46.茜色の空 ★
挿絵セーフっしょ!
え? だめ?(´・ω・`)
ふと気づくと窓から夕日の光が差し込こんでいた。ベットの上で仰向けに寝転んでいたら、いつの間にか寝てしまっていたようだった。
顔に直接、夕日の光が当たり目を細める。瞼が重い。ぼーっとした頭で今何時だろうと思い、スマホウォッチで時間を確認するべく左手をあげようとしたら、全く動かないことに気づいた。
しかも、左腕にふにゃりと柔らかい感触が伝わってきている。なんだと思い顔を左に向けると、そこにはゴンザレスの寝顔があった。その顔は穏やかに、寝息を立ててる。
まだ眠い頭をフル回転させ、なんでゴンザレスが隣で寝ているんだと考えていたら突然、右耳下の首筋にくすぐったい感覚が走る。
その感覚に体がびくりと反応してしまう。なんだと思い右側に顔を向けると、そこにはリリィの顔があった。首筋から鎖骨まで流れている金色の髪は、夕日の光によってキラキラ輝いている。
「……くすっ。おはよ、シノ。……よく、眠れた?」
人差し指で頬をツンツンとされる。どうやら、先ほどの首筋の感覚はリリィが指で撫でたようだった。
ああ、そうか、と思い出した。俺、ゴンザレスとリリィを……。二人に挟まれて横になっていれば、気持ちよくて寝ちゃうよな。
右腕にリリィの体温が伝わってきている。なんとか右腕を動かし、お返しとばかりにリリィの頬を指でつつく。
「おはよ、おかげさまで良く眠れたよ。最高の湯たんぽだった」
マシュマロのような柔らかい頬が面白くて、そのまま指でツンツンし続けるとリリィはくすぐったい様な表情になる。
「あ、酷いなー。こんな可愛い子を湯たんぽ呼ばわりだなんて。そういうことを言うシノにはお仕置きが必要だね。……はむっ」
頬をつついていた人差し指が、暖かい感触に包まれる。
「……お前、人の指食うなよ」
「ふぁって。……あんま、美味しくないね、これ。……あむっ……味、しはぁいよ……ちゅ……」
咥えられた指にザラザラとした感覚が伝わってくる。舌で指を舐めているようだ。
お返しとばかりに、咥えられている指を動かしリリィの舌をなぶると、目をトロンとさせていた。
すげぇー可愛い顔するなぁ。こっちまでくすぐったい気持ちになってくる。
暫く、お互い無言で見つめ合う。部屋にはぴちゃぴちゃと鳴る音が響く。
「ま~す~たっ。あむっ!」
突然、ゴンザレスの声がしたかと思ったら左耳にくすぐったい感覚が走る。どうやら、耳を甘噛みしているようだ。吐息が髪にかかり、更にくすぐったい。
「あのー、ゴンザレスさん。いきなり耳を噛まれるとびっくりするんですけど」
「らって、起きたらマスターとリリィがなんか楽しそうなことをしてるんですもんっ。私も混ざりますー……あむっれろ」
「――――うわっ!! ちょっ、まっ、あははははは! やめっ! ゴンっ、あはは!」
いきなり首筋を舐められ、体が縮こまる。ゴンザレスの容赦ない攻撃にくすぐったくて起きようとしたが、ガッチリと体をホールドされて身動きがとれない。
あまりのくすぐったさに笑いが止まらない。リリィに助けを求めようと視線を送ると、にやりと笑う小悪魔がそこにいた。
「ほうほう、これはこれは……。さっきはシノにいっぱい、いじめられたからなー。これはチャンスだなー。ってことでゴンちゃん、私も反対側やるー! ちゅっ」
「うわあああ! ちょっと待ってリリィ! あひゃひゃひゃ!」
反対側の首筋にも同じようなくすぐったさが走り、悶えまくる。
体をどうにかねじ込みながら起きようとしたが、二人の足が俺の片足づつを挟み込み、体は両手で抱きついて固定しているため、逃れられなかった。
「ふふーん、観念してくださいマスター。私もさっきの、お返しさせていただきます。ちゅーっ」
二人の小悪魔が俺の命を笑い死にさせようと襲ってきている。
「いやっ、ほんと! もうっ、二人とも勘弁して――。」
ぐ~~~~~~……。
何処からともなく、お腹が鳴る音が聞こえてきた。音の音源からして俺の左にいる銀髪の女の子。二人のくすぐり攻撃は腹の音で止まった。
助かった。あのまま舌でくすぐられてたら人としての何かを失いそうになるところだった。いや、もう既に失っているか……。
「マスター食べてたら、お腹減っちゃいました……もぐもぐ」
「文面だけで見ると怖い表現だなおい」
「くすっ。だってしょうがないよ、シノ。朝から何も食べてないじゃない。私だってお腹減っちゃったよ」
左手を持ち上げようと力を込めると、ゴンザレスは素直に左腕を開放してくれた。ただ、その顔はちょっと残念そうだったが。
シーツから腕を出し、左手に巻いているスマホウォッチを見る。窓から差し込む夕日の光を受け、反射するディスプレイの角度を調整して時間を確認すると、時刻は『PM5:15』と表示されていた。
日が完全に落ちるまで後、1時間弱といったところか。夕食の時間にはまだ少し早いが、まだ今日一日の食事をしていないから構わないだろう。むしろ、腹ぺこゴンザレスに何か食べさせないと暴れるかもしれない。何せ、食事を取ることが楽しみの一つみたいだし。
「ご飯、食べにいこうか」
「はいっ! 私もうお腹ペコペコですマスターっ!」
ゴンザレスが勢いよく起き上がると、大きな果実が2つ現れた。見ていると鷲掴みたくなる。
食事より、そっちを食べたいと言ったら怒られるだろうか。
「ゴンちゃん、前! 前!」
「――あっ」
ゴンザレスは恥ずかしそうに、両手で前を隠す。俺も起き上がり、シーツの上に散乱している服を集めゴンザレスへと渡す。女の子の服を勝手に触るのはどうかと思ったが、両手を塞いでいたら取れないから構わないだろうと自分に言い聞かす。
「あ、ありがとう……ございます」
ゴンザレスは照れたように服を受け取る。
「あ、シノ! 私は自分で取るからいい!」
リリィは身体前面をシーツで隠し、慌てて起き上がる。シーツで隠されていたが、胸の部分はその大きさがはっきりと強調されていた。
昨夜、『ソウルガチャ』で手に入れた胸を大きくするアイテムを使ったために、リリィの胸は大成長を遂げた。ゴンザレスほどではないが。
それでも本人は大変喜んでいた。その時の俺は目隠ししていたが、凄く精神的に摩耗した記憶がある。
「え? なんで?」
「な、なんでって……だって、それ……履いていた下着……」
顔が真っ赤になり言い淀むリリィの姿を見ていたら、デリカシーがない行動した事に気づく。全くもって失敗した。既に手に持っていた服をその場に置くのもどうかなと思い、謝りながら渡すことにする。
「ご、ごめん。配慮が足りなかった。その、次から気をつける」
「……う、うん。ありがと。それと、着替えるから後ろ向いてくれてると嬉しいかな……」
「あ、ああ……。わかった」
リリィは俺の手から服を受け取ると恥ずかしそにしていた。なんだか、いたたまれない気持ちになる。二人の着替えを邪魔しないよう、あぐらをかいて後ろ向きに座る。窓から差し込んでいた夕日の光は少しずつ陰り始めていた。
窓から見える茜色の空を黙って眺めていると、二人の服を着る衣擦れの音が聞こえてくる。
「マスター」
「ん? どうした?」
背中越しにゴンザレスに呼ばれて後ろを振り返りそうになったが、慌てて姿勢を元に戻す。
こういうのがデリカシーのない行動なんだろうなぁ。気を付けないと。
「食事の前に、先にお風呂行きたいのですがいいですか?」
「そうね、私もご飯の前に身体を綺麗にしたいし、いいよね? シノ」
二人の意見には賛同だった。俺も汗を流したいと思っていたところだ。ちょっと、体が汗臭いような気もするし。
「ああ、そうだな。じゃー、風呂行ってからに食事しようか。先の上がった方は1階の食堂で待ってようぜ。っと言っても俺が先に待ってそうだけど」
「くすっ、そうね。それじゃぁ、行こうかゴンちゃん。シノ、先に言ってるね。 ちゅっ!」
「マスターもゆっくりお体、温めてくださいね。ちゅっ」
後ろ向いていたら、不意打ちでそれぞれ頬にキスをされた。二人が部屋を出て行く気配を感じながら、俺は固まっていた。
窓を見上げる。
頬に残るは唇の感触――。
幸せの余韻に浸りながら、暫く茜色の空を眺めていた――――。




