part20
ある日。迷宮省福岡支部にて──
「今回の買い取り額は51,300円になります」
「はい、ありがとうございます」
「いえいえ、お気をつけて」
ダンジョンから帰還し魔結晶の買い取りを済ませた輝たち(今回は、いや今回も『電光石火』として活動中である)。各々が感覚を取り戻しつつあり、1回の探索で手に入る収入も増えてきていた。
「さて、こっからどうしようか」
「そうね…。今日の目標の50,000円は稼いだし、帰るでもいいんじゃないかしら」
「あ、私本屋寄りたい」
「梓ってそんな本読むタイプだったっけ?最近良く本屋寄ってるみたいだけど」
「あ〜、森の中で魔法の研究してた頃…だから輝に召喚される前は本読むくらいしか娯楽無かったのよ。ネットとかスマホがある訳無かったし」
「なるほどね」
「だから別に同人誌買おうとかそういう話じゃないから。勘違いしないように」
「アッハイ」
別にそんなこと思ってないんだけどなぁ、と言いかけたが心の中に留めておく輝なのだった。
5人は本屋へと向かい、それぞれ目的の本があるコーナーへと散るのだった。
「『5分で分かるゴブリンの習性』に『詳細解説・ダンジョン等級とは』ねぇ。昔から本屋にはあんま行かなかったけど、こんな本もあったのか」
「驚きですわね。でも、もしかすると前世のわたくしたちの死後に発売されたシリーズなのかもしれませんわ」
「かもね、あれから50年経ってる訳だし。…ん?『1冊完結・1日5分するだけで君もS級探索者に』って…嘘にも程があるでしょ」
「なんですのこれ。詐欺商品ですわね」
実際、輝たちのように探索者を生業とする人間にとっては一目で嘘と分かる内容だが、探索者に憧れている探索を一度もしたことが無い者にとってはこれが嘘かどうか見抜くことは難しい場合がある。そういう悪どい商品なのだ。
「そういえば、エリカはもういいの?」
「はい、わたくしはこちらを買おうかと」
「なになに?『一夫多妻のはじめ方・あなたもレッツ少子化対策』…って、おい」
「ふふ、楽しみですわね」
「いや、何が!?」
「輝、本屋では静かに」
「あ、澪。終わったんですの?」
「ええ。ちょっとレシピ本をね。50年前と比べてどんな料理が増えてるか気になって」
「なるほど、澪らしいと言えばらしいですわね」
「僕が怒られるの?今の…」
続々と輝の元へと集まってくるアヤカたち。なぜか自分だけが怒られてしょんぼりとする輝であった。
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その後、シエラや姫芽も自分の買い物を済ませ、帰路に。その道中のこと。
「…ねえ、輝」
「うん。…付けられてるね」
「やっぱり?なんかそんな気がしたのよね」
「梓も澪も気づいてましたのね。どうしますの?」
「散開しようか。運がいい事に、この先は路地が入り組んでいるからねぇ」
「賛成。それじゃ、それぞれ撒くか追い払うかして、家に集合にしようか」
「はいよ」
「分かったわ」
「かしこまりましたわ」
5人は1つ目の交差点に差し掛かったところで全員ダッシュ。1人ずつ路地へと曲がっていき、散開していった。その間僅か数秒のことで、素人ならば誰を追いかければ良いか分からなくなり追跡を諦め、玄人ならば特定の誰かを追いかけるだろう。
今回の追手(?)は、輝をターゲットにしているようだ。輝の向かう先へとついて行く。
(僕がターゲット…理由が分からないな。そもそも、今のところ僕たちに追いかけられるような価値はないはず…あ、美咲ちゃんの厄介オタクとか?)
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「私に厄介オタクなんていないから!」
「びっくりした、どうしたんですか美咲さん」
「あ、ごめんね秋希ちゃん。なんか、にぶちん朴念仁が失礼なこと考えてたような気がして」
「は、はぁ…」
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(いや誰がにぶちん朴念仁だ!…ってあれ?なんだ今の?)
そうこうしている内に、輝は行き止まりへとたどり着いていた。普通は袋小路という状態である。…相手が普通の一般人ならば、であるが。
「フフフ…ようやく追い詰めたのにゃ」
「こんなとこまで追いかけて来て、ご苦労なことだね。そろそろ正体を現したら?」
挑発する輝の目の前には、フード付きのコートを羽織った怪しい人物が1人。
(なんかケモ耳っぽいのがフードの上からでも分かるんだよなぁ。猫系の獣人か?)
「ふっふっふ…メイドの土産に教えてやるにゃ。ワタシの正体は…これにゃ!」
バサァッとコートを脱ぎ捨てたその人物は──。
「いや、メイドの土産って、お前がメイド服着てんのかい!」
──メイド服を着た猫の少女だった。
メイドの土産…作者さんの誤変換かと思ったら、ホントにメイドだったんだねぇ。ややアホの因子を感じるねぇ。
おや?作者さんから伝言だ。
1話毎の文字数をやや減らしておりますがご了承ください…><
ふぅん。
さて、誰か暇してそうな子を呼んでみようかな?ほいっと。
『な、なんじゃ?って、作者ではないか!』
やっほー、ラムドちゃん。おしゃべりしない?
『妾はこれから飯を作ろうとしておったのじゃ。貴様の暇つぶしに付き合っておる暇などないのじゃ!』
ふーん、じゃあ胸サイズアップの話は無かったことに…
『な、それはズルいのじゃ!ええい、分かったから少しだけじゃぞ!?』
いえーい。
この後めちゃくちゃおしゃべりした。
『そういえば、なぜ妾を呼んだのじゃ?』
ん?んー、適当?あとオチ担当的な?
『なんでそれで妾が呼ばれるんじゃ!もっと暇してそうな奴もおったじゃろうがー!』
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