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序章 女子中学生VS男子高校生

 ――都心部から外れたとある区画。その一角にある公園にて、その戦いは始まろうとしていた。


「今日こそは!」

「私達が勝ちます!」

「はぁ……そうですか」


 女子中学生二人組VS男子高校生。普通に考えても勝つのは男子高校生だと、誰しもが理解できるであろう。

 学力であろうと、身体能力であろうと。いずれもが才に秀でるような『特別』なものでない限り、女子中学生が男子高校生に何かしらで勝つことなど不可能なのは間違いない。

 しかしそれを認めようとせずに、二人の少女は諦めも悪く挑んできた。そして既に何度目のやりとりとなっているのかとあきれ果てつつも、少年は警告の意味を込めていつも同じ台詞を繰り返している。


「だから、何回挑もうが無駄だってば。俺が世間からなんて呼ばれているか知ってるのか?」


 夏休みも終盤となるこの時期、課外授業を終えた少年にとってこの遭遇は非常に面倒なものだった。一刻も帰りたいと願う少年の服装はというと、学校から離れているためカッターシャツの第一ボタンを外し、ズボンの中に入れていたシャツも外に出しきって、暑さをしのぐことを第一とした着こなしをしている。

 もしこの場に彼のクラスの風紀委員がいたのであれば、この素行の悪さは全力で注意されていただろう。そんな少年の短く切った髪の毛先は、風が吹いているわけでもないのに何故か波打つように逆立ってそよいでいる。


「そんなの関係ないです! 何回負けようが一回勝てればいいんです! そして今日という今日のために私達は研究を重ね、遂に弱点を見つけたんですから!」

「そうよ! この日のためにすっごい“魔法”を覚えてきたんだから!」

「へぇー。そりゃ楽しみだ。楽しみ楽しみ」


 ここで一つ。普通の国では、否、普通の世界では耳にしないであろう単語が少女の口から飛び出している。

 ――“魔法”。それは現実には有り得ないもの。普通の日常生活では決して耳にしないもの。

 しかし彼らの住む都市、『力帝都市』においてはそれが普通としてあり得るものだと認識されている。

 太平洋に浮かぶ人工島。地図に載らない島。公用語、日本語。総人口、約六百万人。表面上は日本国に所属しているということになっているが、事実としてはどの国にも所属しない完全に独立した一つの都市。それが力帝都市『ヴァルハラ』。

 ではそこで一体何が行われているのか。魔法という事象を是とする都市で、一体何が成されようとされているのか。


 ――答えは非常にシンプルで単純。


「それじゃここはSランクの能力者として、そして検体名『突撃チャージ』として、暇潰し(バトル)に受けて立ってやるとしますか――」


 ――『最強』を決める。たった一つ、それだけの為の闘争(バトル)が日夜繰り広げられている。

 腕力、能力、魔力、科学力、権力――何でもいい。力こそがこの都市における自分の存在の証。力こそがこの都市において唯一揺るぎ無いもの。誰しもが力を欲し、誇示し、『最強』を証明する。そのためにこの都市は存在している。


「――数多の光に仕えるものよ、その天上の火を以て我が道を照らしたまえ!」

「本当ならこんな悠長な詠唱をしている時点で決着つけられるんだけど……まあいいや。待ってみますか」


 恐らく彼女も学校帰りなのであろう、制服姿にショートヘアの少女は、魔法使いにおける“杖”と呼ばれる小枝のような棒を取り出し天に掲げ、大仰な声で魔法の詠唱を開始する。対する少年はその大きな隙に何かを仕掛けるわけでもなく、真っ向から少女の魔法を受けるつもりの様子。


「ふっふっふ、回避を諦めたようですね! その通り! いくら電荷を操れても、光速には叶いません!」


 魔法を使う少女の相方――身長はこの中では最も小さく、彼女が自ら中学二年生だと名乗り出なければ十人が十人小学生と間違える程の幼い見た目の少女は、「知力Dでも分かる! 電気系能力者の仕組み」という本を片手に自信満々に声を挙げる。

 そしてショートヘアの少女の杖がまばゆく光り出すと、少女はこれで終わりだといわんばかりに高らかに必殺のひと言を唱える。


「これでもくらえ! 天光烈火ニンバス!!」


 杖を振るえばその先から真っ直ぐに光が撃ち出され、少年の体はレーザーによって撃ち抜かれる――筈だった。


「――えっ?」

「ちょっと違うかな。確かに電子自体は動きが遅い。だけど俺は電荷を伝って擬似的な電流に乗る形なら光速に対応できるんだよ。確かに第一能力プライマリ対策にはなるかもしれないが、俺にはこの通り第二能力セカンダリがある」


 次の瞬間、少年は杖を持った少女の目と鼻の先に立っていた。そしてサッと杖を取り上げると、そのまま同じように天に掲げてニッコリと作った笑顔を浮かべてこう言った。


「……死にたくないなら、三歩後ろに下がって」


 あまりの威圧感に気圧されたのか、二人の少女はゆっくりと、まるで少しでもショックを与えれば爆発してしまうような危険物から離れるかのような足取りでもって少年から離れていく。


「……何度も言うけど、本当に俺を倒したいならこれくらいの威力を用意しておきなよ」

「っ! ひぃっ!」

「雷怖い雷怖い雷怖い……」


 二人の少女は、これから起こる事象ことを知っている。初戦では直接自分に襲い掛かってきて、二度目には顔の真横を通過していった、恐ろしい自然災害。


 晴れ渡った青空に僅かに見える雲から落ちてきたのは――


「まあ、ざっと10億ボルトくらいの電圧を超えて貰わないとね」


 ――空を割る音と共に遙か上空から来たる『それ』は、少女の杖をいとも簡単に炭へと変えていった。

 主人公久瀬陣作を中心とした現代異能力バトルもの、始まります。(・ω・´)


 この先連載をしていく上でご期待いただけたり面白いと思って頂けましたら、恐縮ですがブックマークやこの下にあります評価欄で評価をいただければ幸いです(作者の励みになります)。(・ω・´)

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