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73.バトルロイヤル ★

『選手の皆さんは既にお聞きになっているかと――』

 

 遠くで司会者の声が聞こえる。目を開けると海の上にいた。どうやら新たに作り出した島舞台へと転送された様だ。初めての転送経験に少しドキドキした。

 にしても転送か……。ガチャで転送系のアイテムとか出れば、ノアル村の皆に会いに行けるかもな。少し懐かしい気持ちに浸りながらスマホウォッチのある機能を起動する。


 しかし、まさかマーメイドの姫様がアイルだったとはな……。なんつーベタなオチ。まぁ、過ぎたことはしょうがないか。


『マスター。聞こえますか?』


 スマホウォッチからゴンザレスの声が聞こえてくる。脳内ではない、スピーカーから聞こえてくる音声だ。今朝ガチャで手に入れたアイテム『会話チャント機能』だ。擬人化したゴンザレスとは意思疎通ができなくなってしまっていたが、こいつのお陰で俺は再びゴンザレスと離れた場所でも会話ができるようになった。


 要するにゴンザレスを危険な目に合わせずにサポートを受けられるって訳だ。


「ああ。聞こえるぞ。音声は良好だ。いつも通りサポート頼むぜ? ゴンザレスの声が聞こえないと調子が出ないからな」


『ふふ、ありがとうございますマスター。私もマスターの為に頑張ります』


 他愛も無いいつもの会話。だが、これから戦闘を始めると言うのに何故か心は踊っていた。


『いい男がいればウサミが――』


 司会者の声がこの遠く離れた舞台まで聞こえてくる。大会の司会者は中々に陽気な人物のようだ。場の盛り上げ方を心得ている。

 音声はどうやら頭上に浮かんでいる水晶球から発せられているようだった。中々に面白い魔法だと思いながら周りを見渡す。

 それぞれの屈強な男たちが各々の武器を抜き始めていた。お互いに獲物を見極め、今か今かと闘気を高めているようだった。


「ゴンザレス」


『はい。乱戦では小規模攻撃より、大規模殲滅スキルを使うべきかと。初手で一気に決めるべきです』


 その一言を聞いて笑みが込み上げてきた。


 右手を掲げる。


「クイックオープン――」


 何もない空間からこの場に相応しい剣を具現化するために――。


『マスターッ! 竜剣の使用を進言します!』


「ああ!! いくぞ! ――『土竜・ウォルガイア』ッ!!」


 砕けた空間から大剣が顕現。柄を握り力ずよく振り下ろすと同時に司会者の大声が響いてきた。


『バトルロイヤルッ!! 試合ぃ開始でぇぇぇえぇぇぇぇええっっす!』


「「「「ウォォォオオオオオオオオオオオ!!」」」」


 開始の合図と共に、あらん限りの雄叫びが響き渡った――。




 ◇




 試合開始の合図の瞬間、ジークは烈火のごとく対峙する者たちへと斬りかかった。


 王国騎士隊7番隊隊長ジーク=ジークハート。ジークハート家の16代次期当主。代々王国騎士を輩出してきた由緒ある家である。

 ザリウスが謀反を起こし七番隊長の座が空位になったことにより、その座を若くして勝ち取る。その成長速度は誰もが目を見張るものだった。


 それもその筈、ジークハート家の子は生まれて直ぐに特別な契約を施される。自然界に存在する精霊をその体へと宿す秘術。

 これにより常人離れした能力を得る―ー。


 契約を施されたは『火の精』。文字通りジークの体から烈火のごとく炎が巻き起こる。


「オラオラオラァ! 俺に焼かれたい奴はかかってこいやぁ!」


 対峙する対戦者達もまた歴戦の強者だが、その業火の前に成す術もない。近づくだけでその熱気によりダメージを負うのだ。モルセルの大魔法によって肉体な損傷は受けないが、精神が擦り減り次々と倒れていく者が続出していった。

 魔法で対応しようとする者もいたが、詠唱している間に切り伏せられる。


 あっという間にジーク以外、誰も立っている者がいなくなった。


『な、なんという事でしょう!! Dグループはあっという間にに決着が着いてしまったーー! 早い早すぎる! しかもあの鎧姿は王国騎士隊の隊長クラスだぁぁ! 

 っていうかなんで騎士隊長様が参加しているの!? ウサミ、アイル様に嫉妬してしまうんですどー!』


 スクリーン映像に流れたジークの勇姿に会場全ての観客が熱狂した。幾つもあるスクリーン全てがジークの顔をアップする。


『俺は王国騎士隊7番隊長、ジーク=ジークハートだ! 姫君よ、貴方はこの俺がもらい受ける』


 ジークの歯がキラリと光ると観客席にいた婦女子が黄色い声をあげる。その様は東雲の世界でいう『アイドルを前に失神寸前』のそれである。


 「キャー! ジーク様だって! 超イケメンなんだけど!」


 「私、あんな言葉言われたらもういっそのこと死んでもいい!!」


 「糞がぁイケメン!! キザなセリフ吐いてるんじゃねーぞ!!」


 男どもからは大ブーイングの嵐である。


 だが、当の本人であるアイルも自身を求められる直球的な言葉に胸を躍らせていた。


「まぁ、頼もしい殿方ですね。ふふ、そのお言葉楽しみにさせていただきますわ」


『さぁさぁさぁ、盛り上がってまいりました!! 他のグループの状況はどうなっているのでしょうかっ!!』


 ウサミが意気揚々と叫ぶと次々とスクリーン切り替わり、Dグループ以外の舞台映像が映し出される。


 スクリーンに映るそれぞれの舞台戦闘は激しいものだった。怒声、剣戟の響き、飛び交う無数の矢、そして魔法の乱れ打ち――。

 その映像はまさに『戦場』だった。技量をぶつける1対1の決闘ではない。己以外は全てが敵。持てる全てを掛けなければ生き残れない。

 むき出しの感情が場を支配していく。戦場の熱気が伝播し、観客席が大いに盛り上がっていく。


 ワアアアァァ!! 


 歓声が会場を覆い尽くす。


「すげぇ! すげぇ!! こんな戦いみたことねぇ!!」


「うおおおお!! 熱い! 熱すぎるぜ!」


「皆がんばってー!」


 皆がその戦闘に興奮していた。


『おーっと、Aグループ舞台に巨大な竜巻が発生して次々と参加者たちが呑み込まれていってます!! ああ!? 何という事でしょう! あっという間に場外の海へと吹き飛ばされてしまったー!』


 ウサミは興奮しぴょんぴょんと跳ねながら実況している。竜巻が収まるとその中央にはスキンヘッドの男が仁王立ちしていた。ウサミは急いでスキンヘッドの登録番号を確認し手元の資料を確認する。


『Aグループの勝者はギリコ選手です! なんという肉体! マッスルですマッスル! 屈強という言葉にピッタリではないでしょうか! 他のグループも続々と勝者が決定していってます! 早い早すぎるぞ!! もうちょっとウサミを楽しませてくれー!』


 ほんの数分の内に各グループの勝敗が決まっていく。戦場は先手必勝。如何にダメージを受けずに場を支配するか、各々の強者たち本能のままに戦場を駆け巡る。

 ジークの次に勝利したギリコがスクリーンに映し出され歓声が沸きあがる。


 ワアアアアアアアアァァ!!


 勝利したギリコは雄叫びをあげる。


『ウオオオオオ! 俺が一番だ! 誰であろうと俺はもう負けねぇ!! シノノメぇ!! お前を倒し姫は俺が頂いていく! いいか! お前は俺が必ず倒す!!』 


 スクリーンいっぱいにギリコの暑苦しい顔がアップで映る。そんな様子にウサミは何かを感じ取ったようだった。


『ひゃわわ。これってもしかしてー? まさかの~? 因縁の対決!? キュピーン! ウサミの耳センサーにビンビンきてますよー!』


 ウサミは興味を引いたらしく手元の資料を高速で捲り始めた。ゴンザレスとリリィに至っては苦笑していた。二人はルディの一件を思い出したのだ。


「あの人……マスターに対抗心を相当燃やしてますね」


「ある意味、ギリコさんも被害者よね」


「なんだい? シノ坊とあの男は因縁があるのかい?」


「いやー、因縁っていうか。あ、あはははは」


 リリィは困ったように愛想笑いをする。ビックマムは首をかしげたが、それ以上は詮索しなかった。


『えっと、シノノメ――、シノノメ――。あ! 有りました有りました! 『シノノメ・トオル』選手はGグループにいるようですね! どんな人物なのでしょうか! スクリーン中継おねがいしまーす! 』


 ウサミがギリコの因縁の相手の名を言った瞬間、即座に反応した者がいた。観客席にいるアリゲルとソフィ、そしてDグループ舞台でスクリーンを眺めているジークだった。 

 そしてもう一人、その名を聞いて顔をほころばせる姫君――アイルの姿が。彼女もまた、なんだかんだで彼がこの大会に出ているのではないかと密かに楽しみにしていたのだ。


 東雲がいる舞台へと全てのスクリーンが映像を映し出していく。そこには他のグループとは違った異様な光景が映し出された。

 舞台中心には大剣を携えた青年が一人。そしてそれを囲うように大勢の参加者たちが各々の武器を抜き身構えていた。まさに1対99の構図そのものだった。


 『こ、これはどういう事でしょうか!? 1人の青年を大勢が囲んでいる!? おや? あの番号は……! なんと! 彼がシノノメ・トオル選手だー! いったい彼に何が起こったのでしょうか!』


 ウサミが混乱した実況をしている間に、リリィはどういうことかゴンザレスの方へと振り向く。


「ご、ゴンちゃん! なんでシノが一人で狙われているの!?」


「えっとですね、竜剣を装備したマスターの雄叫びが物凄い殺気だったらしくて、皆マスターに意識が行ってしまったようですね。要するに『こいつやべぇ!』と共通認識で狙われてる状態です」


「ブッ!!」


 リリィは驚いて思わず吹いてしまった。


「竜剣持って雄叫び上げただけで狙われるって……。どんだけ凄い殺気なのよ……」


「ほう、シノ坊が持っている武器ってこの間のアレ・・じゃないか。わははは、いきなり飛ばすねぇシノ坊」


「マム、なんだか楽しそうですね」


 ゴンザレス達は東雲が映るスクリーンへと視線を向ける――。



 

 ◇




 武器を携えながら周囲に視線だけ動かす。ものすごい形相で睨まれている。


 う、うーん。場の雰囲気に充てられて雄叫びを上げたのだが、どうやら竜剣の能力アップで殺気まで増幅されたっぽい。


 完全に俺から始末しようとする雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。


「おい! こいつやべぇぞ! 鳥肌がビンビンきやがる!」


「ああ、俺もこいつは相当やべぇ奴だと思ったぜ……。思わずちびりそうになっちまった……」


「なぁ、こいつ先に倒さね? 皆で倒せば怖くないってやつ。どうよ?」


「のった! ウラァ! 他の連中も手ぇ貸せやぁ! こいつを先に倒さないと俺たちは先に進めねぇんだ! 恐怖を雄叫びで塗り替えろ! 野郎共ぉぉ!!!」


「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!」」」」 


 物凄い雄叫びが響き渡り、それぞれ武器を掲げエンチャント魔法や強化魔法、攻撃魔法を唱えていく。

 詠唱によって放たれた数多の遠距離魔法が飛んできた―――。


 えぇぇ。マジカ。 なにこの統一感。

 まさかの展開にげんなりする。


 だが、こういうのは嫌いじゃない。何故か高揚した気分が沸きあがってくる。俺もまた、叫びたい衝動に駆られ―――。


「掛かってこいやぁぁ!! ――ドラゴン・インストール:『土竜』ッ!!!」 


 ありったけの声で叫んだ――。




 ◇




 観客席側のスクリーンには東雲に放たれた数々の遠距離魔法が着弾した映像が流れていたところだった。


『ひゃわわ! なんということでしょう、シノノメ選手もろに食らったぁぁ! これはダメだー! 流石にコレはやりすぎか……と……? あ、あれ?』


 ウサミの声に連動するかのようにゴンザレス達を除く観客たちは自分の目を疑う。魔法の爆発の煙が晴れると、そこには無傷なままの東雲がいた。


 しかしそれだけではない。足元にはオレンジ色に光る魔法陣が展開し、東雲の周りに黄色い稲妻の閃光が走りだしている。魔法陣はさらに輝きを増す。

 魔法陣を通して東雲の体に力の本流が流れ込んでいく。それはやがて破壊衝動として東雲の精神を犯そうとしていくが、無理やり自我を保とうと叫び咆えた。


 叫び声を皮切りに『土竜・ウォルガイア』を逆手に持ち替え――――。


『わりぃな、あんたらはここでリタイアだ! くらえ――――グランド・インパクトォォ!!』

 挿絵(By みてみん)


 勢いよく『土竜・ウォルガイア』を地面に突き刺すと、足元にある魔法陣を中心に大規模な隆起爆発が起きた。

 それはまさに『土槍』。舞台一面が鋭く穿ち、参加者たちを戦闘不能へと追い込んでいく。膨大な爆発エネルギーは余波となって海を巻き上げていった。


 隆起した地面はガラスのように弾け、爆心地には大剣を引き抜く東雲の姿があった――。

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