58.ゴルニドル
『ドラゴンインストール』のスキルを使用した瞬間、竜剣から膨大なエネルギーが流れ込んできた。
足元には白く光る魔法陣が描かれ、溢れんばかりのエネルギーが稲妻のような閃光となり体の周りを放電している。
「ガアアアアァァァ――!!」
他の竜剣と同様、破壊衝動に駆られるが理性をフル稼働させて押さえつける。
「――スキル・ゼクスブレイブ!!」
全身に力が行きわたったのを感じた瞬間、『鋼竜ゴルニドル』に変化が起きた。竜剣が光り輝き弾けたのだ。
光の粒子となったそれは7本の剣へと形を変え、俺を中心に円を描くよう浮遊し展開される。
短剣、長剣、大剣、曲剣、細剣――。長剣、大剣に至っては更に片刃・両刃2種類ずつ。
竜剣に触れていなくてもエネルギーが絶えず流れ込んでくるのが分かる。竜剣と一心同体のような感覚だった。
「……、不思議な感覚だ……」
両手を見つめる。腕が幾つもあるかのような奇妙な感覚というのだろうか。
「マスターっ!!」
ゴンザレスの声に気づき前方に顔を向けると、目の前には冷気を纏ったゴーレムが右腕を大降りで振り下ろすところだった。
咄嗟に7本の竜剣を前面に展開し、クロスさせ攻撃を受け止めた。
振り下ろされて発生した風圧はダイヤモンドダストとなって襲ってきたが、『ドラゴンインストール』状態の前では大したダメージにはならなかった。だが後ろの方から苦痛の声が聞こえてきた。
「うわああああ!! なんていう冷気だ!!」
王国騎士隊は防御姿勢を取りながら耐えていた。
騎士隊の連中を巻き添えにしない為意識を集中し、未だに拳を受け止めている7本の剣でゴーレムを弾き飛ばす。
守衛所の塀に激突し瓦礫の下に埋もれた氷のゴーレムと入れ替わるように、炎を纏ったゴーレムが襲ってくる。
近づけさせまいと片刃の大剣だけを残し、6本の剣を射出させ穿ち、連続で切り刻む。
高速軌道による斬撃に炎を纏ったゴーレムが崩れ落ちた。活動を停止し消し炭のような姿になり、その上には大きなソウルが出現した。
その姿を確認した後、ゆっくりとアルバの姿をした男へと向かっていく。
「ば、馬鹿なッ!! エレメンタルファイヤーゴーレムがやられただと!? あり得ないあり得ないあり得ない!! こんなことが有ってたまるかぁぁぁ!!」
男は顔を歪ませながら頭を掻き毟る。
「マスター!! 残り時間60秒を切っていますッ! 急いでください!」
残り時間を知らせる為にゴンザレスが此方に走って近づいてきている。
ゴンザレスに来るなと伝えようとした瞬間、離れたところから大きな音が響き渡った。
先ほど吹き飛ばした氷のゴーレムが瓦礫を吹き飛ばし、ゴンザレスへと目掛けて跳躍している姿が目に映る。
「殺せぇ!! せめて女だけでも殺せぇ!!」
ゴーレムに気づき、上を見上げるゴンザレスの姿がスローモーションのように見えた。
「ゴンザレスーーーッ!!」
竜剣を射出しようとしたその時、別の方向から一筋の閃光が飛んできてゴーレムに当たり爆発し吹き飛ばす。
閃光が飛んできた方向へ視線を向けると、リリィが『ヴァルキューレの弓』を構えていた。
「はぁはぁ……ゴンちゃん、無事!?」
息を切らしているところを見ると、最大魔力で矢を放ったようだ。
「リリィ!! ゴンザレス、お前はリリィの元まで戻れッ!! 残り時間は把握した!」
起き上がろうとしているゴーレムへと走り出す。
「糞糞糞糞ぉぉぉおお! さっさと起き上がれ愚図がぁぁぁ! 早くそいつを殺せぇぇ!」
怒り狂っている男を尻目に、ゴーレムへと6本の竜剣を射出し射殺す。
ゴーレムがバラバラになっていく最中、その先にいる男へと走り続ける。
地面を蹴り上げ、男へと飛び―――。
「ひぃぃぃぃ!!」
その顔面を拳で殴り飛ばす――。
「―――かひゅっ」
男は建物の壁まで吹き飛び、瓦礫の埋もれたまま動かなくなった。




