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【書籍発売中】ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者〜現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する〜  作者: 延野正行
第2部

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60/67

第56.5話 特殊モンスター(後編)

☆★☆★ 第2巻 12月15日発売 ☆★☆★


書籍情報を掲載しました。

「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~」の2巻が、12月15日発売です。

ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)

『しゃああああああああああ!!』


 現れたのは、巨大な蜥蜴だ。ゴツゴツした硬い鉱石のような鱗。対して鞭のようにしなやかに曲がる尻尾。最大の特徴は背に大きな魔鉱を背負っていることだ。まるで鶏冠のようについた魔鉱は、水晶のように輝き、光を放っている。


「クリスタルリザード……。こいつが『風霊の洞窟』のレアモンスターだ」


 俺が吹いた『ラームの笛』はこうしたレアモンスターだけに反応する笛だ。『風霊の洞窟』に棲むレアモンスターは1種類だけ。それがクリスタルリザードだ。警戒心が強い魔物で、普段冒険者たちの前には滅多に現れない。食べるのもミスリルや鉱石ばかりだ。


 しかし『ラームの笛』の特性はレアモンスターの怒りを刺激し、強制的に攻撃的にさせる。温厚なクリスタルリザードとて例外ではない。事実、人前に出ることを嫌がる魔獣が、俺たちの前で大きく口を開けて、臨戦態勢を取っていた。


『じゃっ!!』


 クリスタルリザードは挨拶代わりに尻尾を振る。硬く、かつしなやかな一撃は強烈で、あっさり辺りのミスリルを砕いてしまう。その破片が俺たちに襲いかかった。


「ミクロ!!」


『くわー!!』


 もうすっかりお馴染みになった炎を吐き出す。金属の中でも特段に融点が高いアダマンタイトを溶かしてしまうほどの炎は、ミスリルの飛礫を消し飛ばした。


 クリスタルリザードの猛攻は終わらない。尻尾による攻撃が躱されるや否や、今度は俺たちの方に向かって突進してきた。巨大蜥蜴というから動きが鈍いかと思えばそうではない。発達した四肢の筋肉は軽々と鉱石を背負った身体を持ち上げ、ダンプカーのように突撃してくる。


「うりゃあああああああ!!」


 迎え討ったのはミィミだ。

 渾身の〈フルスイング〉をクリスタルリザードの鼻っ柱に叩きつける。

 ゴンッと重い音が『風霊の洞窟』に響いた。


『しゃあああああああああ!!』


 クリスタルリザードは悲鳴を上げる。突進は止まったが……。


「いっっったあああああああい!!」


 ミィミが半泣きになりながら、悶絶していた。


「大丈夫か、ミィミ」


「うん。でも、あのうろこ……。ミスリルゴーレムよりもかたいよぉ」


 クリスタルリザードは決して弱くはない。

 防御力という点では魔獣の中でも、トップクラスに入るほど厄介な相手だ。

 俺がミィミに〈小回復〉をかける横で、戦い慣れたアリエラは、クリスタルリザードの背後に回った。



 〈気合い斬り〉!!



 スキルを叩きつける。

 渾身の一撃も、やはり硬いクリスタルリザードの鱗に阻まれる。


「通じない!?」


「いや、ヒビが入ってる」


 そう。弾かれたが、クリスタルリザードの鱗にヒビが入っていた。

 親指ほどの大きさしかないが、ヒビはヒビだ。


「クリスタルリザードの弱点は前面に比べて、後ろの鱗の方が脆いということだ。攻撃を集中させれば、破れるはず。ミィミもいけるか?」


「まかせて、あるじ!!」


 ミィミは治ったばかりの拳を振りかぶり、クリスタルリザードに突撃していく。クリスタルリザードもただ単純にミィミを迎え討ったりはしない。突如、背負っている鉱石が体内の中に沈むと、花火のように打ち上がった。



 〈クリスタルランサー〉



 ランサーというよりは、もはや追尾式のミサイルだ。魔力によって制御されたそれは、上に打ち上がった瞬間、孤を描いて反転する。そして周囲にいる俺たちに襲いかかった。

 ミサイルのように爆発こそしない、質量を鑑みれば1発ヒットするだけで即死確定だ。かすっただけでも大ダメージを負うだろう。


 俺は〈シャドウステップ〉。

 ミィミはミクロを担いで〈高速回避〉。

 アリエラも〈高速移動〉で一旦距離を取る。


 〈クリスタルランサー〉は幸い爆薬で打ち上げてるわけではないようで、範囲はさほどではない。クリスタルリザードに近づかなければ、脅威ではないだろう。


「大丈夫か」


「はあ……。びっくりした」


「あんな攻撃できるんだね」


『くわー!』


 事前に説明しておくべきだったかもしれないな。だが、今の攻撃を躱せないようじゃ、残念ながら風の精霊パダジアには勝てないだろう。


 距離を取ったことで、一旦休憩とはいかない。クリスタルリザードはまた尻尾攻撃を繰り出してくる。周囲の鉱石を削って、こっちに飛ばしてきた。俺たちをなるべく狭い場所に追い込んだところに、突撃。辛くも回避したところで、例のクリスタルの槍を降らしてくる。そして最初に戻る。


「なんかグルグル回ってるよ」


「こっちに攻撃をさせないつもりね」


「だが、パターンはもうわかった」


『くわー!!』


 俺たちは同時に頷いた。

 それぞれがそれぞれの役目を果たすために散っていく。


 クリスタルリザードを包囲すると、まずミィミが先陣を切った。


「よくもやったな。ミィミ、怒った!! すぅうううううう!!」



 〈戦士の雄叫び〉!!



 うおおおおおお! ミィミの獣声が洞窟の中で反響する。それまで繊細さが欠片もないワルツのように同じ攻撃パターンを繰り返してきたクリスタルリザードの動きが止まる。


 魔獣を居竦ませ、行動不能にし、かつ仲間の攻撃力を上げるスキル――それが〈戦士の雄叫び〉だ。


 その効果にクリスタルリザードは完全にはまった。元々臆病で、ちょっとした物音でも逃げてしまう魔獣だ。効果覿面だろう。


「止まった!! チャンスだ、アリエラ!!」


「アリエラ、たのんだよ!」


「はあああああああああ!!」


 クリスタルリザードの動きが止まったところで、アリエラが背後から接近する。

 剣を上段に構え、裂帛の気合いともにスキルを叩き込んだ。



 〈兜斬り〉



 フルプレートの鎧を切り裂いたスキルはクリスタルリザードの尻尾を両断することに成功する。比較的鱗の弱いところを狙ったのもそうだが、ミィミの〈戦士の雄叫び〉によるバフの効果もあったのだろう。


「ナイスだ、アリエラ」


 邪魔な尻尾を切れたおかげで、背後に取り付き易くなった。好機だ!


「ミィミ、とどめを刺すぞ」


「わかった、あるじ!!」


 ミィミがピョンと跳びはね、前面からクリスタルリザードの背面へとやってくる。

 クリスタルリザードもしぶとい。ゆっくりと体勢を整えつつあった。もう〈戦士の雄叫び〉の効果がキレたらしい。デバフの持続時間を短縮させるスキルか、あるいは耐性を持っていたのかもしれない。


「ミクロ!!」


『くわっ!』


 ミクロはクリスタルリザードの顔に炎を叩き込んだ。周辺の鉱石を溶かすほどの炎だが、クリスタルリザードには微々たるものだ。属性耐性がついているのだろう。


「こいつ、動くな!!」


 〈貪亀の呪い〉×3


 クリスタルリザードの動きが止まる。というより、極端に遅くなる。だが、デバフに対する耐性があるとすれば、さほど時間はない。


「一気に行くぞ、ミィミ」


「うん! あるじ!! やあああああああああああああああ!!!!」


 ミィミは〈狂化〉を使う。

 ぐるりと回転した後、再び渾身の一撃を振るった。

 狙いは先ほどアリエラが打ち込んで生まれたヒビだ。



 〈フルスイング〉!!!!!



 ミィミの一撃はついにクリスタルリザードの鱗をブレイクする。

 中の表皮が露出し、ドクドクと脈打つ血管が見えた。


「とどめ!」


 〈魔力増幅〉


 さらに……。


「くらえ!!」



 〈号雷槍(レッザ・アーク)〉!!



 魔力を込めた雷属性の一撃を、クリスタルリザードに打ち込むのだった。


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挿絵(By みてみん)


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