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55.候補

7・8・9・19・32・36・40話の部分を改稿しました。

9・32話は追加の文章があります。

本当すんません。

                2018年2月12日 現在

 その日の午前中、朝食を取ったあと直ぐにギルドへと向かいビックマムに相談しに来ていた。

 大会出場をキャンセルし、尚且つマーメイドの姫に会えることができないかと。


 だがビックマムの口からは予想だにしなかったことを告げられた。


「エントリーのキャンセルはもうできないさね」


「え!? だってこの間受付期日はあと2日あるって言ってたじゃないですか! それって今日までですよね?」


「確かにそう言ったさね。だがそれはあたしが2日と言った日を含めて・・・・・・・・ってことだ。シノ坊、1日ずれた捉え方してたね?」


 ま、まじか。


 マーメイドの武闘大会のキャンセル受付を期間が過ぎてしまったことに項垂れてしまう。ビックマムはカウンターに膝をつきながら「やれやれ」と言った表情をしていた。


「え? じゃーシノは結局マーメイドのお姫様の婿候補ってことになるの!?」


「そういうこったね」


「そ、それは困りますマム。だってマスターは、えっと、その、あの――!」


「ご、ゴンちゃん落ち着いて! 私だって認められないわよ! 折角シノと恋仲になったのにー!」


 ゴンザレスとリリィがパニックになっている。ロビーにいた冒険者たちは何事かとこちらを見ていた。


「おやまぁ。エルフのお嬢ちゃん、シノ坊と結ばれたのかい?」


 リリィが発言した「恋仲」という言葉にビックマムが反応する。この間ビックマムにゴンザレスとリリィとの関係について色々と説教されていた手前、いきなりそういう関係になったと知られたと思うとちょっと気まずい。


「マム! 私もマスターと恋仲です! マスターにリリィと一緒に「女」にしてもらいました!」


「「ぶーーーー!」」


ゴンザレスの爆弾発言に俺とリリィは噴出した。


「ゴンザレス、おまっ!」


「ご、ゴンちゃん! 人前でそういうこと言っちゃダメ―!」


 リリィは顔を真っ赤にしながらゴンザレスの口を塞いだ。流石に人前でそういう話をされると困ってしまう。


 だがゴンザレスにとっては嬉しいことで、聞いてもらいたいのだろう。

 ビックマムは一瞬驚いた顔をしたが、またいつもの表情に戻る。


「お嬢ちゃんたちはそれでいいのかい? 後悔しないかい?」


「はい! マスターが大好きですので! リリィと一緒に決めたことですし、マスターも受け入れてくれました!」


「う、うん……。だって、好きなんだもん……」


 ゴンザレスは笑顔で、リリィは顔を真っ赤にして下に俯いている。


 わー、オレ愛されてるー。


「あっはっはっは! そうかいそうかい! まさかそっちの展開に転ぶとはねぇ。シノ坊も隅に置けないねぇ」


 カウンターに頬杖しながらニヤニヤするビックマム。


「まぁ兎に角、シノ坊がなんでそこまでマーメイドの姫さんに会いたいのかは知らないが、理由があるんだろう? だったら、優勝して会うしかないさね。

 それにあちらさんの要望は「強い男を探してほしい」だ。こちらは武闘大会を開いた時点で「強い男探し」の要望にはもう応えている。そうだろう?」


「うわー」


 ビックマムはふふんと鼻を鳴らしながら得意げな顔をしている。まさに言葉は使いようというやつだ。


「……あたしゃね、この婿探しはお姫さんの気持ちは関係なく、政略的なものとしか思えないんさね。もしそうだとしたらシノ、優勝して言っておやり。

 本当に好きな人と添い遂げろって。女はね、好きになった人と一緒にいたいと思うものよ」


 ビックマムはそう言いながらポケットから葉巻を取り出し、魔法詠唱を唱え火をつけると葉巻を吹かし始めた。


「お、おー……! マム、かっこいいです!!」


「うんうん、そうよね! 本当に好きな人と一緒にいたいって気持ちは大事よね。外部から押し決められた結婚なんて良くないわよね!」


 ゴンザレスとリリィは目をキラキラ輝かせていた。その二人の姿を見てふと思う。


 もしかしてビックマムは俺たちに遠回しで気を使っているのではないかと。もし優勝し断ったとしてマーメイド族と人間との間に亀裂が生じても気にするな――――と。


「わかりました。目的のため全力で行きます」


「おや? 吹っ切れた顔をしたね。あんま女の子を泣かすんじゃないよ、シノ坊」


 ビックマムの口調はどこか優し気だった――。 



 ◇



「おお、君たちはあの時の冒険者か」


 背後から聞き覚えのある声がし、振り向くとそこには守衛所の団長ヴィクセルと衛兵アルバがいた。


 そういえば顔をまた合わせるのはスリを捕まえて引き渡した日以来か。

 軽く会釈し、カウンターの横に少しずれる。


「おや、ヴィクセル。こんなところに足を運ぶなんて珍しいじゃないかい。何か緊急な事件でも起きたんじゃないだろうね?」


「ああ。だが、そちらの青年の話が終わった後で構わない」


 力の籠った野太い声が響き渡る。


「いえ、もうお話は一区切りついているので構わないですよ」


「そうか。すまないな青年」


 ヴィクセルは律儀に礼をする。「それじゃ」とビックマムに挨拶すると呼び止められた。


「シノ坊、折角だからあっちの席でお茶でも飲んでいきな。今、若い者に出させるさね。で、ヴィクセル。ここでは話しずらい内容なんだろう? 上の部屋が空いてるから行くよ」


「ああ、すまない。それとアルバ君。君はここで待っていてくれたまえ。そうだな――ビックマム、アルバ君の分の茶も用意してくれるとありがたい」


「あいよ、しかしあんた部下を甘やかしすぎじゃないのかい」


 ビックマムはブツブツ言いながらヴィクセルと一緒にカウンターの奥の部屋へと消えていった。

 残された俺たちはとりあえずロビーの一画にあるテーブル席へと向かう。


 「アルバさんでしたっけ? ヴィクセルさんは部下想いの方なんですね」

 

 「だろう? 俺たちにとっては自慢の隊長さ。ま、怒ると凄ぇ怖いんだけどな」


 アルバは笑いながら答える。以前に事情聴取されていた時とは違って柔らかい雰囲気だ。


 自慢の隊長を言う程だ。憧れもあるのだろう。もしかして気をよくしたのかもしれない。


 「そういえば君たちは冒険者だったね。レアアイテム求めて遺跡に入ってたりするのかい?」


 アルバは興味津々といった表情で聞いてきた。そういえば前に別の冒険者がレアアイテムは遺跡で手に入るとか言ってたっけ。


 ま、俺の場合は『ソウルガチャ』で手に入るんだけど。


 「いえ、そういうのはまだ挑戦したことはないです」


 「そうなのかい? 前にオドリアがそこの女の子の弓はレアアイテムだろうと言っていたから、てっきり遺跡にも入っていると思ったよ」


 「これ、貰い物だから。……あははは」


 リリィは乾いた笑いをした。でも、嘘は言っていない。


 「へー、そんな業物を譲渡するなんて奇特な人もいるんだね」


 アルバと他愛もない会話をしていると、奥に引っ込んでいたビックマムが現れこちらに手招きをしてきた。


 「シノ坊とお嬢ちゃんたち。ちょいと話があるから一緒にきておくれ」


 ビックマムに呼ばれ、俺たち3人は互いの顔をみる。


 そして席を立ちビックマムの後を付いて行った。


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