105.お酒 ★
脳内でライラの声は『かわしまりの』さん(*´ω`)
お酒のつまみにと収納空間から料理を次々と出していく。主に『グルメ包丁』で作られた魔物料理だが味は保証付きだ。様々な肉料理をテーブルへと出していくと、ライラとゴンザレスは目を輝かせていた。
「うおー! すっげぇな! シノノメ、これ食っていいのか!?」
「ああ。遠慮なく食べてくれ」
「わふー! マスター大好きですー!」
「ふふ、ゴンちゃん食べ物の事になると大喜びね」
並べ終えた料理を囲みながら乾杯をすると、ライラは酒を一気に飲んでいく。
リリィとゴンザレスはちびちび飲むとふにゃりとした表情になった。
「この蜂蜜酒すごくおいしい! あたしこの味好きなっちゃうかも」
「へへ、喜んでくれて何よりだぜ。まだまだ沢山あるから好きなだけ飲んでくれ」
「うん、ありがとうライラ」
ちびちびと飲むリリィ。その顔はほんのりと赤くなっていた。
俺も渡された蜂蜜酒を飲む。その味は凄く甘く、胃の中に流し込むと体がカッと熱くなった。
この酒かなりの度数のようだ。ゴンザレスは大丈夫か? と見てみると既に顔を真っ赤にしていた。
「けっぷ。うー。うー。」
どうやら一口目でギブアップのようだった。うーうー言いながら頭を左右に振っていた。
「ありゃ、ゴン。お前酒ダメだったのか。悪いことしたな。水いるか?」
「らいりょうぶです」
らいりょうぶってお前……。呂律回ってないじゃないか。
「せっかくにゃいにゃが用意してくれふぁんれふもん。 そりぇに、こりぇ、甘いのでもっとにょみまふー」
「はい、すとーっぷ」
ゴンザレスが酒を口にしようとしたところで、カップを取り上げた。
これ以上は流石に拙いと思ったからだ。ここまで酒に弱いとは。俺はゴンザレスの為に代わりの物を用意することにした。
「あうー、ますたーひどいれふ」
「お酒じゃない甘い飲み物用意してやるから、ちょっと待ってろ」
スマホウォッチを操作し、ガチャアイテムを確認していく。画面をスクロールしてある物をタップする。
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アイテム名: 無限の炭酸瓶
ランク :『 N 』
説明 :
喉越しシュワシュワな炭酸水を無限に生成する瓶。
中身が無くなればまた自動で炭酸水が生成される。
果実水を混ぜて様々なフルーツ炭酸水を作ろう。
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テーブルの上に透明な瓶が具現化する。瓶の表面には水滴がついていて、ひんやりと冷えているのがうかがえる。
炭酸のシュワシュワ音を立てながら気泡が浮き上がっていくの見て、ライラは不思議な顔をしていた。
「ほー? 炭酸水?」
ライラは俺が出したアイテムを『鑑定』したようだった。どうやらライラは『鑑定』癖があるようだ。俺は部屋に用意されていた果物を確認すると、その中に見覚えのある果物を見つけた。
この果物は確かメイルプスだっけ。ダルクさん達の村で栽培していたやつだ。
懐かしい気持ちになりながら、メイルプスを取り皮をむいていく。そして細かく刻んだ果肉をカップへ落とし、押しつぶす。
絞りだした果汁を別のカップへ注ぎ、さらに『無限の炭酸水』を注いで完成。
メイルプス果汁の炭酸水――。
乳白色をした飲み物をゴンザレスへと手渡すと、それをちびちびと飲み始めた。
「こくっ。――っ!! くぴっ、くぴっ……けぷっ。 マスター! おかわりください!」
ゴンザレスの呂律が元に戻っている。どういうことだ? 顔の赤みも無くなっているし。
「ゴンザレス、もう酔いはないのか?」
「はい! マスターが作ってくれた飲み物のおかげですね。このメイルプスはアルコール成分を即時分解する効果があるようです」
「へー。そんな効果があるんだな」
なるほどと思っていると、ライラが「いやいやおかしいだろと」とつっ込んできた。果実を手に取りマジマジと見つめ――。
「メイルプスにそんな効能はないはず――……。なんだこりゃ?」
どうやら『鑑定』結果にライラは信じられないものを見たようだ。
俺もメイルプスを手に取り、『収納空間』へと収めてからスマホウォッチで確認してみた。
「どれどれ――」
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アイテム名:メイルプス(品質改良)
ランク :『 N 』
説明 :
ノアル村の名産品。
アイリスの加護により『酔い醒まし』の効能がついた。
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「ぶふっ!!」
説明文を読んで吹いた。
アイリスの加護って……まさか。この果物『アイリスの涙』で育てられたやつか!?
ダラダラと冷や汗がでてきた。
「にしても王都はやっぱ違うな。加護付きの果物なんてあるんだな」
ライラは酒をグビグビ飲みながら感心している。
言えない。その果物は俺が使ったガチャアイテム『アイリスの涙』で育った果物とは……言えない。
「どした? シノノメ?」
「いや、うん。何でもない」
まさかノアル村で使ったガチャアイテムが、この果物を改良させていたなんて思わなんだ。
ゴンザレスは知っていたのか、クスクスと笑っていた。
「マスター。私もっと飲みたいです」
「そうだな。折角ダルクさん達の果物がここにあるわけだし、あるだけ作るか!」
残りのメイルプスを手に取り、俺は果汁炭酸水を作り始めた。せっせと作業しているとリリィが近づいてきた。
「シノ~、私も構ってよ~」
「はいはい、リリィも出来上がっているな。ほれ、これ混ぜて飲んでみ」
リリィが飲んでいる蜂蜜酒に炭酸水を注いでいく。この酒はかなり甘かったから、割ることでちょうどいい塩梅になるはずだ。
炭酸水で割った蜂蜜酒をくぴくぴと飲み、リリィの目が「カッ!!」と見開いた。
「おいしい!! え、うそ、このシュワシュワ凄い! 爽やかなお酒って感じ!」
「ほー、ちょっとあたいにも少しくれ」
ライラが俺から瓶を奪い取り、酒の入ったカップへと注いで飲んだ。
「へー、いいなこれ。未知の喉越しだ。 混ぜないとどんな味なんだ? ぐびっ……。味がない……」
舌を出しながら不味そうな顔をする。
それはそれで美味しいと思うんだけどな。
あるだけ作ったメイルプスの果汁を、天然水のボトルへと詰め替える。入れ替えた水は勿体ないので後で俺が飲むことにしよう。ペットボトル3本分を確保し、内2本を『収納空間』へと仕舞い込んだ。
「シノノメ、あんた武器以外にも珍しいのもっているんだな。こういうのどこで手に入れてるんだ?」
「あー……。えーと……」
正直に答えようか迷っていると、リリィが背中に抱き着く形で乗っかってきた。
「ふっふっふー、シノはすっごいのよー! なんと、シノが持っているアイテムはシノ自身のスキルで手に入るのー! ふふふー」
肩越しに頬を擦り付けてくるリリィ。相当酔っているな。
「スキルでアイテムを手に入れられる? 創成ってことか?」
リリィが喋ってしまったし、まぁ、ライラなら信用できるからいいか。
「創成とは違うかな? 他言無用でお願いしたいんだが、俺の固有スキルはランダムでアイテムを手に入れることができるんだ」
「まさか、女傑カトリアの金槌は――」
「そう。俺の固有スキルで出てきたものだ」
「そうか。既にこの世にないアイテムまで手に入れられるとは凄いスキルだな。流石、『神の使い』はすげぇな。確かに、こんな能力がバレたら身の危険を感じちまうわな」
「ああ、だから――」
「安心しろって。あたいは誰にも言わないぜ? あたいはあんたを気に入ってるんだ。あたいの最高傑作の武器を使いこなした男だからな!」
ライラは「にしし」と笑いながらカップを突き出してきた。俺は苦笑しながら自身のカップでコツンと当て、一気に酒を煽った。
「あー、ずるいー。わたしももっと飲むー」
「はいはい、リリィはこっちを飲もうな」
メイルプスの果汁を注いだカップを手渡してやる。これ以上お酒を飲ませるのはやめた方がいいだろう。
「えー、蜂蜜酒じゃないのー? いやー、お酒もっと飲むの―。シノー、シノ―ってばー」
イヤイヤしながら抱き着いてきた。これはこれで嬉しいんだが、この場にはライラもいるしリリィの名誉の為にも酔いは醒ませた方がいいな。リリィの痴態を晒させるのはあまりも酷だ。
「また今度な」
「むー、わかった。全部飲めないから、半分こして飲む。だからシノも飲んで」
「はいはい、わかったわかっ――」
果汁を口に含んだリリィが突然キスをしてきた。唇を舌でこじ開けられて口の中に液体を流し込まれる。
あまりにも突然な事だったので、驚いて飲んでしまった。リリィも口づけをしたまま喉を鳴らしている。
「んっ……。ちゅ、くちゅ……ん…」
飲み終わると、唇をチロリと舐められた。
「へへへー、おいちい。シノとキスしながら飲んじゃったー。もう一回やるー」
「え、うわっ、ちょ、リリィ――」
また果汁を口に含み唇を近づけてき――。
「んーーー……、んん? んんんぅっっ!!!? ぶーーーー!! ぶはっ!!」
顔に吹きかけられた。
「けほっ、や、ちょっと、こ、ここここれは違うの!! これは酔った勢いというか、あの、そのっ!」
酔い醒ましの効果が出たのだろう。口づけする寸前に素面に戻ったリリィは、酒飲んでいた時とはまた違った赤面顔をしていた。
あたふたしているリリィの姿にライラは笑っていた。
「あはははは! リリィあんた可愛いなぁ! シノ―、シノーって甘えるの最高だぞ! ひー! おなか痛い!」
「ぎゃーーーーーー!!」
顔を真っ赤にしながら悶えるリリィ。うん、自業自得だぞ。
「うううう! 人前であんなことをぉぉぉ!」
「恋人同士なんだろ? ならいいじゃねーか。好きな人とはキスしたいよな~。羨ましいよな~、あたいも男が出来たらリリィみたいにしてみようかな~?」
ライラはニヤニヤしながらリリィをからかっている。
「ぐぬぬ!」
否定できなくて言い返せないでいるようだった。
「ゴンもそう思うだろー?」
ライラがゴンザレスに振ると、ゴンザレスはマイペースにテーブルに並べらていた肉料理を美味しそうに食べていた。
「ふぁい! ごくんっ。私もマスターに後で同じことしてもらいます! へへへ。リリィも後で一緒にやりましょう。ぱくっ……もきゅもきゅ」
「ご、ゴンちゃん!?」
「かー! ゴンお前もかよ!? そういえばゴンもシノの女だったよな。くそー……なんであたいだけ……ひっく」
グビグビと酒を煽るライラ。相当飲んでいるが大丈夫か? 体がふらついているぞ。
「よーし、決めた! あたいもやる! あたいもキスしてみたい! よし、シノノメそこに寝りょ」
ドンと床に押し倒され、腹の上に股がられた。
「うわ、ちょっ!!」
「ふふふ、それじゃいっただっきまーっ――」
「はーい、ライラはペットボトルとキスしようねー?」
笑顔でこめかみに青筋を立てたリリィが、メイルプスの果汁が入ったペットボトルをライラの口の中に突っ込んだ。
「あばばばばばっごっくんっ!! ――――はっ!! あたいは一体何を!?」
べろべろに酔っていたライラが酔いから醒めた。
「んー? 本当に何をしようとしてたのかしらねー? ライラ?」
「うぼふっ! や、これは違うんだリリィ! あたい、何をしようと!?」
「んーー?」
笑顔で迫ってくるリリィにアタフタし始めるライラ。
「いやー、ははははは……」
――――数分後
ライラは土下座していた。
「すまん! あたい深酒すると見境付かなくなるみたいなんだ」
「ふーん」
リリィは口をへの字にし、仁王立ちでライラの前に立っている。リリィ。ちょっと怖いです。
「こういっちゃなんだが、リリィだって責任あるんだぜ? あんなキスを見せられたら、あたいだってムラムラッとくらー!」
「うぐっ! ま、まぁ。私にも非があるのを認めるわ。はーっ……わかったわ。お互い非があるとして水に流しましょう」
「本当か! ありがとうよ! あたい、リリィのそういう所すきだぜ!」
「まったく。ライラのカラッとした性格も憎めないわね」
リリィがライラに手を指し伸ばすと、ライラは手を握り立ち上がる。
「いーい、ライラ? お酒は禁止よ? まったくもう」
「おう! って、えええ!?」
「ぷっ、冗談よ」
「なんだよ、冗談かよ~」
二人して笑いあう姿を見てホッとした俺は、料理を食べているゴンザレスの隣に座った。
くいくいっと袖を引っ張られる。
「はい、マスター。あーん」
ニコニコしながら料理を俺の口に運ぶゴンザレス。
マイペースだなーと思いながらぱくりと一口。
「美味いな」
「へへへ。ですね」
こうして見ると愛されてるんだなと改めて実感するのだった――。
◇
楽しい(?)酒の席も終わり、食後の紅茶でまったりしているとライラが突然立ち上がった。
そろそろ部屋に戻るのかな?
するとライラがテーブル越しに体を乗り出してきた。
「よし、シノノメそろそろ頼む」
「え? 何を?」
「武器だよ! 武器! 見せてくれるって言ったじゃないか!」
ああ、そう言えばライラがこの部屋に訪れてたのは武器を見たいからって言ってたっけ。
「悪い悪い、忘れてた」
「おいー! 頼むぜシノノメ!」
「ほんと、ライラってお酒と武器が大好きなのね」
「そんな褒めんなよリリィ」
「いや褒めてない褒めてない」
リリィはテーブルに頬杖しながら呆れていた。
「んー、折角だしこの場で久しぶりにガチャを回すか。ライラも俺の固有スキルを知ったわけだから、今更隠す必要ないしな」
「え!? さっき言っていたスキルか!? いいのか!?」
「ああ、何かいいのが出たら3人にもあげるよ」
「本当か!?」
「ああ」
ライラは言葉にならないといった表情をした。どうやら相当興味があるみたいだ。
確かに色んなのが出るからガチャを回すの楽しいんだよな。
「まったく、シノは本当にお人よしなんだから」
「ふふ、そこがマスターのいい所ですよ。リリィ」
「ち、因みになんだが武器以外にもどんなのが出るんだ?」
「色々よ。色々。例えばこれ、シノからもらった指輪なんだけどこのダイヤの中を覗いてみて」
リリィは左手薬指に嵌めたダイヤの指輪をライラに見せる。そのダイヤの中には一匹の猫がゴロゴロしながら寝ていた。
以前リリィに譲渡した『踏み踏みニャンコのダイヤモンド指輪』だった。余談だが、リリィが左手薬指に嵌めた時は内心ドキドキさせられたっけ。
照れながら指輪をした時のリリィを思い出した。思いに耽っているとライラが声が響く。
「猫がいる!」
「そうよ猫よ! しかもなんと、この猫取り出せるのよ! 出ておいでー」
リリィが呼びかけるとダイヤが光りながら猫が具現化した。出てきた猫をリリィは抱きかかえる。
ゴンザレスの膝の上で寝ていたクロが起き上がり、耳をぴくぴくと動かしていた。
同族が出てきて反応したかクロよ。
「お、おー! 猫だ!」
「猫よ!」
ドヤ顔をするリリィ。いや、猫はゴンザレスの膝の上にもいるぞ。
「名前はタマよ。この可愛い肉球で踏み踏みしてくれるの。いいでしょー」
抱きかかえられていたタマがリリィの胸を踏み踏みし始めた。
「あっ、こら。そこ踏み踏みしちゃだめ」
くすぐったい表情をするリリィ。男心にくるものがあった。
自重自重。
「なるほどなるほど。よし、シノノメ頼む!」
目を輝かせながらライラが身を乗りだしてきた。
「ふふ。マスター、ホログラム機能展開しますね」
「ああ、ゴンザレス頼む」
俺は苦笑しながらガチャスキルを起動させた――。




