10.衝撃の事実 ★
ノアル村から出発して数刻――――。
「あー、のどかだなー……ふぁ~~あ、わふ……」
街道を走る三台の馬車。そのうちの一つの馬車、メイルプスを詰んだ荷台の上で横になりながら、のんびりと空を眺める。
この世界に飛ばされて4日経過しているが、人間とは不思議なものでどんな状況でもなれるものらしい。現に今の自分がそうである。
ふと視線を同乗者へと向ける。同じ馬車には馬の手綱を握る御者と、護衛する冒険者4人。
1人目は髪と髭をボサボサに生やした中年の大男で大剣を背負っている。
2人目は金髪でスラっとした体格の若い男で腰に剣を帯刀している。
3人目は赤毛のちょっとふっくらした女の子でマントを羽織その手には木の杖が。
4人目は金髪ポニーテールで耳が長く弓矢を背負っているスラっとした小柄な女の子だった。
どうやらこの4人は仲間内みたいだった。話を聞いているとそんな雰囲気が読み取れる。
ちなみにこの若い男、オネェ系である。さっき挨拶したら正にオネェ言葉だったのだ。
残りの馬車二台もそれぞれ同じように、冒険者が乗っている。そういえば魔物以外に盗賊も出ると言っていたので、護衛をつけるのは当たり前なのだろう。
難儀な世界である。
考え事をしていたら視界に影ができる。
「ははは、あんちゃん、でっけぇ欠伸だな。寝てたらどうだい。まだベスパまで暫くかかるぞ」
「そうよん、結構馬車の移動って疲れるから、寝れるうちに寝たほうがいいわ。なんなら、添い寝してあげるわよん?」
どうやら同乗している冒険者の影のようだ。
「い、いえ、大丈夫です。お気遣いどうも……ふぁ~わふ」
「そうかい? ならいいんだが」
中年の男とオネェ男は視線を外す。
本当はやりたいことがあるのだ。『ソウルガチャ』を新たに回したいのだが、流石にスマホを見られるのはまずい。
ズボンのポケットの中にしまっているスマホの感触を確かめる。
(あれ? そういえばゴンザレス、この世界に来てもう4日立つがスマホのバッテリーは大丈夫なのか?)
『はい、問題ないですよ。動力源は電気ではありませんので。ちなみに―――』
ゴンザレスを起動してから随分と機械的な口調が柔らかくなった気がする。日々学習しているのだろう。
少しずつ成長するゴンザレスをちょっと嬉しく思う。自分が育てているとでもいうのだろうか。
そんなゴンザレスと会話のスキンシップを取ろうと思った。
『―――動力源は』
(ちょっとまった! 暇だし、折角だから俺が当ててみよう)
『はいマスター。どうぞ当ててみてください』
(そうだなー。こういった異世界、ファンタジーだとお決まりの物が一つ――。ずばり、『魔力』だ!! どうだ、正解か?)
『ぶぶー、残念不正解ですマスター』
え? 違うの? こういったのお決まりのはずなんだけどなー。
(んー……、あ! そうか、ソウルだ。 ソウルに違いない! どうだ、ゴンザレス? 今度は正解?)
『正解ですマスター。ソウルが動力源です。ただし――』
そうかー、ソウルが動力源だったのか。正解した俺って凄いなー、あはははは―――
『正確には東雲 透の魂。つまり寿命です』
はははは―――……は?
今……なんて言った……よ、よく聞き取れなかったぞ。
(ゴンザレスさん、ワン モア プリーズ)
『マスターの、寿命です』
「うあああああああ、やっぱりーーーー!!」
上体を起こし、突然大声を上げてしまったため、護衛の4人が何事かと此方に寄ってきた。
「どうしたあんちゃん! 何かあったのか!!」
「何事!?」
「敵襲なの!?」
男2人は辺りを警戒して腰に帯刀している剣を引き抜き、赤毛の女は杖を構え、金髪の女は弓を構える。
「あ、いや、ごめんなさい! 悪い夢を見て驚いてしまっただけで……あ、あははは……」
4人の護衛は目をキョトンとして、やれやれといった顔をする。
「あんちゃん、驚かさないでくれよ。魔物か盗賊が出たのかと思ったぜ」
「そうよん。でも、お兄さん顔色わるいわよ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です。本当、驚かしてごめんなさい」
「そう?」
そして護衛の4人は先ほどいた場所へと離れていく。
(ゴゴゴゴゴンザレス、一体どういうことだ! 説明してくれ!)
『この世界に転移し、固有スキル『ソウルガチャ』を付加するため、スマートフォンをマスターの魂と同期する必要があったのです』
あ、あの時か! 初期化・再起動を開始した時!
『そうです。このスマホはマスターの一部、あなた自身になるのです』
(ちょっと待て……。その口ぶりだと……)
『はい。お察しの通り、マスターの魂と同期しているこのスマホを破壊されれば、……死にます』
ああ、やっぱり!!
『補足ですが、スマホ一日可動するのに必要な動力は、寿命一日分となります。ですので、マスターの寿命は本来の半分になる。ということです』
俺の寿命が本来の半分になる……。
ワケのわからない世界に飛ばされた挙句、寿命が半分……。
突然の事実に目の前が真っ暗になる―――。
あまりの衝撃な事実に意識が薄れていくのを感じたのだった。。




