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71.はちみつ水 ★

「もぐもぐっ。これおいしーですねマスター」


挿絵(By みてみん)


 闘技場へ向かう道中、ゴンザレスは歩きながらサンドウィッチを頬張っていた。隣でリリィも同じように食べている。


「朝霧の時間帯」の鐘がなってからゴンザレス達を起こし、宿を出てきたため朝食はまだ取っていなかった。


 なので朝食はガチャで手に入れたサンドウィッチを歩きながら食べてもらっている。因みに竜剣の契約は済ませておいた。


 ゴンザレスには無断でガチャを回したことに対して小言を言われてしまったが、結局は許してくれる。


「これもガチャで出たアイテムなんだ? その辺のお店のパンよりフワフワしている」


「そうだ、飲み物いるか?」


「え? 流石に紅茶を歩きながら飲めないよ?」


「いや、歩きながらでも飲める飲料水をさっき手に入れたんだ。クイックオープン、『黄金蜂のはちみつ水』×2」


 空間が弾けて出現したはちみつ水をゴンザレスとリリィに手渡す。ゴンザレスは早々にストローに口を付ける。


「ん~~おいしいーですっ。ありがとうございますマスター」


 リリィはキョトンとした表情をし――。


「え”!? 『黄金蜂のはちみつ水』!?」


 急に驚いた。

 

「エルフの大好物なんだろ? 飲んでいいよ」


「え、え、え? い、いいの!? こ、ここここここれってすっごく貴重な蜂蜜なんだよ!? だってだって、お祝いの時にしかスプーン一杯分しか出してもらえないだよ!? 私が飲んじゃっても、い、いいのかな」


「ランクは『 R 』って表示されてたからなぁ。別においしく飲めればいいんじゃない? まだ8杯分あるし」


 リリィは『黄金蜂のはちみつ水』を見つめ恐る恐る口にすると、ふにゃりとした表情になった。


 凄く嬉しそうに飲んでる。喜んでもらえて何よりだ。


 暫く歩いていると闘技場の入り口に付いた。


 入り口前には屈強な男どもが大勢いた。恐らく参加者だろう。その周りにはギルド職員が忙しなく動き回っている。ちらほらと王国の兵士たちの姿もある。


 凄いな……。一体何人いるんだ? ざっと見ただけでも数百人以上はいるんじゃないだろうか。


 何処が参加者の受付か見まわしていると、見しいった顔を見つけた。向こうもこちらに気づいたようだ。


「おお、シノノメ殿。こちらにいましたか」


「シノ坊。昨日は大変だったようだね」


「おはようございます。ヴィクセルさん、ビックマム」


「ああ、おはようシノ坊。話はヴィクセルから全て聞いているよ。あんた達も無事で良かったよ」


 豪快に笑いながら抱きしめられ、背中をバンバン叩かれる。


「ぐふ!」

  

「きゃ!」


「わっ、マム! く、くるしいです」


「わははは! 苦しいのは生きている証拠だよ。――っと、そうだった。シノ坊、ヴィクセルから話があるそうだよ」


 話? なんだろ。


「内容を聞かれるとまずいのでこちらへ」

 

 ヴィクセルの後を付いて行った。



 ◇



「護衛の人員入れ替え!?」


 案内された部屋で素っ頓狂の声をあげてしまう。


「ええ。今朝になってモルセルが我々の所まで訪れまして、我々王国騎士隊を外して私設部隊でマーメイドを護衛すると言い出したのです。先日の襲撃された件を楯に、姫の護衛は任せられないと。

 大会の全権はモルセルにあります。我々王国騎士隊と言えど、そこまでの発言権は無いのです」


「なんで今になって……」


「マスター。ザリウスが死んで王国騎士隊に護衛を任す必要性がないと判断したからではないでしょうか?」


「ゴンちゃん、それってどういうこと?」


「恐らくですが、モルセルはザリウス達を使ってマーメイドを拉致をさせる際、王国騎士に失態の全責任を被せるつもりだったんだと思います」


 あー、なるほど。そうだとしたら辻褄が合うな。


「ザリウスが死んだから、王国側の護衛が逆に邪魔になるってこと?」


「ええ。それと向こうも王国騎士隊を警戒していると考えていいでしょう。最悪、モルセル本人が暴走する可能性も」


「嬢ちゃんの言う通りだろうね。だが、民衆が見ている前でモルセル自身が手を下すかね?」


 まぁ、自棄やけになったら人間は何するか分からないからな。


「で、結局はどうするんです?」


「シノノメ殿はそのまま予定通りに参加してください。部下に観客席側で警戒させ、私はなるべく主賓席に近いところにいます」


「わかりました」


「さ、シノ坊そろそろお行き。そろそろ時間さね。嬢ちゃん二人はあたしに付いてきな。特等席用意してあるよ」


「え! 本当!? やった! ゴンちゃん、行こっ!」

 

「はいっ!」


 皆で部屋を出る。 


 ビックマムの後ろを二人が追いかけていく。


 途中、此方に振り向き――。


「シノー! もしマーメイドのお姫様と優勝する前に話すことができたら、試合棄権してよー! 浮気したら私泣いちゃうからー!」


「ですー! マスター頑張ってくださいっ」


 二人の姿が遠ざかる――。


「シノノメ殿は彼女たちに愛されているのですな」


 隣に立っていたヴィクセルに声を掛けられる。


「失礼ながら、ビックマムから大凡おおよその事は聞いています。シノノメ殿の性格からして、あの二人の事を思うとこの大会に出場するのは心苦しいでしょうな。ですがマーメイドは普段滅多に会えない存在。余程、会わなければならない理由があるのでしょう」


「そのせいでこの大会の意味事態を壊してしまいますけど――」


 ぽんっと、肩に手を置かれる。


「いえ、今までマーメイドが我々人間に表立って接触することはなかったのです。それが今回に限って表に出てきた。きっと、シノノメ殿が姫と会うこと自体に意味があるのでしょう。私はそんな気がします」


 彼の横顔を見ると微笑んでいた。彼なりに俺を気遣ってくれたのだろう。


「さぁ、シノノメ殿は私に付いてきてください。控室まで案内しますぞ」


「――ええ、お願いしましす」


 大きな背中を追いかけるように、ヴィクセルの後を付いて行った。

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