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42.その力、大地の槍が如く

 キングクラブを討伐した俺はソウルを回収するべく起動言語トリガーを唱える。


 香ばしく焼けているキングクラブのソウルがスマホウォッチへと吸収されるのを確認し、俺はソウル数を確認する。


 ビックマムに気づかれないように、スマホウォッチを操作。現在の所持ソウル数は41565(6000)。


 回収する前は39565(6000)だったから、増加分は2000か。


 やっぱ、コンスタントにこれくらいのソウル数を集められればなー。もっと余裕を持ってガチャを回せるのに。


 そう思っているとゴンザレスが近くに寄ってきた。


「ま、マスター。あの! あの!」


 ゴンザレスはヨダレを垂らしながら俺の袖をくいくいと引っ張ってる。どうやら、キングクラブの香ばしい匂いに早く食べてみたくて我慢ができないようだった。


「はいはい、ちょっと待っていろ。今小分けすっから」


 俺は『クロームソード』を引き抜き、巨大なキングクラブの足を根元から切り落とそうとしたが、余りにも甲羅が固くて刃こぼれしてしまう。


 げっ! なんつー硬さだよ! やっぱビギナー用の武器はダメか。なら……。


「シノ坊それじゃイタズラに武器をダメに――」


「クイックオープン、『炎剣・イグニア』」


 空間から現れた炎剣を握り、ひと振り。


「ふんっ!」


 火炎の軌跡と共にキングクラブの足を切り落とす。一本の足だけでも十分な量だった。


 やっぱ、切れ味が違うなこれ。ん? なんだビックマムがこっちを見ている。


「こりゃ驚いた……。シノ坊、あんたいくつそんなアイテムをもっているんだい? どう見ても低Lv冒険者が簡単に手に入れられるような物じゃないだろ」


「まぁ、色々とです」


「かぁ~……、なるほど。ジェリックがギルド本部に特例でのランク上げの申請をするわけだ」


 ビックマムは腕を組んでうんうん頷いている。


 取り合えず甲羅をなんとか割り、中の身を取り出すと更にいい匂いが辺りを包込む。


 それを切り分け、ゴンザレス達に渡していく。


「ふあ~。いい匂い……。ま、ますたー! 食べてもいいですかっ!」


「おう、食え食え」


 ゴンザレスはパクリと口にすると満面の笑みを浮かべる。


「お、美味しいです! これ、すっごく美味しいですよマスター!」


 そう言いながらゴンザレスは夢中になって口いっぱいに頬張っていた。


「じゃー、私も頂こうかしら。はむっ。もぐもぐ……うわっ、何これ凄くおいしいっ! へー、さすが高級食材って言うだけあるわね」


「そりゃそうさ。何せアムールの特産品でもあるからね。これを捕獲するのは苦労するんさね。それをあんたはいとも簡単にまぁ……まったく大したもんだよ! あっはっはっは」


 ビックマムは豪快に笑い俺の肩をバンバン叩く。


「いいだろうシノ坊。本部にはあたしからもランク申請をしておく。まぁ、あたしらギルドの人間からすれば、有能な人間がクエストをこなしてもらえることに越したことないさね。

 それにギルド本部から事実確認が取れたら連れてくるように言われているからねぇ」


 よし、これで『 A 』ランクのクエストを堂々と受注できるし、お金も手に入る。ソウルを集めてどんどん自分を強化していかないと。


「よかったねシノ。私も頑張らないと!」


 リリィは食べ終わったのか、いつの間にか俺の隣に来ていた。ゴンザレスに至っては自分でおかわりし、幸せそうな顔をしながら食べている。


 よく食うなゴンザレス。まさに無我夢中で周りが見えていないようだった。


 その幸せそうな姿を見て、ふと思う。まさかとは思うが……。


「ゴンザレス、索敵機能で周りの状況は常に把握しているよな?」


 ピタリとゴンザレスの動きが止まる。


 そして泣きそうな顔をこちらに向けてきた。


「す、すみませんマスター。食べるのに夢中でして。……既に、囲まれています」


 マジか!! これで2度目だぞ! 


「え、ちょ、ゴンちゃんどういうこと!?」


 直ぐ様、炎剣を構え戦闘態勢に切り替える。リリィとビックマムも自身の武器を構えている。辺りを見渡すが敵らしい姿はない。白い砂浜に岩場がポツポツとあるくらいだ。

 

「ゴンザレス、敵はどこにいる!? 見当たらないぞ!」


「ち、地中です。数は68。接敵まで距離20メートル。一匹あたりの体長は5メートル強!」


「拙いね……。拙いよシノ坊。こりゃきっと、ラミリールの群れだ」

 

「ラミリール?」


「ああ、『 B 』ランクの魔物で砂浜に生息する蛇の一種さね。こいつは獰猛で地中から獲物の匂いを嗅ぎつけ、襲ってくる。きっとキングクラブの匂いにつられて集まって来たんだろうね。数で一気に襲われたらひとたまりもない……」


 ビックマムは額に冷や汗を流している。


「シノ、どうするの!? このままだと全滅しちゃうよ!?」


「す、すみませんリリィ! 私がポカやったばかりに」


 ゴンザレスは狼狽えていた。芽生えていた人間らしい感情がこの場では裏目に出ている。


 くそっ! まずいな。囲まれていたらどうしようもないぞ……。一匹ずつ倒してたらジリ貧だ。一撃で一気に片付けないと確実に殺られてしまう。


 だが、どうする。『疾風』でやれるか? いや、地中に潜られてたらダメだ。『暴竜・ファルベオルク』は直線上スキルだからこの場では有効ではないし……。


 いや、まてよ。まだ試してないものが――。


 俺は混乱しているゴンザレスへと振り向く。


「ゴンザレス! 『土竜』のスキルでこの場を切り抜けられるか?」

 

 ゴンザレスは『土竜』という言葉に、顔を「はっ!」とさせた。


「い、行けます! マスター! 今この場を無事に切り抜けるにはそれしかありません!」


 直ぐ様、炎剣を地面に突き刺し、両腕を前面に掲げる。


 まだ『血の契約』を交わしていない竜剣の名を思い出す――。


「クイックオープン、『土竜・ウォルガイア』!!」

 

 両手を掲げた頭上に一本の大剣が顕現する。それは『暴竜・ファルベルオク』とは違い、刀身の幅が広かった。


 顕現した『土竜・ウォルガイア』を掴み、地面に突き刺し自らの親指を切りつけた。


「し、シノ!?」


「シノ坊! 何してんだい!? こんな時にそんなことしちゃ剣を握れないだろう!?」


 突然の行動に、リリィとビックマムが素っ頓狂な声を上げる。


 だが、俺はそれを無視して自らの血で契約のルーンを刀身に描く。


「マスター! 急いでください! 接敵まで12メートル!」


 ゴンザレスの焦る声が聞こえてくる。


 俺は契約の呪文を思い出す。『暴竜・ファルベオルク』の時に契約した呪文を――。


「――告げる。我、汝を従える者なり。汝の身は我が下に。我が身を喰らいてその力を示せ――『土竜・ウォルガイア』!!」


 呪文を唱え終えると、刀身が輝き描かれた血文字が溶け込んでいった。


「マスター!!」


 わかっている! 時間がねぇんだろ!


「ゴンザレス!! 一気に飛ばすぞ!!」


 俺は『血の契約』を交わした『土竜・ウォルガイア』を地面から引き抜くと同時に、全身に力が漲るのを感じた。


「――ドラゴン・インストール、『土竜・ウォルガイア』!!」


 起動言語トリガーを唱えると、足元にオレンジ色に光る魔法陣が展開していく。


 魔法陣の周りに黄色い稲妻のような閃光が走り、さらに輝きを増す。


 「ウオオォォォォオオォォォ!!」


 魔法陣を通して体の中に力の本流が流れ込んでくる。それは膨大なの力の本流に自我が保てなくなりそうな程だ。


「リリィ! マム! マスターの体にしがみついてください!! 魔法陣の中にいれば安全です! 早くっ!」


「え、えっ!? しがみつくったって――」


「いいから嬢ちゃんの言う通り早くおし!」


「え、きゃあっ!」


 3人が俺の体にしがみついたのを確認し、『土竜・ウォルガイア』を逆手で持ち、頭上で構え――――。


「――――グランド・インパクトォォ!!」


 勢いよく『土竜・ウォルガイア』を地面に突き刺すと、足元にある魔法陣を中心に大規模な隆起爆発が起きた。


 土煙が収まると、そこはまさに無限に広がる『槍』のようだった。地面が鋭く穿ち、地中地上にいる全ての生物を串刺しにするがごとく。


 鋭く隆起した地面によって穿たれた生物の死骸が転がっていた。きっと、地中に潜っていたらラミリールだろう。


 青く輝くソウルも無数に広がっている。


「……う、うそ。 これ、シノがやったの……?」


「し、信じられない。シノ坊、あんた一体……」


 リリィとビックマムは口をあんぐりと開けていた。


 『土竜・ウォルガイア』を『アイテム収納』にしまうと、隆起した地面はガラスのように弾け、砂浜には原型をとどめてない死骸と大量のソウルだけが残った。



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