part14
福岡県・福岡第3ダンジョン『秋桜』──
「せいっ!」
『グギャッ!』
「片手剣でも問題なさそうね」
「そうですわね。向こうでは基本片手剣を使っていましたし、今のわたくしにはあのハンマーは使えそうにありませんわ」
この日、輝たちはエリカの武器を調達し、探索許可が出たばかりの第3ダンジョンに潜っていた。
『だからアタシが使ってやってるんだろう?』
「アルマ様。そちらも片付いたのですね」
『ああ。正直言って拍子抜けだが、ダンジョンってのは便利だね。定期的にこうやって叩いておけば生活が危うくなることはないし、金稼ぎにもなるとは』
「そうですわね。わたくしもかつては助けられたものですわ。勿論、今もですが」
「エリカはまずサイズの合うブラを買いましょ。さっきからぶるんぶるん揺れて、輝が見たら大変なことになるわよ?」
「う、そうですわね」
他方、少し離れた場所では──。
「そいっ!」
姫芽の放った矢はスライムのコアを正確に撃ち抜き、スライムが消滅する。
「姫芽さん、腕は鈍ってないみたいだね」
「そうだねぇ。正直引退してた間はほとんど農業をしていたし、鈍っているもんだと思っていたんだが」
「以外でしたか?…っと、姫芽さん後ろ」
「ほっ」
背後から3匹のゴブリンが忍び寄ることに気づいた輝は、姫芽を守ろうと動く。しかし輝が動く前に姫芽は矢を番え、振り向きざまに3発同時に放った。その矢は悉く命中し、倒した。
「どうだい?こんなこともできるのさ」
褒めてというオーラが溢れるように見える姫芽を見て、輝はぶんぶんと揺れる耳と尻尾を幻視した。
「すごいですね、姫芽さん」
「そうだろう?だから…あ、頭を撫でてもいいんだよ」
突然そう甘えてきた姫芽の願いを断るという選択肢は輝にはなかった。
「姫芽さん可愛いですね」
「う、正直とても恥ずかしいんだが…まあ、これを言うだけで恋人からのなでなでが貰えると考えれば安いものだろう」
「ね、御門さん可愛いわよね」
突如、輝とは違う声がした。
「うひゃあっ!?」
「あ、梓。そっちはどうだった?」
「いい感じ。エリカも新しい相棒を見つけたみたいなんだけど、手がつけられなくなってきてる」
「は?」
「見て」
シエラの指さす先では、絶えず現れるゴブリン相手にエリカが無双している光景だった。
エリカという極上の母体を求め攻勢をかけ続けるゴブリン。その目的はエリカを疲弊させ連れ去ることだったが、残念ながらエリカは戦場を駆け回った経験があるため全く疲弊する様子は無く、むしろ戦えば戦うほど動きにキレが増していく状態だった。
「うわあ」
「もう私も澪もほっといた方がいいだろってなったから、もしもの時以外は見ておくだけにしたわ」
「そうだね、それがいいと思う」
「君たち…いつまで撫でれば気が済むんだい?」
「あ、ごめんなさい。御門さんが可愛くて、つい」
「梓くん…君も強かになったじゃないか」
しばらくして、ゴブリンが全滅して満足したのか、エリカとアヤカが合流した。
「おまたせ」
「ついはしゃいでしまいましたわ」
「おかえり」
「さて、これからどうしようか」
「正直ここはもう終わりでいいと思うわ。マジックボックスの容量も一杯になってきたし、1度納品しに行きましょ」
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迷宮省・福岡支部
「いらっしゃいませ」
「換金をお願いします」
「はい、では探索免許証をお願いします」
「はい、どうぞ」
「『電光石火』の皆さんですね、確認しました。では魔結晶をお願いします」
「はいよ〜」
ドシンッ!
「またこんなに取ってきたんですか…」
「てへっ」
「もう、『疾風迅雷』みたいなことするのは皆さんくらいですよ。それでは、換金しますのでお待ちください」
「は〜い」
待ち時間の間、5人は食堂で食事をすることに。
「お、おいあれって『氷の帝』じゃないか?」
「本当だ。お前声掛けてこいよ」
「嫌だよ、ただでさえ女5人で声掛けづらいのに」
「そうかぁ?あ、ほら先行かれちまったじゃんよ」
テーブルを囲む5人に擦り寄る命知らずが1人。
「御門さんじゃん。俺と一緒にお食事どうよ?」
「悪いけど、今日はこの子たちと食べることにしてるんだ。帰ってくれ」
「そんなこと言わずにさあ。あ、俺も同席していいかな?」
「帰れって言ってんだろ、短命種」
姫芽が人前で短命種と言う時は、相当怒っている証である。が、それを知る者は少ない。
「ちぇ、つれねぇなあ。じゃあそっちの子はどうよ?胸は小さいみたいだけど、俺とどうよ?」
輝を女の子だと思い込んでいる男が輝に手を伸ばそうとした瞬間──。
「私たちの旦那に手を出すな」
「な、ヒッ」
輝以外の4人から強烈な威圧、否、殺気が飛んだ。アヤカやエリカ、シエラもかつては甲級…現在でのA・S級の実力を持っていたし、現在もそれに等しいレベルの実力を持っているため、発される殺気は相当なものである。
そしてそれをモロに食らったならず者探索者はガタガタと震えだし、
「す、すいませんでした〜っ!」
と一目散に逃げてしまった。
「みんな、悪いね。気分を損ねちゃって」
と周囲へのフォローも欠かさない姫芽。
「俺、行かなくて正解だったわ」
「俺も…あの殺気食らったらちびる自信あるわ」
「小便ちびるならまだいいだろ。俺は血の気が引くぞ」
自身がC級に昇格し、天狗になっていた男たちは圧倒的な格上というものを知り、反省するのだった。
「さて、邪魔者も居なくなったことだし」
「ちょっと待って姫芽さん」
「どうしたんだい、輝」
「さっきしれっと旦那って」
「いいじゃないか、私たちはどうせキミ以外と結ばれるつもりはないんだし、ちょいと早いだけさ」
「その早さが問題なんですけどね?」
「ほら、輝も食べたまえ。せっかくのご飯が冷えてしまうじゃないか」
「話逸らしたな…」
しかしそれ以上追求する気も起きず、輝は食事に集中するのだった。
「さて、換金に呼ばれた訳だが」
「以外と長かったですね」
「おまたせしました。今回の買い取りが、合計で46,800円になります」
「はい、ありがとうこざいます」
「いえいえ、こちらこそいつも納品ありがとうございます」
「それでは失礼します」
「はい、ありがとうございました。お気を付けて」
カウンターで金銭を受け取り、退出する5人。
「以外と高く売れたわね」
「そうだね。これでエリカの下着代は支払い終わった」
「むむむ…わたくしの向こうでの財産があれば皆を煩わせることもなかったですのに」
「大丈夫よ。私たちは全員で『電光石火』なんだから」
「ありがとうございますわ…」
「さて、思ったより早く終わったおかげで時間に余裕がある訳だけど、どうする?」
「せっかくだし、もう1箇所くらい潜りましょ?私も早く魂切の感覚を取り戻したいし」
「私も合法で魔法ブッパしたい」
「分かった。それじゃ…第3の『舞風』あたりに行ってみようか」
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佐賀県第3ダンジョン『舞風』内
「シッ!」
「澪もだいぶ調子が戻ってきたみたいだね」
「そうね。ようやく魂切が私の動きに付いてくるようになったわ」
『仕方あるまい。某も主のもふもふとした耳と尾っぽを切ってしまわぬか不安だったからの』
「尻尾くらい、少し切られてもすぐ伸びるわよ」
「僕は今の艶々してもふもふした澪の尻尾が好きだなあ」
「前言撤回、切られる訳にはいかないわ」
『主も恋する乙女だのう。かっかっか』
「うるさい!」
アヤカと魂切のコンビネーションが上手く取れるようになり。
「メテオー!」
どっかのゲームキャラが言いそうな口調で魔法を唱えたシエラの前方を巨大な隕石が襲う。着弾した跡は、草も残らぬクレーターと化していた。
「相変わらずぶっ飛んだ性能だねぇ」
「普通、魔法ってこうなるものですの?」
「伊達に10年以上森で研究してないってことよ」
『妾も手伝っておったからな!』
『こればっかりはアタシでも分が悪そうだ』
「梓が敵対することはありませんから気にしたら負けだと思いますわ」
それぞれが思い思いの攻略をしている中、輝の連絡機に通信が入る。
『輝さん、今どこにいますか!?』
その声は、息切れと焦りの両方を孕んでいた。
魔結晶の買取価格は、現在の相場で赤=30万・紫=10万・青=5万・黄色=1万・白=500・透明=50(全円)となっています。
「そう考えると安いような?」
だってあなたたち黄色までしか採ってないでしょうが。青以上が出るのは第2ダンジョン以上なんだよ。
「それはそうと、わたくしの下着少しきついのですが…」
それ以外のサイズだと、ゆるゆるですぐずり落ちるサイズか小さくてふとした拍子にお乳がぶるんっ!って飛び出るサイズしかないよ?
「むぅ、仕方ありませんわね…」
「サイズ合わせて作ったら?」
「金額が大変なことになるわよ?」
「え、そうなの?」
らしいよ。私も細かくは知らん。
「作者がそれでいいのかよ」
いいんじゃね?知らんけど。まあ君たちの生活を文字に起こしてるだけだし。あ、でもなろうじゃ投稿できないようなぐちゃどろなことは書かないから安心したまえ。
「まだそんなことしてねぇ!」
「まだ?」
まだ?
「あっ」
※墓穴を掘った輝くんはこの後しっかりみんなからムシャムシャされました。
「変なナレーション入れるな〜!」
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皆様、あけましておめでとうございます。
新年から1日遅刻した〜!!(土下座)
今年もたくさんの方にお読み頂けるように邁進して参りますのでよろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいね・コメントをいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。




