62.幻獣・ニャーバンクル ★
この62話は満員電車・バスの中で読むのはお勧めしません。
スマホを覗かれなければ問題ないと思います。
抱き着いているゴンザレス達の頭をクシャクシャに撫でる。
「わふっ! マスター止めてください!」
「ちょっとシノ!?」
「はいはい。今は時間もないから。ほら離れる」
二人は渋々と言った感じで離れた。
「むー」
「たはは。ごめんごめん。つい嬉しくなっちゃって」
残念がる二人に対し、ちょっと居た堪れない気持ちになる。
「あー……。でも、宿に戻ってから……な」
頬を掻きながらそう言うと、二人は途端に明るい表情になった。
「はい! マスター!」
「う、うん!」
機嫌が直ったところで『アイテム収納』からアイテムを取り出す。
「さてと、早速をスキル覚えるか」
先ほど出た『バニッシュ』と『魔法察知の水』を使い、新たなるパッシブスキルを覚える。
現状のステータスを確認するべく、意識を自身の内側に向けると視界に数値が表示されてきた。
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名前:東雲 透
Lv:1
体力 :524
筋力 :330
防御力:610
素早さ:605
魔力 :700
装備アイテム
・アジルタの指輪
・エカトルの指輪
・アルバの指輪
・無病息災の腕輪
・常闇の指輪
・精霊王オリシスの腕輪
スキル:『ソウルガチャ』
『透視の瞳』
『円迅』
『チェイン』
『リストレイント・チェイン』
パッシブスキル:『エアレイド』
『バニッシュ』
『魔法識別』
装備加護:『状態異常の無効化』
『無病息災』
召喚 :『ディメンション・ゲート[Lv1]』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:暴竜』
派生スキル:『グラビティ・アルファ』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:土竜』
派生スキル:『グランド・インパクト』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:水竜』
派生スキル:『水竜の魔眼』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:鋼竜』
派生スキル:『ゼクスブレイド』
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「なぁ、ゴンザレス。俺の今のステータスは何Lv相当になるんだ?」
「えーと、Lv60相当になりますね。今回の『精霊王オリシスの腕輪』の能力によってかなり底上げされています」
なるほど、Lv60相当なのか。
武闘大会の最低Lvは40からとビックマムは言っていたから、今回の『ソウルガチャ』によってステータス能力はクリアしたことになる。
まぁ、結局は『ソウルガチャ』のアイテムを駆使して大会を切り抜けるしかないんだが。
「いいなー。私まだLv24なんだよ。私も頑張らなきゃ!」
「あ、悪い。次にステータス能力アップの装備出たらリリィに渡すよ」
「んーん、大丈夫。私はどっちかと言うと自力でLv上げていきたいし。それに、十分色々貰っているから。特にコレなんかね」
既に身に着けたのであろう『リジェネ・クリスタル(レプリカ)』を揺らしながら見せてきた。
「気を使ってくれてありがとね、シノ」
「ん……。でも、リリィのLv上げも手伝うから」
「うん、約束ね」
リリィはニコニコしながら指を絡めてくる。
「そ、そういえばゴンザレス。幻獣召喚はどうやって使うんだ?」
「えっと、竜剣と同じ方法です。契約者の血を使います」
「ちょっと待ってゴンちゃん。ねぇシノ、このアイテムって契約することによって呪いが掛かるんだよね? だ、大丈夫なの?」
リリィが心配してゴンザレスの方へと見る。
確かに反動で呪いが掛かると書かれてはいるが――。
「大丈夫ですよリリィ。呪いに掛かっても『霊剣・ソツヤハノツルギ』がありますから。ね、マスター」
流石ゴンザレス。俺の考えを熟知している。
「ま、そういうこった。呪いさえ解除しちまえば、あとは強力な防御能力だけを得られるってわけだ」
「あ、なるほど! そういうことだったのね」
リリィが感心している横でゴンザレスは契約の準備をしていた。
「マスター、最後の確認なんですが本当に私が契約しても宜しいんですね?」
「ああ。構わない」
力強く応えるとゴンザレスは意を決した表情になる。
「わかりました。では、マスターの意のままに」
テーブルの上に置かれた幻獣召喚のアイテムに、ゴンザレスが血を一滴垂らすと赤い魔法陣が描かれていく。
そしてゴンザレスの体にも異変が起き、薄っすらと赤い光を放っている。
「――告げる。我、汝を従える者なり。汝の身は我が下に。我が身を喰らいてその力を示せ――『幻獣・ニャーバンクル』!!」
契約の呪文を唱えた瞬間、眩い光が起きる。あまりの眩しさに瞼を閉じた。
閉じた瞼越しに光が収まるのを感じ、目を開けるとそこには―――。
「にゃー」
一匹の『黒猫』がいた――。
「ぶーーーー!! え、ええ!? ……ちょっっっつと待って。(目じりを抑える)って、これ唯の猫じゃん! これが『幻獣・ニャーバンクル』!?」
獣だと言うからもっとカッコいい幻獣かと思っていたが、全然違った。
ほんと、もう……、どう見ても唯の黒猫です。本当にありがとうございました。
想像と違い、ガックシと項垂れてしまう。
「あー……。期待して損した―」
「マスターマスター、そんなことは無いですよ。この子から大きな力を感じます。それに、こんなにも愛くるしいのにそんな事言ったら可哀そうですよっ」
頭を垂れる横でゴンザレスの声が聞こえてくる。
まぁ、しょうがないか。姿はどうであれ、『ソウルガチャ』から出たアイテムなんだ。能力に関しては間違えないだろう。
それにしてもリリィの奴、さっきから黙っているがどうしたんだ?
頭を上げリリィの方へと向くと、リリィはゴンザレスの方へ向いてわなわなと震えていた。
「シ、シノ……。ご、ゴンちゃんが……ゴンちゃんが……」
リリィの異様な様子に幻獣召喚の呪いの件を思い出した。
「ゴンザレス! 体に異常は―――!!」
急いでゴンザレスの方へと振り向くと、その体にはぴょこぴょこと動く物体がゴンザレスの体から生えていた。
目をごしごしと擦り、再度ゴンザレスの方へと目を向ける。
見間違えではなく、ソレはぴょこぴょこと動いている。
「……。」
「マスターマスター、この子の名前付けてもいいですか? きゃっ、猫さんくすぐったいです♪」
ゴンザレスは夢中になりながら召喚した幻獣(猫)の頭を撫でている。
「ゴンザレス……」
「はい? なんですかマスター?」
「自分のお尻を見てみろ。あと、頭な」
「ほえ?」
ゴンザレスは何事かという感じで、自分のお尻の方へと首を曲げた。
「え、えええぇぇぇえぇ!?」
ゴンザレスは驚きの声を上げた。
「マ、マスター! お、お尻に尻尾が生えちゃってます!! 頭にも耳が!! って、尻尾でお尻が丸見えじゃないですかー!! やだー!」
ゴンザレスは捲れたワンピースを急いで直し、その場にぺたりと座り込む。
その顔は真っ赤に染まり、目を潤ませている。
えー……。
これが、幻獣の呪い……。
「か……か……か……」
ん?
横にいるリリィへと視線を向けると頭を下げて体をプルプルさせている。「どうした」と声を掛けようとしたら、リリィは突然顔をがばっ! っと勢いよく上げた。
「可愛いーーー! ゴンちゃん可愛すぎるぅーー!! きゃー!」
「ひゃー! リリィ! きゅ、急に抱き着かないでくださーい!」
「あーん、もう可愛すぎぃ! 耳!! 尻尾!! ゴンちゃんペットみたい! モフモフモフモフ!!」
「きゃっ……ぁんっ……! り、リリィ……そ、そこ、尻尾触っちゃ……ひゃ……あんっ!!」
暴走したリリィによって百合な展開が広がっていた。
猫もゴンザレスとリリィの間に挟まれ、「おいやめろ」と言わんばかりに「にゃー」と鳴いている。
「シノッ!!」
リリィは目を爛々と輝かせながら勢いよく顔を向けてきた。
「お、おう」
「ゴンちゃんの呪いは……このままで」
はぁはぁと荒い息を立てているリリィにそっと親指を立て、グッジョブ! とサインを返した。




