part18
福岡第4ダンジョン『黒潮』内──
この日、ダンジョン内には2人の少女が訪れていた。
「みんなー、やっほー!サキちゃんだよー!」
:あじまたー!
:キターーーー!
:横の美少女は誰だ
1人は美咲。どうやら配信を始めたところのようだ。
そしてもう1人。
「今日はなんと、特別ゲストがいます!さ、どうぞ!」
「は、初めまして…アキと申します」
「アキちゃんでーす!いえーい」
そう、秋希である。美咲と組むようになって探索が安定してきたこともあり、美咲の配信に映るようになったのだった。
:もしかしてこの前の子?
:かわいいー!
:デッッッッ
:エッッッッ
「みんなも可愛いって!アキちゃんよかったね〜」
「は、はい!不束者ですがよろしくお願いします」
「あはは、緊張してるね。もっとリラックスしていいんだよ」
:リラックスしすぎにも注意だけどなw
:告白された?
:されてないのでお帰りください
「さて、今回はここ『黒潮』からお送りします。ではでは、早速行ってみよ〜!」
:お〜!
:おー!
:お〜!
「お、おー!」
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「えいやっ」
「そこっ」
「うんうん、アキちゃんもだいぶ良くなったね。これならC級も近いんじゃない?」
「本当ですか!?よかった〜」
:なんで第4にって思ったらそういうことか
:アキちゃんまだここまでしか潜れないんやなぁ
:魔法職は揺れない…
:セクハラやぞ
「よーし、この調子でどんどん行こ〜!」
「おー!」
「アキちゃん、もう慣れたみたいだねぇ」
「はっ!…はじゅかしい」
:かわっ
:ン"ッッッ
:なんだこのかわいい生き物
:サキちゃんよりアキちゃんの方が人気になってて草
「むっ!そんなことないでしょ!みんなー、私も可愛いよね?」
:かわいー!
:すきー!
「ほらね?けど、正直私もアキちゃんが可愛くて仕方ない」
:どっちやねんw
:アキちゃんが可愛いのは共通認識、と
「ふぇ?」
「はー、可愛い!なでなで…」
「ちょ、サキさんここダンジョン!」
「大丈夫大丈夫、周りの安全は確認してるから!」
「そういう問題じゃなーい!」
:これがてえてえか
:百合の花が咲いています、綺麗ですね
:いいぞもっとやれ
:輝くんはいいんか?
:ほら、彼は男の娘だから…
:ち○ちんあるもん!
:消されるわアホ
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それからしばらくして。『黒潮』探索も終盤にかかろうかというところで。
「んー?…あれ、オークじゃない?」
「え?どれですか?…あ、ほんとだ」
「なんで第4に?…またイレギュラー?勘弁してよもー」
:イレギュラー遭遇系配信者さんおっすおっす
:またか…
:確かにオークが第4にいるのはおかしいわな
:そういえば、全国的にイレギュラーの発生率が増えてるっていう発表があったな
:マジか
:それやばくね?
「え、そうなの?なら、私がイレギュラーといっぱい遭遇してるのは私の運が悪い訳じゃなかったのか!」
:悔しいがそうみたい
:知らんかった
「んー、でもよく考えたらこれチャンスかも?」
「え?」
「ほら、アキちゃん前はオークに負けそうだったでしょ?今ならリベンジのチャンスじゃない?」
「そう言われれば確かに…?」
幸いなことにこのオークは普通のオークのみであり、今の秋希の実力と美咲との連携があれば余裕で倒せる相手であった。
「それじゃ、いこっか!」
「あ、ちょっと待ってー!」
:がんばえー
:アキちゃん頑張れー!
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『グゥアア…』
断末魔と共に倒れ、魔石を残し消滅するオーク。2人は無事にオークを討伐することに成功した。
「やったね、リベンジ成功よ!」
「やりました!けど、ほとんどサキさんのおかげです」
「そんなことないよ!私はオークの気をひいてただけだし、攻撃は全部アキちゃんがやってたでしょ?」
「それはそうですけど…」
「無理に1人で戦う必要はないよ。ほら、輝くんだって1人じゃ探索しないでしょ?こういうのは適材適所ってやつよ」
:輝きゅん最初1人で無双してた希ガス
:しーっ!
:なんだ輝きゅんって
:実際前回は連携してあっという間だったな
:あれはアツかった
:けどその後配信終わっちゃったんよな
:なんで終わったん?
「あ〜、えっと〜。な、なんか機材の不調で止まっちゃったみたい」
美咲は流石に「自分がメンタルブレイクしたから」とは言えず、適当にはぐらかした。
「え?その時って確かもがががが」
「いやー、機材の不調には勝てないね、うん!」
口を滑らせかける秋希を抑え、美咲は半ば無理やりにこの話題を終わらせるのだった。
そして数十分の後。
「今日はここまで!また次回お会いしましょう!あ、アキちゃん、私の後に続いて『おつサキ』って言ってもらっていいかな?」
「あ、はい。分かりました」
「それではみなさん、おつサキ〜!」
「おつサキー」
:おつサキー!
:乙
:お疲れ様でしたー
:おつサキ様〜
そこで配信は終わり、2人はダンジョンを脱出。そのまま迷宮省支部へと赴き、入手した魔結晶の換金ととある報告をしに行った。
「第4ダンジョンでオーク出現のイレギュラーですか…」
「はい。でも私とこちらの結野D級探索者が討伐しました」
「なるほど…。分かりました、報告ありがとうございます。結野探索者には特別点を付与しておきますね」
これにより、秋希の昇格が更に近づくのだった。
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一方その頃、輝たちにもイレギュラーの発生率増加の情報が届けられていた。
「全国的にイレギュラーの発生率がねぇ…」
「私たちも最近は特に多いと思っていたんですが、こうして数値に表されたのは初めてでして。先輩…失礼、輝さん方も注意して頂ければと」
「ここ10年間の推移が著しいですわね。何か心当たりはありませんの?」
「それが全く。前例がなく、応急的な対応しかできていません」
「何かの予兆とかじゃなければいいんだけど…」
「その可能性は否定できないねぇ。どう転ぶかは分からないけれども、常に最悪を考えなければならないだろうねぇ」
「僕たちの方でも対策は講じますが…万が一の際は無理を承知でお願いしたいことが」
「うん。大体は察せるよ」
異常事態の数値化・可視化により、探索者界隈、ひいては国民が混乱するであろうことを予測した迷宮省は既にある程度の対策を講じている。
しかし、それでも駄目な場合は、繁樹たちにとっては心苦しいことではあるものの、かつて第零級モンスターを討伐した経験を持つ輝たちを頼らざるを得ないのだった。
「大丈夫、僕たちもブランクはあれど、段々と感覚は取り戻せつつある。いざという時には前線に出るつもりだよ」
「私たちとしては輝さん方には今度こそ休んでほしいところですが…」
「光莉、私たちの性格分かってるでしょ?私たち、なんだかんだじっとしてられないのよ」
「梓先ぱ、あ。シエラさん…」
「梓の言う通りですわよ。それに、わたくしたちが休んで、結果駄目でしたでは元も子もないではありませんの」
「博先輩…エリカさんになってほんと変わりましたね」
「んなっ、い、今はそういう空気ではないではありませんか!?」
「くふっ、み、御神楽くんもそこはやっぱり気になるんだね」
「輝も何を笑ってるんですの!?」
てしてしと輝を殴る(本人は殴っていると思っている)エリカ。そのおかげで、緊張していた空気がある程度弛緩した。
「とりあえず、僕たちはいざとなれば対策チームに参戦することは可能だから、そこは任せておいて」
「ありがとうございます。その時が来ないと良いですが」
「それ以上はいけない。フラグになる」
「ですな。では、僕らはこれで失礼します。輝さん方も貴重なお時間を取ってしまい申し訳ない」
「いえいえ、わたくしたちにも関係のある話ですから」
そうして輝たちの家を出る繁樹と光莉。この先がどうなるものか。それを知る者は誰もいないが、それでも全員が同じ覚悟を持っていた。
(次こそは、必ず──)
それが何を表すかはそれぞれではある。だが、その焔が潰えぬ限り、日本は、世界は崩壊しないであろうことは確かだった。
いやー、なんか大変なことになってますなぁ。私はこっちにいるからダイジョブだけど、輝くんたちに何かあったら物語として成立しないもんねぇ。うーむ、どこまで介入するべきか…。
まああんまりやりすぎると本物の作者から怒られそうだし、ちょっとだけ、先っちょだけくらいにしとこ。
以上、後書きちゃんの独り言でした!(輝くんたちは私を作者本人だと思ってるよ!)
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