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【書籍発売中】ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者〜現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する〜  作者: 延野正行
第2部

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第59.5話 一瞬の信頼(後編)

☆★☆★ 本日発売 ☆★☆★


「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~」書籍第2巻発売されました!

松うに先生が描くアリエラの表紙がとてもかわいいので、ぜひお買い上げください。


挿絵(By みてみん)

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挿絵(By みてみん)

「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」


 インノシマに〈号雷槍(レッザ・アーク)〉を直撃させる。といっても、全力ではない。気を失わせる程度に収めた。狂ったヤツだが、あいつの言う通り同郷であることに代わりはない。それにミツムネと違って、まだ更生の余地があるように思えた。


「解けた!!」


 本人の言った通り〈カースペイン〉の効力を失った。

 俺は再び〈号雷槍(レッザ・アーク)〉を構える。


「メイシーさん、すみません」


 今度はアリエラに迫るメイシーさんに向けて〈号雷槍(レッザ・アーク)〉を放つ。雷槍は光のように迫ったが、メイシーさんは軽やかに回避する。俺は落ちていた刀を拾い、アリエラとメイシーさんの間に入った。


「アリエラ、大丈夫か?」


「ごめん。クロノ。私……」


「俺の方こそすまない。お前のことをもうちょっと考えてやるべきだった。実の姉と戦わせてすまん。俺の判断ミスだ」


「そんなことはない。私が未熟だっただけ」


「そこまでにしたまえ、君たち。彼女がどうなってもいいのかな」


 ルギアの声が朗々と神殿に響く。

 側にはメイシーがおり、ミィミの髪を掴んで乱暴に吊していた。さらにルギアの束縛系の魔法に捕まっているらしく、ミィミはまったく動けない。


「ミィミ……」


「いい加減君たちと遊ぶのも飽きてきた頃だ。そろそろ決着を付けよう。まあ、君たちの必敗は決まっているだろうがね」


「クロノ……、私たち……」


「まだだ。諦めるな、アリエラ」


 考えろ! まだ何かあるはず。

 俺たちにできることが……。じゃないと顔向けできない。

 クワンドンのみんなと約束した。してしまった! 必ず原因を取り除くと。この装備はそのために鍛冶師たちが打ってくれたと言っても過言ではない。


「アリエラ、俺たちはまだ死んでいない。生きている限り、最善をつくそう。……いや、勝利を目指すぞ」


 俺の叱咤が少しでも届いたのか。

 黒い霧のように閉ざされていたアリエラの瞳に輝きが戻る。岩に刺さっていた剣を抜いて、切っ先をルギアたちの方に向けた。


「作戦はあるの……?」


 ある! ……と言いたいところだが、もはや数の有利もなければ、戦力差にも開きがありすぎる。それでも諦め切れない俺の前で、突然『幻窓』が開いた。



『ギフト「おもいだす」の条件に合致する対象が近くにいます。対象者に近づいてください』



 一瞬、何のことか俺にはわからなかった。しかし、この『幻窓』が出てきたのは、初めてというわけじゃない。ミィミの時にもあった表示だ。

 でも、あの時よりも反応が弱い気がする。


(近くに俺のギフトの対象者がいるのか? となると?)


 真っ先に疑ったのは、近くにいるアリエラだ。俺は今1度かざしてみたが、表示が変わる様子はない。もしかしてインノシマかと思ったが、違うような気がする。そうだ。ミィミの記憶を呼び起こした時、何らかの勘のようなものが働いた気がする。そう。昔会ってる、という印象がミィミにはあったのだ。

 しかし、ルギアにも、メイシーからも感じられない。そもそもギフトを使ったところで、彼らが俺に大人しくしたがってくれるかどうかわからない。


(そもそもなんで今なんだ?)


 人は変わっていない。

 ならば状況が変わったとしか考えられない。


『ぐおおおおおおおお!!』


 風の精霊は以前暴れ回っている。

 それを制御するのに、ルギアも手を焼いているようだ。


「何をしている、インノシマ」


「ボクだけですか?」


「こっちには人質がいる。造作もないだろう」


「…………はいはい。わかりましたよ」


 インノシマは面倒くさそうに返事をすると、俺たちの方に近づいてきた。


「動くなよ、クロノ」


 インノシマの目は据わっていた。

 覚悟を決めたらしい。今度は確実に俺を殺すつもりだ。

 近づいてくるインノシマを見つめながら、俺はアリエラに語りかけた。


「アリエラ、すまないが、もう1度お姉さんと戦ってくれないか?」


「……無理だよ。私じゃ、お姉ちゃんに勝てない」


「アリエラならできる。自分を信じてくれ。それが無理なら。アリエラのことを信じている、俺のことを信じてくれ。人生に1度だけでいい。たった一瞬でもいい。メイシーより強い、アリエラのすべてを俺に見せてくれ!」


「――――ッ!!」


 それまで無表情に絶望していたアリエラの表情が変わる。

 青白かった頬にほんのりと赤みが差し、瞼を大きく開いていた。

 瞳が揺れ、真っ直ぐ俺の方を見ている。


 まるでそれは……。


「アリエラ?」


「う、ううん。な、なんでもない」


「大丈夫か? やっぱり……」


「行く! 大丈夫。今度こそお姉ちゃんに勝つから。クロノ……。私を信じて」


 深い緑色の瞳に火が灯る。

 今目の前にいるアリエラは、俺も知らないエルフの女の子になっていた。いや、その姿はきっと姉メイシーすら知らないかもしれない。


 アリエラは腰を下げ、剣を構える。


 漂う覇気は達人のそれと似ている。


 以前俺はアリエラが主張するメイシーの実力が、『剣神』以上だと主張した。それはアリエラがすでに『剣神』の実力に届こうとしていたからだ。


 それは誤りだった。


 今のアリエラが纏う空気は間違いなく『剣神』以上だった。


「ハズレスキル」のコミカライズ更新中です。

こちらもよろしくお願いします。



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