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56.ヴィクセルが訪れた訳

 ビックマムに呼ばれカウンター奥の部屋へと進む。部屋では多くの職員が忙しなく働いていた。


 洋紙に羽ペンで文字を書く者――、魔物の一部の素材に呪文を唱えている者――、大量の貨幣の枚数を数えながら皮袋に詰めている者――、大きな地図の周りに数人の職員が集まり相談している者など。


 その横を素通りし、さらに奥の扉を超え廊下に出て2階へと続く階段を上る。2階の廊下にはいくつもの台座があり、その上に見たことのない綺麗な花が置かれていた。


 廊下奥の部屋へと案内されると、ヴィクセルがテーブル席に座っていた。


 進められるがまま席に着く。


「すまないね。実はビックマムにある件で協力してほしい事があってお願いしにきたのだが、彼女から適任者がいると聞いてね」


「それで俺たちにですか?」


「ああ。なんでも君はかなりの実力の持ち主だと聞いた。それに君は盗人を捕まえた件もある。彼女から君の話を聞いた時、任せられると判断したのだよ」


 ビックマムの方へ視線を送ると腕を組みながら「ふふん」と鼻を鳴らしている。どうやらビックマムは俺のことを相当買っているようだった。


「話の内容にもよりますけど」


 内容を聞くまでは二つ返事はできない。それに明日は武闘大会当日なのだ。本当はもう一日猶予があると勘違いしていた訳だが。


「君は明日の武闘大会に出場するのだろう。むしろこちらとしては好都合なのだ」


「シノ坊、こっから先の話は他言無用だよ。まぁ、この話はあんたにとっても関わりのある案件だからね」


 ビックマムが横から口を出してくる。


 ヴィクセル自らギルドに相談しに訪れ、まして大会に出場する俺が好都合だと言う。


 なんだか大体の予想がついてきた。


「もしかしてマーメイドのお姫様に関わることですか?」


「ほう。君は察しがいいな。その通りだ。実は以前、君が捕まえた盗人は『イビルノイア』という殺人集団の構成員だったのだ。

 その構成員の荷物の中に密書が入っていてね。内容は「マーメイド姫の拉致」――。


 マーメイド族はこの街の住人と良好な関係にある。そのお姫様が攫われたら我ら人間とマーメイドの間に大きな溝ができる。それは何としてでも避けなければならぬ。


 奴らの居場所を突き止めようと構成員を尋問しようとした矢先、牢屋の中で殺されていてな……。動物に食い千切られた様なひどい有様だった」


「動物ですか?」


「ああ。黒い羽根が落ちていた。多分、肉食鳥だろう」


 黒い羽根と聞いてピンとくる。


「マスター……」


「え、ちょっとそれって……」


 ゴンザレス達も気づいたようだった。


 あの日――。盗人を引き渡したその日、黒い鳥に俺たちは付け狙われていた。


 多分、盗人を殺したのは使い魔を使役していた人物で間違えないだろう。


 情報を共有したほうが良さそうだと思い、ヴィクセルの方へと振り向く。


「あの、実は俺たちも黒い鳥に付け狙われていたんです。最初は変に思っただけですが、リリィが弓矢で打ち抜いたら黒い霧となって霧散しました。あれは使い魔だったんです」


「なんだと?」

 

「どういうこったいシノ坊? あんたたちも『イビルノイア』に付け狙われていたってわけかい?」


 ヴィクセルたちは驚いた顔をしていた。

 

「いえ、多分俺たちが盗人を捕まえたが為に拉致計画が漏れてしまった。その腹いせの報復で狙ってきたんじゃないですかね?」 


 それしか考えられない。もし密書の件が俺たちだけしか知らなかった場合、口封じに狙うのならわかる。


 だが既に情報が漏れた後だ。おおよそ腹いせだろう。


「なるほどな。だが、よく使い魔の存在に気づき今日まで無事に生きてこれたな。奴らは悪逆非道。人を躊躇いもなく殺すような連中だ。何かしらのアクションはなかったかい?」


 ヴィクセルの疑問はもっともだった。仲間を簡単に殺すような輩だ。此方の身の安全を心配してくれているのだろう。


「まぁ、敵に狙われなくなるアイテムを使って自衛してましたから」


「ほう。そのようなアイテムがあるのか。我が王国も様々なアイテムを保有しているが、そのようなマジックアイテムは聞いたことがないな」


 ヴィクセルは感心したように頷く。


「ところでヴィクセルさん、『イビルノイア』で有益な情報とかないの?」


 ちょうど『イビルノイア』について詳しく聞こうとしたら、リリィが代わりに『イビルノイア』について質問していた。


「ああ、そうだったな。奴らについて話さなければならぬな」


 ヴィクセルはテーブルに視線を落とすと、知っていることを全て教えてくれた。


 ――――『イビルノイア』


 別名『悪魔の妄想』。 残虐非道で小さな村や町を襲っては家を焼き――、財産を奪い――、女を犯し――、殺し――、全てを奪っていく殺人集団。

 集団を纏め上げるボスの名はザリウス=マッカート。元は王国騎士隊の7番隊長を務めていた。ザリウスはとても自我が強く誰よりも名声を欲していたそうだ。


 ザリウスは功績をあげ民からの人気もあり慕われていた。だが、ある日を境に仲間を殺し王都の保管しているマジックアイテムを盗み王都から消える。

 暫くしてザリウスはならず者たちを従え再び現れた。


「ザリウスは我々の目を掻い潜りながら村を襲っているのだ。そいつが今やこの街に潜伏している。何としてでも捕まえなければならぬ」


 ヴィクセルはテーブルの上で拳を握りながら苦い顔をしていた。きっと同じ王国の騎士としてザリウスの所業が許せないのだろう。


 横で話を聞いていたリリィが質問したそうな顔で手を挙げてきた。


「ねぇ、おじさん。話を聞いていて疑問に思ったんだけど、私たちが捕まえた盗人が直ぐに殺されたってことは――――」


「ああ、我が隊の中に内通者がいる……」


 ヴィクセルの声が一段階低くなる。


「既に一度、連中の潜伏先を見つけたのだが突入する時には既にもぬけの殻だった。情けない話だがね……」


 ビックマムはヤレヤレと呆れた表情をしながら溜息をついた。


 無理もない。仲間内に『イビルノイア』と繋がっている者がいるのだ。


 捕まえようと計画を立ててもそれが漏れてしまっては意味がない。 


「国を守る騎士様がそんなんでどうするんだい。まったく……。シノ坊、要するに「仲間内に裏切者がいるから、ギルド側で信用できる者を護衛に付かせたい」ってことさね」


 ああ、そういうことか。確かに行動が筒抜けだと身動きが取れない。


 だから外部の人間に護衛を依頼するわけね。しかし、護衛する側が護衛できないって本末転倒だ。


「わかりました。ですが、俺も参加者なんですよ? 護衛対象の近くに居れないと思うんですけど。あと俺が負ける可能性とか」


「それについては大丈夫さね。あたしの権限で「参加者兼護衛」ってことで姫さんの近くに居れるように手配するさ。それにシノ坊の力は「 S 」クラスだ。あたしが保証するよ」


 ビックマムが腕を組みながらニヤリと笑う。


「はは、わかりました。でもその必要はないと思います」


「ん? シノ坊どういうことだい?」


「簡単に内通者を見つける方法があるってことですよビックマム」


 皆が訝しげな表情で此方を見ていた。ただし、ゴンザレスを除いて――。


「そんなことが本当にできるのか!?」


 ヴィクセルが身を乗り出すように詰め寄ってきた。


「ええ、任せてください。クイックオープン――」


 内通者を見つけるため、『ガチャアイテム』からそのアイテム名を口にした。



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