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黒い★の日常と非日常エッセイ  作者: 黒星★チーコ(黑星ちい子)


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5 カレー専門店でものすごく不味いカレーを食べた話

 こんにちは。黑星★です。


 皆さんは、飲食店で不味い料理を食べたことはありますか?


 飲食店です。コンセプトカフェなどが便宜上名乗る飲食店ではなく、料理を出すことで商売をしている、れっきとした飲食店。

 もちろん、逆説的に「不味い店!」などと看板を掲げているわけでもなく(もしそういうお店があるなら、それもひとつのコンセプト飲食店であるかもしれませんが)、日本国内の、日本人が経営する一般的な飲食店で不味い料理を提供されたことがあるか、という意味です。


 私はあります。しかも、二回も。


 私は外食に関してはコスパ重視なので、値段が安ければ多少の味の悪さは目をつぶるタイプです。

 ですので、ここで語る「不味い料理」とは、ちょっとやそっとの不味さではありません。

 正直、お金をもらっても二度と食べたくないレベルの不味さです。


 ……ですが、旨い不味いというのは、あくまでも私の主観でしかありません。

 私が二度と食べたくないと思う料理でも、世の中には本気で美味しいと感じる人もいるかも知れません。


 何が言いたいかと言うと。

 本当に不味かったとしても、ここでお店の実名や、お店を特定できる情報を載せたうえで「酷く不味かった」と書いてしまうと、もしかしたら誹謗中傷にあたるかもしれないということです。「事実を書いてるだけなのに誹謗中傷だなんて変なの!」と思う気持ちも無いわけではありませんが、その事実なるものの根拠が私の主観である以上、判断としてはグレーゾーンでしょうし、令和の今はそういう時代ですから。


 でも、大丈夫です!

 今回のエッセイは、とっても昔の、平成初期の話です。

 そして、このお話に出てくるお店はとっくの昔に潰れています。

 お店の特定もおそらくできません!

 はぁ、安心安心。と、ホッとしたところで話の続きを書きたいと思います。


 私が二度と食べたくないと思った飲食店は二箇所あります。ですが、一つは既にエッセイにしてあるのです。

 そのエッセイは

『賞味期限が三週間切れていたヨーグルトを食べてもお腹を壊さなかった私が、ある料理でお腹を壊した話』

 というお話です。


 このエッセイのなかに出てくるお店は色々と凄いのですが、このあと本作で語るカレー屋さんとは色んな意味で対極を成しているので(どっちも不味いけれどw)、両方読むと対比も相まって面白さ倍増だと思います。


 気になった方は後書きにて紹介しますので是非読んでみてくださいね!(ダイレクトマーケティング)


 ★


 さて、前置きが大変長くなり、申し訳ありませんでした。いよいよ本題です。

 二度と食べたくない飲食店、それは当時の地元にあったカレー屋さんです。


 当時、私は神奈川県の実家住まいでした。

 そしてそれほど遠くない(ギリ歩ける)場所に、ターミナル駅……というと少々大袈裟ですが複数の鉄道路線が入っている、わりと栄えた駅がありました。


 その駅から徒歩10分以内という好条件でありながら、あまり人通りの多くない、ひっそりとした場所にそのカレー屋さんはありました。


 ところで私はかなりのカレー好きです。

 10歳の頃から家のカレーを度々作っていたこともあり、家カレーの研究は長年様々な試行錯誤をしてきましたし、有名店のカレーを食べるためだけに神田や秋葉原、下北沢に足を運んだこともあります。


 日本のカレーは勿論、イギリス風やインドやネパール風カレーも好きです。札幌のスープカレーも良いですよね。

 カレースタンドのチェーン店や、海の家やスキー場のカレーも割と好きですよ。前述のように、私はコスパ重視なので、安いカレーは安いカレーの良さがあると思っています。


 そんなわけで、私は以前からそのカレー屋さんの前を通る度にずっと気になっていました。

 当時はまだSNSもなく、大手チェーン店ならともかく個人店がホームページを持っているのは当たり前では無かったように思います。食べログは……調べたら、まだサービス開始前の時代でした。

 ですから、ネット検索してもお店の情報は出てきません。


 ※(そもそも、ネット検索が今ほど便利でなかった気がします。なにせ、検索サイトといえばYahoo!の時代でしたから。Googleはまだなかったかと)


 情報がないなら、行ってみるしか無い! と思い、私はお店に入ってみることにし、木製のドアを押しました。


 こじんまりとして手作り感のある外見のお店。中の様子は伺えませんでしたが、私はドアを開けるまでは楽観視していました。

 なにせカレー専門店です。そして私はカレー大好きで、どんなカレーでも美味しく食べる自信がありましたから。


 ああ、私がタイムマシンを持っていたなら、過去に戻ってあの時の私を止めたでしょうに。

「いいか、どんなカレーでも美味しく食べるなどと自惚れるな! あと、中の見えないお店には気をつけろ!」

 と強く警告もして。


 ドアを押し開け、店内を見た瞬間。


(うっ!)


 私はすぐさま、入ったことを後悔しました。

 目に入ったのは清潔感のある店内。特に厨房は、新品に入れ替えたのかと思うほどにピカピカです。


 以前からこの店が気になっていたと書きましたが、お店の存在を知ってから実際に店内に入ったのは一年以上が経ってからでした。それなのにこんなに厨房が綺麗なのは、本当に最近改装したか、あるいは店主が非常に綺麗好きかのどちらかでしょう。


 ところが。厨房はこんなに綺麗なのに、店内の客席側は何故か薄暗いのです。そして、その店内には一人もお客が居ませんでした。


「……いらっしゃいませ……」


 店内に佇んでいた、清潔な白いコック服を身に着けた店主が、待ち構えていたように挨拶をしてきます。それが、びっくりするほど陰気だったのです。

 漫画なら、絶対に顔に縦線がいっぱい描いてある感じの、(やつ)れた男の人でした。


 もう、この時点で嫌な予感がヒシヒシとします。帰りたい気持ちで一杯でしたが、今のオバチャンの私ならともかく、当時はまだ二十代のうら若き乙女(!)は面と向かって挨拶された後に「あっ、間違えました〜。さいなら!」と逃げ出す勇気を持てませんでした。

 結局、そのままカウンター席に座らざるを得なかったのです。


 陰気な店主がじっとこちらを見てきます。

 かなりの居心地の悪さに、さっさと食べて帰ろうと思いメニューを見ました。

 メニューはビーフカレー、ポークカレー、野菜カレー……。ちなみに、メニュー表は文字のみで写真や絵などはありませんでした。

 ビーフカレーやポークカレーは、多分ルーに野菜が溶け込んでいて具が少なそうだな、と思い、野菜カレーを注文します。


「……はい。お待ちください」


 店主が準備を始めました。特に手際も悪くなく、ほんのりとしたカレーの香りが漂ってきます。

 この時は気づかなかったのですが、不思議ですよね。カレー屋さんって、だいたいお店に入った時からカレーとかスパイスの匂いがしませんか? この時、他にお客がいなかったせいかもしれませんが、私の注文に対応するまでカレーの匂いがしていなかったんですよ。

 ……もしかして、その日はずっとお客さんが入らなかったんでしょうか。


「……野菜カレーです……」


 ボソボソと喋る店主が出してきたカレーを見て、私は軽く驚きました。


 野菜カレーって、普通人参とか、玉ねぎとか、じゃがいもとか……あとはお店によりますけど、ブロッコリーとかナスとかヤングコーンとか。そういった野菜が大きめに入ってるイメージだったんですが、その野菜カレーで一番目立つ具は、レンコンの輪切りの煮込みだったのです。


 あとは人参と、何かわからない具が半分煮溶けて、小さめに入っています。

 野菜カレーというには随分と珍しいビジュアルだな……と思いながら、カレースプーンでルーとご飯をすくってパクリと口に運びました。


「!?!?」


 衝撃を受けました。衝撃の不味さでした。

 この野菜カレー、異様に甘いんです。それも、野菜の甘さじゃない。


 何度も言いますが、私はカレー好きで家カレーも研究しています。玉ねぎは20分以上炒めて、飴色玉ねぎにするのは当たり前なくらいです。(ここ最近はさぼって、飴色玉ねぎレトルトに頼ってますが)

 だから、これが野菜由来の甘さでないのは食べればわかります。

 けれど、蜂蜜でもない。砂糖っぽいけど砂糖の甘さとも違うような……。


(いや、これみりんじゃない?)


 そう考えたら、もう悪い想像が止まりません。

 煮込んだレンコン、煮溶けかけた人参、みりんのような甘さ……。これらを総合すると、そうとしか思えませんでした。


(いや、これ和風の甘い煮物を、薄めのカレーにぶち込んだだけじゃない? 昨日の残り物にカレールー入れました的な……)


 実際にはそんな馬鹿なメニューを出したりはしないでしょうが、そうとしか思えない味付けだったのです。

 そして、とても……とても、食べ続けたくない味付けでもありました。


 私は、ご飯を残すのに罪悪感を感じるタイプの人間です。しかしこの時は流石に残してしまおうかと思いました。「ご馳走様でした」と言ってお金を払い店を出ようと、お皿に向けていた顔を上げます。


「……」


 陰気な店主がじっとこちらを見ていました。

 陰気な、今にも絶望しそうな青い顔で。


「……」


 私はそっと顔を下げ、もう一口を食べました。

 この時、うら若き乙女(!)の私は、「ご馳走様」とはとても言えませんでした。

 だって一人もお客のいない店で、やっと入ってきたお客が料理を一口食べるなり帰ったら、店主は本当に絶望してしまいそうと思ったからです。このあとジサツしちゃうかも……ってぐらいの悲壮感でした。


 この時、卓上にはGABANのスパイス缶が置いてありました。

 私はここぞとばかりにカレーにスパイスをかけます。

 甘さ強め、スパイス薄めの煮物風カレーは、スパイス風味を強くすることで少しはマシになりました。


 ……嘘です。甘さ強めの煮物風カレーはスパイスでは太刀打ちできないほど激マズです。それでもどうにか涙をこらえながら、私は半分ほど食べました。

 店主の陰気さも、少し和らいだ気がするのは気のせいでしょうか。


「ご馳走様でした」


 私はやっとこのセリフを言い、お金を払って店を出たのでした。


 ★


 後日。

 某匿名掲示板の地元板を何気なく見ていた時のこと。私はある投稿に我が目を疑いました。


『カレー屋◯◯は、絶品! 絶対食べて損なし!』


 あのカレー屋さんについて、褒め倒す書き込みがあったのです。


「……いや、自作自演でしょ」


 思わず独り言を呟き、そしてヘナヘナと力が抜けました。


 匿名掲示板なんかで自作自演する暇があったら、メニュー改善しなよ! とか、こんな事する店主なら、ジサツなんかするわけないんだから、一口食べた時点でさっさと帰れば良かった!! とか、色んな気持ちが押し寄せてきたからでした。


お読み頂き、ありがとうございました!

『賞味期限が三週間切れていたヨーグルトを食べてもお腹を壊さなかった私が、ある料理でお腹を壊した話』も、是非よろしくお願い致します!

https://book1.adouzi.eu.org/n2960ib/

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― 新着の感想 ―
カレーをまずく作れるのってある意味凄いよね。 市販のルーでも美味しいもんね。 私も一度だけくっそまずいカレーを食べたことがあります。意外と美味しいお店は忘れちゃうのに、まずい店って覚えてるよね(笑)
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