104.友達
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ライラから『土の宝玉』を託されてから数刻――。
日は沈み、辺りは暗くなり始めていた。スマホウォッチで時刻を確認すると、午後6時になるところだった。
俺たちは当初の目的通りライラから竜剣を回収し、ひょんなことから宝玉も回収。シューベル王に事の顛末を説明したら、大いに喜んでいた。
宝玉の一つを手に入れ、残りはあと一つとなったからだ。ついでに竜剣も俺に譲渡してくれた。今までの功績としての報酬で受け取ってくれとのこと。
城内で泊まる部屋も用意してくれた。それと暫くは王都に滞在してくれとも言われた。どうやら次のアベル地方へ赴く際に、騎士隊長を一人同行させる気らしい。
誰が俺に付いてくるか議論し決めるようだ。国の……、いや世界の一大事だからお目付け役を付けるのは当然か。
案内された部屋は個室だったが、断り敢えて3人が寝れる部屋をお願いした。大丈夫だとは思うが、ゴンザレス達に何かあった場合対処できないからだ。
「わー、おっきいお部屋ですね。あ、果物まで置いてありますー! わふー」
「い、いいのかな。こんな立派なお部屋借りちゃって。わっ、このベットすっごいふかふかしてるっ!」
ゴンザレスは装飾を施されたテーブルの上にある果物目掛けて走っていき、リリィは天蓋付きのベットの上にダイビング。
二人とも行儀が悪いぞー。でもまぁ、こんな立派な部屋に通されたらはしゃぐか。
俺はウンウンと頷きながら横を向く。
「で、なんでライラまでここにいるんだ?」
「あ? 堅いこと言うなよシノノメ。折角知り合ったんだ。仲良くしようぜ」
ライラに背中をバシバシと叩かれる。
「本当よ。ライラだって個室与えられてるんでしょ? さっさと戻りなさいよ」
「いいじゃねーか。リリィも同じ巫女として仲良くしようぜ。っつーか、もう友達みたいなもんだろ! なぁ、ゴンもそう思うだろ?」
「はい! ライラとも仲良くしたいです!」
「ゴンは良い子だなぁ! よし、また干し肉をやろう」
「わふー!」
腰袋から出された干し肉をあむあむと食べるゴンザレス。完全に餌付けされとる……。
ライラとは鍛冶場で話がついた後、改めて自己紹介をした。
口は悪いが気さくに話しかけてくるライラは、どことなく憎めないやつである。
リリィはため息をつき「しょうがないか」と言った顔をしている。
「んで、本当の理由は?」
「あ、いやー。シノノメ、珍しい武器いっぱい持っているんだろ? 他にあれば見せてほしいなー……なんて」
はにかみながら頬を掻いている。
そんなことだろうと思った。先ほど見せた『 HR 』武器ではしゃいでいたからなー。
「ああ。見る分なら別にいいよ」
「本当か!? サンキューシノノメ!」
「うわっ! ちょ、ライラ――」
ライラに引き寄せられて豊満な胸へと顔をうずめさせられる。
「あ、こら! ライラいい加減にしなさいよ! 怒るわよ! し、シノも早く離れなさいよー!」
「わりぃわりぃ。武器の事になるとなぁ。あはははは」
「まったく、もう」
リリィに引っ張られライラから離れる。そしてそのままリリィのふくよかな胸へと顔を抱きしめられた。
「えーと、リリィ?」
視線を上げると、その顔は口をへの字にふくれっ面ながらも、頬は赤く染まっている。
「なによ? い、嫌なの?」
「いや、嬉しいっす」
「ふ、ふん。ならいいわ」
恥ずかしさの余り耐え切れなくなったのか、リリィは俺を放す。そしてプイっと顔を背け視線だけ見つめてきた。
「かー! お前ら初心かよ! 恥ずかしすぎて見ているこっちの身が持たねぇ!」
「ライラ、ライラ。マスターは私ともラブラブです! ね、マスター?」
ゴンザレスがぴたっと抱き着いてきた。
「お、おう」
「かー! ゴンもかよ! シノノメ、お前モテモテか! まー、どういう経緯かは知らんが本人同士が納得しているならいいけどよ。しかし両手に花とはやるねえ。……ふーん」
ライラは関心を示す。
旅の道中色々とあったからなぁ。俺も二人の女性を愛すとは思わなかった。
今では大切な人たちだ。
ゴンザレスの頭を撫でていると、ライラが近づいてきて俺の顎に触れてきた。
目を細めてじっと見つめてくるライラに一瞬ドキリとする。
「シノノメ、綺麗な花はいくつもあったほうがいいだろ? どうだ? もう一輪ほしくねぇか?」
「いっ!?」
まるでイケメンがするような仕草とセリフを口にするライラ。口をパクパクさせていると、リリィが物凄い勢いで俺に抱き着いてきた。
「ちょ、まっ、ライラ!? あんたねぇ!!」
「あっはははは! 冗談だ冗談。くくく、ちょっとからかっただけじゃねーか、って、わー! リリィあたいが悪かった! 泣くな! おい!」
「泣いてなんかないわよ!」
リリィは目じりに涙を溜め、頬を膨らませながらプルプル震えている。
「ライラ、リリィを苛めないでください。 めっ! です」
「本当にすまん! あまりにも初心なリリィを見ていたらつい。この通りだ、許してくれ!」
両手を合わせて頭を下げるライラにリリィは「ぐすん!」と鼻を啜ると、口をへの字にし「今回限りよ」と許した。
「詫びと言っちゃなんだがよ、仲直りの印にこいつを出すぜ」
ホッと息を漏らしたライラが腰袋に手を突っ込むと、中から大きな木樽が出てきた。どう見ても腰袋より木樽の方が大きい。
某、国民的アニメのドラ〇もんの四次元ポケットみたいだ。きっと収納魔法が掛かったアイテムなのだろう。
「それは?」
「酒だ! あたい、大の酒好きなんだ。何種類もの酒を持っているんだが、リリィの為にこいつを出すぜ。『黄金蜂の蜂蜜酒』だ!」
「黄金蜂?」
そう言えば大好物だってリリィが言っていたな。
「おうよ! 希少種の黄金蜂の蜂蜜から作った酒だ。こいつは数種類のハーブや果物を入れて甘口に仕上げてある。エルフは蜂蜜が大好物なんだろ? だからとっておきのを出すぜ!」
「蜂蜜のお酒……。しょ、しょうがないわね。ライラが其処まで言うんだったら……の、飲む」
少し照れ気味に答えるリリィに、ライラはきょとんとした後に破顔一笑する。
「ああ! シノノメ、テーブル借りるぜ」
木のカップに並々と木樽から酒を掬っていく姿は豪快だ。後腐れなく振る舞うその姿を見て、リリィがライラに近づいていく。
「美味しそうだね。甘い香りがする」
「だろ?」
にししと笑うライラに笑顔で答えるリリィ。
二人が笑いあう姿に、ゴンザレスは遠い眼差しで見つめていた。
「マスター」
「なんだ?」
「喧嘩しても、あのように笑顔で仲直りできる――。『友達』というのは良いものですね。私も――」
言いかけているゴンザレスの頭に手を置き、そっと撫でる。
「わふっ」
「ゴンザレスも――、ライラと既に友達だろ」
笑顔でそう答えてやると、ライラが声をかけてきた。
「おい、ゴンも蜂蜜酒飲むだろ? 甘くて美味いぞ!」
「シノ、ゴンちゃん! 一緒に飲もうよ! 私もう待ちきれないわ」
二人に呼ばれたゴンザレスはきょとんとした後、笑顔で二人の下へ駆け出した。
「はい! 私も飲んでみたいです! へへへ。いい匂いですねリリィ、ライラ!」
笑顔で話し合う3人の姿に、自ずと笑みがこぼれてきた。
さてと、それじゃ俺は酒のつまみでも用意するかな。
『グルメ包丁』で得た料理がまだ沢山ある。
収納空間からどの料理を出そうか考えながらテーブルへと向かった――。




