115話 休暇を満喫してみた
大変お待たせしました……! 連載再開です!
ちなみに、漫画版7巻が本日発売! おさらいもかねて、漫画版もぜひ!
■これまでのあらすじ
王都で家をゲット → スローライフで“無”を生み出す → ドワーフたちの国・地底王国ドンゴワに旅行 → “無”で冷蔵庫を作る → ドワーフ姫のワッフルが鍛冶師ドワーゴの弟子になる
◆ローナ・ハーミット
インターネットが大好きな普通の女の子。
◆邪神テーラ
ローナの同居神①。もともとは地の女神で、今は肘もつかさどっている。
◆闇の女神ロムルー
ローナの同居神②。ボイスが実装されていないため筆談で会話する。本好きの引きこもり体質。
◆封ちゃん(封印されしエクス=ディエス)
ローナのペット。見た目はエクス○スというよりゴルベ○ザに近い。
(※9章・邪神テーラまでのキャラは、こちらでイラストつきで紹介されています!)
https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/series/detail/sekaisaikyonomajo/
ローナが地底王国ドンゴワを救ってから、しばらく経ったある日のこと。
今回のドンゴワ旅行でも、なりゆきで『溶岩魔人による世界滅亡計画を阻止する』『天才職人ドワーゴをドワーフ王と和解させる』など、いろいろ活躍したローナだったが……。
しかし、ローナにとってドンゴワ旅行の一番の収穫は、別にあり――。
「――というわけで、我が家に“冷蔵庫”がやって来ました!」
「おおーっなのじゃ!」
『8888』(拍手)
『エ、ェ……エクスディェェェエスッッ!!』(※かわいい鳴き声)
そんなこんなで、とある日の王都郊外。
ローナの住んでいる家(恐怖の館テラーハウス)にて。
ローナは、ドンゴワ旅行の一番の収穫物こと“冷蔵庫”を、同居神(邪神テーラ&闇の女神ロムルー)とペット(封印されしエクス=ディエス)の前でお披露目していた。
「ところで……“れーぞーこ”とは、なんじゃ? うまいのか?」
「あ、あれ? テーラさん、“冷蔵庫”知らないんですか? さっき歓声上げてたのに……」
「うむ、全然わからん。われは雰囲気で生きとるのじゃ」
『A.右に同じく』
「なるほど……えっと、“冷蔵庫”っていうのは、神様の家に必ず1台はあるという、『冷気を自在に操れる神器』のことでして――」
「神様の家すげぇのじゃ!?」
と、ローナはインターネットを見ながら説明をする。
――“冷蔵庫”。
それは、“三種の神器”の一角ともいわれる至高の魔道具の名である(※ローナ調べ)。
ちなみに、ドンゴワ旅行時にも『ローナの家庭菜園から生まれた“無”(断熱材)』を利用して、“冷蔵庫”を試作してはいたが……。
ここにある“冷蔵庫”は、ドワーフ姫のワッフル(今はドワーゴの弟子)とともに、さらに改良を重ねたバージョンだ。
引き出しやラックを取りつけて、収納性をアップしたのはもちろん……。
冷凍マグロ(冷却器)から放出される冷気の流れをコントロールすることで、簡単な温度調整もできるようになっており。
「むぉおっ!? 冷たいのじゃ!? な、なんじゃ、中に魔法使いでもおるのか!?」
「いえ、中に入ってるのは、冷凍マグロです」
「どーゆうことじゃ!?」
「ちなみに、下の引き出しは“冷凍庫”といって、氷も作れるようになってまして! “ふるさと納税”にも便利だそうです!」
『Q.部屋に置ける氷室 ……ってコト!?』
「はい!」
この“冷蔵庫”は、今の神々は当たり前に持っているもののようだが……。
どうやら、1000年も邪神として封印されていたテーラと、何百年も引きこもっていたロムルーには、新鮮なものだったらしい。
とはいえ――。
「むぅ? じゃが、べつにこれ、氷室でよくないかの? わざわざ部屋に置く必要があるとも思えんが」
テーラがいまいち使い道がわからないという顔をする。
ただ、その疑問はローナも想定済みであり。
「そう言うと思って、これを用意しました!」
と、ローナは冷蔵庫であらかじめ冷やしておいた瓶を取り出した。
「えへへ、これはドンゴワ旅行のもうひとつの収穫物なんですが……これを飲めば、冷蔵庫の偉大さがすぐにわかると思います!」
「な、なんじゃ、それ? ぶくぶく泡立っとる名状しがたい黒い液体が入っとるが……まさか、おぬし、ついに邪法に手を染めて……?」
「テーラさんは、私にどんなイメージを持ってるんですか?」
ちなみに、瓶に入っている黒い液体とは、神々の飲み物“こーら”であり。
『ドンゴワ旅行のもうひとつの収穫物』とは――。
――“炭酸水”だった。
というのも、地底王国ドンゴワ周辺の水源では、天然の炭酸水(それも炭酸強め)がとれるらしく、なんなら井戸からも炭酸水がとれるようであり……。
ドワーフたちは酒がなくなると、炭酸水を『水』と呼んでがぶがぶと飲み始めたのだ。
この炭酸水をもらって、屋台コンテストのときに作った“こーら”のシロップを加え、さらに“冷蔵庫”でキンキンに冷やした結果――。
神々の世界で『一番売れているから一番うまい』とうたわれる究極の飲み物『キンキンに冷えた炭酸入り“こーら”』が、ついに完成形となったわけだ。
「ともかく、このキンキンに冷えた〝こーら〟を飲んでみてください! 飛べますよ!」
というわけで、“冷蔵庫”の力のお披露目もかねて、同居神たちに“こーら”を試させたところ。
「むぅ、見た目はあれじゃが、できたての酒もしゅわしゅわしとるし同じようなもんかの――むぉっ!? オイオイオイ、なんじゃこれ!? こんな飲み物、初めてなのじゃ! パチパチ弾けて脳みそ幸せなのじゃ!」
『タイシタモノデスネェェェエッッ!!』(※かわいい鳴き声)
『(✧д✧)』
と、同居神たちに大好評だった。
やはり、“こーら”は、神々で一番人気の飲み物というだけのことはあるらしい。
「なるほどの……たしかに、キンキンに冷えた“こーら”がいつでも飲めるのは、最強じゃな!」
『A.れーぞーこ 疑ってスマソw』
「ただ、さっきから気になっとるんじゃが……れーぞーこにエビが大量に入っとるのなに?」
「あっ、そのエビは、あとで揉もうと思ってまして! 最近は、エビを揉むのが流行ってるみたいなので!」
そんなこんなで、“冷蔵庫”のお披露目を終えたあと。
少しだけ快適になった我が家にて、ローナはお菓子やジュースを床いっぱいに並べ――。
「――キンキンに冷えた“こーら”よし! 号泣しながら焼いた“ぴざ”よし! ノートの切れ端を仕込んだ“ぽてち”よし! それじゃあ、今日はいっぱい“あにめ”を見るぞぉっ!」
『プイキュァァァアアッッ!!』(※プリティな鳴き声)
さっそく、ローナの宴が始まったのだった。
「えへへ! 働かないで昼間からインターネットするのは最高だね!」
だる~んっと寝そべりながら、〝こーら〟や〝ぽてち〟をむさぼるローナ。
そんなローナにつられて――。
『_(:3」∠)_』
「じゃふぅ~。やっぱ、自宅しか勝たんのじゃ」
と、同居神たちも、だる~んっとし始める。
「じゃが、ローナよ……最近なにかと忙しそうじゃったが、それはもうよいのか?」
「あ、はい。家電を作るために、“無”を量産してただけなので」
そう、家電に使われている“無”という画期的な新素材は、ドワーフたちにとって、どれだけあっても足りることはなく。
ローナとしても家電のために“無”を研究してほしかったし、作れば作るほどお金をもらえたこともあり……。
結局、ひたすら“無”を作るはめになったのだ。
毎朝5時に起きては、ベルトコンベア上を流れてくる“すいか”(原料)をひたすら錬金鍋でかき混ぜ、かき混ぜ、かき混ぜ……かき混ぜ続ける日々。
しばらくすると、ローナは毎晩、“無”の夢を見るようになった。
それから、今度は幻覚で“無”が見えてくるようになり……。
さらに日が経つと、幻覚の“無”がリアルに感じられるようになっていった。
そして、“無”がすれ合う音が、耳の奥でずっと鳴り響くようになり……ついには、幻覚の“無”に触れられるようになり……。
やがて、ローナが――。
『そっか! “無”とは〈全にして一、一にして全〉なんだね!』
と、理解したところで、ようやく休暇が取れたわけだ。
「……あ、あはは……神様たちが言ってた『働いたら負け』って、こういうことなんだなって……働いた時点で、もうゲームオーバーなんだなって……」
「ローナの目からハイライトが消えたのじゃ……」
『(´・ω・)ノ ナデナデ』
「ま、まあでも、こうして休みも取れましたし……しばらくは働かずに、家でだらだらインターネットをして過ごそうと思います!」
「うむ、その意気じゃ! それに家にロムルーと2人きりじゃと、会話がなくてめちゃくちゃ気まずかったからの!」
『\(^o^)/ヤッター』
『フウインサレシィィィイッッ!!』(※かわいい鳴き声)
なにはともあれ。
こうして、待ちに待ったローナの休暇が始まり――。
「――む? おーい、ローナぁ。おぬしに手紙が届いとるぞぉ」
と、そこで。
テーラが玄関のほうから、封筒を手に戻ってきた。
「え? 私に手紙? でも、インターネットやめられないんですが……」
「いつものことじゃろ。とりあえず、手紙は……ワッフル? とかゆう、うまそうな名前のやつからみたいじゃな」
「えっ、ワッフルちゃんからの手紙? なんだろう? “無”ならちょっと前に納品したばかりだし……」
「まあ、友ならば手紙を出すのに理由などいらんじゃろ。知らんけど」
「あっ……たしかにそうですね! もしかして、遊びのお誘いだったりして! えへへ、なにかな? なにかな?」
こうして、ローナがわくわくしながら封を開けると。
中から出てきたのは――。
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注 文 書
ローナ・ハーミット殿
拝啓 平素は格別のお引き立てをたまわり
厚く御礼申し上げます。
さて、さっそくですが、先日ご納品いただ
きました“無”は大変ご好評で、当店の在庫も
残りわずかとなってまいりました。
つきましては、同商品を下記の通り、追加
注文させていただきます。
敬具
記
1.品 名 : “無”
2.数 量 : 60
3.単 価 : 60000
4.希望納期: 6月6日
4.納入場所: ドワーゴの武具屋
以上
ワッフル・ド・ドンゴワ
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「「「…………………………」」」
ローナの休暇が今――終わろうとしていた。










