閑話 カジノでリベンジしてみた
「――よーし、今日こそリベンジするぞぉっ!」
というわけで、ローナはいつものようにカジノにやって来ていた。
ローナの目の前に広がっているのは、きらびやかな金世界。
最初にカジノに来たときは、『ば、場違いじゃないかな……?』とおろおろしていたローナも、今では歴戦の貫禄とともにカジノに入っていく。
(うん、私も成長したってことだね!)
王都に入ってから数週間――。
かつて都会に圧倒されっぱなしだったローナは、もうここにはおらず。
今のローナにとって、カジノは第2の実家とも言えるような安心感さえあった。
といっても、最近はその第2の実家に、金をしぼり取られてばかりだったが……。
しかし、今日のローナは一味違った。
(――ふふん! 今回はインターネットでちゃんと“勉強”してきたもんね!)
インターネットによると、このカジノには『誰も知らない必勝法』があるらしく、それを特別に教えてくれている親切な神々がいたのだ。
さらに今回は、この道にくわしい港町アクアスのアリエスからも、勝つための秘訣を伝授してもらっている。
『――いい、ローナちゃん? 賭け事っていうのは勝とうとしちゃダメなの。いかに負けないかが大事なの。それを、けっして忘れちゃダメよ?』
そう微笑みながら、杖を質屋に持っていったアリエスの仇を討つためにも――。
今日ここで、長きにわたるカジノとの因縁に決着をつけなければならない。
というわけで、ローナはむんっと気合いを入れると、さっそく受付のバニーガールのもとへと向かった。
「こんにちはー!」
「いらっしゃいませ! いつもお越しいただきありがとうございます、ローナ・ハーミット様! 本日もカジノコインを買っていきますか?」
「はい!」
ローナはそう返事をして。
――どんっ! と。
アイテムボックスから金貨がつまった袋を取り出した。
「――このお金を、全部カジノコインに換えてください!」
「…………へ?」
と、バニーガールが一瞬フリーズする。
「え……ええっ!? よ、よろしいのですか!? いつも負けてるくせに!?」
「はい! あっ、それと……」
ローナはインターネット画面を見ながら。
「キーワード――“王は金なり”」
その言葉を告げた。
これは、“VIPルーム”という、1ランク上のカジノルームに入ることができる合言葉らしい。
VIPルームだとさらにカジノを楽しめるということで、半信半疑で言ってみたが。
その言葉の効果は――劇的だった。
「……………………へぇ?」
バニーガールの顔に貼りついていた営業スマイルが、すぅっと消えていく。
「…………では、こちらへ」
「え? あ、はい!」
バニーガールにうながされて、ローナは『スタッフオンリー』と書かれた扉へと入っていく。
それから、しばらく階段をおりていき――。
「…………こちらです」
「わぁあっ!」
やがて通されたのは、ローナが慣れ親しんだカジノよりも、さらに豪華なカジノだった。
宝石がふんだんに使われたシャンデリア、金糸の刺繍が入ったふわふわの赤絨毯、乱れ舞うトランプ、天井まで積み上げられたコインタワー……。
さらには、なぜか屋内なのに噴水や滝まである。
さすがはVIPルームといったところか。
そこにいる客たちも、見るからに大富豪という感じの人たちだ。
(やっぱり、インターネットに書いてある通り!)
と、ローナは少しテンションを上げつつ、VIPルームに足を踏み入れると――。
「「「……………………」」」
じっと品定めするような目が、客たちから向けられた。
(……? なんで見られてるんだろ? もしかして、ドレスコードとかあるのかな……? でも、インターネットにはそんなこと書いてなかったし……)
と、きょとんと首をかしげるローナ。
……そう、ローナはまだ知らなかった。
この“VIPルーム”が、『国の重要人物たちが集まる場所』であるということを。
そして、今この瞬間にも、この場所で――大商人が破産をし、貴族の勢力図が塗り替えられ、この国の新たな支配者たちが誕生しているということを。
ここはいわば、VIPたちの主戦場であり、政治的な殺し合いの場であった。
「…………それでは、ごゆるりとお愉悦しみください」
「はい! 楽しみます!」
こうして、バニーガールが去ったあと。
(とりあえず、今日はルーレットをやるから……あっ、あそこかな)
と、ローナは迷いなく歩みを進めていき、ルーレットの台にちょこんと着く。
その瞬間、同じ台についていた多くの者は、びくぅっと体を震わせ……。
そして、残りの者は――どっと笑いだした。
「ははははっ! 嘘だろ、こんな子供がVIPだと?」
「おいおい、ここは嬢ちゃんみたいなのが来るようなところじゃ――」
しかし、彼らの笑い声は、ローナのたった一言で霧散した。
「――――赤の3に全賭け」
「「「………………は?」」」
ローナがカジノコインの山を置きながら、ディーラーに向けて宣言する。
しばしの静寂。そして――。
周囲の客たちが一斉に、ざわ……ざわ……と動揺の声を上げた。
「……お、おい? 聞き間違いじゃないよな……?」
「あれだけのコインを全賭けっ……!? そ、それも、一点賭けだとっ……!?」
「っ……! あ、ありえねぇ、正気じゃねぇっ……!」
そう、VIPルームでは一度に賭けられるコイン数に上限がない。
だから、自分の財産を“全賭け”することさえもできてしまう。
しかし、もちろんこんな賭け方をする者がいるはずもない。
いるとすれば、それはただの大馬鹿者か、あるいは――――。
「み、見ろ、あのなにも考えてなさそうな顔をっ……! 俺にはわかるっ……! あれは、生まれながらの勝負師の顔だっ……!」
「お、俺たちは“殺される”んだぁああっ……!」
と、たちまち混乱におちいる客たち。
緊張に耐えきれなくなった者が椅子から転げ落ち、あるいは悲鳴を上げてその台から逃げだし――。
(……? なんか、騒がしいなぁ)
一方、いつものごとくその混乱の元凶であるローナは、ぽけーっとした顔で首をかしげていた。
(まあいっか! とにかく、今日こそは絶対に勝つぞぉ!)
そう……ローナの賭け方は、どう考えても大馬鹿者の賭け方だったが。
しかし、ローナにはこのやり方で勝てるという“確信”があった。
なぜなら――。
(――だって、「わざ○ぷ」って攻略サイトに書いてあったもんね!)
そう、インターネットに書かれていることに間違いはない。
そこに記されているのは、神々の叡智であり――。
全て、この世界の真実なのだから。
(えへへ♪ まだかな、まだかな♪)
そして、誰もが固唾をのんで見守る中……。
運命のルーレットが、ゆっくりと回りだしたのだった――――。
⇐To Be Continued…
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┌───┐
│ │ [裏技]☺奇妙な名無し
│ │ カジノ必勝法! 色違いカジノ
└───┘ コインゲット!
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簡単です!
まずはじめに、所持金を全てカジノコインに
換えます。
このカジノコインをアイテムボックスの一番
左上にしまいます。
(※注意! 必ず所持金を0シルにするこ
と! 最後にお金はちゃんと戻るので安心し
てください!)
VIPルームに入ったらルーレットの台につ
き、左上のマス(赤の3)に全てのコインを
賭けます。
うまくいくと、アイテムボックスの左上が色
違いカジノコインになっています! このカ
ジノコインには、なんと通常コインの1億倍
の価値があります!
▍結果
カジノで勝てる!
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