表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/107

57.鋼竜

 その日の午後、内通者を見つける為アムール守衛所の最上階にある団長室に兵士一人一人が個別に呼び出されていた。奥には机が一つあり、部屋の中央に兵士を立たせて尋問している形だ。


 アムールの街は兵士が300人程いて、街の各所に屯所があり兵士がそこに配属されている。ヴィクセル曰く、全ての兵士を招集すると街の治安が機能しなくなるため、各所の兵士を半分ずつ交代で招集することになった。


 俺たちは犯人を見つけ出す為に部屋の隅で尋問の様子を見ていた。


 既に尋問が始まってから3時間が経過している。尋問を終えた兵士には、他の兵士に尋問の内容を漏らさないよう箝口令が下されていた。


「……マスター、未だに内通者が見つからないですね」


 大きなスタンド型の鏡を尋問されている兵士へと向けているゴンザレスが小声で話しかけてきた。


「しょうがないだろ。兵士の人数が多いからな。それに『真実の鏡』の効果対象は一度に一人だ。しらみつぶしにやるしかない」


 ゴンザレスが持っている鏡は以前にリリィのバックを盗んだ男に使ったガチャアイテムだ。

 『真実の鏡』は鏡に映った対象の心理を映し出す効果がある。ヴィクセルが兵士を尋問している間にこのアイテムを使って内通者を見つけ出す作戦だった。


 イビルノイアについて兵士に話を振ったタイミングで鏡をのぞき込む。鏡に映った兵士の心情が聞こえてきたが、どうやらこの兵士は白のようだ。


 ヴィクセルが視線を向けてきたので、首を横に振って合図をすると、すぐに尋問を切り上げて兵士を退出させていく。


「これで各駐屯所の兵士は白というわけか。残るはこの本部のみ。次の兵士が来るまで少し時間があるな。……ふぅ、少し休憩に入ろう。君たちも疲れただろう。これでも食べてくれ」


 ヴィクセルは机の中からお菓子が入った箱を取り出し机の上に置いた。そして溜息を吐きながら椅子の背もたれに深く寄りかかる。


「しかし、その鏡に姿を映した者の心の声が分かるとは。君は中々にユニークなアイテムを持っているのだな。だが、故に悪用されると恐ろしいアイテムでもある」


 机に肘をつき手で顎髭を擦りながらヴィクセルは『真実の鏡』を見ている。確かに他人に心を読まれるのは誰でも嫌だろう。ちょっと前まで俺もゴンザレスに思考が駄々洩れだったために苦労した点もあった。主にエッチな方面だが。


「にしてもシノ、いつの間にそんなアイテムを持っていたの? まさか、こっそり私にも使ってないでしょうね?」


 リリィがジト目で睨んできた。


「ないない。悪用したことないって。それにこんな大きな鏡を持っていたら相手に不審がられてバレるのがオチだろ」


 俺は両掌を挙げて潔白だとジェスチャーする。


「そ。ならいいわ」


 ホッと胸を撫でおろしたような感じで息を吐く。


「どうしたリリィ?」


「な、なんでもないわよ」


 リリィは急に慌てたように声を上げ、顔を赤くしながら口をへの字にしてプイっと顔をそむけた。

 誰しも知られたくないことの一つや二つあるだろうと納得しつつ、ゴンザレスに視線を向けると彼女は涎を垂らしながらヴィクセルが出したお菓子を見つめていた。


「ヴィクセルさんヴィクセルさん! お菓子いただいてもいいのでしょうか?」


 どうやら気を利かせて出してくれたお菓子が気になっているようだ。目を輝かせている。


「ああ、構わんよ。私にも君くらいの娘がいてね。娘が菓子を焼いてくれるのだが、毎回量が多くてな。私はいいから好きなだけ食べてくれたまえ」


「わぁ! ありがとうございます! えへへ、マスターもリリィも一緒に食べましょう」


 両手を胸の高さで合わせながら歓喜の声を上げお菓子への元へと向かっていく。


「いや、俺は遠慮しとくよ。甘いものはそんなに好きでもないしな。リリィも一緒に――」


 リリィの方へ向くと何やら下を向きながら考え込むように、ブツブツと独り言を言っていた。 


「リリィ? おーい、リリィー? どうした?」


「え? あ、ううん。何でもない!」


 考え事を誤魔化すかのように慌てて手をふりながら慌てているリリィの横で、ゴンザレスが『真実の鏡』に足を引っかけ鏡がリリィの方へと向いた。


『ふー。危ない危ない。私がシノのことばかり考えていることが知られたら、恥ずかしくて死にそうだわ。でも、こんなにも好きなんだし仕方がないことよね。

 シ、シノとは恋仲なんだし? 一線を越えちゃってるし、も、もっと求めてもいいよね? うー、シノかっこいいな~。もし二人っきりだったらこのままキスしちゃうのになー。

 ちゅってキスしたら、シノが私を抱き寄せてぎゅーってしてくれてそのまま……。きゃーーーー♪ きゃーーーー♪ でへへへ♪』

 

 『真実の鏡』に映っているリリィの姿は体をくねらせながら悶えていた。


「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 鏡が自身に向いていることに気づき、心の声が駄々洩れになっていたことにリリィが悲鳴を上げた。


「いやああああっ! ちょっ、まっ、いや、これはっ! その、あのっ! ち、違うのーー! これは違うのー!!」 


 顔を真っ赤にしながら手を盛大にブンブンと振りながらパニックになるリリィ。そして会話を聞いていたヴィクセルに至っては気まずそうにしている。


「えー、あー、うん。大体わかったから、うん。」


 いたたまれなくなり、リリィの頭をポンポン撫でる。


「わーん! もーやだー! おうち帰るー!」


「まふたー! ふぃふぃをふぁぶはしふぇるはんてふゅるひぃはへん!(マスター! リリィを辱めるなんて許しません!)

 わはぁひもまふたーへのおほぉいをひぃってほふぃいれす!(私もマスターへの想いを知ってほしいです!)」


 お菓子を口いっぱいに頬張り何言っているかよく分からないゴンザレスが『真実の鏡』の前へと突っ込んで行き、鏡に映ったゴンザレスがその気持ちを吐露していく。


『私もリリィに負けないくらいマスターの事が大好き。今はマスターの目的の為に行動していますが、願いが叶うならマスターとリリィと一緒に3人で穏やかに暮らしたいです。

 あ、あんまりエッチなことはいけないと思いますが、たまにならその……。そう、今食べているお菓子のような甘いくらいの雰囲気なら、か、考えなくもないです。

 それにしても、このお菓子は本当に甘くて美味しいですね。何枚でも食べれてしまいます。私と同じくらいの娘さんが作ってると言っていましたが、私も作れるのでしょうか?

 そうしたら毎日作ってお腹いっぱいに食べれるかも……。きゃーーーー♪ きゃーーーー♪ でへへへ♪』


 『真実の鏡』に映っているゴンザレスの姿は涎を盛大に垂らしながら悶えていた。


 心ここに有らずと言った表情で実際に涎を口から垂らしているゴンザレス。そしてずっと会話を聞いていたヴィクセルに至ってはドン引きしている。


「えー、あー、うん。大体わかったから、うん。」


 どんどんアホな子になっていっているゴンザレスの頭をポンポン撫でる。


「でへへへ。……あ、あれ? マスター、なんで憐れむような眼差しでみているのですか?」


「そうか?」


 なんて答えたらいいかわからず、視線を逸らす。すると突然ヴィクセルが笑い出した。


「フハハハハ。君たちはいつもそんな感じなのか? 仲睦まじいというかなんというか。まぁ、男女の色恋に口を挟むのは無粋だと思うが、後悔が無いようにな。

 変に恥ずかしがっていては相手に伝わらないこともある。しかも君たちは冒険者だ。万が一が起きた時に未練を残しておきたくはないだろう? なぁ、お嬢さん」


「う、うん……」


 リリィは恥ずかしそうにしながら下を向き手をモジモジさせている。


 年配者としての気遣いなのか、リリィたちにフォローを入れていく辺りは流石と言うべきか。


「私も職業柄、君たちと同じで死と隣り合わせだ。この国を、この街を、最愛の妻と娘を護るために私はここにいる。だから必ず『イビルノイア』を捕えなければならない。

 君たちには迷惑を掛けてしまうが、協力してもらって助かっている。それに、私の娘にも君たちのように楽しく人生を歩んで貰いたいのだ。いつか娘が結婚し、子を産んで幸せに生きていく。

 親として当然の願いだ。お嬢さんのご両親も娘の幸せは願っている筈だ。だから後悔の無いように生きなさい」


 穏やかな口調で諭していくその姿が眩しいと思えた。


 俺の知らないところで様々な人生を経験し歩んでいる人たちがいる。人に何かを与えるもの――、人を傷つけ奪うもの――。


 今回の依頼を受けたのも目的の障害になると思い引き受けたものだ。だが彼はこの国を――、街を――、そして何よりも純粋に家族を護るために戦っている。


 もし、もしも――、俺が家庭を持ったらそう思える時が来るのだろうか。


 ゴンザレスとリリィと一緒に、そして子供ができたら――。


「……ノ…、……シノ? おーい、シノ―? 何遠くを見つめてるのよー」


「リリィ、そんな時はこの『真実の鏡』を使えば――へぷちっ!!」


 危険なワードを吐いたゴンザレスの頭を軽くチョップする。


 もう少し考え込んでいたら危うく心の声を聞かれるところだった。


 危ない危ない。 


「ま、ますたー。痛いですよぉ~」


「俺が言うのは何だが、無闇やたらに心を覗くのはよくないぞ。それに、本来の目的は内通者を見つける為にこのアイテムを使っているんだ。違うか?」


「確かにシノの言う通りだわ。事故とはいえ私の心の声を聞かれたのは何か釈然としないけど」


 口を尖らせていたリリィだが、気を取り戻すために自分で軽く頬を叩いた。


「じゃ、ちゃっちゃと見つけましょう。ヴィクセルさんの家族の為にもね」


「ああ、ありがとう――」


 リリィがウィンクし、ヴィクセルが破顔一笑すると部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。


「ふむ、次の者が来たようだ。では引き続き宜しく頼む。――――コホンッ。入りたまへ」


 急いで『真実の鏡』の向きを直し、隅の方へと移動すると同時に扉が開いた。


「失礼いたします! ヴィクセル団長殿!」


 扉を開いて入室したのはアルバだった。そういえば今朝もヴィクセルと共に行動をしていたな。団長のお供をするほどだ、きっと有能なのだろう。


「うむ、アルバか。こちらに来て楽にしたまえ」


「はっ!」


 敬礼し終え『真実の鏡』に映る位置へとアルバが立つと、ヴィクセルは他の兵士に話したように厳格な口調で話し始めた。


 ヴィクセルが核心の話をするまでじっと見ていると、鏡に映ったアルバの姿に異変が起きた。

 鏡に映った姿にノイズが走り始めたのだ。


(え? 何これ? 何がどうなっちゃったの?)


 リリィが小声で話しかけてくる。


(いや、俺にも何が何だか……)


 ずっとアイテムを使い続けた反動でおかしくなったのかと思った瞬間、アルバの姿が別の男の姿へと変貌を変えた。


 突然、ゴンザレスが大声を上げてきた。


「マスター! ヴィクセルさん! その人はアルバさんじゃありません!!」


「なに!? どういうことだゴンザレス!?」


「『真実の鏡』は鏡に映った対象の心を映し出すだけでなく、文字通り本当の姿も映し出します。その人は何らかの方法でアルバさんに化けた別人です!!」


 ゴンザレスの大声に訝しげに此方を見ていたアルバが、鏡に映った自分自身の姿を見た瞬間にその顔を歪ませた。

 その刹那、瞬時に動いた者がいた。ヴィクセルだった。傍に立てかけていた剣を取りアルバの姿をした者へと斬りかかる。


「――ぬんっ!!」


 上段から繰り出された斬撃は空を切り避けられていた。


「ハハハ、よく見破ったな! 誉めてやろう。ここで一戦を交えても構わんが少しばかり狭いな」


 男が右手を掲げると同時にヴィクセルも男へと飛び、再度斬りかかる。


「遅い! 吹き飛べ、エクスプロージョン!!」


 部屋に閃光が走りだし、ヴィクセルがこちらに顔を向け叫んできた。


「いかん!! 伏せろ!!」


 その一言に動かされ、咄嗟にゴンザレスとリリィを抱き寄せ背を向けると同時に爆発が起きた。背中に巨大なハンマーで叩きつけられたかの様な衝撃がはしると同時に浮遊感を感じた。


 どうやら部屋を爆破されて建物の外へと飛ばされた様だった。


 「シ、シノ―! 落ちる落ちるー!」


 リリィたちを両脇に抱えながらパッシブスキル『エアレイド』で空気の壁を蹴り上げ、何とか地面へと着地する。


 「がはっ……はぁはぁ……二人とも無事か?」


 服などは汚れてはいるがどうやら二人とも怪我はないようだ。


 背中に走る痛みに堪えながら状況を確認する。広いグラウンドのような場所に落ちてきたようだった。周りには剣を構えて稽古をしている兵士が沢山いた。

 きっと兵士の屋外訓練場なのだろう。その顔は何が起きたのかと鳩が豆鉄砲を食らったような表情だった。


 その隣でドスンと大きな音がなり、視線を向けるとヴィクセルが着地した音だった。


「君たち、大丈夫か!」


 その姿は鎧がすす焦げていたが、本人はあまりダメージを追っていないようだ。


 相手の魔法を見抜き咄嗟に俺たちに伏せろと伝えるくらいなのだ。瞬時に防御に徹したのだろう。


「マ、マスター! これを早く飲んでください!」


 いつの間にかゴンザレスは『アイテム収納』から『ポーション』を3本取り出していた。そういえば後5本残っていたっけ。


 『ポーション』を受け取り一本ずつ一気飲みすると、激しい痛みが体からが引いていく。


「すまん、ゴンザレス。助かった」


 怪我から回復した俺を見てゴンザレス達はホッとした表情を浮かべた。


「だ、団長!? まさか敵襲ですか!?」


 訓練場に居た多くの兵士が団長の元へと駆け寄る。 

 そして遅れて広場の中央に男がゆっくりと降り立ってきた。


「ふん、まさかこうも簡単に見破られるとはな。探知スキルも誤魔化せる程のアイテムなのだが……。あの鏡ごと吹き飛ばしたのは少し勿体なかったか? くくく……」


 兵士たちは降り立ってきたアルバの異様さに気づき、すぐさま陣形を組む。流石王国の兵士だ。統率の取れた動きに関心する。


 ヴィクセルは兵士たちの前へと出ていき、男と対峙し剣を構えた。


「貴様、『イビルノイア』の一員で間違いないな?」


「如何にも。私はザリウス様に忠誠を誓う者の一人だ。名を名乗っても意味が無いだろう。お前たちはここで死ぬのだからな」


 これ程の兵士に囲まれても男は余裕の笑みを浮かべていた。


「ふん、捕らえる前に先に一つ確認したい。貴様、アルバはどうした……。いや、むしろ最初からアルバとして潜り込んでいたのか?」


「ああ、そのことか。――ふむ、余興として見せてやろう」


 男は懐から一本の杭を取り出す。


「そ、それはまさか!!」


「ほう、団長殿はこいつを知っているのか。ふん、まあいい。こいつは『嫉妬と強欲』というアイテム。ザリウス様が王国から盗み出した物だ」


「なんてことだ……じゃぁ、アルバはもう……」


 ヴィクセル一人が事態を呑み込んでいる横で一人の兵士がどういうことかと尋ねた。

 

「あれに刺された者は人の形をした皮袋となり死ぬ。そしてその皮袋を着込むことにより容姿・声・記憶・能力全てが引き継がれ、その者に成りすますことができる悪魔のようなアイテムだ……」


「え、じゃあ、アルバさんは……」


 話を聞いていたりりィの顔が青白くなる。


「くくく、いいねいいねー。おおぉぉおぉお嬢ちゃんその表情最高だねぇ! 興奮しちゃうねぇぇぇ! うひゃひゃひゃ!」


「ひっ――!」


 突然の豹変に驚いたリリィは俺の背中へと身を隠す。男の俺から見ても吐き気を催すほどの気持ち悪さだ。


「よし、決めた。そこのお嬢ちゃん二人は生かしてやろう。泣き叫びながら俺に犯されるがいいぃぃ!! アハハハハ!」


 その一言にカチンときた―――。ぶっ殺したい衝動に駆られる。

 ゆっくりとヴィクセルの横に立ち並び男を見据える。


「お前が俺の大事な人を傷つけるというのなら、絶対に許さねぇ」


 腹の底から響き渡る怒気に気づいたヴィクセルが視線をよこす。


「シノノメ君、君の気持ちも十分にわかる。私とて部下を殺された身だ。だが、奴を殺すのは控えてもらいたい」


 一番に仇を取りたいであろうに。ヴィクセルはザリウスの居場所を聞き出す為に、私情を押し殺して任務を全うしようとしている。


「殺しはしませんよ。だが、絶対に奴を泣かしてやる」


「はは、そうだな。そうしてもらえると助かる」


 ヴィクセルが剣を構え直すと、後ろに控えていた兵士たちも士気を上げていく。

 

「その目、虫唾が走るな。糞虫どもが……。俺に敵うと思っているのかぁぁ!? この俺様にぃぃぃ!! いいだろう! なら絶対的な恐怖を味わってから死ねぇぇぇ!!」


 男が両手を前方に突き出し此方を睨んできた。


召喚サモン・エレメンタルファイヤーゴーレムッ!! 召喚サモン・エレメンタルアイシクルゴーレムッ!!」


 男の叫び声が響くと同時に2つの異なった色の魔法陣が地面に描かれていく。


 強い閃光を放ちながら2体のゴーレムが出現した。一つは大気を揺るがすほどの熱量を持った炎を纏うゴーレム。そしてダイヤモンドダストの現象を起こすほどの冷気を纏い、鋭く穿った氷で全身を覆っているゴーレム。


 以前ギルドの試験で戦ったゴーレムと同じくらいの大きさだ。10メートル以上はあるだろう。違うのはそれぞれが対照的な属性を帯びていることだ。


「各自、戦闘準備! フォーマンセルを組みスクエア陣形ッ!! 右舷の陣営は私に続け! 左舷の陣営は彼を援護しつつゴーレムを殲滅せよ! いいか、敵は近づくだけでも脅威だ。決して防御を怠るな!!」


「「「「はっっっ!!!」」」」


 騎士団長の指示に統率の取れた返事が響き渡り、すぐさま俺の後ろに半分の兵士が集まり陣形を組む。

 そして一人の中年兵士が俺の方へと声を掛けてきた。


「君は冒険者か? 団長が君の援護に回れという程だ。腕に自信があるのだろうが、これは我々王国騎士隊の役目でもある。

 当然君のサポートはする。だが、無理だと思ったら後退してくれて構わない。死ぬなよ、青年ッ!!」


 対峙するは2体のエレメンタルゴーレム。灼熱のゴーレムはヴィクセル達の目の前に、そして俺の前には極寒の冷気を纏ったゴーレム。そしてその奥にはゴンザレスとリリィを傷つけようとする忌まわしき男がいる。


 「マスターっ!!」 


 背中から聞こえてくるゴンザレスに答えるように右腕を掲げる――。


 基本、人間の性質は変わらないのかもしれない。奪う者と奪われる者。


 「クイックオープン―――」 


 お前が俺から二人を奪うと言うのならそれを捻じ伏せ、俺がお前の全てを奪ってやる――。


 「――――『鋼竜・ゴルニドル』ッ!!!」


 起動言語トリガーを唱えると、頭上に掲げた右手の空間がガラスのように弾け、鈍い銀色を放つ両刃の大剣が顕現した。

 顕現した新たなる竜剣の柄を逆手で持ち、足元の地面へと突き刺す。


 『鋼竜・ゴルニドル』――。その両刃には日本刀のように波紋が広がり、全ての万物を斬り裂いてしまうようなイメージを連想させる。


 この場で他の竜剣を使うのは味方を巻き添えにし兼ねない。なら局地的な攻撃が可能なスキルを持つ『鋼竜・ゴルニドル』が適切だ。


 2体のゴーレムを視界に収める。ふと、周りからどよめきが聞こえてきた。

 何もない空間から大剣が現れたことに、王国騎士隊の面々は驚きの表情をしていた。


「――――ほう、空間魔法か。これは中々……。君は歯ごたえがありそうだな。その自信に溢れるその目……。ああ、尚更お前からその女を奪ってやりたくなるなぁぁあ! 行けぇぇッゴーレム共!! その糞虫をぶっ殺せッ!!」


「俺の女を奪うなんざ上等だッ!! ――ドラゴン・インストール、『鋼竜』!!」


 襲い掛かってくる2体のゴーレムに対し、ありったけの声で叫んだ――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ