66.ザリウス①
PCトラブルが起きて2回書き直したった(;´・ω・)
東雲たちがアラクネを倒した同時刻――。
(アラクネの反応が一斉に消えた……)
ザリウス達がいる場所はアムールの南側。ちょうど闘技所へ続く門へと差し掛かろうとしていた処である。
彼らの姿は無い。いや、実際には認識を妨害するアイテムによって、周りの人間から存在を認識できないようにしているのである。
周りの人々はザリウス達に気づかない。門を守る兵士もまた、ザリウス達の姿を認識していない。
もう少しで街を出るというところで、自身が仕掛けた罠に異変が起きたことに気付いた。
(おかしい……。建物に侵入した反応がない。此方の罠に気づいた? いや、守備隊の連中にそこまで見破れる奴はいないはずだ……)
王国の騎士たちを罠に嵌めるため、ザリウスは所持しているアイテムを駆使していた。離れた場所で建物内の反応を確認できているのも、使用したアイテム能力の一つだ。
それがいとも簡単に罠を見破られたことに、ザリウスは焦りの色を見せていた。
(まさか、『遠見のレン』がこの街に来ているのか? いや、奴は国境を警備している筈だ。アベルの街からこんな場所に訪れる理由がない。だが……)
色々な疑問が頭の中を駆け巡る。ザリウスは強い。一個人としての強さなら、アムールを守護しているヴィクセル達が束になって掛かってきても余裕で勝てるだろう。
だが、階級が上の騎士隊長がこの街に来ていた場合は話が変わってくる。
ザリウスが如何に7番隊の隊長を務めていたと言えど、その上位の隊長には敵わない。強さ故の階級制度。
それでも今日までザリウスが捕まらなかったのは、数多のアイテムを駆使する程の『慎重さ』があった故。こちらの行動を上回る存在と言えば、予言者である宰相だけだ。
宝玉の存在を知る宰相が俺に気づき妨害しているというのなら、今までの不可解な出来事に辻褄が合う。と、ザリウスは思った。
手下の男たちは、突然歩くのを止めたザリウスに小声で話しかける。
(ザリウス様、どうしました? 門はもう目の前ですぜ。周りの連中はこちらに気づいておりやせん。さ、参りましょう)
先へ進もうとした手下にザリウスは声を掛ける。
(お前たち、待て。いつでも戦闘できるよう態勢を整えておけ)
(へ? 何をおっしゃっているんです。ザリウス様が使用してくださったアイテムのお陰で誰も俺らに気づいていませんぜ?)
手下たちが不思議に思った瞬間――。
「ところがどっこい、気づいているんだなー、これが」
突然見知らぬ男の声が背後から聞こえ、ザリウス達は一斉に振り向いた。その姿を確認しようとした時、鈴の音と共にガラスが砕けるような音がした。
「なっっ!!?」
ザリウス達を覆っていた緑色のオーラ、認識阻害のアイテム効果が消滅したのだ。
驚いているのも束の間、足元で何かが砕ける音が聞こえた瞬間、体中が痺れザリウス達は地面へと倒れこむ。
「くそっ!」
「ぐわぁぁ! いでぇ! 体が痺れる!!」
「が、がは!」
周りにいた市民は、突然現れた集団が地面へと倒れこんだ出来事に驚いていた。
「皆さん! この男たちは指名手配中の『イビルノイア』です! 速やかにこの場から離れてください!」
別の男が大声で叫んだ途端、王国の騎士たちが何処からともなく現れ市民たちを避難させて行く。
この声はヴィクセルか!! とザリウスは聞いたことのある声に対して大声をあげた。
その間に市民を離れさせた騎士たちがザリウス達を囲っていく。
地面に片膝を付き、ひれ伏しながらザリウスは苛立ちを覚える。自分より下位階級の騎士による用意周到さに。
「ザリウス。とうとう貴様を捕える時がきた。大人しく縛につけ」
「く、くははは。 たかが麻痺させたぐらいで勝った気でいたか? ヴィクセル、お前は本当に甘いな! ――『ブレイク』!」
ザリウス達の足元に黄色い魔法陣が出現し、麻痺状態の体を癒していく。この状態異常を回復する力もまたザリウスが装備しているアイテムの能力だった。
麻痺が解除された瞬間、ザリウスはヴィクセルへと跳躍。一気に距離を詰め、剣をその喉元へと突き刺す――。
――が、切っ先はヴィクセル喉には届かず、光りの障壁がザリウスの刺突を防いでいた。
「なっ!!」
「こ、これは!?」
完全に仕留めたと思ったザリウスは驚愕し、迎え撃とうとしたヴィクセルもまた驚きの声をあげる。
「――『オールシールド』。自動で攻撃を防ぐシールドを張るアイテムだ。流石、油断できない相手だな」
ザリウスは咄嗟にバックステップを踏み距離を空ける。ヴィクセルの隣に現れた男に視線を移す。
その姿は騎士隊の鎧は装着しておらず、安物の装備品を着ている。どう見ても冒険者だ。と、ザリウスは訝しむ。
「ヴィクセルさん、大丈夫ですか?」
「ええ、助かりました。感謝いたします」
ヴィクセルの言動を聞きザリウスは驚いた。あろうことか王国騎士隊長を務める程の男が、一介の冒険者に遜っているのだ。
あり得ない。エリートである騎士が一介の冒険者に頭を下げるなど。あってはならない、と――。
元とは言え、騎士であったザリウスはヴィクセルの態度に苛立ちを募らせる。
「なぁ、あんた。レアアイテムを沢山持っているそうじゃないか。俺もアイテムを集めるのが好きでね。――数では敵わないだろうが、『レア度』に関してなら俺の方が上かもしれないぜ? だからさ、降参する気はないか?」
ザリウスはこの男から並々ならぬ自信を感じ取り、警戒を強める。
見た目で判断しては駄目だ、と。
だが、普段は慎重派なのにこの時は自尊心が勝り、ザリウスは男の挑発に真っ向から乗ってしまう。
「はッ! 数々のレアアイテムを持つ俺様に挑もうってか? 面白いことを言うな小僧! いいだろう、その自信――。へし折ってやる!」
ザリウスは空間収納バックから真っ赤に燃える色をした宝石杖を取り出す。その杖を目にしたヴィクセルが大声で叫ぶ。
「まずい! 『フレア・ボムの杖』だッ!!」
『フレア・ボムの杖』――。その宝石杖はレガル鉱山の火口ダンジョンから見つかったアイテムである。
王国の宝物庫に封印されし神秘のアイテムの一つであった。
その威力は『 HR 』の『プロミネンスの杖』に匹敵する。
ザリウスが宝石杖に魔力を通すと、周辺の大気が揺らいでいく。
「ふはははは、小僧! 大口を叩いた貴様にはそれ相応の死を――――」
ザリウスは目を疑った。
対峙する男が何もない空間から、一本の杖を具現化させている光景に。
その杖はザリウスが持つ『フレア・ボム』と対をなす属性――。
「ば、馬鹿な……」
身に覚えのある杖の造形美にザリウスは戦慄する。
「『アイシクルの杖』だとッ!? 貴様が何故それを持っているッ!!」
対峙する男が驚きの声を漏らす。
「へぇ、あんたこのアイテムを知っているのか。んー、ソウルガチャで手に入れたアイテムはこの世界にも存在するのか?」
男がブツブツと独り言を吐く姿を見てザリウスは激高する。
ふざけるな! それは破壊され失ったはずだ! この世に2本とない希少アイテムだった! 何故それがここに存在する!? と、ザリウスは混乱した。
「まぁ、とりあえずいいや」
「ふっざけるなぁぁ!!」
あっけらかんとした態度の男に、ザリウスは怒り狂う。
それが合図かのように互い同時に起動言語を唱えた。
「死ねぇぇッ!! 『フレア・ボム』ッ!!!
ザリウスの前面に赤い魔法陣が展開。
紅蓮に燃える火球が出現し、熱風を巻き起こす――。
「――『アイシクル・エッジ』」
対峙する男の前面に青い魔法陣が展開。
絶対零度の氷牙が出現し、周囲の空気を凍り付かせていく――。
互いの魔法が同時に完成、発射された。
対をなす属性同士が反発しあい、互いの力を相殺していく。その力は行き場を求めて風圧となり周囲を巻き込む。
「ぬおおおおおお!?」
「ぐわぁぁ! なんて風圧だッ!!」
「うおおおお!?」
その場にいた騎士、賊たちは目の前で繰り広げられた魔法戦の結末を見守る――。
暴力的な風圧が収まると、『アイシクルの杖』を持っていた男の手にはいつの間にか白い球が握られていた。
「いやー、あんたが盗んだアイテムを取り返せるかな? って考えてたけど、やっぱ無理そうだわ」
「はっ! この俺様からアイテムを取り返すだと? むかつく小僧だ」
ザリウスは次なるアイテムを取り出そうと空間収納バックに手を差し込む。
「ああ、だから当初の計画通り、――破壊する」
男が握っていた白い球を頬り投げた。放物線を描くようにザリウス達の頭上まで届いた瞬間、一本の光の矢が射抜く。
白い球が射抜かれたことによって破裂し、白い煙となってザリウス達を包み込んだ。
「うわっ!! ぺっぺっぺっ!! なんだこの白い煙は!?」
「なんじゃこりゃぁぁ! 俺の武器が砂になっていく!!」
「マジだ! 鎧まで!? ザリウス様!! やべぇですぜ!!」
手下たちが慌てふためく。王国から盗んだ特殊効果付きの武器・武具が砂へ変わっていくのだ。そしてその動揺はザリウスもまた然り。
数多のアイテムを収納している空間バックが砂へと変わっていく。装備している魔法武器、武具、アクセサリ全てが――。
「き、貴様……。一体何をした……」
動揺を隠しきれないザリウスは、何が起きたのか男に疑問をぶつける。あまりのショックの出来事に声が掠れていた。
「――アイテム破壊。あんたらが神秘だと言っているアイテムは所詮『 HR 』。俺はそれより上位ランクのアイテムを使ったまでだよ」
ば、馬鹿な……。これら全て神秘のアイテムが「所詮」扱い……だと? あ、あり得ない……。この男は一体何者なんだ……。と、ザリウスは得体の知れない男に恐怖を覚えた。
「お、お前は……。一体……な、何者なんだ……」
ザリウスの問いに男は静かに答える。
「――東雲 徹。 『 E 』ランクのしがない冒険者だ」




