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part15

『輝さん、今どこにいますか!?』


その声は、息切れと焦りを孕んでおり、異常であることは明白であった。時は輝たちが『舞風』に潜る少し前まで巻きもどる。


1時間前、『舞風』にて


「皆さんはろー!サキちゃんでーす!」


:きたわね

:おっぱいだ、拝め!

:セクハラやぞ

:今日は輝くん一緒じゃないの?


「輝さんって、ここ一応私のチャンネルだからね!?」


:そういえばそうやったな

:やめとけw

:輝くん自分のチャンネルつくらないかなー


「輝さんは自分から配信はしないんだって。とと、脱線しましたけど、今日潜るのはここで〜す!じゃーん、『舞風』!なんと、ついに私も第3ダンジョン探索ができるようになりました!」


:おめでと〜!

:金を投げろ〜!

:ハイチャの嵐を巻き起こせ〜!


「みんなありがと〜!それじゃ、早速潜りま〜す!」


それからしばらくは、普段と変わらない配信が続いた。それに変化があったのは、配信開始から50分程が経過した頃だった。


「いやあぁ〜っ!」

「!みんな聞こえました!?悲鳴だったよね?」


:女の子の悲鳴だ!

:他の探索者か?

:助けに行くの?


「もちろん、助けに行きますよ!いつも輝さんに助けられてばっかりだけど、私だってできるって示してやるんだから!」


:はいフラグ建設

:あっ、ふーん

:大丈夫かな


悲鳴の聞こえた方へ向かうと、そこには少女と3匹のオークがいた。


「オークですね。3匹ということは、あれ以外には周囲にはいないようですね」


オークは基本的に3匹の群れを成して行動する。その特性から、オークが4匹以上視界にいる時はオークの巣がある可能性を考えよというのが探索者の基本である。


「今助けます!」


:負けて配信じゃ流せないようなコトされないようにね

:気をつけて!

:女の子もムッチムチやな


「せいやっ!」

『グオォッ!?』


速度を活かした奇襲を仕掛ける美咲。この戦法は輝に教わったもので、今では完全にモノにしている。


「まだまだぁっ!」


そのままリードを許さず、あっという間にオークを切り伏せた美咲は落ちている黄色の魔石を拾い、少女に話しかける。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい!ありがとうございました!」

「お礼は後で。立てますか?」

「多分…あれ?んしょ…あれ?」

「どうしたの?」

「こ、腰が抜けちゃったみたいで…」

「そう。なら少しじっとしてて。よいしょ」

「わわっ!」


美咲は少女をお姫様抱っこして移動を開始した。


:てえてえなあ

:百合の花を検知!

:サキちゃんのおっぱいと女の子のふとももの隙間に挟まりてぇ

:はいセクハラ


「よいしょ、ここなら大丈夫かな?」

「ありがとうございます。もう少しすれば多分大丈夫です」

「なら良かった。それじゃあ、私はここで。気をつけてね?」

「はい、ありがとうござ──」


その時、美咲の探索者としての勘が咄嗟に動いた。


「危ないっ!」

『グルァァァ!』


「なっ、バジリスク!?もっと下にしか出ないんじゃ!?」


:なんだろうこの既視感

:少し前にもこんなこと聞いた気がする


「逃げなきゃ。今の私じゃ勝てない」

「も、もう動けます。逃げましょう!」

「ええ!」


あれから美咲は学んだ。自分の知らないモンスターには無闇に手を出さないと。そして自分よりも強いモンスターが直感的に分かるようになった。


「はぁ、はぁ、しつこい!」


:サキちゃん逃げて超逃げて

:またこのパターンかよ!?

:誰か〜!輝くん〜!


「くっ、こうなったら!」


そう言って美咲が取り出したのは、連絡機。


「輝さん、今どこにいますか!?」


────────────

「今は『舞風』にいるけど」

『本当ですか!?あの、助けてください!』

「わかった。どこにいる?」

『6層です!』

「わかった。、5分持たせて!」

『わ、分かりました!』


「今のは?」

「僕の知り合いから、救援要請」

「急ごう。輝の知り合いは助けないとねぇ」

「ちなみに男?女?」

「女の子」

「へぇ…で、どこまでいったの?」

「…この前、ほぼ告白みたいなことを言われた」

「!それは…」

「あんまり脅さないであげてね?」

「私たち『輝ハーレム』に加えないとね」

「ちょ、また知らない言葉なんだけど!?」

「言葉の通りよ。と、6層に着いたわね」


こいつら、こんな会話をしながら全速力で6層まで走ってきた。走ってきちゃったのである。


「あそこかな?」

「みたいね。バジリスク、ここにいるのも珍しいわね」

「本来は下層にいるんじゃ?」

「忘れたんですの?バジリスクはその特性上、餌を求めて上層に上がってくるんですのよ。でも、こんな浅い所にいるのはよくありませんわね」

「だね、繁殖が進んでる可能性がある」

「とりあえず今は美咲ちゃんを助けるのが先!」

「「「ええ!」」」


それからの行動は早かった。シエラがアヤカに支援魔法をかけ、強化されたアヤカが魂切を手に突撃。同時にエリカも片手剣を手にバジリスクを撹乱し、その間にシエラがデバフと氷魔法で動きを鈍らせる。

そして動きが鈍った隙を突き、輝が相棒の引き金を引く。

放たれた1発の銃弾はバジリスクに直撃し、頭部を爆散させた。


「いっちょあがりっと」

「私がでる幕もなかったねぇ」

「姫芽さん、残った体に3発お願い」

「ん?分かった」


同時に放たれた3発の矢がバジリスクの体に当たると、バジリスクの体がビクビクと痙攣し、消滅。大型の黄色魔結晶がドロップした。


「ありがとう、姫芽さん」

「まったく、頭が吹き飛んでも生きてるとは」

「さてと。美咲ちゃん大丈夫?」

「…ぐすっ」

「私はもう1人の子を介抱してこようかねぇ」


美咲の感情に気づいた姫芽は気を遣い、その場を離れる。


「どうしたの?」

「私っ、輝さんみたいに、人を助けられるようになりたかった。なのに、危険に晒してばっかりで、結局輝に頼っちゃって」

「うんうん、大丈夫。何があったか言ってみて?」


美咲は涙混じりにここまでの経緯を説明した。


「美咲ちゃんは頑張ったんだね。それに、1度は助けられてるじゃないか」

「でもっ、危うく2人ともっ」

「でもそうはならなかった。でしょ?」

「それはっ、輝さんが来てくれたからでっ」

「僕は、美咲ちゃんから連絡があったから来たんだよ。直ぐに僕に連絡してくれた美咲ちゃんのおかげだよ」

「うぅっ、うえーん!」

「おっとっと。よしよし」


:こっちまで泣けるわ

:輝くん、慰めのプロか

:良かったね、サキちゃん

:輝くんにならサキちゃんを任せられるな

:父親面せんでもろて


しばらく輝の胸で美咲は泣いていた。



「落ち着いた?」

「うん。ごめんなさい」

「いいのいいの。そっちはどう?」

「大丈夫、腰が抜けただけだって」


ここで、ようやく美咲は周りに気づいた。


「あの、輝くん、この人たちは?」

「彼女らは僕の仲間だよ」

「いえーい」

「え、仲間って…え?」

「まあ説明すると長く、ながーくなっちゃうから、とりあえず移動しよう。姫芽さん、そっちはどう?」

「だ、大丈夫です〜」

「だ、そうだよ。幸い、目立った傷は見当たらない。しかし、一応と思って触診させてもらったが…」

「何してんのさ」

「キミは中々いい身体してるじゃないか。彼も好きなタイプだね、このボディは」

「何言ってんだ」

「え、あの…?」

「ああ、すまない。こっちの話だ」


暴走気味な姫芽に少女がセクハラされるというアクシデントはあったものの、美咲と少女は無事に輝たちによって救出されたのだった。

なんか、既視感がすごいんだけど。


「奇遇だね、僕もだよ」


なんでこの短期間で同じ現象に2回も遭うのかな?


「…不憫?」

『不憫!?不憫がおるのか?』

「うわびっくりした」


でたわね。


『まあ冗談は置いておくとして、妾もあの不憫さは可哀想になるのう』

「だよね。なんとかならないか」


輝くんとそのお嫁さんたちの幸運で中和してあげたら?


「それってそういうこと?」


うむ。


「けどそれは美咲ちゃん本人が決めることだろ」


それはそうだけどね。物語としてはね?


「おおメタいメタい」


ちっちゃいことーは気にするな!

──────────────

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいね・コメントをいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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