングDOGEZA)
「ほぉー、流石に夜は冷えますわね」
「そうね。厚着してきて良かったわ」
夜道、4人の女子たちが歩いている。いや、1人は男子なのだが。お察しの通り、輝たちである。
「おーい、大丈夫?」
「あんまり遅いと置いてくわよー?」
「はいはい」
「今行きますわ」
線路沿いの通りを歩く4人。街灯はちらちらとはあるが道全体を照らせる程の明るさは無く、月明かりも時折雲に隠れるため、度々周囲が真っ暗になるタイミングがある。
「そういや、なんで急にご飯食べに行こうってなったの?」
「実は、御門様とミイシャから『たまには4人で出かけてこい』と言われたのです。最近はわたくしたちだけで出かけることが少ないからと」
「あぁ、だから姫芽さんとミイシャは来なかったんだ。別に気にしなくていいのにね」
「まあ…誰かさんたちが4人纏めて死んだからじゃない?御門さんもミイシャも残された側なんだし」
「その節は皆様にご迷惑をおかけしてしまいましたわ…。今になって考えたら完全にわたくしやべーやつですわ」
昔話や雑談に花を咲かせていると、4人は踏切に差し掛かっていた。その時、踏切が鳴り始め、列車の接近を知らせてきた。
「ッ!」
輝は焦ったようにダッシュし、踏切を抜ける。他の3人は歩いて踏切を渡り、輝の異常さが分かる対比になっている。
「輝、相変わらず踏切が苦手よね」
「これでも昔よりはマシだけどね。昔は輝、顔真っ青にして逃げるみたいに抜けてたもの」
「今も過呼吸になるのは変わらないのですがね。はい、深呼吸ですわ」
エリカの介抱により落ち着きを取り戻した輝。
「ごめん、ありがとうエリカ…」
「大丈夫ですわ」
「にしても、なんで輝踏切駄目なの?」
「踏切というか、夜間に踏切を渡ってる最中に踏切が鳴るとこうなるわよね。やたら限定的というか」
「どうしてなのでしょうね?何かのトラウマなのでしょうか?」
「う〜ん…なんか、曖昧なんだよね。トラウマなんだけど、なんでトラウマなのか分かんないというか。まあ、限定的だから生活に支障はないし大丈夫でしょ」
「ならいいんだけど」
この輝の行動の原因は、前前世の死因が夜間の踏切での轢死だからなのであるが、前前世の記憶がかなり断片的にしか残っていない輝はそのことを覚えておらず、何故かトラウマであるという認識となっている。
そうこうしているうちに、列車が通過する。細く白煙を上げながら通過する蒸気機関車と、2両だけ繋がれた客車。
「あぁ、ダンジョン臨時か。大変ね、こんな時間に呼び出されるなんて」
「そうね。けど高位探索者を目指すなら避けては通れない道でもあるわ」
「そうだね。ま、前世も温泉旅行中に呼び出されたりしたし?」
「そういえばそうでしたわね。…今度、別府に行きましょうか」
「リベンジしちゃう?」
「次はちゃんとゆっくりしたいわ」
こうしてあれよあれよという間に旅行の予定が決まる輝たち。この決断の早さも輝たちのいい点なのかもしれない。
さらに歩くこと数十分。住宅街や線路からやや離れた林を歩いている4人。輝たちの自宅は市街地から少し離れた場所にあるため、こうして歩かなければならない。それでも毎日ダンジョンを歩き回っている探索者にとっては苦ではないのだが。
「?」
「ん?どしたの澪」
ふと、アヤカがとある地点で立ち止まった。それに気づいた輝が声を掛ける。
「いえ…なんか、この辺から何かを感じたのよね。正確にはこの地中辺りから、かしら」
「ん〜…僕は何も感じられないなぁ。梓はどう?なんか魔力とか感じる?」
「いや、私も特に感じることはないわね」
「わたくしは特にそのような能力はありませんので…」
「う〜ん…気の所為かしら」
「けどまあ、澪が感じるなら何かがあるのかもね。澪、最近霊とか良く視るんでしょ?」
「ええ。異形もいるし可愛い霊もいるわね」
「え、可愛い霊もいるの?どんな?」
「こう…お餅みたいにモチモチしてたり、猫獣人の子が無邪気に走り回ってたり。視えると悪いことだけじゃないって思えるわ」
「いいなー、猫獣人の幽霊ちゃん撫でたい」
「なんで?」
「ほら、実際にやると犯罪だけどさ、幽霊には戸籍もないし言っちゃ悪いけど人権も無いじゃない?だから撫で放題かなって」
「わぁおとても不純な動機」
「ふふ、あ。けど、なまじ仲良くなった子が未練無くして成仏したり、その子の身の上話を聞いてると室内でも雨が降るわね」
「うわ、それキツイかも。霊でもお別れはしたくないわね」
「いや、お別れはいつか来るでしょう…」
「遅ければ遅いほど良いじゃない?事実、今研究してる魔法であと200年は一緒にいるつもりだし」
「え、何それ知らない」
「言ってないもーん」
話が変わり、わいわいと賑やかになる4人。既に4人は記憶から消したが、アヤカが気になると言った場所は。
別の世界で、太平洋戦争の戦没者が埋められた場所であった──。
幽霊ねぇ、確かに可愛い子もいるんだよねぇ。モチモチしてる子とか。現に今抱いてる子はモチモチしてるし。
『──!』
ん?ああ、気にしないで。食べたりしないから。というか霊に食べられるって怖がられる私って…。
『…あやつ、何故当たり前のように霊と会話しておるんじゃろうな』
『さあね。まあ楽しそうだしいいんじゃないかい?お、この紅茶美味しいじゃないか』
『妾厳選の茶葉じゃからな!』
ねえお化けさん、そこで当たり前のようにお茶してる人たちどうすればいいかな?
『──?──♪』
さいで。いや、それができりゃ苦労しないのよ。
『ホントに何言ってるんじゃろな』
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