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36.マーメイド祭

「皆さーん、アムールの街が見えてきました。もう少しで到着しますからねー!」


 馬車を護衛している一人の男が乗客に説明する。先日も一緒の馬車にいた護衛の男だ。確か名前はカルロと呼ばれていたっけ。


「ん~~~~、やっとアムールに着くのね。もうずっと同じ姿勢で背中が痛いよ。シノは大丈夫?」


「いや。俺も腰が痛い。あんまり馬車って乗り心地良くないのな。『天馬の馬車』は快適だったのに」


「マスター。『天馬の馬車』と比べたらダメですよ。あれは空を飛ぶ上に慣性を無力化する魔法がかかってますから」


 ゴンザレスが『擬人化のパンツ』で実体を得た次の日、早朝からアムール行きの馬車に乗り込んで6時間が経過している。

 時刻はお昼過ぎといったところだ。サンサンと輝く太陽が眩しい。


「ま、そりゃそうだな。あー、『ソウルガチャ』でまた『天馬の馬車』が出ればなー。チラッ」


「そんなこと言ってもダメですよマスター。暫くはガチャを回すのは控えてください。これから先何が起こるかわからないのですから、暫くは『ソウル』集めに専念してくださいね」


 う……。早速クギを差してきたか。仕方がない、暫くはマーメイド族の情報を収集しながら『ソウル』集めするしかないか。でも、ある程度貯めたら一気に回したいな。

 どうゴンザレスを納得させるかが鍵だな。


「ん~~~、それにしても窓から入ってくる風がきもちいーですね。 ……ん? すんすん、なんですかこの匂い?」


「この匂いは磯の香りか。そういえばゴンザレス、嗅覚は実体になってから初めての感覚になるのか」


「はい。体に感じるこの感覚はとても新鮮です。今朝食べたマカラトの実はとても美味しかったのでビックリしました。食事を取るというのがこんなにも素晴らしいものだとは思いもしませんでした。こうやって風を感じるのも素敵です」


 どうやらゴンザレスに取っては驚きの連続のようだ。実際、実体を得てからゴンザレスの感情が豊かになってきている気がする。そうだなー……、ここは―――。


「んじゃ、ギルドに顔出した後で海を見にいくか」


「流石シノ! 話がわっかるー! 私も海は初めてなんだよね。実はベスパの街以外の街は訪れた事がないの。マッド達には色々と聞いていたんだけどね」


「マスター、よろしいのですか? 情報収集は―――わぷっ! 何するのですかマスター。 頭をくしゃくしゃにしないでください」


「いいんだよ。情報収集も大切だが、息抜きも必要な時もあるんだって」


 ゴンザレスの銀髪を撫でるとサラサラで触り心地が良かった。もう少し撫でていたかったが、これ以上やると噛み付かれそうなので手を離す。


 窓の外を覗くと丁度、アムールの街へ入ったところだった。



 ◇



 アムールの街に降り立つとベスパの街とは違った活気があった。街の作りのせいだろうか。ベスパの建物は木材や石材をバランスよく使われていたが、この街は殆ど石材で建物が作られている。


 きっと塩害の被害を防ぐために木材を極力使わないようにしているのだろう。白い石材で作られた建物によって反射された太陽の光りがより一層、街を明るくしているようにも感じた。


「にしても、なんか随分と賑やかだな。何かあるのか?」


「シノ、これ見て! どうやらお祭りがあるそうよ! マーメイド祭ですって!」


 リリィが建物の壁に貼ってある紙を指差している。


 へー、マーメイド祭ね。なるほど、お祭りがあるから皆凄い活気があるのかー……って、マーメイド!?


 いきなり探している種族名が出てくるとは……。


「リリィ。その張り紙にはなんて書いてあるんだ?」


「ん? えーとね、『3年に1度のマーメイド祭がついにきた! 皆熱くなれ!!』だって」


「うわー、情報少なすぎだなおい。誰かに聞くしかないか」


 何処で聞こうかと辺りを見渡すと、露店を開いているおじさんと目が合う。


「おーい、あんちゃん! マーメイド祭限定の『マーメイド焼き』買ってかねーかー? ふわふわ食感で美味しいぞー!」


 『マーメイド焼き』か。あそこで聞いてみるか。お店に向かって歩き出す。


「あ、マスター置いてかないでくださいー!」


 ゴンザレスたちも一緒に着いてきた。


「店主、『マーメイド焼き』3つください」


「毎度ー! 3つで15ルピーだ。今熱々を焼きあげるから待ってな!」


 先にお金を店主に渡す。


 店主が鉄板の型に薄黄色い液体を流していく。たい焼きを作るような工程みたいだ。きっと、商品名からしてマーメイドを模った焼き菓子なのだろう。


「店主、聞きたい事があるんですが街に張り出されている『マーメイド祭』ってのは一体なんですか?」


「ん? なんだあんちゃん達、余所の街から来たばかりなのかい? 『マーメイド祭』ってのはな、このアムール周辺の海を守護しているマーメイド族を敬うお祭りさ。大量の魚が漁れるのもマーメイド様々ってわけだな。

 それと、マーメイド達がお忍びでお婿さんを探すお祭りでもあるんだ。3年に1度開かれるんだが、あんちゃん達この時期に来るなんて運が良いな。なんでも今年はお姫様の婿を決める武闘大会があるんだぞ。マーメイドは皆美人だからな、男の俺たちにとっちゃ眼福みてーなもんだ。がははは!」


 店主は焼いているお菓子をひっくり返す。


「マーメイド族は俺たち人間が作る甘いお菓子が大好きなんだ。感謝の意味を込めてお祭りの日の夜に、大量のお菓子を詰んだ積荷を船に載せ海へと流すんだが、その後の光景が凄いんだ。いやー、あれはいつ見ても幻想的だよ」


 店主はその光景を思い出しているのか、うっとりしている。


 思い出すのは勝手だかお菓子は大丈夫なのか? 焦げたお菓子は勘弁してほしい。


「どういうことなの? おじさん勿体つけないで教えてよー!」


 リリィが店主に話の続きを催促する。我に帰った店主は慌てて焼き菓子をひっくり返す。


 お菓子は焦げてなかったか。よかった。


「ああ、悪い悪い。話の続きなんだが、マーメイド達はお菓子をくれたお礼にと、アムール周辺の海を不思議な力で輝かせるんだ。

 それはもう幻想的な光景だぞ! しかも! その光景を見ながら告白をするとその人と結ばれるという言い伝えがあるんだ。へへ、まぁ、俺のカミさんもその時に俺が告白して今に至るわけなんだがな」


「へ、へー。……へぇー。……お、おじさん、そのお祭りはいつなの? 折角だし見てみたいかなーって」


「わはははは。女の子なら興味が沸いてくるわなぁ。祭りは一週間後だ。今は準備期間だが間に合って良かったな! あいよ、『マーメイド焼き』お待ちどう!」


 店主に渡された『マーメイド焼き』を受け取り、ゴンザレス達に一つづつ渡していく。


 確かにそういったロマンチックな光景は、女の子にとっては素敵なことなのだろう。


 俺も見てみたいと思う。だがウェイバーへの手がかりを掴まなければならない為、どうしても『元素の宝玉』に関わりあるマーメイドに会わなければならない。


 しかし、店主が言うにはマーメイドにとってお祭りは婿探しも含まれている。お姫様の婿探しもあると言うのだから、これは千載一遇のチャンスかもしれない。


 その大会に出場しお姫様に接触できれば『元素の宝玉』について聞き出せるだろう。婿の話は置いといて。


 そうと決まればやることは一つ。どうやってゴンザレス達を説得するかだ。


 多分、婿探しの大会に出場すると言うと二人が騒ぎ出すのが目に見えている。何せ俺の大事なアイテム『淫夢の宴』を破り捨てる程だ。


 ああ、無常かな……。


 一人悲しんでいると、ゴンザレスの驚きの声が聞こえてきた。


「わぁ、甘くて美味しいです! マスターも食べてみてください! おいひいですよ! ね、リリィ」


「ゴンちゃん、食べながら喋らないの。お行儀悪いよ? ふふっ」


 傍からいると仲の良い姉妹に見える。


 仲がいいのは良いことなのだが、二人共本来の目的忘れてないか? 


 まったく……。にしてもこの『マーメイド焼き』甘すぎる。まぁ、二人が美味しいって言ってるからいいのだけど。


「ところで店主、なんでお祭りが3年に1度なんです? マーメイド族を敬うお祭りなら毎年でもいいのでは?」


「それはだな、これは古くからの言い伝えなんだが……。マーメイドは3年に1度だけ人間になれる日があるんだ。それが一週間後の『ルナビスの日』。

 マーメイド族には男はいないらしく、子孫を残すために気に入った人間の男と一日だけ営みを交わすらしい。だからお祭りはマーメイド族にとってはその出会いの場みたいなものさ」


「なるほど。その武闘大会の出場受付はどこでするんですか?」


「冒険者ギルドで受け付けているそうだ。更に詳しい話はそこで聞けばいいだろう」


「ギルドですか。情報ありがとうございました」


「おう、いいってことよ。また『マーメイド焼き』を食いに来てくれよな。また来てくれたらサービスしてやっからよ」

 

 気前よく言ってくれる店主に挨拶をしその場を離れていく。『マーメイド焼き』を食べ終えた二人に意を決して話しかける。


「なぁ、二人共―――」


 ゴンザレス達に振り向くと、二人共頬を膨らませていた。


「まさかシノ、大会に出るつもりじゃないでしょうね? 私は反対よ」


「そうですよマスター。そのお姫様のお相手が決まった後に接触でもいいじゃないですか。マスターがそんな危険な大会に出るのはお勧めしません」


 う……。言う前からクギをさしてくるとか。


「いやいやいや、別に子作りしたいが為に出場するわけじゃないから。本来の目的はウェイバーの足取りを掴むためだ。その為には『元素の宝玉』を守護しているマーメイド族に会って情報収集をしなければならないだろう?」


「そ、それは頭では分かっているけどさ。もしシノが優勝してそのお姫様が迫ってきたらどうするのさ。こ、断れるの?」


「そりゃ断るよ。そのお姫様には悪いが、世継ぎを作る相手は3年後まで我慢してもらうしかない。それに、『風の森』に起きた『元素の宝玉』のように取り返しのつかない事態が起きたらまずいだろう?

 その事についても伝えなければならない。どの道、世継ぎを探すどころじゃなくなるさ。それにリリィ達も一緒にいれば問題ないだろ」


「わ、わかったわよ。だったら出場を認めるわ」


「むー、マスターがそこまで言うのなら……」


 どうやら二人共なんとか納得してくれたようだ。顔は膨れっ面だが。


 暫く歩いてからふと気づく。


「―――あ! 店主にギルドの場所も聞けばよかった」


 馬鹿だな俺、有意義な情報を得て満足してたようだ。しょうがない、他の人に聞くか。


 近くを歩いている人にギルドの場所を聞こうとしたら袖を引っ張られた。後ろを振り向くと袖を引っ張っているのはゴンザレスだった。


「ん? どうした?」


「マスター。街の住人に聞かなくても、索敵機能の範囲内にギルドの建物がありましたので位置はわかります」

 

「え!? ゴンちゃんそんなこともできるの!?」


「はい。半径5キロメートル以内までスキャンできますので人の位置や数、建物の場所も把握できます。ただ、この街は広いので全体を把握しきれていませんが」


「ふぇー……」


 あーあ、リリィの奴。口を開けてポカーンとしてるな。まぁ、無理もない。千里眼みたいな能力なんてそうそうないと思うし。


 いや、もしかしたら魔法とかでこの世界にもあるのかもしれない。


「ところでゴンザレス。その索敵機能のマップ表示を俺の視覚領域に展開できるのか?」


「はい、可能です。マスターの視覚領域にマップ機能を表示いたします」


 ゴンザレスの声と共に俺の視覚にマップが表示されている。しかもご丁寧にギルドの場所まで案内する矢印付きだ。


 良かった。どうやら思考の読み取りだけが機能していないだけらしい。この機能が使えるなら戦闘での補佐も十分賄えそうだ。


「よし、問題ないようだ。んじゃ早速ギルドへ向かうか。リリィ、人が沢山いるから逸れるなよ? 迷子になったら目も当てられん」


「失礼ね! 迷子になるわけないでしょ! まったく……きゃっ!」


 通行人の男がリリィにぶつかり、そのまま通り過ぎて人波の中に消えていった。通行量の多い大通りだからぶつかるのは仕方がないが、せめてぶつかったら謝って欲しいものだ。


「リリィ大丈夫か? まったく今の男酷いやつだな。ってどうしたリリィ?」


 リリィは腰に装着している小さいバックの中身を確認している。


 まさかとは思うが……。


「やられた! 今のスリよ! 私の大事な物が取られちゃったよ! どどどどどうしよう。 あ~~~もう! 顔も見てないし、追いかけようにもこんな人がいっぱいじゃ……」


「やっぱりか。横顔はチラッと見えたがあまり覚えてないぞ」


「大丈夫ですよ。顔は私が見ていましたので任せてください。マスター、犯人を探す為にあの建物の屋根に移動したいのですが」


 ゴンザレスが指を差す先には他の建物より大きな教会の屋根だった。


 なるほど、高いところからスリを探し出すわけだな。チンタラ移動してたら見失うかもしれないし、一気に移動するか。


「よし。ならゴンザレスは俺の背中に乗れ。リリィはここで待っててくれ。直ぐに取り戻してくる」


「え!? ちょっ、ちょっと!」


 ゴンザレスが俺の背中に回り込み首に抱きつくと、柔らかい胸の感触が伝わってくる。 


 う……。平常心平常心。今は早くリリィの大切な物を取り返さないと。


「マスター、お願いします」


「ああ。しっかり掴まっていろよ」


 脚に力を込め一気に跳躍し、建物の屋根の高さまで上がる。そしてそのまま空気を蹴り上げ教会の方へと飛んでいく。


 パッシブスキルの『エアレイド』の能力で空中移動ができる為、余計な移動時間の短縮ができるから便利なスキルだ。


「―――よっと」


 目的の教会の屋根の上に降り立ちゴンザレスを下ろすと、直ぐ様眼下を覗き込み犯人探しを始める。


「見つけました! 視覚領域に表示いたしますマスター!」


 ゴンザレスの掛け声と共に、俺の視界が色を失っていき白黒の状態へと変わる。そしてある人物だけ色が保たれていた。その人物を確認しようとすると一気にズームがかかり、見覚えのある横顔が見える。


 リリィにぶつかった男だ。随分と距離が開いているが見つけられたならこっちのものだ。


 しかし、ピンポイントで探し当てたり視覚をズームさせたりと、ゴンザレスのサポート能力にはいつも驚かされる。 


「マスター? 早くリリィの持ち物を取り戻さないと」


「ああ、そうだったな。任せておけ。俺にはこいつがあるからな」


 右手を男へ向けて突き出す。


「―――スキル『チェイン』」


 右手のひらに描かれた魔法陣に熱がおびるのを感じると同時に、青白く光る鎖が男めがけて伸びていく。男との距離は目測でざっと100メートル程だろうか。鎖はあっという間に男の体に巻き付き絡みとる。


「逃がすかよっと!」


 鎖を引き戻すイメージを浮かべると、捕縛した男が空へと引き上げられていく。男は悲鳴をあげながらこちらに飛んでくる。


「うあああああああああああああああああああああああああああああああ」


 飛んできた男の着地の衝撃を吸収するように両手でキャッチしてやる。


「な、なんだ!? 何が起こったんだ!? ―――ッ!! て、てめぇは誰だ!」


 いきなりの出来事に男はパニックになっている。


 無理もない。いきなり空中へ引き上げられたら誰でもパニックになる。だが、盗みをしたんだからそれなりの罰があってもいいだろ。


「あんたをここに連れてきたのは俺だ。何故だかわかるか? あんたさっき金髪ポニーテールの女の子から盗みをしただろ?」


「―――――ッ!? な、なんのことだか俺には……」


「ほう、シラをきると。なら―――クイックオープン、『真実の鏡』」


 男の前にスタンド型の鏡が具現化される。


 『真実の鏡』は鏡に映った対象者の心理を映し出すアイテムだ。これに映った者の嘘を見破るにはうってつけである。


「な、なんだ!?」


 男はいきなり目の前に現れた鏡に警戒するが、鎖でぐるぐる巻きにされているので身じろいするのが精一杯のようだった。


 鏡に映った姿に変化が訪れる。鏡の中の男が独りでに喋り始めた。


『くそ! 盗みの現場を見られた!? いつもの癖でやらなきゃよかったぜ……。それよりも衛兵に突き出される前に、何としてでもこいつを殺さないと。今持っている密書がバレたら計画が台無しだ…………!』


「な………、な………、なんだよこれ……」


「さぁ、なんだろうね。随分と凄い物騒なこと考えているけどとりあえず、盗んだ物を返すの? 返さないの?」


「わ、わかった返す。返すよっ! だ、だから許してくれ!」


 男は得体のしれない力に怯えているように見えた。いや、むしろ心の声を暴露されて知られちゃまずいことが露見するのを防ぎたいように見える。


 こいつは衛兵に突き出そう。凄いキナ臭い。


「マスター、この男をリリィの所へ連れて行きましょう。盗まれた物を確認しないと」


「そうだな。何盗まれたかまでは聞いていなかったから、リリィに確認してもらったほうがいいか」


『真実の鏡』を『アイテム収納』にしまい、男を縛り上げている鎖の根元を持ち上げると、ゴンザレスが先程と同じように背中から首に抱きついてきた。


「お、おい……まさか……」


 男の言葉を無視し、そして教会の屋根から飛び降りた。


「うぎゃああああああああああああああ」


 『エアレイド』で空中を蹴り上げ、落下速度を緩める。そしてリリィの前へと到着する。男は気絶していた。


 突然空から現れた俺を見た通行人たちは驚いていたが、俺は何事もなかったように振る舞う。


 ゴンザレスも背中から降り、リリィの前に立つ。


「ただいまリリィ。犯人を捕まえてきたから盗まれた物を確認してくれ」


「シノ、あんた無茶苦茶するわね……。でもありがと。おじさん、私から盗んだ物返してもらうからね」


 リリィは気絶している男の背負っているバッグの中を覗き、荷物を漁り始めた。そして小さな袋を取り出す。


「あ。あった! 無事で良かった~」


「で、結局何盗まれたんだ?」


「こ、これ」


 リリィは恥ずかしそうに小さな袋から取り出した物は『双璧の丘』だった。


 よりによってこれか……。ま、まぁリリィにとっては大切な物なのか。


「マスター、この人はどうしましょう?」


「勿論、衛兵に突き出すに決まってるだろう。さっき『真実の鏡』で言っていた密書ってのが怪しすぎるし……。俺としてはこれ以上面倒事はごめんだから、衛兵にお任せするさ」


「密書ってこれのこと?」


 リリィの方へ見ると密書と思わしき洋紙を開いて読んでいた。


「アッー! リリィ何余計なことしているのー!」 


 時すでに遅し。


「――――っ!! シ、シノ! 大変よ! これを見て!」


 余計なことに首を突っ込んだ気がするのは気のせいだろうか。


 ため息を交えながら洋紙を受け取る。


「ゴンザレス、洋紙の文字を日本語に変換して俺の視覚に投影してくれ」


「かしこまりましたマスター」


 日本語に翻訳された文字を読んでいくと、とんでもない事が書かれていた。


「なんでこう面倒事ばかりが起きるんだ……」


 洋紙を読んで俺は愚痴を一つこぼした。


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