12話 ダンジョンボス
――――――――――――――――――――
≡ エタリア攻略wiki [ ]検索 ⍰
――――――――――――――――――――
▍ボス/【終末竜ラグナドレク】
▍出現場所:【黄昏の地下神殿】
▍レベル :83
▍弱点 :火・氷・光
▍耐性 :闇・毒・弱化
▍討伐報酬:【終末竜衣ラグナローブ】
アイテムボックス拡張+50
▍概要
1部クリア後に戦えるようになる高難易度
ボス。
初実装の高難易度ボスだったが、弱点が多
いうえに【閃光ハメ】ができ、さらには安
全地帯まで存在するという不遇っぷり。
――――――――――――――――――――
「……はぁ……はぁ……『安全地帯』?」
ローナは焦りで何度も手をすべらせながらも、インターネットで目当ての情報を発見した。
「安全地帯っていうと……あっ、あそこか!」
広間の奥にある、石階段の上の儀式場のようなスペース。
あそこがどうして安全地帯なのか理由はわからなかったが、考えている余裕はない。
「――猪突猛進!」
ローナは“猪突のブーツ”の装備スキルを発動し、一気に石階段を駆け上がる。
「はぁ……ふぅ……ここ、本当に安全なの?」
生贄の祭壇みたいな石の台があるだけの場所だ。
それほど高い場所というわけでもない。
後ろを見れば、黒竜が怒りに満ちた雄叫びを上げ、全身を縛りつける鎖をぶちぶちと引き抜きながら迫ってきていた。
その大きく開けた口の中で、金色の炎が膨らみ始める。
インターネットに書いてあったブレスの合図だ。
「う、うわぁあっ!?」
ローナが慌てて、石の祭壇の裏にすべりこむと。
ほぼ同時に、後ろから黒竜のブレスが飛んできた。
ごぉおおぉおおォオオオオォオオオ――ッ!!
と、夕焼けを思わせる黄金の光線が放たれ……。
「…………へ?」
ローナが思わず、ぽかんとした声を出す。
邪竜のブレスの角度のせいか、それとも特別な結界でも張られているのか。
ローナのいる高台の上にまでは、不思議とほとんど炎が届いていなかった。
そのうえ、黒竜が階段をのぼってくる様子もない。
どうやら、床につながれている鎖を、全て引き抜くことはできないらしい。
番犬のように鎖をぎしぎし鳴らしながら、黒竜は恨めしそうにローナを睨んでいる。
「ほ、本当に……安全だった」
ばくばくとうるさい心臓を押さえながら、ローナは胸をなで下ろす。
高台の下から、黒竜が怒り狂ったようにブレスを吐きまくってくるが……もう怖さはない。
おそらく、このダンジョンを作った人たちが、自分に攻撃が届かないようにうまく計算して安全地帯を作っていたのだろう。
とはいえ、今は安全地帯に誰もいないため、侵入者が安全地帯を使い放題という状態になってしまっているが。
(この高台の上から、遠距離攻撃をぶつけていけば……)
勝てる。
ローナはそう確信して、杖を黒竜へと向けた。
「まずは――星命吸収!」
黒竜の体からMPが吸われ、がくっと力が抜ける。
「からのぉ――プチアイス!」
インターネットによれば、黒竜の弱点属性は――氷。
ローナはチャージしたばかりのMPを限界までつぎこみ、氷魔法を連発する。
もはや、黒竜は巨大な的でしかない。
「からのぉ――ちょっと休憩」
ローナは祭壇の裏にちょこんと座って、いそいそと弁当を取り出した。
ここまで来るのに歩きっぱなしだったし、今のうちに休憩しておきたかったのだ。
(はぁあ~、疲れた体にイプルの実の甘さが染みわたるぅ……)
黒竜がグォオオッと近くで暴れている中。
試験前に屋台で買っておいたイプルサンドイッチとイプルティー(イフォネ名物)で、軽い昼食を済ませ――。
「よし、再開!」
そうして、ふたたび氷魔法を黒竜にぶつけていく。
しばらく、そんなことをくり返したところで。
「って、うわ! 空飛んだ!」
やがて、黒竜が暴れて自分をつないでいた鎖を引き抜き、空中へと羽ばたいた。
「そういえば、HPが減ると攻撃パターンが変わるんだっけ……?」
おそらくは、緊急時に黒竜が全力を出せるように作られているのだろう。
しかし、その対処法もインターネットに書いてある。
――――――――――――――――――――
≡ エタリア攻略wiki [ ]検索 ⍰
――――――――――――――――――――
▍攻略法
HPが半分以上減ると、空中攻撃が追加さ
れる。
空を飛ぶとやっかいなので、すぐに閃光で
撃ち落とそう。
またブレスも範囲が広がり、複数の状態異
常を付与してくるようになる。
ブレスの溜めは長いので、すぐに回避に徹
するか安全地帯に逃げこもう。
――――――――――――――――――――
「えっと、空を飛んだら――プチライト!」
――ぱぁんッ! と。
空中で閃光が弾けて、黒竜がうなり声を上げながら落下する。
そのまま地面でもがいている隙に、星命吸収からのプチアイスをぶつける。
ふたたび空を飛ぼうとしたら、プチライトで撃ち落とす。
「よし、パターン入った」
ローナが小さく拳を握りしめる。
インターネットによれば、こうした戦い方を神の言葉で――『高台ハメ』と呼ぶらしい。
(いやでも……このドラゴン、バカなのかな? なんで、同じパターンでやられに来るんだろう……)
まるで一定の動作パターンで動いているかのようだ。
(なんか一方的にいじめているみたいで、ドラゴンがかわいそうになってきた……)
とはいえ、倒さなければ殺されてしまう。
というわけで、ローナはすぅっと息を吸い――。
「――プチアイス!」
最後に、全力の氷魔法を放った。
ぴきぴきぴきぴきィィィ――ッ!!
と、氷の波が広間全体を襲い、黒竜が完全に凍りつく。
それがとどめになったらしい。
竜の形の氷を残したまま――ぼふんっ、と。
黒竜の体が、膨大なマナの光をふき上げながら消滅した。
『終末竜ラグナドレクを倒した! EXPを66600獲得!』
『LEVEL UP! Lv22→42』
『SKILL UP! 【大物食いⅡ】→【大物食いⅢ】』
『SKILL UP! 【魔法の心得Ⅴ】→【魔法の心得Ⅶ】』
『スキル:【竜殺しⅠ】を習得しました!』
『アイテムボックス枠が50拡張されました』
『称号:【終末の覇者】を獲得しました』
経験値獲得などの表示が、次々と目の前に現れる。
ということは。
「討伐完了……でいいのかな?」










