103話 事情を聞いてみた
前の話、女神の使徒系の称号、ステータスに入れるの忘れてました……!(ご報告ありがとうございます)
ステータス周りはやること多すぎて、いろいろと抜けがち……。
「「「――すいませんでしたぁあああッ!!」」」
ローナのステータスを鑑定してから数分後。
組長の椅子に座らされたローナの前には、土下座しているドワーフたちの姿があった。
「「「ほ……滅ぼさないでくださいっ!」」」
「滅ぼしませんよ!?」
ローナのステータスにわからされたドワーフたち。
彼女のステータスのなにがやばいかというと、まず能力値が異常すぎるというのもそうだが……。
なによりもやばいのは、スキルと称号だった。
――【殺戮の心得】【即死魔法】【拷問魔法】【服従魔法】【厄災の魔女】【終末の覇者】【暴虐の破壊者】【黙示録の王】【人の心がない】【闇の魔術師】……。
これはもう、あきらかに『世界を滅ぼそうとしている魔王』かなにかだった。
それに、先ほどの『“滅び”には慣れている』発言のこともある。
(((……この子を怒らせたら、一瞬で国が滅ぼされるッ!)))
ゆえに、ドワーフたちに許されたのは、震えながら許しをこうことだけだった。
「せ、責任は……責任はみんな、組長のあたしにあるっ! だから、どーかあたしの指だけでご勘弁をっ!」
「く、組長っ! そんなことしたら、二度と鎚を握れなくなりますっ!」
「黙れ、ベェタ! 組長の覚悟に水をさすんじゃねぇっ!」
「くそ……ッ! オレは……無力だッ!!」
「い、いえ、指とかいらないんですが……」
「わふっ!? ゆ、指の1本や2本じゃ足りやがらないだと……わ、わかった、腹ぁ切りやがれってことだな……こ、怖いけど、“わ組”のみんなのためなら……っ!」
「「「――組長ぉおおおおッ!!」」」
(あぁぁっ……これだから、ステータスは見られたくなかったのにぃぃ~っ)
そんなこんなで、ひと騒動あったものの。
それからローナが必死に事情の説明をして、なんとか誤解をとくことに成功した。
「――わ、わふ? つまり、なんだ? おまえは……たまたま殺戮の心得があって、即死魔法や拷問魔法を習得しやがってるだけの、一般通過『普通の女の子』だってゆーのか?」
「ま、まあ……はい」
「さ、さすがに、すぐには信じらんないけど……」
とはいえ、たしかにローナにこんな嘘をつく理由はない。
嘘などつかなくても――“異変”など起こさずとも、その力があればドワーフの国ぐらいどうとでもできるからだ。
「じゃー、本当に……本当ってことか? 本当にあたしらを許してくれやがるのか?」
「いえ、許すもなにも悪いことしたのは私ですし。むしろ、私のほうこそ不法入国してごめんなさいというか」
「そ、そっかぁ……わはぁぁ~……っ」
安堵のあまり、へなへなと座りこむワッフル。
そんなこんなで、ローナの不法入国以外の容疑が無事に晴れたところで。
「――組長! ただ今、調査から帰りま……えっ、なんで組長の椅子が奪われてるんですか? それに、なんでみんな、その女の子にひれ伏して……」
と、ワッフルの部下らしきドワーフが、部屋に駆けこんできた。
「わ、わふ、キュウタか。まー、そのことは気にしやがんなくていいから――それより、“ニコニ坑道の調査”のほうは、なんか進展がありやがったか?」
「そ、それは、もちろん……いや」
そこで、ドワーフが口ごもり、やがて――。
「――なんの成果も……得られませんでしたぁあッ!!」
と、懺悔するように、その場に崩れ落ちた。
「ただいたずらに怪我人を増やし……犠牲を払ってモンスターを倒しても、やはりキラキラした石しか落ちなくて……この“異変”の正体を……突き止めることができませんでした! し、しかも、坑道から出たら……す、すぐにモンスターが復活を……ぅ、ぁあ……っ」
「……もういい。おまえらはよくやった。あとは、ゆっくり休みやがれ」
「へい……」
こうして、ふたたび組長室がどよーんとした重い空気に包まれる中。
状況を理解していないローナが、おずおずと挙手をした。
「あ、あのぉ、ワッフルちゃん?」
「わ……ワッフルちゃん?」
「そういえば、さっき“異変”って言ってましたが、なにが起きてるんですか?」
「わふ? あー、そーいや、なんも知りやがらないんだったっけ? うむむ~、なんて説明しやがったもんか……とりあえず、広場にありやがるキラキラした石は見やがった?」
「あっ、はい。☆の形をしてて、なんかやたら光り輝いてて、なぜか『P』と書かれた石ですよね?」
「ああ、それだ。その石こそが……この国が滅びかけやがってる元凶なんだ」
「え?」
ただのキラキラした石のせいで国が滅びかけているというのは、どうもピンと来ないが。
ワッフルの様子を見ると、どうやら本気らしい。
「そもそも、このドンゴワって国はな……“ニコニ坑道”ってゆうダンジョンからの恵みで成り立ちやがってたんだ。その坑道の壁を掘れば、レア鉱石も石炭も岩塩も採りやがれるし、モンスターを倒せば食べ物も糸も手に入りやがる。あとは薬の材料になる苔やキノコなんかも採りやがり放題さ。だから、あたしらはこんな穴ぐらにこもりやがってても、平和に暮らせてたんだ――」
火山の内部という立地からも、他国から攻められるようなこともなく。
ドワーフたちは長年、平和を当たり前のように享受してきた。
そして、この平和がいつまでも続くと思っていた――。
「……けど、1週間前に全てが変わりやがった」
「え? 1週間前?」
1週間前というと……ちょうど、“期間限定イベント”が始まったタイミングと同じだが。
「なにが原因かはわかんない……でも、1週間前に突然、ニコニ坑道からキラキラ石しか出やがらなくなっちまったんだ。壁を掘っても、モンスターを倒しても、薬草を引っこ抜いても――みんな、なんの使い道もないキラキラ石になりやがる」
「そ、そんな……」
「しかも、なにが起きやがってんのか調べようにも……モンスターがやたら強くなりやがったせいで、まったく調査が進みやがらねー。Bランク装備持ちが束になって、ようやく1匹倒しやがれるようなレベルだしな」
装備がどんどん消耗していくが、修理するための物資もなく。
怪我人が出ても、治すための薬の材料がもう採れず。
食料の配給も減ってきて、ドワーフたちの体力はもう限界だ。
「城の騎士や権力者どもは、さっさと国を見捨てて逃げ始めてやがる。だから、あたしたちドンゴワ自警団“わ組”がなんとかしやがらないと……いけないんだけど……わふぅぅ」
ほとんど万策尽きている状況だった。
さらに、この“異変”が一時的なものではなく、今後ずっと続くのだとすれば……。
――もう、この国はおしまいだ。
(う、うーん……なんだか大変なことになってるなぁ。みんなマラソンしてないと思ったけど、こんな状況じゃ仕方ないよね……でも、そんなキラキラ石の情報は、インターネットに書いてなかったんだけどなぁ)
ローナはそう首をかしげながら、攻略サイトを改めて確認し――。
「ん、あれ? これって、もしかして……」
なんか、すぐにそれっぽい情報を発見した。
『イベント期間中、【ニコニ坑道】はイベント仕様となります』
『イベント仕様のダンジョンからは、イベントポイントだけが排出されます』
『イベントポイントを集めて豪華報酬ゲットのチャンス♪』
(……こ、これだ!)
地底王国ドンゴワを滅亡の危機へと追いやっている元凶のキラキラ石。
それを神々の言葉で――。
――“イベントポイント”と呼ぶらしい。
とはいえ、インターネットには、『イベントポイントは手に入るとうれしいもの』という感じに書かれているが。
「なんで薬草を引っこ抜くとキラキラ石になるんだど! どういう原理かわからねぇど!」
「キラキラ石は、もう嫌だぁあああああッ!」
「オレたちから全てを奪ったキラキラ石が――――憎い」
(……イベントポイントへの憎しみがすごい)
周囲を見ると、悔しげに泣き叫んでいるドワーフたち。
さすがに、この状況を放置するわけにはいかないだろう。
このままでは、本当に地底王国ドンゴワが滅びてしまいそうだし。
というわけで――。
「あのぉ、ワッフルちゃん?」
「ま、またワッフルちゃん……ま、まー、いーけど……で、なんか用か?」
「えっと、“イベントがちゃ”っていう――この画像にあるような大きな古代遺物はありませんでした?」
そう言って、インターネット画面のプライベートモードを解除して、ワッフルに見せると。
「わふ? なんだこれ、幻術か?」
「まあ、そんな感じです」
「ん~、どれどれ……わふ? あー、このでかぶつなら見たことあるぞ? なんか最近、いきなり広場に生えてきやがったやつだ」
「生えてきたんですか」
「けど、それがどうかしやがったのか?」
「えっと、その……」
困惑しているドワーフたちに向けて、ローナは告げる。
「――それさえあれば、たぶんこの国の危機をみんな解決できるかなぁ、と」
「「「………………は……はぁぁああッ――!?」」」










