表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者〜現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する〜  作者: 延野正行
第2部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/67

第53.5話 忍び寄る刺客(後編)

☆★☆★ 第2巻 12月15日発売 ☆★☆★


書籍情報を掲載しました。

「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~」の2巻が、12月15日発売です。

ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)

 ◆◇◆◇◆



 俺たちは馬車を借り、パダジア精霊王国の北――『風霊の洞窟』へと向かった。ティフディリア帝国ほどの領土はないといっても、国は広い。馬車で飛ばしても、『風霊の洞窟』までは4日はかかるらしい。


 その間、俺たちは自己紹介がてら、ここまでの経緯を話した。とはいえ、俺が前世で『大賢者』であったことや、ミィミがかつての仲間であることを隠してだ。


 他のことは包み隠さず、微妙なところはオブラートに包みつつ、アリエラに話したのだが、返ってきたのは疑い目だった。


「私、もしかして組む相手を間違えた?」


「別にいいだろ? ともに帝国から追われる身だ。仲良くしようぜ」


「そう。なかがいいのが一番!」


『くわー!』


 ミィミとミクロが盛り上がる横で、アリエラはため息を吐く。お世辞にも表情が豊かではないぶん、包み隠さないところがアリエラの長所だろう。


「私はお姉ちゃんが助けられればそれでいい」


「アリエラはメイシーのことが、とぉっってもすきなんだね?」


「好きというよりお姉ちゃんだから。私の憧れで目標だから?」


「あこ……がれ…………?」


「お姉ちゃんは完璧なの。料理も洗濯も、ダンスや社交界の作法も。キラキラしてて、みんなの憧れの的」


「え? でも、アリエラもキラキラだよ。とっても髪、きれいだし」


「ありがと。でも、ミィミはお姉ちゃんを知らないからそう言える。私はダメ。料理も洗濯も、ダンスもできない。私は困った時のお姉ちゃんの代用品だから……」


 自然とアリエラの視線が下がっていく。まるで贖罪を聞いているようだった。


「剣は? 少しだけだったけど、アリエラの剣は凄かったぞ」


「全然ダメ……。剣もお姉ちゃんの方が強い」


 信じがたいな。

 アリエラの剣技は1000年前の『剣神』に迫るものだった。仮にアリエラの証言が本当なら、メイシーはその『剣神』を凌ぐほどの腕になる。それは悪いことではないが、初代『剣神』の剣技を知るだけに少しショックだった。


「5年前、先代の『剣神』が亡くなって、次の『剣神』を決めることになった。エルフの中で腕に自信のあるものが集まって、結果私とお姉ちゃんが最後に残った」


「それって凄いことじゃないか。それに5年前だろ。今はどうかわからないんじゃ」


「でも、最後の最後で私はお姉ちゃんに負けた。それがすべて」


 アリエラは淡々と結果を告げる。

 そこに悔しいとか、無念とか感情的なものはない。かといって、姉の勝利を喜んでいるようにも見えない。表情が乏しいゆえに、ロボットと話してるみたいだ。


「止めて!」


 そのアリエラが突然声を上げる。横でミィミもまた耳をピンと立たせ、ミクロがギョロギョロと辺りを窺っていた。俺も手綱を引き、馬車を止める。


(静かだ……)


 代わり映えしない、パダジア精霊王国ではありふれた森林風景。

 巨大なドンガが岩肌のようにそびえ、広大な森を支配している。

 そんな森の中で俺の鼻腔を突いたのは、かすかな血臭、そして殺意だった。


「出てこいよ、いるのはわかってるぞ」


 ドンガの影から数名の男たちが現れる。13、14、16……ざっと20名か。おそらく全員が手練れだ。クラスレベルだけなら、俺やミィミを上回っているかもしれない。


「2人ともそこを動かないで」


 最初に馬車を下りたのはアリエラだ。が、すぐにふらつく。傷は癒えたが、まだ体力は戻ってないのだろう。何せ昨日まで重傷人だったんだからな。


「俺も手伝う」


「ミィミもそろそろ暴れたい」


『くわー!』


 俺たちはアリエラに横に並ぶ。


「あなたたち……」


「そんな顔をするな。結構できるぞ、俺たち」


「来たよ、あるじ! アリエラ!!」


 たまらずミィミが飛び出していく。

 短い雑草を揺らしながら、ミィミは風のように走る。暗殺者たちの間の距離を、一瞬にして潰してしまった。


「なに!?」


 ミィミの驚異的な速度に、暗殺者も肝心のアリエラも息を飲んだ。ミィミは敵の懐に飛び込むと、カウンター気味に男の鼻面に拳を叩き込んだ。男の鼻骨をあっさりへし折り、さらに20メートル近く吹っ飛ぶ。男の意識は飛び、ドンガの根本で気絶した。


 暗殺者たちの動きが止まる。

 初撃のインパクトは十分だったらしい。


「止まってる場合か、お前ら?」


 〈貪亀の呪い〉+全体化


 速度を減少させるデバフを暗殺者全員にかける。

 動きが鈍ったところをミィミは見逃さず、一瞬にして2人を平らげた。


『くわー!』


 ミクロも奮闘中だ。

 炎の玉を吐き出すと、動きが鈍くなった暗殺者の1人を火だるまにする。

 あっという間に、4人が無力化されてしまった。


「どうだ? 俺たちもなかなかやるだろ?」


「そうね。でも……」


 アリエラも動く。

 あの流水を纏ったような動きで、男たちの間合いを侵略する。瞬間、刃が閃いた。ほんの刹那であったが、俺の目に映ったアリエラの動きは、戦闘動作というより、舞いや踊りに近い。もはや芸術といってもいいほど、洗練されていた。最小限の動きに加え、敵の動きを先読みする力、斬るというより撫でるといった動作に近い。つまり力感はなく、十分に脱力できているように見えた。


 以前、刀は達人が使ってこそ本来の性能を発揮すると俺はいったが、アリエラなら過不足なく100パーセントその性能を発揮させるだろう。


(こりゃ俺も負けてられないな)


 頭上で人の気配がしたかと思うと、数名の男たちがドンガから下りてきた。どうやら木の洞の中に隠れていたらしい。その1人が気勢を上げながら俺に迫ってくる。


「クロノ!」


「あるじ!!」


 マリエラとミィミの声が重なる。

 数の差がなくなったところで油断させておいて、頭上からの奇襲か。


「俺も舐められたな」


 俺は頭上の敵に向かって手を掲げる。そこには青く光るミスリルの石があり、まだ真新しい手甲の中で輝いていた。


 敵が攻撃するタイミングを見計らい、俺は声を荒らげる。


〈シールドバッシュ!!〉


 男は吹き飛ばされる。

 一瞬何が起こったかわからず、目を白黒させていた。


「こいつ、後衛系のクラスじゃないのかよ――――って、いねぇ!」



 〈シャドウステップ〉!!



「ここだ」


 ドンガの幹でできた影の中を移動し、あっさりと男の後ろに付く。


「なっ! 今度は隠匿系のスキルだと……。お前、一体…………」


「悪いが先を急いでいる。観念しろ」


 そのまま男の喉笛をかっ切る。

 血しぶきを上げながら、男は絶命した。


「な、なんだ、今の?」


「何だっていい! あの魔法使いをや――――っぐは!!」


「私を忘れてない?」


 暗殺者を背後から突き刺したのはアリエラだ。そこにさらに飛びかかってきた暗殺者3人を平らげる。結局、アリエラが半分以上倒してしまった。


「強いな、アリエラ」


「これぐらいは序の口」


 アリエラは明後日の方を見る。

 今度は笠を来たやけに古風な男が3人並んでいた。


「こっちが本命か……。」


 明らかに最初に襲いかかってきた暗殺者と雰囲気が違う。


 音もなく近づいてくると、一気に間合いを詰めてきた。


☆★☆★ 最新作開始 ☆★☆★


マンガUP様で

「異世界で鍛冶神の力を得た俺、女神とスローライフはじめました」という作品が配信開始されました。


異世界で鍛冶神に選ばれた町工場の職人が、神様の武器をものづくりの力で修理するというスローライフものになります。

こちらもぜひよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)



☆★☆★ 第2巻発売中 ☆★☆★


「宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~」の第2巻が、シーモアにて発売されました!


こちらも是非チェックしてくださいね。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第2巻12月15日発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


コミカライズ版もよろしくお願いします
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




3月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本3巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月25日!ブレイブ文庫様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ