53.多重使用
朝日によって海面がキラキラと黄金色に反射し、見る者の心を癒してくれる。
そんな素晴らしい景色の中、俺は砂浜で正座させられていた。いや、むしろ自発的にといったところか。
「で、浮気とかそういうわけじゃないのね?」
「神に誓って」
「むぅ~……。なら、信じるわ」
俺は事の経緯を全て説明した。
どうやらゴンザレス達がここにきた理由は、俺が浮気をしてたんじゃないかと疑ったらしいのだ。
夜中に起きたゴンザレスが俺の置き手紙を見て、俺の位置を把握した祭もう一つの生命反応を感知。
しかも『アイテム収納』に入っている『月の羽衣』が取り出されている=相手は女性? と判断したようだった。
恐るべし、女の勘……。
「でも、マスター。出かけるなら一言声をかけてください。もう……」
ゴンザレスが俺の背中に周り、抱きついてきた。
「心配かけさせないでくださいね……」
「ああ……、すまん」
そうだよな。いくら置き手紙があったとは言え、夜中に居なくなれば不安になるよな。
反省。
「にしても、折角マーメイドに出逢えたっていうのに、結局は情報収集できなかったのシノ?」
「うぐっ……。面目ない。その子、人の話をあんまり聞かなくて」
「そう。なら、今度は一緒にお姫様に会えるよう頑張りましょう。……それと、シノが真夜中に他の女の子と二人きりでいるなんて、私やゴンちゃんだって嫉妬しちゃうんだからね」
「すまん」
リリィは俺の目の前でしゃがみ込み、首筋に腕を回しながら抱きついてきた。
「反省した?」
「ああ」
前後を二人に抱きつかれた状態になる。
「あ、そういえばマスター。竜剣の契約は終えたのですか?」
「ん? ああ、終わっているよ。竜剣を地面に突き刺したままだっけ」
ゴンザレス達が離れたので、2本の竜剣の前に立つ。
さっさと『アイテム収納』に竜剣を収めようとしたが、ふと手を伸ばしたかけたところで止める。
「竜剣を2本同時に装備したらどうなるんだろう……」
「2本装備ですか?」
「ああ、できるか?」
「装備するだけならできると思いますが……。すみませんマスター。こればかりは私でもわからないです。特に『ドラゴン・インストール』を多重に発動した場合、マスターの精神にどう影響を及ぼすか……」
なるほど、ゴンザレスが心配しているのは『ドラゴン・インストール』を多重に使用した場合か。確かに、発動した時の精神負荷は相当なものだった。一歩間違えれば理性が吹き飛んでしまう程の。
流石そればかりはゴンザレスでもわからないよな。要するに俺の精神の強さによるってわけだ。
さてどうしよう。こう、好奇心に駆られると試してみたくなるのが人間というものだろう。
『ドラゴン・インストール』は置いといて、まずは2本を装備した場合のステータスを確認しておくか。
どの道、手に取らなければ『アイテム収納』にはしまえない。ソウルは十分にある。
「よし、取り敢えず2本装備した時にステータスがどう変わるか確認だけしてみよう。ゴンザレス、ステータス表示を頼む」
「え、あ、はい! ステータスを表示します!」
視界にステータスが表示される。
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名前:東雲 透
Lv:1
体力 :224
筋力 :330
防御力:310
素早さ:605
魔力 :0
スキル:『ソウルガチャ』
『透視の瞳』
『円迅』
『チェイン』
『リストレイント・チェイン』
パッシブスキル:『エアレイド』
召喚 :『ディメンション・ゲート[Lv1]』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:暴竜』
派生スキル:『グラビティ・アルファ』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:土竜』
派生スキル:『グランド・インパクト』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:水竜』
派生スキル:『水竜の魔眼』
固有スキル:『ドラゴン・インストール:鋼竜』
派生スキル:『ゼクスブレイド』
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新たに契約した竜剣のスキルが表示されていた。
「よし、じゃあこのまま1本目を手に取って……」
『水竜・ガリオス』を左手で抜き取ると、全身に力が漲ってくる。
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名前:東雲 透
Lv:1
体力 :1724
筋力 :1830
防御力: 810
素早さ:1105
魔力 :6000
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ここまではいつも通りの上昇の仕方だ。
さて、もう1本手をとったら場合は無効なのか、加算になるのか。
『鋼竜・ゴルニドル』を右手で抜き取ると、さらに全身に力が漲ってきた。
ぐおっ!! 『ドラゴンインストール』を使用していないのに、思いっきり暴れたくなる気分になってくるぞ!?
全能感あふれる力に気持ちが高まっているからだろうか。これはこれできつい。
なんとか理性で抑えつつ、ステータスを確認する。
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名前:東雲 透
Lv:1
体力 :1724
筋力 :6830
防御力:5810
素早さ:1105
魔力 :6000
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なるほど、そのまま純粋に加算されるわけか。2本同時だから何かしらのペナルティがあるかと思ったが、能力的にはそうでもないらしい。
敢えて言うならこの破壊衝動くらいなものか。間違えを起こす前にさっさとしまった方が良さそうだ。
俺は2本の竜剣を『アイテム収納』へとしまう。
「シノ、どうだった?」
「ああ、能力はそのまま上昇したから、同時使用は問題ないよ。あとは、『ドラゴン・インストール』を多重使用した場合がどうなるか」
「ふ~ん、そのスキルってそんなに危険なの?」
「目に映るもの全てを破壊したくなるくらいに」
「え!? ちょっと大丈夫なのそれ!?」
「まぁ……」
正直、不安は残るが。
敵を倒すがために使用して、その後自分で暴走したら目も当てられない。
「シノ――」
突然、リリィに頬を挟まれる。俺を見つめるその目は真剣だった。
「もし、自我を失いそうだったら、私やゴンちゃんを思い浮かべなさい。シノは……私たちを守ってくれるんでしょ?」
その一言が胸に響く。
――ああ、そうか。
そうだよな。俺には守るべきものがあるんだった。
俺はこの二人を――。
リリィの頭に手を乗せ軽く撫でる。
「ああ、そうだな。――ありがとう」
「うん!」
リリィは満面の笑顔を浮かべた。
清々しいその笑顔に胸がいっぱいになる。
「マスター、リリィばかりずるいです。私も頭撫でてください」
ゴンザレスは拗ねながら抱きついてきた。
苦笑しながら頭を撫でてやる。
「さ、宿に戻って朝飯にしよう。それから予定通りギルドへ足を運ぼう」
「私、お腹ペコペコです」
「ふふ、ゴンちゃんったら」
俺たちは笑い合いながら街へと戻っていった。




