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101.謁見の間②

 宰相の話からアイルの話の確証を得た。俺の役目は宝玉を浄化し、世界の崩壊を止めること。


 正直、なんで俺なんだかと思ったが愚痴っても仕方がない。

 4つある宝玉の内、2つは既に浄化し俺の体の中にある。宝玉が暴走する前に回収できれば問題はなしといったところか。


 しかし、どうせ召喚されるなら召喚した本人の前に転移してもらいたいものだ。

 異世界に放り出されてそのままじゃ効率が悪いと思うんだが。


「話は分かった。俺の能力が世界を救うって言うのなら喜んで手伝う」


「おおっ! それは真かシノノメ殿!」


「ええ。どの道、これから住む世界を崩壊させるわけにはいかないですからね」


 安堵の顔を浮かべたシューベル王は、どこかホッとしたようだった。


「ふふ、貴方ならそう言うと思ったわ。シノノメ――。いえ、シノと呼ばれているのよね? 私も親しみを込めて『シノ』と呼ばせてもらおうかしら?」


 宰相の声がどこか熱っぽいものを感じたのは気のせいだろうか、と思っているとリリィが右手をそっと握ってきた。


 口元をへの字にしている。


(私。あの人なんか嫌)


 周りに聞こえないように小声で言ってきた。


 嫌って……。あー、うん。


「いや、シノノメで結構です」


「あら、そう。残念ね」


 宰相はあっさりと引き下がる。


「ふむ、早速だがシノノメ殿には4つの『元素の宝玉』を探し出してもらいたい。それにあたって――」


「あ、ちなみに宝玉ですけど『風』と『水』は既に回収してます。今は俺の指に刻まれた文様となってますけど」


 指に刻まれた文字を見せる。ルーン文字のような紋様はうっすらとそれぞれの色で光っていた。


「なんと! 真か! もう2つも浄化しているというのか!」


 シューベル王は宰相へと顔を向けると、宰相は首を縦に振った。

 まぁ、事情も知らずに半分も既に回収してたら驚くよな普通。


「シューベル王、私からも進言させていただいても宜しいでしょうか」


 並んでいた騎士の中からソフィが前に出てきた。


「ソフィか。よい、申せ」


「はっ! 実はモルセルの件で『元素の宝玉』が関わっています。どうやらマーメイドの種族が守護しており、モルセルはその宝玉を求め今回の事件を起こした模様。

 宝玉を強奪したモルセルは、その力によって『竜』と化しました。古代の文献に記載されている古代竜――。あれは『大海竜・リヴァイアサン』。シノノメ殿の力で討伐したのち、宝玉が彼の体に吸い込まれるのを目撃しました」


 あれ? 確かあの時はゴンザレス、リリィ、アイルしか居なかったはずだが……。

 隠れて見ていたのか。


「そして、これは推測なのですが以前ベスパで討伐されたという古代竜『翠竜・ラファーガル』――。絶滅したはずの古代竜が現代に現れる。

 

 これも『元素の宝玉』が関係していると思われます。それを討伐したのも彼――。シノノメ殿かと。 そうでしょう? シノノメ君」


 ソフィはにっこりと笑顔を向けてきた。


 うへぇ……。ベスパの事何も言ってないのに断片的な情報で見事に当てちゃってるよ。

 脳筋なジークとはえらい違いようだ。


「あ、ああ。『風の宝玉』を守護していた――」


 握られていた右手がぎゅっと握られる。


 リリィ……。


 悲しみを払拭させるようにそっと握り返す。 


「シノノメ君?」


 黙り込んだ俺は訝しむソフィに「そうだ」とだけ返した。

 リリィの気持ちを汲み、エルフの里の話にならないようにしないと。


(シノ。ありがと……)


 小声で呟いてきた。


 やっぱり、尾を引くよな。


 俺たちの雰囲気を察したソフィは軽く慌て始める。


「い、以上であります!」


 ソフィは慌てて隊列に戻っていった。


「ふむ、そうであったか。儂からも改めて礼を言おう。ありがとう、シノノメ殿」


「いえいえ、そんな」


 手を胸元まで上げて左右に振る。


「いやー、しかしあの時はマジでやべぇと思ったぜ。モルセルの野郎に全然攻撃通用しなかったからな。俺の炎が効かないしよ。なぁ、アリゲル」


「ああ。俺の紫電も通用しなかった。正直、あの時は危なかった。エルグ山を真っ二つにした黒い閃光――。目の前で繰り出された時は鳥肌が立ったな」


「あれなー。アレはやべぇよな。アレは」

 

 ジークは後頭部に両手を当て上を向き、アリゲルは腕を組みウンウン頷いていた。


(ちょ、ちょっとジーク兄さん! 王の御前よ! 何考えているの! アリゲル、あんたもよ!)


 ソフィは別の意味で慌てだした。


 その様子に初老の騎士は黙ってジーク達を睨んでいる。


 ソフィも大変だな。


「ソフィよ、よい。ドラガス達も気になっていたのだろう? 従者たちから聞いておるぞ。騎士隊長の皆がシノノメ殿の噂をしていると」


 仏頂面をした初老の騎士は恥ずかしそうに「こほん」と一つ咳ばらいをし、一歩前に出てきた。


「王よ、話の腰を折り申し訳ありません」


「よいよい、折角の機会だ。皆の者、シノノメ殿に挨拶をしておきなさい」


「「「「はっ!」」」」


 並んでいた騎士の面々が胸に右手を当て敬礼する。


 隊番の順に自己紹介が始まった――。

 この場にいる隊長は8人。全部で10番隊あるらしいが、残り2人は任務とモルセルの事後処理で来れないらしい。まぁ、ヴィクセルさんが居ない理由は分かっていたが。もう一人は、その内会う機会があるだろうと言われた。


 一通り挨拶は終わり、シューベル王が咳ばらいをする。


「話を戻そう。宰相よ、残りの宝玉の在り処はわかるか?」


「はい。既に『風』『水』の宝玉を手に入れたというので、残りは『火』『土』の2つ。


 『火の宝玉』は南のアベル地方に住むラオウ獣人の一族が。『土の宝玉』は東のレガル地方に住むミスルドワーフの一族が守護しております」


「え? 今アベルの国境で帝国がキナ臭い動きをしてるってレン君から報告が上がってきてたけど、大丈夫かな?」


 サイドテールを揺らしながらニカ=ブライアンが顎に手を添える。ショートテイルの為か、少し頭を動かすとぴょこぴょこと揺れていた。


「あー、ラオウ獣人族って、あの戦闘狂民族か? 一度、帝国が彼らの土地に侵略した際に返り討ちにあったろ? その辺は大丈夫じゃないかな。まぁ、彼らは俺らに対しても不干渉だが」


 くたびれた様子で両手を上げるラクス=ホーゲン。なんだろ、仕事が激務なのだろうか。

 一人だけ異様にやつれている。


「敵意を剝き出しにされてないだけマシですけどね。そういえばグランドマスター。あの件で鍛冶師の中に一人ミスルドワーフがいたはずですが、同じ出身なら宝玉について知っているのでは?」


 遠慮がちに発言するユノ=パガン。確かに、同じ一族なら知っているかもしれない。


「そういえば鍛冶師を手配したのはユノだったな。しかし、まずくはないか? あれのせいで鍛冶職人共は命を落とし掛けたと言っていたな。そいつは無事なのか?」


「えっとー。手配後はグランドマスターに引き継ぎましたので詳しくは……。あの、グランドマスター?」


 凛とした佇まいのローラン=スタンレーに問われ、ユノは頬を掻きながら答える。

 グランドマスターと呼ばれたドラガス=ガーガンは両腕を組み直す。


「うむ。唯一鍛冶師の中で無事なのが一人居る。最後まで仕上げたのがミスルドワーフの彼女だけだ」


 彼女? ということはドワーフの女鍛冶師なのか。


 しかし、話しを聞いているだけでも相当物騒なものを製造していたようだ。


「それでドラガスよ。その者は今どうしておる」


「はっ! それが製造した武器が余りにも強力な呪いが掛かっていたため、封印指定の遺物になるだろうと話したら鍛冶場に武器と共に立て籠ってしまいまして」


 ドラガスはバツが悪そうに答える。


「ドラガスよ、その者にちゃんと食事は与えておるのか」


「それはもちろんです。従者に運ばせております」


「食事を運んだ時に取り押さえればいいだけの話じゃ――ごふっ!」


 ソフィは耳の穴を穿ってるジークの脇腹を殴っていた。


(ジーク兄さんやめて! 私の精神HPはもうゼロよ!)


 ソフィ涙目である。


「触れるだけで生命を吸い上げる代物を彼女は平気で持ち歩けるのだぞ? 取り上げようとしたらこちらに被害が出る可能性が高い。

 それに彼女は犯罪を犯したわけではない。こちらからの要請に協力してくれた者だ。今は辛抱強く話し合いをしているところだ」


「ふむ、彼女はなんと申しておる」


「はっ! 武器を扱える者を連れて来い、と……」


「ドラガス、お主でも扱えぬ武器なのか?」


「はい。私でも無理でした。恐らく、この国に扱える者はいないかと。唯一、武器を仕上げたミスルドワーフの彼女のみ触れることが出来るみたいですが、その能力までは扱えないようなので危険視はしていないのですが」


 ドラガスから『生命を吸い取る』武器の話を聞いて、似たような武器を思い出す。

 俺はゴンザレスの方へ向く。


「ゴンザレス、『竜剣』以外で生命搾取する武器ってあるのか?」


「そうですね、攻撃対象の体力を吸収し使用者の傷を回復させるドレイン系の武器や、使用するごとに使用者の体力を攻撃力に転換する武器はありますが。触れるだけで生命力を奪うのは『竜剣』だけです」


「へー、ドレイン系の武器もあるだな」


 ゴンザレスの博識にウンウン頷いていると、ドラガスが怖い顔で目の前に立っていた。


「シノノメ殿、今なんといった?」


「え? ドレイン系の武器ですか?」


「その前! その前だ!」


「えっと、『竜剣』ですか?」


 竜剣という言葉を再度聞いてドラガスは驚いた顔をした。


 まさかとは思うが……。


「今までの話からすると、『翠竜・ラファーガル』から『竜剣』製造しました?」


 くわっ!っと、ドラガスの目が見開く。


 こわ!


「お主、古代竜から製造できる武器を知っているのか!?」


「え、あー、まぁ、何本か『竜剣』持ってますけど……」


 そう言うとドラガスは衝撃を受けたようで、よろよろと後ろへ数歩下がった。


「シノノメ君、もしかして……モルセルの件で使っていた大剣って……」


「うん、『竜剣』だね」


 ソフィにグッと親指を立てると乾いた笑いしていた。

 ジークやアリゲルは「あー、なるほど。なんか納得したわー」「うんうん」と2人で話していた。


「ふふ、ならミスルドワーフの要望を聞く適任者はシノノメってことね。よろしいですね、シューベル王」


「うむ、そのようだな」


 他の隊長達は話についていけずに「ぽかーん」とした表情をしていた――。




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