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76.選手たちの反応

 東雲の試合を見ていた選手たちは様々な反応を示していた。


 ここにいる皆は己の力に自信がある者たちだ。

 自慢の業物を持つもの、己の生み出した魔法を切り札とする者、持って生まれた才に溢れる者、絶対なる主人の為に死力を尽くす者などだ。

 

「ひゅー、あのシノノメっての面白い奴だな。ギリコのスキルを相殺した上に武器を使い捨てやがった。なぁ、槍のあんちゃん。そう思わねぇか?」


 陽気に振る舞うグレゴリーは隣にいるパドスへと声を掛ける。突然声をかけられたパドスは戸惑ったが、無下に無視する必要ないと思い返事をした。


「ええ、そうですね。とくに興味深いのは、投擲した時の威力でしょうか。風の属性が付加されていましたが……」


 パドスも同じように投擲スキルを覚えているが、付加魔法エンチャントを使ったとしてもあれ程の貫通力は出ない。故に不思議で仕方がなかったのだ。


「ありゃぁ、武器の特殊能力の一種だね。付加魔法エンチャントを使った形跡がない。無詠唱。武器を振るっただけで風魔法を発動する槍が在るなんて聞いたことがないな」


 パドスの疑問に答えるかのようにエドガーが会話に割り込んできた。


「無詠唱ですか」


「ああ、言葉は魔法の起動言語トリガー。例え特殊スキル持ちの武器だとしても同じこと。それがないってことは相当特殊な物なのだろう」


「そんな大層な物をあいつは使い捨てちまったのか? アッハッハッハ、最高に面白れぇ奴じゃねぇか!」


 グレゴリーは声高らかに笑い飛ばしていた。


 そんな3人の会話を静かに聞いていたミドスは「それだけではない」と心の中で付け加えた。


 強力な武器を惜しげもなく・・・・・・使い捨てたことが問題なのだ。そう、あの男はそれ以上の物を持っている可能性がある。

 乱戦時での一撃。隆起爆発を起こした魔法スキル――。恐らく、あれも武器の特殊スキルではないかとミドスは推測していたのだ。


 Lv1では強力なスキルは元より、初歩的なスキル自体習得できない。それがこの世界の常識。


 そして何より、ミドスは既に東雲のステータスを覗き見るアイテムを使っていた。だが、結果は予想だにもしなかったことが起きた。


 Lv表示はされたがパラメータ数値が表示されなかったのだ。いや、正しくは数値が出鱈目に切り替わり続けていると言うべきか。


 ミドスが使ったステータス確認アイテムはこの世界で最高ランクの代物。それが機能してない。得体の知れない力を備えているのか、またはその様な特殊アイテムを持っているのか。とミドスは考えていた。


 実際、ステータスが表示されない理由はゴンザレスの機能にあった。主の能力を盗み見られないようジャミング機能を起動していたのだ。これは東雲本人も知りえない情報である。


 唯一人、この場で東雲の強さを知っている者がいた。いや、確信したと言うべきだろうか。


 王国騎士隊長のジーク=ジークハートだ。アリゲルたちと同様、ジークも頭を悩ませていたのである。 


(やべぇな……。マーメイドの嫁さん貰いに来ただけなのに、まさか渦中の人物に遭遇するとは思わなかった)


 ジークはソフィたちがいる観客席の方へと見ると、丁度ソフィと目が合った。ソフィは握りしめた拳に親指を立て、首の高さまで持ち上げると真横にスライドさせる。


『Kill, You!!(兄さん、後でブッコロス!!)』 


 ジークは額に汗を浮かべる。必死で言い訳を考える。そして閃いた。


(シノノメの実力を確かめるため、敢えて挑発したとしておけば……。ヨシッ! これで行こう!)


 勝てば嫁を貰う、負けたとしても国王のめいの為に体を張ったと言えば言い訳が立つ、と無理やり納得したのだった。


『さぁ、続きましては2回戦目は――。グレゴリー選手 VS エドガー選手です!』


 ウサミが2回戦目の選手名を呼ぶと、グレゴリーとエドガーは座席から立ち上がった。


「俺の番か。んじゃ、ちゃちゃっと済ませちまうかね」


「いえいえ、それはこちらのセリフですよ」


 不敵な笑みを浮かべるグレゴリーに対して、エドガーは終始穏やかな表情だ。


 すると二人の足もとに魔法陣が現れ、舞台中央へと転送されていった。


 二人が現れるとウサミはマイクを構えなおした。


『それでは! 皆さんの熱が冷めないうちに行っきますよ~? グレゴリー選手 VS エドガー選手、試合開始です!!!』


 盛り上がる会場にウサミの声が響いた――。 


  

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