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44.流されて ★

 宿に戻り食事を済ませた後、ゴンザレス達と部屋の中でのんびしていた。既に日は落ち、月明かりが夜空を照らしている。


 ランプの明かりは光量が少ないため部屋の中は若干薄暗い感じだが、その不便さもこの世界の醍醐味だと思えば苦にはならなかった。


 科学という文明の機器になれた俺にとってランプの火は心もとなかったが、人間慣れるものである。


 それに今では実体化したゴンザレスとリリィがいる。一人でいる時と誰かと一緒にいる時とでは、同じ薄暗い部屋でも感じ方が違うから不思議だ。


 リリィはテーブルの上でゴンザレスと一緒に装備の手入れをしていたところだった。リリィ曰く、いざという時に使えなかったら目も当てられないということらしい。


 手入れをしている姿を見て、昼間に『クロームソード』を刃こぼれさせてしまったのを思いだす。


 武器屋に修理を頼もうか悩んだが、やめることにした。ギルドランクが『 A 』になるのにビギナー装備では不釣合いになると思ったからだ。


 そろそろそれ相応の格好をしたほうがいいだろう。武器はソウルガチャで手に入れた物があるからいいが、防具に関してはあまり持っていない。


 ガチャで出てくれればいいのだが。


 あれこれ考えていると、手入れの手伝いを終えたゴンザレスが俺の所に寄ってくる。


「あの、マスター」


「ん?」


「昼間は申し訳ありませんでした。皆さんを危険な目に合わせてしまってはサポートAIとして失格ですね」


 ゴンザレスは頭を下げてシュンとしている。さっきから何か言いたげな顔していたのは謝りたかったからなのか。


 俺はゴンザレスの頭をクシャクシャに撫でた。


「わっ! ま、ますたーっ」


「気にすんな。俺もゴンザレスに迷惑かけたりするからな。お互い様だ。それに、最初の頃より人間らしくて俺は好きだぞ? 食いしん坊なところとかな」


「うっ……」


 ゴンザレスは顔を赤くしている。きっと恥ずかしいという感情を経験しているのだろう。


「と、ところでマスター。昼間の拾得したソウル数は確認はいたしましたか? ガチャ好きのマスターが今だにガチャを回さないなんて珍しいです」


「ん? ああ、そうだな。リリィの装備の手入れが終えたら回そうと思っていたところだ。どうせなら、リリィも何が出るか見てみたいよな?」


 俺はベットから立ち上がり、リリィと向かい合うようにテーブルの椅子へと座る。ゴンザレスも俺の隣の椅子へと座る。 


「ふふ、そうね。シノの作り出すアイテムは珍しい物ばかりだから見ていて楽しいわ。えっと、ちょっと待ってね。今片付けているところだから」


「ああ。……そういえばゴンザレス、まだラミリールのソウル収集してから確認してないんだが、今所持ソウルいくつある?」


 リリィが片付けている間にスマホウォッチを外しテーブルの真ん中に置く。テーブルの上でホログラム機能を使うためだ。


 今まではスマートフォンでガチャを回していたが、今は本体がない。というかゴンザレスの肉体になっている。なのでスマホウォッチを媒体にしてガチャを回すつもりなのだ。


 もし、スマホウォッチが無かったらどうやってホログラム機能になるのか少しばかり興味があったが、なんか怖いので詮索するのは止めた。


「現在の所持ソウル数は158475(6000)ですね。あ、ちなみに竜剣使用分のソウルは既に差し引きましたので」


「ほんと、そういう所だけは仕事早いなゴンザレス。でもまぁ、ソウル10万越えとか凄ぇなぁ…… ガチャが回し放題じゃないか!」


 ラミリールの群れはイレギュラーな事態だったが、ガチャを回すにあたっては嬉しい結果だった。これほどソウルがあるならゴンザレスにも文句は言われないだろ。


「シノ、ゴンちゃんお待たせ。あ、そだ。飲み物でも持ってこようか?」


「いや、ちょいまち」


 リリィが席から立ち上がろうとしたので、手で制して止める。わざわざ飲み物を1階に取りに行かなくても、既に俺が持っているからだ・・・・・・・・


「クイックオープン、『紅茶セット(ver.ダージリン)』」


 目の前のテーブルの上にティーポッドとティーカップ4つが具現化する。前回、ソウルガチャを回した時に手に入れたアイテムだ。


 説明には最高状態の紅茶を淹れることができる魔法のアイテムと書いてあったっけ。


「わわ! シノ紅茶も持っていたの!?」


「まぁな。今回使うのが初めてだけど美味しいと思うぞ」


 ティーポッドには既に紅茶ができていたので、それを人数分のカップに注いでいくと紅茶特有の渋みのある香りが部屋に漂う。


「わぁー、いい香り。……飲んでもいい?」


「どうぞ」


 リリィとゴンザレスはゆっくりとカップを持ち上げ、口につけるとふにゃりとした顔になっていく。どうやら美味しかったようだ。


 俺も紅茶を一口飲む。ほっと一息つきたくなるほどの旨さだった。


「サポートAIとして言うのはどうかと思いますが、マスターのスキル良い仕事してますね」


「ほんとね。これで甘いお菓子があれば最高だったね。あ、ゴンちゃん、明日マーメイド焼き買ってこよっか? この紅茶に合うかも」


「おー、それはいいアイデアですねリリィ。あ、でもお菓子ならマスターが……」


 ゴンザレスは何かを思い出したように俺の顔を見つめてくる。はて? 何かあったっけ?


「マスター、お忘れですか!? これですよこれ、クイックオープン――『苺のケーキ(ホール)』」


 ゴンザレスの目の前の空間が弾け、苺たっぷりのケーキが具現化された。俺自身、甘いものはあまり興味がない方なので、ソウルガチャで手に入れてたのをすっかり忘れていたようだ。


「わぁー、綺麗! 初めて見るけどゴンちゃん、これお菓子なの?」


「はいっ! 美味しそうですよね! ということでマスター、食べてもいいですかっ!」


 ゴンザレスは目をキラキラさせている。本当に食べるのが好きなようだ。まぁ、気持ちはわからなくもないが。


「いいけど、ナイフとフォークがないぞ? あと、取り皿」


「あ、私取ってくるよ! ちょっと待っててね!」


 リリィは席から立ち上がり、部屋から出て行った。一階の食堂に食器を借りに行ったのだろう。


 そこまでして食べてみたいのか。



 ◇



 数分後、ゴンザレスたちは幸せそうな顔をしていた。その表情は蕩けきってる。


「ふわぁー、これ美味しぃ……」


「ですねリリィ。まだまだおかわりありますよ」


「おーい、2人とも食べるのはいいがそろそろソウルガチャ回すぞ」


 2人とも食べるのに夢中で「忘れてた!」という様な顔をした。まぁ、いいんだけどさ。


「ごめんごめん、ささ! シノ、やっちゃってください!」


「おう! ゴンザレス、ホログラム機能をオンにしてくれ」


「ふぁい、まふたー(はい、マスター)」


 ゴンザレスが口の中いっぱいにケーキを詰め込んでいた。


 スマホウォッチの画面から無数のレーザー光みたいなものが走り、その上を立体になった『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』『レインボー』の選択項目が再表示される。


 そしてそれぞれの項目の下に『11連ガチャ』という選択項目がある。もちろん、既に回す項目は決めてある。

 

「やっぱ回すなら『レインボー』だよな」


 迷わず『レインボー』の『11連ガチャ』を押すと、お馴染みの銃を持った女の子がガチャポンを撃ち抜いていく。


「ねぇ、なんでこのスキルって女の子が出てくるの?」


 ガチャポンを撃ち抜いている間に、リリィが疑問に思ったのか聞いてきた。確かにこの世界の住人にとっては不思議な光景だろう。


 でも仕方がない。だって、ソーシャルゲームがモデルなんだから。


「なんでなんだろうな。俺もよくわからん」


「ふーん」


 リリィと話している間に打ち抜かれたガチャポンの中からアイテムが出現し、俺の周りに淡い光を放ちながらホログラム映像となって表示されていく。

 

 -------------------------


 アイテム名:虹色のかき氷

 ランク  :『 N 』

 説明   :


 シロップの味が10秒ごとにランダムで変わる。


 イチゴ、メロン、ラムネ、レモン、リンゴ、オレンジ、ワカメ味の7種類。

 

 ワカメ味は鬼門である。



 -------------------------


 アイテム名:精霊石(赤)

 ランク  :『 N 』

 説明   :

 

 別名:火石


 魔力が無くても火属性の初級魔法を唱えることができる。


 起動言語は『ファイア』



 -------------------------


 アイテム名:安眠のひつぎ (一人用)

 ランク  :『 R 』

 説明   :


 魔樹『眠り樹』で作られた棺。


 この中で眠ることにより、どんな不眠症の人でも眠りにつくことができる。


 そして二度と目覚めることはない。



 -------------------------


 アイテム名:楽々スコップ

 ランク  :『 R 』

 説明   :


 柔らかいプリンをスプーンですくうように、地面を楽に掘ることができる。

 

 注意:勢いよく地面に突き刺すべからず。



 -------------------------


 アイテム名:暗殺者の腕輪

 ランク  :『 R 』

 説明   :


 装備者の音・気配を無くす腕輪。


 ただし、臭いは消せない。


 犬には注意が必要。

 


 -------------------------


 アイテム名:折れた剣(ver.SRランク装備)

 ランク  :『 HR 』

 説明   :


 『 SR 』ランクの折れた剣。

 

 そのままでは使えないが『再生の釜戸』を使用することにより、


 ランダムで『 SR 』武器が手に入る。



 -------------------------


 アイテム名:オウル・ジェベリン(使い捨て)

 ランク  :『 HR 』

 説明   :


 魔獣オウルの骨から作られた投擲用の魔槍。


 投擲すると光の速さでターゲットを穿つ。


 使用するには『魔力』が200必要。



 -------------------------


 アイテム名:霊剣・ソツヤハノツルギ

 ランク  :『 HR 』

 説明   :


 御霊石みたませきと呼ばれる石が1000年もの長い年月により、


 光霊鋼に変化して刀として打ち上げられた業物。


 呪いにかかった対象者の呪いのみ切り落とすことができる。


 対象者の肉体を傷つけることはない。


 切り落とした呪いは刀に吸収され、使用するごとに刀身の色が銀色から紫色に変化していく。


 使用限界を超えると『妖刀・コノヨノアク』へと変化し、切りつけた対象者を呪う。



 -------------------------


 アイテム名:炎魔のペンダント

 ランク  :『 HR 』

 説明   :


 火傷防止の加護が宿っているペンダント。


 初級魔法『ファイア』のダメージを打ち消す。


 -------------------------


 アイテム名:クロノスの砂時計(使い捨て)

 ランク  :『 SR 』

 説明   :


 時の神クロノスの力が宿った砂時計。


 砂時計を逆さにすることにより、時間が180秒間止まる(使用者を除く)



 -------------------------


 アイテム名:虹色の壺

 ランク  :『 SR 』

 説明   :


 『 UR 』アイテムがランダムで一つ手に入る。


 対価として『 SR 』アイテム5つを壺の中に入れなければならない。


 壺を割る事によりアイテムを入手できる。 



 -------------------------



 出てきたアイテムを読み上げて確認していくと、リリィとゴンザレスは黙って聞いていた。


 数分後、全て読み上げ終え一息つく。


「ふぅ……」


「マスターお疲れ様です」


「ああ。毎度思うんだけど、たまに変なアイテムまで出てくるな。なんだよこの『虹色のかき氷』と『安眠のひつぎ』って」


 全くもって使えない。 


 一つ目の『虹色のかき氷』。様々な味のシロップが楽しめるのはいいが、問題が一つ。


 ……ワカメ味。なんだが凄く生臭そうだ。どう見てもロシアンルーレット的なネタアイテムにしか思えない。


 そして二つ目『安眠のひつぎ』。


 これ安眠どころか永眠だよ! 誰が使うんだよこれ。


 とりあえず、危険なので使うのは止めよう。


「それでも凄いアイテムばかりじゃない! これなんて凄いよシノ! 時間を止められるアイテム!」


 リリィが指さしたのは『クロノスの砂時計』だ。確かに時間に干渉できるアイテムは凄いと思う。しかも使用するにあたってノーリスクときたものだ。


 いざという時にこれは使えるだろう。


「あ、でもシノ。これ悪いことに使っちゃダメだからね?」


「悪いこと? 例えばなにさ」


 いきなり言われても直ぐに思いつかない。食い逃げとかだろうか。でもわざわざ時間を止めてまで食い逃げとかしたくもない。


「何って……えっちなことよ。その、シノ、たまにゴンちゃんの胸をえっちな目で見るときあるから」


「「ぶっっっ!!」」


 いきなりの爆弾発言に思わず吹き出してしまった。しかも隣にいたゴンザレスも同じように吹き出していた。


「そ、そうなのですかマスター!」


「え”ぇ!? い、いや、まさか」


 ゴンザレスは顔を赤くし両手で胸を隠す。だが、その豊満すぎる胸は隠しきれてはいなかった。


 なんだか恥ずかしくなり、明後日の方角を見つめて頬をかく。


 確かに今日キングクラブを討伐した時に、ゴンザレスの胸柔らかいなとか思いながら見ていたが、まさかリリィに気づかれていたとは思わなかった。


「マ、マスターがオッパイ好きなのはわかっていましたが……」


 男なら誰でも興味あることだが、改めて言葉に出されると堪えるので勘弁してほしい。正直、穴があったら入りたい気分だ。


「でも、マスターがどうしてもって言うのなら……その、さ、触ってもいい……ですよ……」

挿絵(By みてみん)


 ゴンザレスは恥ずかしそうに俯きながら両手を鎖骨辺りに合わせ、両腕で胸を挟みながら胸を突き出してきた。ゴンザレスの突然の行動に唖然としてしまう。リリィはというと呆然としていた。


 突き出されたことによって、薄いワンピースが胸の形を強調している。暫くその胸を見つめること数秒、はっと我に返る。

 

「いやいやいやいやいや、ちょっと待って! 状況が飲み込めない! なんでそうなる!?」


「え、だってマスターが私やリリィ以外の女性に手を出したら大ごとですし……なら、いっそのこと私の胸でよければと思って……あぅ……その、は、早くしてください」


 どう見ても変な雰囲気だった。部屋の中は光量の弱いランプのせいで薄暗い。


 だが言い換えるとするなら、間接照明のようなムードある雰囲気というべきか、とにかくそんな雰囲気になっていた。


 きっと、ゴンザレスは羞恥心と雰囲気に流されているに違いない。


 だが、ゴンザレスは今だに胸を突き出している。リリィは顔を赤くしながらそっぽを向いて、考え事をしてるように見えた。


 ど、どうしよう……。


「……ねぇ、シノ。あの……さ、ゴンちゃんの胸触るんだったら、わ、私のも触らない? ほ、ほら、シノにもらったアレ、……使いたいし」

挿絵(By みてみん)


 リリィがぺったんこな胸をつきだした。


「アレってまさか……。うえぇ!? 胸を大きくする『双璧の丘』のこと!? いや、あれは触るというより揉むほうじゃ――」


「言うなバカァ! わ、私だって恥ずかしいんだからっ! そ、それにシノが目隠ししてでの話よっ!」


 リリィは顔を真っ赤にしながら目をつむり、両手を胸のところで握り締めている。正直、その仕草が可愛いくて目が離せないでいた。


「マスター……」


「シノ……」


 その日の夜、俺は目隠しをした――――。



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