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35.激おこゴンザレスさん ★

 目の前には腕を組み仁王立ちしているリリィの姿。あまりの気まずさに自発的に正座する。


 リリィさん怖ぇっす!


 ただパンツを掲げていた現場を見られただけでこの状況……、いやまぁ事情を知らなければただの変態にしか見えないのはしょうがないけど。


「で? そのパンツも『ソウルガチャ』で手に入れたアイテムだって言うの? 本当に?」


「ああ、本当だって! それに見てくれよ。 いま現に俺の周りにはアイテムが立体映像で表示されているだろう!? 『ソウルガチャ』引いてアイテム確認していたところなんだって。それにこんな小さいサイズの下着なんて普通あるわけないだろう?」


「む~……確かに色々なアイテムが出ているわね。シノから貰った『サンドリアの服』もスキルで手に入れたって言ってたけど……にしても流石にパンツはないわー」


 そんなジト目で見ないでくれよリリィ。マジで傷つくって。


「だけど出てくるものはランダムなんだから仕方がないだろ? それにこれは非常に素晴らしいアイテムなんだ。なんてたってアイテムランク最高の『 UR 』なんだからな」


「へー、変態にとっての最高ってこと?」


「グフッ! ……本当もう勘弁してください」


 ううぅ……。念願のアイテムを手に入れたのに……。


「シノ、正座はしなくていいわ。で、そのアイテムははどんな効果があるの?」


 正座していた両足を伸ばし軽くふくらはぎを叩く。もう少し長く正座していたら完全に痺れていた。いつつ……。


「これは『擬人化のパンツ』といってスマートフォンを人間に変化させる。というかAIサポートシステムのゴンザレスをと言ったほうが正しいのか?」


「ゴンザレス?」


 床から立ち上がり、立体表示されていたアイテムをしまう。そしてベットの上に置かれているスマートフォンを手に取り、リリィに見せつける。


「このスマートフォンにはな、ゴンザレスという名の人工知能の機能があるんだ。 簡単に言うとゴンザレスという人格が俺の魂と繋がっていて、いつも俺のサポートをしてくれている」 


 指で胸をコンコンと叩く。


 今までリリィにはゴンザレスの事は話していなかった。俺の中にはもうひとつの人格があるなんて言ったら普通は頭がおかしい奴だと距離を置かれる。だけど、『擬人化のパンツ』を手に入れた今となっては説明しなくてはなるまい。


 実際もう一人増えるわけだからだ。


「熱は……ないみたいね」


「って、うぉい! 俺は正常だ! そんな可哀想な子を見るような目はやめてくれっ!」


 額に当てられたリリィの手の温もりが伝わってくる。


 そうだ。実際に擬人化を見せればいいんだ。


「よし、なら証拠を見せてやる。実際に擬人化する場面を見れば信用するだろ」


(ゴンザレス、『擬人化のパンツ』を使うぞ)


『あ、マスター。その前に一つお伝えしなければ―――』


 ゴンザレスに制止されるが時既に遅し。スマートフォンに『擬人化のパンツ』を履かせていた。


 純白のパンツが神々しいぜ! と思っていたら本当に輝きだした。


「きゃっ! 眩しい!」


 部屋一面に眩しい光りが放たれる。あまりの眩しさに目をつぶる。


 瞼越しに光りが収まってきたのを感じ取り、恐る恐る瞼を開けるとそこには――――。

  

 銀髪の可愛い女の子がいた。


挿絵(By みてみん)



「ふぇ!? ほ、本当に人間になっちゃった……って、ええええええええええ!?」


「ぶーーーーーー!!」


 当然リリィは驚いていたが、俺もそのゴンザレスの容姿に驚いてしまった。


 サラサラとした銀色の髪に小顔でクリッとした瞳。身長はリリィより低い。


 150センチにも満たない小柄な身長に、大きく発育した胸。張りのある胸がプルンと揺れる。


 そして何よりその姿はパンツしか履いてない・・・・・・・・・・


「ブフッ!!!」


 は、鼻血がっ!!


「マスター!? どうなされたのですか!?」


「お、おまっ! なんでパンツ一枚しか履いていないんだよ! 普通こういうのは服もセットで擬人化されるんじゃないのか!?」


 キョトンとしたゴンザレスが自身の姿を確認する。


 め、目のやり場に困る!


「きゃっ! ななななんで服がないんですかー!?」


 涙目になりながら大きな胸を両手で隠し、その場にしゃがみ込むゴンザレス。恥じらう姿が人間そのものだ。 


「むしろ俺が訳を聞きた――――はっ!!」


 隣から物凄い殺気を感じる。


 ごくりと唾の飲み込み、ゆっくりとその先に顔を向けるとニッコリと笑顔をしているリリィと視線が合う。


 黒いオーラが見えてますリリィさん……。マジ怖ぇっす。


「あわわわわわ!! お、落ち着け! これは不可抗力だ!」


「へー……。そうなんだー……」


「ほら! ゴンザレスお前も何かリリィに言ってくれ!」


「マスターに……見られた見られた見られた……もう最悪……最悪です……ううぅぅ」


 ゴンザレス目が死んでるよ! 


「ちょっと待って! 一旦落ち着こう! そうだ! さっき手に入れたアイテムがあるんだ」


 直ぐ様『アイテム収納』から着るものをを取り出さないと、俺の命がやべぇ!


「クイックオープン! 『フラワーホワイト・ワンピース』『フェアリーブラック・パンプス』『ピュワホワイト・カチューシャ』!」


 具現化された服を直ぐ様ゴンザレスへと持っていく。もちろん視線を逸らしながらだ。


「ゴンザレス、取り合えずコレを着てくれ。着替え終わるまで部屋の外に出ているから」


「あ、シノ話はまだ――」


 そう言い残し直ぐ様、部屋の外へと出た。


 廊下に出ると一気に脱力する。


 はぁ……疲れる……。にしても、デカかったなぁ……。


 さっきのゴンザレスの光景を思い出す。


(はっ! やばい! ゴンザレスには俺の考えが筒抜けなんだった。 すまん! これは不可抗力なんだ許してくれゴンザレス!)


 心の中でゴンザレスに謝る。しかし一向にゴンザレスの返事がこない。


(あ、あれ? ゴンザレス? ゴンザレスさーん? おーい。……おかしいな。)


 などと思っていると扉が少し開き、中から顔を真っ赤にしたゴンザレスが覗いてきた。


「マスター。着替え終わりました。部屋の中に入ってください」


「お、おう」


 部屋に入るとそこには純白のワンピースを着込んだゴンザレス。あまりの可愛さに心臓の鼓動が早くなるのを感じる。


「マスター? 黙り込んでどうしたのですか?」


「え? ……あ、ああ。なんでもない。その服似合うよ」


「ありがとうございます。マスター」


 ゴンサレスが微笑む。う……笑顔が眩しい。


 リリィは離れたところにあるもう1つのベットに腰掛けてブスーッとしながらこちらを見ている。無言でだ。正直気まずい。


「こほんっ! リリィさん。マスターのサポートをさせていただいているゴンザレスと申します」


「え、ええ。私のことを知っているようだけど……。改めて自己紹介するわ。私はリリィ。よろしくね」


「はい! リリィさん、よろしくお願いします」


「リリィでいいよ。その代わり私もゴンちゃんって呼ぶね」


 リリィもゴンザレスに悪気はないと分かっているのだろう。自然にゴンザレスと接している。だがリリィが俺に向ける視線は鋭い。


「えーとだな、さっきも説明した通りなんだがゴンザレスは俺のサポートをしてくれる人工知能なんだ。この世界に来てからずっと助けられてきた。『ソウルガチャ』で手に入れた『擬人化のパンツ』によって人への形態できるんだが、まさかパンツ一丁で現れるとは思わなかったよ……はは……」


「マスターっ! 裸の件はもう忘れてくださいっ! こほんっ。リリィの事はマスターを通じて見ていました。 『風の森』の一件以来マスターはずっとリリィの事を心配してたんですよ。悲しんでいるリリィの為に何かしてあげたいって。でも、今は元気そうで何よりです」


「ちょ、ちょっとゴンザレス! そういう人の心情を吐露するのはやめてくれ! 恥ずかしいだろ」


 リリィは口をへの字にしながら何処となく照れているように見える。


「ふ、ふーん、……そっか……そっかぁ……」


 いやむしろ俺が恥ずかしい。


「それはそうとゴンザレス。1つ確認したいことがあるんだが、擬人化に伴って何か変化が起きたことがないか?」


「はい、実はマスターにお伝えしなければならないことがあります。実態を得たことによりマスターの思考が読み取れなくなりました」


「あ、やっぱり?」


 さっきゴンザレスの張りのある胸を思い出してた時、ゴンザレスの非難の声が無かった。もしやと思ったが、どうやら本当に俺の考えが読み取れないようだ。


「それと、先ほどお伝えしようとした件なのですが、今後の戦闘時はマスターのサポートが難しくなります。私が壊されれば・・・・・マスターが死んでしまいますので」


「え? ちょ、ちょっと、どういうこと!? ゴンちゃんが死ぬとシノも死ぬって……」


 そうだ。ゴンザレスが人間になるってことは狙われる確率があるということだ。戦闘時だと尚更だ。今更ながらに気づく。


「あー……、実はな、この世界に転移した時に得たスキルはこのゴンザレス――もといスマートフォンの能力でな、その能力を維持するのには俺の寿命が必要なんだ。

 そのせいで寿命が半分。それに魂とリンクしているスマートフォンが壊されれば、俺も死ぬってわけだ。おーけー?」


「おーけーってシノ……随分と軽いわね……」


「はい、ですので今後の対策を練る必要があります。正直、最初にお伝えするべきでした。すみません」


「いや、ゴンザレスが謝ることはないよ。それにゴンザレスには元々人間になってもらいたかったしな。俺は嬉しいよゴンザレス」


「マスター……」


 戦闘補佐が厳しくなるのは正直キツイ。だが、これでいいと思う。俺はゴンザレスに人間になってもらいたい。


「大体の事情はわかったわ。―――にしてもシノ。ゴンちゃんのことずっと黙っていたのね」


「いや、だってなぁ……。俺の中にもう一つの人格があると言えば信じるか? 現にさっき俺の額に手を当てて俺を頭のオカシイ人として見ていただろ?」


「う……。ごめん……」


 これで俺の身の潔白は証明されたわけだ。ふぃー、危うく『変態』とレッテルを貼られるところだった。


「でもゴンちゃん、凄く可愛いよね。女の私からしても美少女だと思うわ。それに胸も凄く大きいし……羨ましい」


「私もびっくりです。まさかマスターが幼女巨乳好きだったとは」


「へ? ゴンちゃんどういうこと」


「『擬人化のパンツ』は使用者の願望が反映されるのです。つまりこの姿はマスターの願望そのものということですよリリィ」


「ぶーーーーーーーーーーっ!!!」


「へー……そうなんだー……。シノ、巨乳の幼女が好きなんだー……」


「ちょっと待ってっ!! ゴンザレスなんてことを言うんだ!? 俺はロリコンじゃない!! ああ、リリィの視線が冷たい!?」 


 リリィがこめかみをピクピクと痙攣させている。


 やばい、変態のレッテルを返上したと思った矢先にまた変態扱い……。


「男って皆、胸が大きいのが好きよね。ふんだっ、どうせ私はペチャパイですよーだ!」


「いや、ペチャパイも人によって需要があると思うが」


「うるっさいっ! このバカッ! 巨乳幼女好き変態!」


「リリィ落ち着けって! うわっ!」


 リリィはベットに置いてある枕を投げつけてきた。枕は俺の顔に当たり床へと落ちる。


「いきなり枕を投げるなよな。ほら――」


 床に落ちた枕を拾い上げ、リリィへ渡そうと近づく。 瞬間、足を引っ掛けてバランスを崩してしまった。


「うわっ!!」


「え? きゃっ!!」


 ドサッ――――。


 俺はベットの上でリリィを押し倒すような形になっていた。


 勿論、俺の右手はリリィのちっぱいの上にあるお約束の展開だった。


「あわわわ、ご、ごめん!」


 直ぐ様離れようと体を起こす。リリィも顔を真っ赤にさせながら、無言で上半身を起こし胸を両手で隠し俯く。


 心臓の鼓動がドキドキと大きくなる。 


「リリィ、そんなに胸を大きくしたいのなら『双璧の丘』を使えばよろしいのではないでしょうか。異性に揉まれなければ効果がでないのですから、ここは我慢してマスターにお願いしてはどうでしょう。

 安心してください。マスターには目隠しさせます。それにマスターが変なことをしないよう私が見張っておりますので」


「――ふぇっ!!? ゴゴゴゴンちゃん何言ってるの!?」


「いっ!?」


 隣でゴンザレスはえっへんと胸を張っている。


「なんとなくリリィの気持ちがわかるのです。胸を大きくしたいけど出来ない『もどかしさ』という感情でしょうか。そんなリリィの為に私も何かしてあげたいのです。

 勿論エッチなことはダメですが。これは私がリリィの為を思って提案させていただきます」


 両目を瞑り胸に手を当てるゴンザレス。一人で勝手に悟りを開いているようだ。


 お前頭のネジが一本飛んでるぞ。心が成長するのはいいことだが、それはいらぬお節介というやつだ。


 「いやいやいやいやゴンザレス何を言っているんだ! まずいだろそれは」


 顔を真っ赤にさせながら目をまん丸くしているリリィと目が合う。


「―――っ!! ~~~~!!」


 リリィは軽く俯く。

 

 あ、あれ? あんまり嫌がって……ない……?


 やばい……変な雰囲気へ流れている。


「無し無し! この話は一旦無し! ゴンザレス、変なこと言うなよ。リリィもそう思うよな?」


「えっ! あ、う、うん……。そ、そうよね! あ、あはははは…………………………………………………………………シノの意気地なし(ボソッ)」


「ん? 何か言ったか?」


「ううん、なんでもない! そ、それよりさ、折角ゴンちゃんが人間になれたんだからお祝いとかしなくていいの? 私としては仲間が増えた事に対してのお祝いがしたいかな」


 リリィが意外と気の利いた事を言ってくる。そうだな、お祝いするのもいいかもな。


 時間を確認すると夜の9時を過ぎていて、既に酒場はしまっている時間帯だ。さてどうするか。日を改めるか?


「いえいえ、そんな私の為にお祝いだなんて」


「何言っているんだゴンザレス。お前も俺たちの仲間なんだから遠慮するなよ」


「……マスター」


 ゴンザレスは微笑む。


 いつもゴンザレスには助けられてばかりだ。だから彼女の為に何かしてあげたいと思う。


「なら一つだけ、お願いごとをしてもよろしいでしょうか?」


「おう! 俺にできることならなんでも言ってくれ」


「マスターが『ソウルガチャ』で手に入れたアイテムの中で一つ欲しい物があるのです。よろしいでしょうか?」


「ん? なんだそんなことか。ああ、いいよ。で何が欲しいんだ?」


 右手を前に出し、何時でも取り出せるように準備する。


「ありがとうございますマスター。ではコレを頂きますね」


 ニッコリと微笑んだゴンザレスを前にして悪寒がはしる。そしてゴンザレスが右手を突き出し――――。


 ん? ゴンザレス何を……。


「クイックオープン――」


 え、まさか……。


「――――『淫夢の宴』」


 ゴンザレスの手のひらの上の空間が弾け、一枚のブロマイド写真が具現化した。


「アッーーーーーーーーーーーーっ!!」


「エッチなのはいけないと思うのですっ! なのでこれは没収ですマスターっ! 私は怒っています。おこです。激おこですっ」


 ああ、やっぱり!! なんか話の展開からしてそうじゃないかと思ったよコンチキショー!


「ゴンちゃん、それはなに?」


「これはですねリリィ……ゴニョゴニョ」


 ゴンザレスがリリィに耳打ちする。


 するとリリィの顔がボンッと音が出そうなくらいに真っ赤になった。


「確かにこれは没収ね。というよりむしろ破り捨てたほうがいいわ」


「そうですね。これはもう既に私のものですから何をしても構いませんよね?」


 ゴンザレスが写真をビリビリと破り捨てる。俺はその場に崩れ落ちた。


 ああ、なんてこった……。俺の桃源郷が……しくしく。


「さ、変態は放っておいて寝ましょう。ゴンちゃん、私のベットで一緒に寝よう」


「はい! マスターもそんなところで崩れてないでベットで寝てくださいね?」


「はい……」


 ベットに向かい、その夜俺は枕を涙で濡らして寝た―――。


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