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64.力のある者①

 激戦が繰り広げられていた訓練所では、大勢の兵士たちが戦闘の後始末で走り回っていた。破壊された壁の瓦礫の撤去作業、復旧作業をする際の被害個所の確認などだ。


 その訓練所中央には精鋭の騎士が集まり、『イビルノイア』の潜伏先へ向かう準備をしている。


 青銀色に輝くフルメタルの鎧、腰には装飾煌びやかな魔法剣、左腕には鏡面のように磨かれたカイトシールド。先の戦闘とは全く違う重装備姿のヴィクセルがいた。


「団長殿! 戦闘準備を整え終わりました。いつでも出発できます!」


「うむ。シノノメ殿が来るまで皆待機せよ」


 ヴィクセルとはまた違った鎧姿の騎士が声をかける。精鋭騎士たちの鎧は銀色で、ヴィクセルと比べて若干軽装であるがその性能は並みの鎧より上である。


 各々の騎士達の顔は気合十分といった表情で満ち溢れていた。それもそのはずである。先のシノの戦闘の凄さに皆あてられたのである。


 『イビルノイア』のボス、ザリウスは賊とはいえ元は王国騎士隊の7番隊隊長だった男。その実力は折り紙付きである。


 いくらヴィクセルの部下が優秀とはいえザリウスと戦うということは死を意味する。ヴィクセルもまた無事に済むとは思ってはいなかったが、シノノメ・トオルがこちら側についているという事に頼もしさを感じていた。


 ビックマムに『 S 』クラス並みの冒険者がいると紹介された時、その姿はビギナー装備の姿で半信半疑だったが先の戦闘でヴィクセルはその考えを覆させられたのだ。


 圧倒的な強者。まさにその一言。


 本来、通常のゴーレムならば訓練された兵士たちでも討伐できる。だがエレメンタル系となると話が変わってくる。近づくだけで属性による怪我を負い、反属性でないとダメージはあまり与えられない。


 2体のエレメンタルゴーレムを召喚された時、ヴィクセルは兵の何割かは死ぬだろうと覚悟していた。だが、実際はそうならなかった。いや、兵の誰一人戦闘に参加することなくシノノメ一人で終わらせてしまったことに息を呑む。


 あまつさえ、その扱う武器やアイテムの能力はヴィクセル達の想像を超えるものであり唖然とさせた。


 ヴィクセル自身が受けた呪い『キルティ・ブラッド』は『 HR 』ランクのアイテムである。封印指定とされている危険なアイテムを大したことないと言うシノノメに、彼の底知れなさを感じたのだ。


 大抵、力のある者は大まかに二つの分類に分けられる。『利己主義』と『利他主義』。前者はザリウスのように自身の欲を満たそうとする者。後者は騎士隊のように力を他者の為に使おうとする者だ。


 シノノメの力は一番隊隊長のグランドマスターの力を優に超えている。それ以前に騎士隊全てで掛かっても勝てないだろう。そのような力を以てしても謙虚に振る舞うその姿にヴィクセルは好感を覚えていた。


(このような男がいるのだな)


 ヴィクセルはふと思う。彼がこの国の騎士として属してくれれば王国の戦力は強固になるだろうと。今は他国との戦争は無いが、この先何がきっかけで争いが起こるかはわからない。


 自国の犯罪も少なからず起きているのが現状だ。我々がもっとしっかりとして民の平和を守らなければならない、とヴィクセルは想いをより一層強くする。


「団長殿! シノノメ殿がお見えになられました!」


 騎士の一人に告げられ、此方へ向かって歩いてくるシノノメたちの姿が見えた。


 ビギナー装備に『 E 』ランクの冒険者。その姿を見たら誰もが頼りなく思えるだろう。


 だが、その装備姿や低いランクとは裏腹にその力は本物であり、その目からは強い意志を感じられる。


 そんな青年の傍を二人の少女達がついてきている。その顔はどことなく信頼しているように感じられた。


(ふむ。我が愛娘も彼のような者を見つけて嫁いでくれると安心なのだがな)


 彼を慕う二人の少女の気持ちも何となくわかる気がする、と思うヴィクセルであった。




 ◇




 『ソウルガチャ』によってアイテムを補充した後、ヴィクセル達が待つ訓練所の方へと向かうと既に兵士たちが集まっていた。 


 先ほどの戦闘とは全く違う姿に驚く。その姿は騎士のように煌びやかな武具・防具を装備していたのだ。


 精鋭部隊と言っていたからきっと騎士の人なのだろうと勝手に解釈していると、一人の騎士がこちらに駆け寄ってきた。


「お待ちしておりましたシノノメ殿。さ、此方へどうぞ」


 言われるがまま付いて行いていくと、ヴィクセルの前まで案内される。


「お待たせしてすみません。少しばかり時間が掛かってしまいましたけど、此方の準備は大丈夫です」


「いや、大丈夫だ。それと君たちの助力に感謝する。ザリウスは手ごわい。我々だけでは無事では済まないと覚悟はしていたが、シノノメ殿の助太刀は非常にありがたい」


 確かにザリウスの手下の男は狡猾であった。切り札を用意し、あまつさえ人質まで用意する周到さ。きっとそのボスであるザリウスもまた切れ者であるのだろうと思った。


「シノノメ殿。先の戦闘での貴方の力に我々は感服いたしました。それと、団長殿の呪いを解除していただき有難うございます」


 一人の騎士が深々と頭を下げると、続いて他の騎士たちも頭を下げていく。


「いやいや、自分にできることを最大限にやったまでのことですので」


 気恥ずかしさの余り両手を振る。自分より年上の人にお礼を言われる事は滅多にない経験なので戸惑ってしまう。


 でも、お礼を言われるのは気持ちが良いものだった。横目でリリィ達を見ると嬉しそうな表情をしていた。


 こそばゆい雰囲気を耐え切れず、本題へと話題を変えることにした。


「話を戻しますけど、作戦等は考えているのですか?」


「ふむ、そのことなのだが西地区の歓楽街は人で溢れかえっている場所でな。まずは潜伏先の周りを兵士たちで包囲、通行人が入らぬよう区画し、後に精鋭隊で乗り込む。単純な作戦だがこれは奴らに気づかれる前に行わなくてはならない」


 なるほど。確かに住人の安全も最優先にしなければならない。だがそうしている間に奴らに気づかれるのは明白だろう。


 ヴィクセル達の鎧を見る。


 うーん、絶対に一目で王国の部隊だって分かるよなー……。他に方法は……。


 やっぱ俺たちが先行したほうがいいよな。うん、ゴンザレスに確認させた後ヴィクセルさんに提案してみるか。


 少し考えている素振りを見せてからニャーバンクルを頭に乗せているゴンザレスへと声をかける。


「ゴンザレス。潜伏先の位置情報は索敵機能で補足できているか?」


「はい、範囲内ですので出来ます。対象をロック。ちなみにまだ建物内にいますね。地下室にいる人数は17人。んー、中で何か色々と準備していますね。あ、一つ反応が増えました。これは魔物?」


 魔物が増えたという事は、あの男のように使い魔を召喚したという事だろうか? なんにせよ、早く行動を起こした方が良さそうだ。


「そうか。引き続きゴンザレスは連中の動向を探っていてくれ。ヴィクセルさん、どうやら連中もこちらに感づいたと見た方がいいかもしれません。もしかしたら俺らを罠に嵌める可能性もあります」


 ヴィクセル達は俺とゴンザレスのやり取りを聞いていて、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。


 まぁ、無理もない。俺だってゴンザレスの索敵機能の凄さには驚かされている。要するに万能過ぎるのだ。怖いほどに。


「彼女はそんなことが分かるのか……。 それに先ほどと違って耳と尻尾があるのは気のせいか?」


「まぁ、ちょっと彼女に手持ちのアイテムを使った反動でこうなってるんで気にしないでください」

 

 ゴンザレスの耳を撫でると「ふにゃ!?」と驚きの声をあげる。


 うーむ、顔を真っ赤にしているという事は性感帯なのだろうか?


「とりあえず連中の行動は把握できていますので、奴らに気づかれない程度のところまで移動しませんか?」


「う、うむ。シノノメ殿がそういうのならばそれに従おう」


 ヴィクセルに確認を取った後、守衛所を出て『イビルノイア』が潜伏している西地区へと向かっていった。



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