part17

「私と秋希さんが組む…ですか？むりむりむり！私には荷が重いですって！」

「あらそう？輝と組んだ時は上手くいったって輝言ってたわよ？」

「そ、それはぁ〜…そのぉ」

痛い所を突かれ弁明に困る美咲。

「わ、私は輝くんに教えて貰いながらだったから、つまりは輝くんが強かったからであって私1人じゃここまで来れてないっていうか。それに今回だって、もしあのまま私だけだったら2人とも死んじゃってたし…」

「う〜ん、これは重症ね…」

「え？」

現在の美咲は、「輝の隣に立てる程強くなれていない」という焦燥感と今回の失敗(偶然による不運だが本人は失敗だと思い込んでいる)により、自己肯定感が大きく下がった状態となっている。

「美咲ちゃん、あなたがここまで来たのは全部輝のおかげだと思ってる？」

「は、はい…」

「本当かしら？輝と組んでいない時も、あなたは自力で成長していないと言うの？」

「う、それは…」

「あえて厳しいことを言うけれど、あなたの頑張りを否定することは、あなた自身への裏切りよ？自分の実力を正しく理解するって、そういう意味でも大切なの」

そんな美咲に対し、お説教を始めるアヤカ。探索者として持つべき心構えとしては基礎的なものだが、今の美咲はある意味で自分の実力を理解していないので、アヤカ直々に指導が入ったのだった。

「輝と出会って実力が上がったのは間違いないわ。昔の私もそうだったから。でも、輝から教えて貰って、それを自分なりにアレンジしたりしたでしょ？」

「まあ、確かにこうした方がいいかもってなったりは…」

「ね？あなたも分かってきたでしょう？」

「そっか、私って結構いいとこいってたんだ」

「そう。でも調子に乗ったら身を滅ぼすわよ」

「アッハイ」

「さて、美咲ちゃんも自分の実力分かってくれたことだし、秋希ちゃんとのコンビお願いね」

「はい、任せて下さい！」

即落ち二コマレベルで調子に乗り始める美咲。

「さすが澪だね」

「そうね。昔は私もお世話になったわ」

「あー、僕もかも」

「わたくしもですわ。天性の世話焼きですわね」

アヤカのお世話したがりは、前世からのお墨付きのようだ。

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数日後──

「せいっ！秋希ちゃん、今っ！」

「は、はい！『ライトニングスピアー』！」

美咲がモンスターの注意をひき、その隙に魔法を発動する秋希。シエラに教えられたおかげで上級に近い魔法を習得した秋希は、発動の余裕さえあれば4級ダンジョン程度のモンスターは相手なし程の実力になっていた。

「うんうん、2人ともちゃんとコンビしてるね」

「思ったより調子乗ってなくて安心ね」

「秋希もしっかり魔法使えてるわね。さすが我が弟子」

「梓が調子に乗ってどうするんですの…」

「この調子なら、割と早く乙級…今はC級なんだっけ、なれそうだね」

「そうね。これなら、美咲ちゃんに任せておけば大丈夫かも」

「たまには僕も面倒見たいけどね」

「澪もそうですが、輝も大概世話焼きですわね」

「言えてる」

談笑する目の前では現在も魔法の発動が矢継ぎ早に行われており、秋希の隠れた実力が伺える。その日は結局、荷物がパンパンになるまで戦闘を続け、戻った頃には日が傾き始めていた。急いで支部へと戻り換金したところ、秋希が見たことの無い金額に驚き、さらにそのほとんどを秋希の戦力増強に使うと聞かされさらに驚いていた。

美咲・秋希と別れ帰宅する4人。

『おかえり〜』

「ただいま、ラムド。疲れた〜」

『こら、妾にもたれかかるでないわ！』

「輝〜おかえり〜」

「姫芽さん、服は着ようよ…僕たちが留守にしてたからってさ」

「いいじゃないかこのくらい。この中でオスは輝だけだし」

「そういう問題じゃない…」

「むぅ…姫芽さん、大胆な…私もあれくらいした方がいいのかしら」

「澪、早まってはいけませんわ」

『おや？エリカの嬢ちゃんもいつも言ってるじゃないか、輝をオトすにはもっと柔らかさが〜って』

「あ、アルマ様！？それは言わないようにと…あっ」

「エリカも人の事言えないみたいね〜」

『だ〜か〜ら〜、妾にもたれかかりながら喋るでないわ！早う着替えるてくるのじゃ！』

「はいはい、わかったわよ」

帰るやいなや、相変わらずの賑やかさである。しかしそれに異を唱える者はおらず、全員がこの賑やかさを心地よく思っている。

「あはは…」

『かかっ、今日もよい喧騒だの、輝殿』

「そうだね、魂切。話題がちょっとアレだけど」

『そうは言うが輝殿、そろそろ夜を共にしてやらねばならぬのではないか？主らも相当待ちあぐねておるようにも見える』

「う、でもなぁ」

『恋する乙女は逃すなというし、早いとこ手を出すべきではないかの？』

「う〜ん…」

「そこ、男同士で猥談しない！するなら私達も混ぜて！」

「やっべ、こっち来た！し、シャワー浴びてきまーす！」

「あっちょっと輝！」

「輝も早くわたくしたちに手を出してほしいですわね」

「仕方ないさ。輝はおっぱい好きだが紳士だからねぇ。限界が来たらこちらから襲えばいいだろう」

「それもそうね」

『輝の坊も愛されてるじゃないか、はっはっは』

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霞ヶ関・迷宮省本部会議室

50年前、咲久落事件当時にも使われた(内装は変わっているが)会議室にて、とある報告がなされていた。

「イレギュラーの発生件数が増加している…それは本当かね？」

「はい、各支部からの報告により、年々増加していることが判明しています。こちらは、50年前から10年刻みで発生件数をグラフ化したものです」

それは、緩やかではあるが右肩上がりのグラフとなっていた。さらに、10年前から現在にかけての推移がそれまでよりも激しくなっていた。

「この数値が本当ならば、まずいな」

「そうですね。それに1部地域なら原因の特定も出来るでしょうが、全国規模となると…」

「こればかりは対策も後手にならざるを得ない。少なくとも、根絶は出来ない可能性が高いだろう」

ダンジョンを巡る情勢は、刻一刻と変化している──。

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？？？(場所不明)

闇の中、複数の影が蠢いている。

「──コレデ、我ラノ悲願ハ達成サレル」

「ソウデスナ、閣下。別世界カラエネルギーヲ吸収シタコトニヨリ、計画ノ短縮二成功シマシタ。マモナク我ラハ地上ノ支配者トナルノデス」

「クックック…」

悪意の渦巻く場所は不明。しかしながら、それは確実に勢力を強めていることは確かである。