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38.寝顔

 その日の夜、4人部屋のベットの上で装備のチェックをしていた。いくつものランプの火がゆらゆらと揺れ、部屋の中を照らしている。


「ねー、シノ。これからどうするの? 使い魔の主を探し出す?」


 リリィは離れたベットの上でゴンザレスと一緒にゴロゴロと寝転んでいる。2人とも湯上りの後のようで髪の毛がうっすらと濡れていてその姿は色っぽい。


「探し出すってもな……。昼間の盗人は既に衛兵に引き渡した後出し、今更密書のことについて聞き出すのも抵抗があるしな」


 腕を組みどうしようかと悩む。


 昼間の盗人の件でどうやら目をつけられたようだ。きっと盗人の仲間だろう。衛兵に引き渡す際、盗人を担ぎながら街中を歩いていたのが拙かったのだろうか。


 相手は使い魔を使ってこちらを監視してくる程だ、用心には越したことはないのだが如何せん黒幕がわからない以上、下手に動くのも躊躇してしまう。


 余りにも情報が少なすぎるので、襲われても大丈夫なように装備品をチェックしているわけなのだが……。


「クイックオープン、『アルバの指輪』・『常闇の指輪』」


 空間が弾け、青い宝石が埋め込まれた指輪と真っ黒い色をした指輪が具現化する。それらを指に嵌めステータスを確認する。



 -------------------------


 名前:東雲 透

 

 Lv:1

 

 体力 :224

 筋力 :330

 防御力:310

 素早さ:605

 魔力 :0


 スキル:『ソウルガチャ』

     『透視の瞳』 

     『円迅』

     『チェイン』

     『リストレイント・チェイン』


 パッシブスキル:『エアレイド』


 召喚 :『ディメンション・ゲート[Lv1]』


 固有スキル:『ドラゴン・インストール:暴龍』

 派生スキル:『グラビティ・アルファ』


 -------------------------


 『アルバの指輪』を装備したことにより『筋力+200』と『防御力+300』が上がったのを確認する。


 この間のギリコとの戦闘の時に使おうか悩んでいた時があったが、それ以降『アルバの指輪』の存在を忘れていた。


 リリィにもアイテムを渡さないと。


「リリィ、これを渡すから常日頃装備しておいてくれ。―――クイックオープン、『幸運の四葉のクローバー』」


 具現化したメタルピンバッチをリリィの方へと放り投げる。


「わっと! って、いきなり放り投げないでよ! 危ないじゃない! まったくもう……。で、これは何?」


「それはお守りみたいなものだよ。肌身離さず持ち歩いてくれ」


「ふーん、可愛いバッチね。ありがたくいただくわ」


 リリィはベットから起き上がり、バッチを指先で摘んで眺めている。


 気休め程度だが、これでリリィの身に何か起きても一先安心だ。


「リリィ、それは『幸運の四葉のクローバー』と言って、死に瀕する攻撃をくらった場合1度だけ防ぐことができる希少アイテムです。なんだかんだ言いながらマスターはリリィの事が心配なんですね」 


「え……!? シ、シノ。そんな貴重なアイテムを私にくれるの?」


「ああ、この先リリィに死なれたら後味悪いからな。だから、ちゃんと装備しておいてくれよ?」


「うん……その……あ、ありがと……」


 恥ずかしげに俯く仕草が可愛い。普段からこう素直だったらなー。


 上目遣いでこちらを見てきたリリィと視線が合い、暫しの沈黙。


「……な、なによ。じっと見て……」


「いや。なんでもない……」


 気恥ずかしくて視線を逸らし俯く。


 意識し始めると女の子と相部屋ということに今更ながら緊張してきた。


 何度か部屋の関係上、相部屋になったことはあるのだがギルドパーティーという仲間意識が強かったためか、そんなに気にはしていなかったのだ。


 だが、恥じらう事のある一人の女の子なんだと意識し始めたら落ち着かなくなってくる。


 髪を結っていないリリィの湯上りの姿が――。


「マスター。なんかエッチなこと考えてませんか?」


「ごふっっ!!」


 ゴンザレスの鋭い指摘に思わず咳き込んでしまった。その視線に後ろめたさを覚え、視線を逸らしてしまう。


 擬人化されるまで俺の意識と同調していたから、なんとなく考えていたことが分かるのだろう。


 変なところで人の機微に触れないでほしいぞ、ゴンザレス。


 取り合えず誤魔化すことにする。


「いえ、考えてません。まったく。これっぽっちも」


「本当ですか? ……まあ、そういうことにしておきましょう。ところでマスター、話は変わりますが明日の予定はどうしますか? 私としては使い魔の主を突き止めた方がいいと思うのですが」


「訳を聞いてもいいか?」


「はい。仮に密書に関わりのある者ではなかったとしても、早めに危険因子は排除したほうがいいと思うのです。監視されてマスターの能力が露見した場合、これからの旅の危険確率が上がります」


「そうね。私もゴンちゃんの意見に賛成よ。シノのアイテムを生み出すスキルは非常に珍しいし、バレたら狙われるの間違いないわ」

 

 ゴンザレスとリリィは真剣な眼差しでこちらを見ている。


 確かにそうだ。しかし排除って随分と物騒な言い方だな。それを考慮してどうするか。


「そうだな。2人の意見は最もだが暫くは様子見しよう。闇雲に動いてもしょうがないからな。明日は冒険者ギルドに向かい情報収集だ。

 大会の概要確認もしないとな。何が起きてもいいよう……ゴンザレス、索敵機能で周辺の動きをチェックしていてくれるか?」


「はい。現在も周辺500メートル内をずっとチェックをしておりますが、コレといった怪しい動きをするものはありません。

 しかしマスター、擬人化してから私も睡眠をとる必要になりましたので、夜通しの警戒は難しいです」


「わかっている。それについてどうしようか考えていたんだが、幸いにして今夜は月が出ている。数日間は月が出ているだろうから、夜の間はこいつで身を守ろう。クイックオープン――『ムーンストーン』」


 空間が弾け、具現化された半透明の白い色をした宝石を月明かりが差し込んでいる窓の側に置く。


 すると、月の光を浴びた宝石から結界が広がる。


「シノ、それは何なの?」


「これは『ムーンストーン』って言ってな、月の光を当てることにより直径5メートルのドーム状結界が張られて、範囲内にいる者は魔物・悪意のある者から狙われなくなるんだ。

 ただし、月が出ていないと使えないだけど」


「またとんでもないアイテムを出してきたわね。……にしても、これ結界の範囲狭すぎない?」


 そうなのだ。月の光を当てるため窓側の側に置いているのだが、ムーンストーンを中心に結界が張られるため、どうしても半分しかない。結界は壁を透過して建物の外にも張られるのか窓を覗いて確認したが、壁を透過してはいないようだった。


「どう見てもベットを2つ並べられる程度だな。しょうがない、リリィとゴンザレスは結界内のベットで寝てくれ」


「シノはどうするのよ」


「ああ、実はもう一つ同じような効果の――――」


「マスターも一緒にベットで寝ましょう」


「ぶっっ!!」


 きゅ、急に何を言い出すんだゴンザレスは!? 一緒に寝ようって……。


「ご、ゴンちゃん!?」


「それにマスター、『聖域のローブ』よりは『ムーンストーン』の方が安全性が高いです。

 『聖域のローブ』は攻撃対象にはならない効果がありますが、間接的な攻撃などは無効なのです。例えば建物自体を攻撃対象とした場合などです。

 逆に『ムーンストーン』は結界内にいる者を悪意ある者が認識した場合、強制的に結界内に人がいるという認識を消すのでこちらの方が安全性が高いわけです」


 なるほど、アイテムにも色々と抜け道があるんだな。今後その辺も考慮して使わないと、取り返しの付かないことが起きることもあるというわけか。


「でも、流石に一緒のベットは……、リリィも寝ている近くに男がいるのも嫌だろ?」


「わ、私は別にいいわよ? 元々相部屋だし……け、結界が狭いから仕方がないし」


「では決まりですね。マスター、寝る前にお風呂に行ってきてください。流石に汗臭いのはちょっと嫌です」 


「え、マジで?」


「マスター、早くしてくださいー」


 ゴンザレスがジト目で見てくる。


 もう腹を括って浴場へと向かって行くしかないか。


 部屋を出て浴場へと向かっていった。



 ◇



 暗闇の中、部屋の窓側にはベットが2つ並びその窓枠には月の光を浴びてキラキラと輝くムーンストーン。

 

 2つのベットの真ん中で俺は仰向けになって、ゴンザレスとリリィに挟まれて寝ている。


 リリィはこちらに背を向けているが、本当に寝ているのだろうか。


 ゴンザレスはこちらに顔を向けて静かな寝息をたてていた。


 正直に言って寝れない。もうさっきから心臓がバクバクと音を立てているのが自分でも分かる。


 普通、健全な男の立場としてはこのような状況だと落ち着かない。正に蛇の生殺し状態というやつだ。


「……ん~……まぅた~……」


 ゴンザレスが寝言を言いながら抱きついてきた。


「――――っ!」


 左腕に柔らかな胸の感触が伝わってくる。


 ごごごごごごゴンザレス、それはやばい! やばいって!


 な、なんとかしないと。


 引き剥がそうとゴンザレス方へ顔を向けると、その寝顔は穏やかな顔をしていた。


「…………」


 ゴンザレスの穏やかな寝顔を見ていると、さっきまでの劣情が霧散していく。


 何考えているんだ俺は。2人は俺の身を案じて一緒に寝てくれているのに、俺一人舞い上がって。

 

 すまん……。


 2人に対して心の中で謝りながら、気持ちを切り替える。


 しかし、随分と安心した顔をしているなゴンザレス。本当……、実体化してから人間らしくなったよ。


 そっとゴンザレスの前髪を指で梳くと、サラサラとした感触が心地よかった。


「まぅた~……」


 はは、寝言いってら。


 起こさないようにそっとゴンザレスの髪を梳き続けていくと、穏やかな気持ちになっていくのを実感する。


 次第に眠気が襲い瞼が重くなってた。


 もし――――、この旅が終わったら。俺が元の世界に戻れたとしたら、ゴンザレスはどうなってしまうんだろう……。


 ゴンザレスの寝顔を見つめながら、意識が落ちていくのを感じる。


 俺は……ゴンザレスに何をしてあげられるのだろう……。


 俺は――――……。


 

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