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74.トーナメント戦① ★

 会場に静寂が訪れる。スクリーンに映し出された映像に観客全てが驚いていた。先程まで行われていた他のグループの戦闘とはスケールが違うことに。


 未だに誰一人スクリーンから目をそらさない。ジークやギリコ、その他の選手の魔法や特殊スキルにも驚かされたが、東雲のソレ・・は群を抜いていた。

 それ程までに衝撃的な映像だったのだ。


 遠く離れた場所で発動された竜剣スキルの衝撃波が、突風となって会場を吹き抜ける。風が止んだ時、空に浮かんでいた雲が円を描くように広がっていた。

 その幻想的な空の光景にウサミは見とれていたが、我に返り司会者としての役割を思い出した。


『じ、Gグループ勝者、シノノメ選手!! シノノメ選手の勝利です!!』


 ワアアアアアアアアアアアアア!!!


 ウサミの実況を皮切りに、止まっていた会場の時間が動き出す。物凄い歓声が沸き起こり、観客たちの興奮が高まっていった。


「すげー! なんだあの兄ちゃん! 一瞬で倒しちまったぞ!」


「あんな魔法スキルあったか!? 魔道の知識に関しては自信あったが、あの魔法スキルの存在なんて知らないぞ!?」


「わははは、あの王国騎士の顔を見てみろよ! すっげー呆けた顔してっぞ! いいぞシノノメー! キザなセリフ吐いた王国騎士に赤っ恥かいてやれー!」


 様々な反応が沸き起こる中、静かにスクリーンを見つめる者たちがいた――。


 東雲の存在を確かめに来たアリゲル、ソフィもその中の一人だ。二人は先程ヴィクセルと一緒にいたLv1の冒険者が東雲 徹とは思いもしなかったのだ。


 グランドマスターからの命令がアリゲルの頭をよぎる――。


『得体の知れない者に対して国王が興味を示しておられる。シノノメ・トオルを探し出し、その者の実力を確認するのだ。我が王に謁見するあたいがあるか否かを。もし、我が国に益となる人物ならばここへ連れてこい』


 王国騎士隊1番隊隊長のグランドマスターは用心深い。国王が東雲を連れてくるよう、ギルド本部長に命を下すことに快く思っていなかった。


 故に、グランドマスターはアリゲルとソフィに誰よりも先に調べてくるよう命を下したのだった。


 そしていま、目の前で起きた現象はまさに本物。エルグ山の一件は彼に間違いないだろう。そして何よりヴィクセルと一緒にいたという事は、曲がりなりにも王国側に協力的。だが、先ほど自分は彼に何をした? とアリゲルは思った。


 額に冷や汗が流れる。


 そしてソフィもまた、ダラダラと冷や汗を流していたのだった。


「ね、ねぇ……。あたしお腹痛くなったから、帰っていい?」


「ダメだ逃がさん」


「あぁぁ~。兄さんのアホー! 私たちの印象最悪じゃないー!」


 ソフィは頭を抱えてうずくまった。



 ◇

 


 ソフィ達が頭を悩ませている頃、主賓席にいるモルセルの元に私設兵の一人が現れた。


「モルセル様、至急お耳に入れたいことが――」


「なんだ」


 私設兵がモルセルの耳元で報告内容を伝えると、モルセルは顔をしかめ歯ぎしりを鳴らした。


(ザリウスを倒した男が今映像に映っている者だと!?)


 モルセルはスクリーンを睨みつける。まさか拉致計画を頓挫させた者が大会に出ているとは思いもしなかったのだ。

 私設兵のミドスは強い。王国騎士隊長のジークにも引けを取らないだろう。だが、あのシノノメという男の圧倒的な強さは未知数だった。あれ程強力なスキルを見たことがないのだ。


 モルセルの顔が険しくなる。


 自分の地位を乏しめることなく『元素の宝玉』を手に入れようとしていたが、綺麗ごとを言ってられなくなってきたのだ。


「どうかなされましたか?」


 少し離れた場所で座っているアイルに声をかけられる。隣には従者のセラもいた。


「いえ、なんでもありません。にしても、大盛況ですな。姫君も大いに楽しんでられる様子で」


「ええ。あんな熱いアプローチを掛けられるとは思いませんでした。私、ちょっとドキドキしてます。それに知り合いも参加してまして、少し嬉しく」


 アイルは微笑む。


「ほう?」


 モルセルは怪訝な顔をする。だが、些細な事だろうと気に留めるのを止めた。強い男を探す大会をわざわざ開くほどだ、大した男ではないのだろうと思ったのだ。


「これ程までにお美しい姫君だ、さぞかし参加者たちはやる気が満ちていることでしょう。その首飾りも非常に美しくお似合いですよ」


「まぁ、ありがとうございます。これは亡き母から授かった大事な物なのです。私の命より大切な――」


 アイルは神妙な面持ちで俯く。


「アイル様」


 ソフィに窘められアイルは慌てて顔を上げた。


「失礼しました。お見苦しいところを」


「いえいえ、どうやら失礼をしたのは私のようですな。今日は大事な祭りの日。大切なものを身に着けるのは当然のことです。大いに楽しんでいってください」

 

「ええ。ありがとうございます」


「ははは、礼を言うのはこちらの方ですよ」


 このときのモルセルの口調には、妙に確信めいたものが感じられた。


 


 

 ◇




『マスター。おつかれさまです』


 竜剣を収納空間へと戻したとき、スマホウォッチからゴンザレスの声が聞こえてきた。


「ああ、まさか俺一人狙われるとは思わなかったけど」


 『ドラゴン・インストール』を使ったのだ。当然と言えば当然か。殆どチート能力になるからこの状態で負けることは先ずない。


 だが俺は今、非常に嫌な汗をかいている。なぜなら、周りに人がいない・・・・・・・・のだ。


 やべぇ……。完全に海へと吹き飛ばしてるな。


 海面から浮かんでいる舞台下を眺める。竜剣スキルの余波で海は大荒れ、空の雲は円を描くように散っている。


 ダラダラと汗が流れる。


「ご、ゴンザレス?」


『はい、マスターの竜剣スキルの威力を見て観客全てが驚き、興奮で盛り上がってます。それと各グループの勝者も既に決まりました。まもなくメイン会場へと転送されるかと思います。あ、それとマスターが吹き飛ばした選手たちは既に救護室へと転送されているので、心配しないでください』


 救護室へと転送された――、その一言にホッと胸を撫でおろす。 


「そうか。わかった。じゃあ、暫く待機してる」


 ゴンザレスと通信を終え、空を眺めながらしばし考える。

 竜剣スキルは少し控えるべきか。観客にも被害出そうだし。それに他の装備アイテムもいろいろ試してみたいしな。

 危なくなったら竜剣使えばいいだろ。


 ある程度の方針を決めたとき、体の周りが光輝き、視界がホワイトアウトする。

 視界が戻った時、歓声が響き渡るメイン会場の中心へと立っていた。隣には勝ち残ったのであろう選手が7人いた。


『ごらんください! 今、選抜された8人の選手が現れました! 激しい戦闘の中、勝ち残ってきた猛者たちです! 彼らに盛大なる賛辞を!』


 ワアアアアアアアアアアアアア!


 す、すげぇ……。


 観客たちの歓声に圧倒してしまう。空中に浮かぶいくつものスクリーンには、選手たちの顔がアップした映像が映し出されている。もちろん俺の顔もだ。


『それでは、これよりトーナメント戦へと移行します。が! その前に! 勝ち残った選手たちの簡単な紹介をさせてもらいまーす!! 皆さん、参考までにLvくらいは知りたいですよね!』


 ん? いいのか?


 他の選手を見ると気にもしてないようだ。余程自身に自信があるのだろう。


『Aグループ勝者、ギリコ選手!! Lv42、斧使い! その屈強な肉体から繰り出す攻撃はまさに一撃必殺! 何者も寄せ付けない竜巻スキルで優勝を狙うか!?』


 え? ギリコ? あ、マジだ。勝ち残ってるよ。


 スクリーンには先ほどの乱戦時の映像が流れていた。ギリコの特殊スキル『レイジングバースト』で選手を吹き飛ばしていっている。


『因みに、どうやらギリコ選手には因縁の相手がいるようです!』 


 ウサミが俺へと視線を向けてきた。因縁かどうかはさておき、なんで知ってるんだと思いながらギリコの方へ顔を向けると、何事も無いように仁王立ちしている。


『Bグループ勝者、パドス選手!! Lv37、槍使い!! 槍を使ったトリッキーな動きで敵を翻弄、そして滅多刺し! ヒット&アウェイで確実に仕留めていく!!』


 短い茶髪で長身、爽やかな笑顔をしている。

 映像から見るにかなり俊敏な選手だ。集団戦でも間合いを一定に保ち、急所を的確に狙い敵を倒している。近接型では厳しい相手になりそうだ。


『Cグループ勝者、グレゴリー選手!! Lv50、召喚士!! 多種多様な生物を召喚・使役し敵を蹂躙していく! ちなみに、この資料によりますと彼は何とッ!! 絶滅した古代種をも召喚できるようです!』


 フードを被っていて顔はよく見えないが、中肉中背の男性。見た感じ年齢は結構高いように見える。

 先日のガザの件でも思ったのだが、召喚スタイルで戦う者もいるのか。


『でも、召喚魔法って現存しているモノを召喚・使役する魔法ですよね?』


 ウサミが首を傾げながらポツリと呟くと、グレゴリーが前へと出てきた。


「よくぞ聞いてくれた! そう! 召喚魔法と空間魔法の理論を融合し、古代種の召喚に私は成功したのであーる!! わははははは! さぁ、私を褒めたたえ――」


『続いてDグループ勝者――!!』


 ええー! ウサミ空気をぶった切ったぞ!

 しかし、あのグレゴリーって男もただ自慢したいが為にこの大会に出場しのか? ほら、膝から崩れ落ちてるし。


『我が王国騎士7番隊・隊長ジーク=ジークハート様だぁぁぁ!! キャー! 超イケメンですよねー! Lvは60、剣使い! 紅蓮の炎を身にまとい戦う姿はまさに不死鳥のごとく、かっこいい良すぎです結婚してください!!』


 ウサミのテンションが上がっている。というか、会場にいる婦女子の方々が黄色い声を発していた。


 イケメンだけでこんなにもモテハヤサレルノカ。


「コォラアァァ、ウサミィィ!!」


『ひゃわっ! ご、ごめんなさいー! あ、あはははは。取り乱しました』


 ビックマムの叱責が飛んできてウサミは縮こまってしまう。


『つ、続きましてEグループ勝者、エドガー選手!! LV56、魔法使い! 強力な4元素魔法を駆使し、範囲魔法で予選を勝ち抜きだぁ!』


 長髪で大人しそうな青年。

 だが、顔の割には容赦ない範囲魔法を駆使して敵を倒している映像が流れていた。


 エドガー選手が前へと出てきて杖をかざし詠唱すると、空に大きな氷の塊が出現した。そして続けて詠唱し幾つもの炎の玉が氷に被弾し蒸発。それは霧状となり空へと舞い散ると、虹が浮かび上がった。

 観客席から大きな拍手を送られ、エドガーは深々とお辞儀をした。


 こ、こいつできるぞ。


『なんという粋な計らいなのでしょう! これは好感度アップですね。では次のFグループ勝者、シュリ選手!! Lv31、弓使い! 遠距離からの精密射撃の腕は、先の戦闘で折り紙付きです!』


 後ろ髪を結った小柄な童顔少年。容姿から察するにまだ10代半ばじゃないだろうか。

 この少年もまた前に出てきて、コインを頭上へと高く投げた途端、弓を構え放物線を描くコインに矢を当てた。スクリーンには矢じりがコインを貫通している映像が流れていた。


 観客席からまた盛大な拍手喝采が沸き起こる。


『エドガー選手から続いてシュリ選手も素晴らしい余興を見せてくれました! さぁ、残るは後二人!!』


 スクリーンに俺の姿が映し出された。


『Gグループ勝者、シノノメ・トオル選手!! 強力なスキルで他の選手を一掃した姿はまさに圧倒的!! Lvは――、……は? え? あ、あれ? み、見間違えじゃない……?』


 ウサミは手元にある資料を穴が開くように見つめている。


『何という事でしょう!! シノノメ選手、Lv1! Lv1です!! なのに何故がアムールギルド長の推薦印が押されているーー! ちょっとギルド長ー! どういうことなんですかー!』


 会場がざわつく。

 すると、スクリーンの一部にビックマムの姿が映し出された。


『わはははは。その坊やは確かにLv1さね。だがね、その力は『 S 』ランクに匹敵する。ああ、あたしが太鼓判を押すさ。――モルセル。あんたのお気に入りの兵士にも負けないよ?』


 ビックマムの挑発に呼応するかのようにモルセルの顔もスクリーンに映し出された。


『ははは、面白いことを言うなボニア』


 モルセルは柔らかな口調で答えているが、その目は笑ってはいない。恐らく、今のやり取りでモルセルは感ずいたのかもしれない。

 俺たちがアイルの拉致計画を阻止したことを。


『え、え~と、進めていいのかな? かな? はい! 進めちゃいますよー! Hグループ勝者、ミドス選手です! ギルド長が言ったようにミドス選手はモルセル領主の私設兵で有名です。

 Lvは65、双剣使い!! 特殊スキルを兼ね備えた武器を4本所持しており、王国騎士隊長に匹敵すると言われています!」


 ミドスは煌びやかな鎧を身に纏い、その腰には左右に2本ずつ計4本の剣を装備していた。

 彼はただ静かに佇んでいる。


『さぁ、これで全員の紹介が終わりました! この中で最後まで勝ち残るのは誰か!!』 


スクリーンに8人の姿が映し出される。


挿絵(By みてみん)


『これよりトーナメント戦を開始します!!』


 今、ここに本選開始の鐘がなる――。


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