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75.トーナメント戦② ★

『では皆さま、スクリーンをご覧ください!』


 ウサミの一声によって画面が切り替わり、スクリーンにトーナメント表のようなものが表示された。その組み合わせに観客が沸きたつ。


 1回戦――。


 『ギリコ VS シノノメ・トオル』


 『グレゴリー VS エドガー』


 『パドス VS ミドス』


 『ジーク=ジークハート VS シュリ』


 初戦は俺か。しかも相手がギリコだ。ルディの件ではえらいとばっちりを食らってしまった。今回は特に恨みを抱かれることはないのだが――。


 ギリコの方へと視線を向けると目と目が合った。


「よう、お前とまた闘えてうれしく思うぜ。まさかリベンジする日が来るとはな」


 ギリコは腕を組みながら不敵な笑みを浮かべながら仁王立ちしている。


「俺は嬉しくないよ」


「ふん。俺はお前に負けて以来、力をつけて来たんだ。前回はふざけた武器でやられたが、今回はそうはいかないぞ」


 そう言えば前回のギリコのLvは32だったはずだ。先ほどの紹介ではLvが42だと言われていたな。そうか。Lvが上がっているのか。

 目を細め、相手のステータスを視覚へと表示させる。

 -------------------------


 名前:ギリコ

 

 Lv:42

 

 体力 :300

 筋力 :250

 防御力:230

 素早さ:75

 魔力 :37


 スキル:『グランド・ストライク』

    :『ソニック・リープ』

    :『ストーン』  

    :『ブレスト』

    :『リミットブレイク』

 -------------------------


 新しいスキルが増えてる。にしても相変わらずのパワータイプだ。


「力を……ねぇ。というか俺に負けてLvを上げたというより、この大会に出たいが為にLv上げたんじゃないのか? たまたま俺がこの大会に出場してたから、ついでにって感が否めないんだが」


「グフゥッ!!」


 あ、せき込んだ。どうやら図星らしい。なんて分かりやすい奴なんだ。ルディの時も結構お熱だったし、綺麗な女性に目が無いのだろう。あー、悲しいかな男のさが


 観客席から笑いが漏れ、ギリコは真っ赤な顔になる。


「ととととにかくだっ! あの時とは違う俺を見せてやる! そして、姫に俺のカッコいいところを見てもらう! ふははは! おれ完璧!」


 アイルに向かって決め顔をするギリコ。


 だめだこいつ。女性のことになると、どうやら猪突猛進になるみたいだ。


 呆れていると突如、アイルたちがいる場所から少し離れた所で空間が弾け、7つの柱が出現。2~3メートルとそれぞれ高さは違えど、豪華な座席が設置されていた。


『それでは1回戦目を始めますので、他の選手はあちらの席へとお願いします!』


 俺とギリコ以外の選手たちは出現した座席へと転送されていく。


 8人なのに既に7つしか席が用意されてないってことは、初戦で負けた奴の席は無いということなのだろう。中々嫌味な演出だ。舞台中央へと向かい立ち、ギリコと顔を合わせる。その右手には巨大な斧――。『レイジングアックス』が握られている。


 武器自体は変わっていないようだが、その右腕には青と白のコントラストの手甲を装備している。前回は確か無かった筈だ。


「おい、またあのふざけた武器を出す気じゃないだろうな?」


「まさか。あれはあんたを殺さない為に使った武器。だが、今回は遠慮なしに行かせてもらうよ」


 右手を掲げその名を呼ぶ――。


「クイックオープン――、『ミスリルソード:氷河』」


 空間が弾け、右手に青い燐光を放つミスリルの剣が出現。刀身の周りにダイヤモンドダストが起きる。


『ひゃわ~、綺麗な剣……。っと、シノノメ選手何もない場所から武器を取り出したぁ! 先ほどもそうでしたがどうやらシノノメ選手は空間魔法を習得している模様です。にしても何者なんでしょうかね彼は』


「はっ! そいつがお前の本来の武器って訳か! 大層いいもん持ってるじゃねーか! 特殊スキル持ちの武器と見たぜ」


 ギリコが『レイジングアックス』を構える。


「あんたのそれも、いい特殊スキル持ちじゃないか」


 俺も『ミスリルソード:氷河』を構える。


『なんと、両者の武器は数少ない特殊スキル持ちだったー! これは手に汗握る戦いになりそうです!』


 会場がざわつく。


『それでは、ギリコ VS シノノメ・トオル選手 試合開始!!』


 ウサミの声が会場に響いた――。




 ◇




「――スキル『ソニック・リープ』!! うおおおお!!」


 ギリコが地面を蹴りあげて一気に飛んできて斧を振り下ろしてきた。

 一度は見たスキル。Lvは低いがステータス上では此方が上だ。力比べでは負けるはずがない。

 俺は慌てず真正面から全力で受けきる。


 金属同士の甲高い音が鳴り響く中、力の限りミスリルソードを振り抜きギリコを弾き飛ばす。


「ぬおおお!?」


 転げまわるギリコを追うように一気に跳躍し、立ち上がろうとしている所を斬り伏せ――。


「くそがっ! ――スキル『ストーン』!!」


 硬質化した右腕によって攻撃を防がれた。直ぐにギリコからバックステップで距離を取る。

 ステータス能力アップのアイテムのお陰で、自分自身が強くなっているのが実感した。ゴンザレスの話だと俺の能力はLv60に相当する。

 単純な能力では俺の方が高いのだ。


『凄いです、マスター。私のサポート無しでも押してます!』  


「ああ、何回も戦っていると体が慣れてくるもんだな。能力が高いと余裕が出てくる」


 それに――。


「こっちには強力な装備アイテムも有るからな」


 よろよろと立ち上がるギリコを見据える。硬質化スキルを使ってもダメージを軽減できなかったようだ。


「くそっ……。なんつー攻撃力だ。防御スキル越しでもこれかよ。眩暈がしやがるぜ……」


 ギリコの顔が苦痛で歪んでいる。肉体的なダメージは受けていないが精神が朦朧としているようだった。


「だがな、俺の力はこんなもんじゃねぇぞ! ――スキル『リミットブレイク』! ぬぅん!! かあああああ!」


 なんだ? 突然ギリコの体が光始めた?


『マスター! 気を付けてください! あれは一部のステータスを犠牲することによって一時的に一つの能力を底上げする限界突破のスキルです!』


「という事は、『ドラゴン・インストール』の劣化版みたいなもんか?」


『です!』


 もう一度相手のステータスを視る。


 -------------------------


 名前:ギリコ

 

 Lv:42

 

 体力 :5

 筋力 :5

 防御力:5

 素早さ:75

 魔力 :772


 スキル:『グランド・ストライク』

    :『ソニック・リープ』

    :『ストーン』  

    :『ブレスト』

    :『リミットブレイク』

 -------------------------



 は? 魔力を底上げだと? 一体どういうことだ? ギリコは完全なパワータイプだ。なのに何故魔力を上げた?


「ゴンザレス、分かるか?」


『い、いえ。わかりません。ですが、何かしら策があっての事なのでしょう。ですが――、あっ! まさか!』


「何か分かったか?」


『はい、ギリコの装備している手甲は――』


 突如、冷たい突風が吹き荒れた――。


「おい、なに一人でごちゃごちゃ言っている」


 スキルを発動し終えたギリコが此方を見据えていた。その手甲からは目に見える冷気が溢れてきている。


「俺の『レイジングバースト』はお前のスキルによって相殺されて俺は負けた。だがな、今回の俺勝ちだ!! 荒れ狂え『レイジングアックス』――スキル『レイジングバースト』!!」

挿絵(By みてみん)


 ギリコを中心に緑色の魔法陣が地面に展開し、暴風が巻き起こり竜巻が発生した。


 どういうことだ? 『レイジングバースト』の強化の為に魔力を上げたのか? いや、それにしても全然変わっているようには思えないが……。


『マスター! 気を付けてください! 次のスキルが来ます! ギリコが魔力を上げたのは、あの手甲の特殊スキルを発動させる為です!!』


 なんだって?


 ゴンザレスの声に反射的に身構える。


「吹き荒れろ『ザルバ―』――スキル『ブリザイン』!!」


 突如、レイジングバーストが変化した。


「ははは、どうだ! これが新たに手に入れた力、氷結スキルだ! 氷と風を融合したこの力を相殺できるものならしてみろ!! 無理だろうがなぁ! ふははははは!!」


 それは冷気を含んだ竜巻へと進化し、空気中の温度を下げていく。そう、会場全体の温度が下がって行っているのだ。当然竜巻の大きさも倍以上に膨れ上がっている。


『ひゃわわわブルブルブル、ぎ、ギリコ選手、ど、どうやら奥の手を出した模様です。シノノメ選手、これをどう乗り切るのか!! はくちっ!!』


 融合スキル……。融合スキルねぇ……。ふむ、なるほど。

 ギリコのように上手くいくか分からないが、俺も試してみるか。まずは――。


 『ミスリルソード:氷河』を収納する。


「――クイックオープン、『オリアクスの魔槍』」


 右手当たりの空間がガラスのように弾け、2メートル程の槍が出現した。『オリアクスの魔槍』を手に取る。


 こいつは一振りすれば竜巻が起こせるが、常時消費型の装備。だが竜剣程の消費ではない。

 近接スキルの『疾風』で試してもいいのだが、失敗した場合俺もダメージを食らいそうなので遠距離能力のこいつを選んだ。


「――クイックオープン、『プロミネンスの杖』」


 左手に『プロミネンスの杖』。必要な物を取り出し、ギリコの方へと『オリアクスの魔槍』を3回振り回すと3つの竜巻が発生した。


 だが、ギリコ程の大きさには到底届いていない。


「ふはははは、そんな小さな竜巻を幾つも発生させたところで無駄無駄ぁ! 俺の氷属性で強化された竜巻を止めることは……でき……ねぇ? は?」


 3つの小さな竜巻は互いを食らい、大きな竜巻へと進化した。それは直線状のギリコへと進んでいく。


「ゴンザレス!」


『はい! マスター! 視覚領域に発射角度を表示します!』


 ゴンザレスの声と共に『プロミネンスの杖』の発射方向を示す矢印が表示された。


「――『プロミネンス・フレア』」


 先端の赤い宝石が輝きその周りを赤い燐光が集まり、一つの魔法陣を描いていく。

 瞬時に魔法陣が描かれると、その中央から幅が1メートル程の蛇の様な形をした炎のうねりが起き発射される。『オリアクスの魔槍』によって発生された竜巻に吸い込まれるかのように巻き上がり、それは巨大な炎の竜巻へと姿を変えた。


『こ、これはーーー!! シノノメ選手、ギリコ選手とは真逆の火属性で対抗だぁぁ! しかも両者、竜巻の大きさは五分五分です! というか、寒いし熱いー!』


「て、てめぇ……。火属性の特殊スキル武器も持ってたのかよ……」

 

「そっちこそ。よく短期間で属性武器を調達してきたな。この世界じゃ、特殊スキル装備は貴重なんだろ?」


「はっ! んなもん、強くなるために死線くぐって手に入れたからに決まってるだろぉ! ――スキル『ブレスト』。 行くぞシノノメぇぇ!」


 炎の竜巻へと氷の竜巻を纏ったギリコが突進していく。互いの反属性が反発しあい、閃光と共に大きな爆発を起こした。会場を強風が襲う。


「……!」


 視界が開けると、そこにはギリコの姿が無かった。


『上です!! マスター!』


 頭上を見上げると遥か上空にギリコの姿があった。その姿は健在だった。


 嘘だろ? あの爆発に巻き込まれて倒れてないのかよ。


 遅れてギリコの姿がスクリーンに映し出された。


『ギリコ選手、耐えたー! しかも爆風を利用して上空へと飛翔していたー! 』


 スクリーンからギリコの声が聞こえてきた。


『ごふっ……やるじゃねぇかシノノメ。瀕死回避スキルを使わなかったらやられてたぜ。 だがな、まだまだ終わりじゃねぇ! ――スキル『グランド・ストライク』ッ!!』


 ギリコの両手から赤い陽炎のようなものが立ち上がり、斧を赤く染めていく。そしてそのまま『レイジングアックス』を構え此方へと降下してきた。


「いや、凄いなあんた。やっぱ死線をくぐっている奴ってのは気迫が違う」


 『オリアクスの魔槍』逆手に持ち替える――。


『うおおおおおおおおおぉぉ!!!』


 ギリコが目前まで迫ってきた。


「だから、敬意を表してこの一撃をくれてやる。 ――貫けぇぇ!!」」


 武器が振り下ろされる瞬間、魔装をギリコ目掛けて投擲した――。


 その一撃は螺旋状の風を纏いながら回転し、直線状に突き進んでいく。


 振り下ろされた『レイジングアックス』と『オリアクスの魔装』が激突た瞬間、ギリコの武器を粉々に破壊しその体を貫く――。

 魔装はそのまま上空の雲を吹き飛ばし、遥か彼方へと消えていった。


 貫かれた衝撃でギリコが場外の壁へと吹き飛び激突。そしてそのまま動かなくなった。


 会場に静寂が訪れる――。


 そして盛大な歓声が沸き起こった。



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