120話 あにめを作ってみた
「――きゃるる~ん♪ りゅんりゅん♪ エリエリりん♪ きらめけミラクル☆ 爆ぜろマジカル☆ 愛と正義のエリート美少女戦士! 魔法少女エリミナ――爆☆誕っ!」(泣)
というわけで、この世界に『魔法少女エリミナ』が爆誕したあと。
「やー、すごい熱演だったねー。まるで世界の命運をかけて演技してるみたいだったよ」
「はい、さすがエリミナさんですっ! あかでみー主演女優賞ですっ!」
「……エリエリしてきたわっ✧」
「あ、あのぉ……」
と、そこで。
お団子ツインテール&フリフリ衣装のエリミナが、顔を赤らめながらもじもじと挙手をした。
「……私、もう社会人なんですが……魔法少女? というのは、いろいろと、その……キツいなぁ、と」
「いえ、大丈夫ですよ! 今どきは、社会人でもよく魔法少女になっているので!」
「あたしのデータによると、それはそれで需要がありそうだし」
「……法的にも都合がいいわ✧」
「あ、はい」
それはそうと。
肝心なのは、今のエリミナの名演を、作画担当のマリリーンが“あにめ”として落としこめるかだが……。
「んー、キラキラ感? っていうのを出すのが難しいわね。ただ光らせればいいってわけでもなさそうだし、なにか参考になりそうなものが欲しいけど……」
「あっ、それなら、メルチェちゃんのキラキラ女児オーラが使えると思います!」
「キラキラ女児オーラ?」
꙳✧˖°⌖꙳――こんな感じで、どうかしら?꙳✧˖°⌖꙳
「うわっ、まぶしっ」
「ちなみに、最近の“あにめ”の変身シーンでは、変身空間にストーリー性を取り入れたり、女の子が上下左右に動きまわったり、歌って踊って演奏したりするそうですね――それから、変身中にじゃんけんをするなどの“いんたらくてぃぶ性”を取り入れることで、より没入感やエンタメ性を――」
「……やることが……やることが多い……っ」
こうして、マリリーンが目を閉じて考えこむこと、しばし。
「……よし、だいたいイメージが固まったわ。こんな感じかしら?」
やがて、マリリーンはうんと頷くと、魔法で水の画面を作り出し――。
꙳✧˖°⌖꙳――きゃるる~ん♪ りゅんりゅん♪ エリエリりん♪ きらめけミラクル☆ 爆ぜろマジカル☆ 愛と正義のエリート美少女戦士✧ 魔法少女エリミナ――爆☆誕っ!꙳✧˖°⌖꙳
「ふおぉおお~~っ✧」
「わぁっ、すごいっ! エリミナさんが“あにめ”になってるっ! キラキラしてるっ!」
「…………や、やめてぇ……っ」(赤面)
「やー、エフェクトってのがあるだけで、だいぶ見栄えが違うもんだねー」
「くららら☆ ま、これぐらいは余裕ね」
「え、なに……? くららら?」
「といっても、まだまだ納得できるクオリティーじゃないわね……イメージも完璧に固まってないし、カメラワークも微妙だし……背景やエフェクトがこの色だと、キャラと小物が浮くから色の調整も――」
と、いつの間にか、マリリーンがかなり“あにめ”作りに積極的になっていた。
どうやら作業をしているうちに、世界屈指の幻術職人としてのプライドに火がついたらしい。
「……そうね✧ 変身アイテムや振りつけもいろいろ試したいわ✧ それと、初回の変身シーンは1分半ぐらいの長さにしたいわね✧」
「というわけで、エリミナさん! テイク2お願いします!」
「えっ!?」
そんなこんなで――。
「――きゃるる~ん♪ りゅんりゅん♪ エリエリりん♪ きらめけミラクル☆ 爆ぜろマジカル☆ 愛と正義のエリート美少女戦士! 魔法少女エリミナ――爆☆誕っ!」(テイク5)
「はい、OKでーす」
「ぜぇ……はぁっ! な、なんの儀式なの、これ?」
こうして、『魔法少女エリミナ』の変身シーンができたのだった。
「あとは、やっぱりマスコットキャラが欲しいですね!」
「……ん、そうね✧ 魔法少女といえば、やっぱりマスコットキャラは必須ね✧」
「んー、といっても、さすがに“中の人”が用意できないんじゃない? 小さくてしゃべるかわいい生き物でもいればいいけど……」
「あっ、それなら! しゃべりはしませんが……イフォネの町の辺りに、“ぽけ○ん”にそっくりで、かわいいモンスターがたくさん――」
「………………」
「………………」
「なんでもないです」
なにかを察したローナであった。
なにはともあれ、気を取り直し。
「うーん、小さくてしゃべるかわいい生き物ですか……なんか、そういうの、最近どこかで見たような――あっ!」
と、ローナは、ふと思い出す。
「そうだ、私に心当たりがあります!」
◇
ところ変わって、王城の地下深く……。
特級凶悪犯たちが収監されている地下牢獄。
その中でも、厳重に“封印”がほどこされている最奥の独房に……。
かつん、かつん……と、揺れるランタンの光が近づいてきていた。
『――ぐごごご……なんだ、看守か? またぬる~い尋問でもするのかァ?』
その独房につながれた小さな影が、ランタンの光に照らされ、だんだんと輪郭をあらわにしていく。
そうして姿を見せたのは、地底王国ドンゴワにて地上を滅ぼすための陰謀をくわだてた、危険な上位魔族――。
――溶岩魔人ラーヴァデーモン(※首だけ)だった。
『ふん、煮るなり焼くなり好きにするがいい。もはや、我は力を失った身……ここでは溶岩で回復することもできんしな』
しかし、そんな言葉とは裏腹に。
溶岩魔人の顔には、にたぁり、と人間に対する嘲笑が浮かんでいた。
そう、英雄エリミナの知略(すごい)によって、溶岩魔人の襲撃はどれも被害なしに防がれ。
さらには、エリミナの召喚獣(※ローナ)にトラウマ級の魔法を連発されて、ついには首だけのみじめな姿になってしまったが……。
それでも、溶岩魔人はまだ、上位魔族としての誇りまでは失っていなかった。
『ぐごごご……人間どもよ、ゆめゆめ忘れるな。我は“傲慢の大罪”をつかさどる上位魔族――溶岩魔人ラーヴァデーモンッ! いかなる責め苦を負わされようと、我は絶対に人間などに屈しない――ッ!!』
こちらに近づいてくる足音に向け、溶岩魔人はそう宣言する。
そうこうしているうちに、溶岩魔人の独房の前で、その足音がぴたりと止まり……。
そして、ついに足音の主があらわになった。
「あっ、溶岩魔人さん、こんにちはーっ!」
『…………屈します』
溶岩魔人は屈した。
そんなこんなで、マスコット担当の溶岩魔人が仲間になり――。
『――ぐごご☆ ボクは妖精のグゴップルぐごっ♪ ボクと一緒にマジカルジュエルを集めるぐごーっ♪』(裏声)
「はい、OKでーす」
こうして、『魔法少女エリミナ』のマスコット妖精グゴップルが爆誕したのだった。
「えへへ! 溶ちゃんの演技かわいかったですよ! やっぱり、私の見込んだ通りでした!」
『……あの、魔族の情報を吐くので、今から司法取引とかって』
「? いえ、情報はいくらでも手に入るので、とくにいらないですが」
『……あ、はい』
溶岩魔人(首)が背中(後頭部)から哀愁を漂わせながら、とぼとぼと部屋の隅にさがっていく。
「いや……あれがマスコットでいいの? あたしのデータによると、上位魔族のはずだけど」
「ま、まあ、デフォルメ効かせまくれば、なんとかなるでしょ……たぶん」
なにはともあれ、こうしてマスコット担当も仲間に加わったことで――。
「……ひとまず、これで『魔法少女エリミナ』に必要なものは、だいたいそろったわね✧」
「はい、そうですね!」
と、ローナは〝あにめ〟の撮影現場を見まわして宣言する。
「……それじゃあ、さっそく“PV”を作って、ここから本格的に『魔法少女エリミナ』を世に発信していきましょう!」
「おおーっ✧」
「えっ!? 世に出すの!?」
……エリミナが大観衆の前でアイドルライブをするまで、あと4話。










