第24章 「無敵!友情の合体攻撃!」
両腕を失い、もはや満身創痍の牛頭鬼ミノタウロス。
しかし、こいつが堺県第2支局の管轄地域に住む一般市民に働いた仕打ちを考えたら、まだまだ苦しみが足りないよ。
「ほら!レーザーウィップのスーパーパワーを、たっぷりとお見舞いしてあげるからね!遠慮はいらないよ!」
どうやら京花ちゃんも、私と同じ意見みたいだね。
普段と変わらない明朗快活な表情と楽しげな口調だけに、かえって鬼気迫る雰囲気が漂っているよ。
「うっ、ぐう…」
再び京花ちゃんがスイッチを押すと、レーザーウィップが釣糸のようにグングンと巻き取られていったんだ。
それに伴い、牛頭鬼ミノタウロスの身体も、京花ちゃんの方へとズルズルと引き寄せられていくね。
どうやらレーザーウィップは伸縮自在で、巻き取る事も出来ちゃうみたい。
この機能を上手に応用すれば、高い所から落っこちている人を救助する時や、急に足場が崩れた時にも役立つよ!
「この蹴りは、貴方のせいで命を落とした、忠岡巡査長の分だからね!」
手の届く距離まで引き寄せた牛頭鬼ミノタウロスに、静かに怒りの声を投げつけた京花ちゃんは、その背中に強かに蹴りを入れたの。
「とうっ!」
そして、反動を利用して大空に舞い上がったんだ。
それにしても京花ちゃんったら、随分高く飛翔した物だよね。
コンビナートの建物同士を外側から繋ぐメンテナンス用の連絡通路なんか、楽々追い越しちゃったもん。
「はあああっ!」
と思ったら、背面跳びの要領で連絡通路を跳び越えたね。
工業地帯の夜空にかかる満月を背景にして、しなやかに背を反らして飛翔する京花ちゃんのフォームは、同性の私が見ても目を見張る美しさだったよ。
そう言えば京花ちゃんは、背面跳びの要領で跳び越える時に、鉄骨トラス材で出来た連絡通路にレーザーウィップを巻き付けていたっけ。
きっと京花ちゃんには、何らかの目的があるみたいだね。
「むっ…!」
音もなく着地した京花ちゃんは、立ち上がりながらグリップ部分のスイッチを押して、レーザーウィップの巻き取りを始めたんだ。
「クソッ…放せ!」
両腕を失って満身創痍の牛頭鬼ミノタウロスが、踏ん張りも効かずにズルズルと地面を引きずられている。
首に巻き付いたレーザーウィップを解きたくても、解くための両腕がもう根元からないから、されるがままだね。
いい気味だよ。
あれ…?
確かレーザーウィップは、鉄骨トラス製の連絡通路に巻き付けてあったよね。
じゃあ、このままだと…
「ウグッ…ガッ!」
うん、思った通りだよ。
牛頭鬼ミノタウロスの奴ったら、首吊りの状態でぶら下がって、空中でもがき苦しんでいるね。
即席の絞首ロープとして使うとは、京花ちゃんもなかなかに容赦がないね。
「今だよ、3人とも!止めは友情の集中攻撃だ!」
「よし来た、お京!」
京花ちゃんの声に力強く頷いたマリナちゃんが、用済みになった麻酔弾のマガジンを引き抜いた。
代わりに大型拳銃へ装填したのは、ダムダム弾で満たされた弾倉だ。
さっきの公約を律儀に遵守するんだね、マリナちゃんったら。
「分かりました、京花さん!」
気品のある凛とした表情で応じた英里奈ちゃんが、構えたレーザーランスを空中の牛頭鬼ミノタウロスに向ける。
銅金の部分に設けられたスイッチを作動させると、中央のメイン・エネルギーエッジが発光し、その周囲を取り囲む3本のサブ・エネルギーエッジが、口を開けるように大きく展開する。
これこそ、レーザーランスに搭載された射撃武装である破壊光線砲だよ。
もしも「レーザーランスは槍だから、近接戦しか出来ない。」なんて考えているのなら、それは致命的な誤解だからね。
「はっ!承知致しました、枚方京花少佐!」
役目を終えた自動拳銃を、遊撃服の内ポケットにぶち込んだ私は、嬉々としてレーザーライフルを起動させたんだ。
待っていて本当に良かったよ。
「私のダムダム弾、存分に味わうといいよ!」
「破壊光線砲、照射!」
「レーザーライフル、高出力モード!」
大型拳銃にレーザーランス、そしてレーザーライフル。
3種の個人兵装から放たれた必殺技は、私達3人の気迫と闘志を乗せて、空中に拘束された牛頭鬼ミノタウロスの身体に突っ込んでいった。
「グハッ…!カッ…」
高出力モードで発射されたレーザー光線に胸板の傷を貫通され、白眼を剥いた牛頭鬼ミノタウロスが全身を痙攣させる。
「グアッ…!ギャアッ…!アアッ…」
続いて大型拳銃から放たれたダムダム弾が、牛頭鬼ミノタウロスの全身に全弾命中し、着弾点の体組織を徹底的に破壊していく。
「アッ…アアッ…!」
そして、レーザーランスから放射された目映い白色の破壊光線が、牛頭鬼ミノタウロスの全身を飲み込んでいった。
破壊光線で全身をくまなく焼かれた牛頭鬼ミノタウロスは、消し炭のようになって、力なくぶら下がっている。
既に生命活動を停止しているのは確実だね。
しかし、この手のサイボーグ怪人は常識外れの生命力を持っているからね。
念入りに止めを刺しておかないと…
「サンダーウィップ!」
その止めの一撃を決めたのは京花ちゃんだったね。
またしてもグリップ部分のスイッチを切り替えたのか、リボン状に展開されたレーザーウィップからは、強力な高圧電流が放出されているよ。
サンダーウィップで高圧電流を流された牛頭鬼ミノタウロスの身体は、しばらくの間はピクピクと痙攣していたんだ。
けれど、それも長くは続かなかったね。
完全に炭化した体組織に限界が来てしまったのか、レーザーウィップの巻き付いた首がボロボロと崩れ始めたの。
そして時を置かずして、牛頭鬼ミノタウロスの焼死体は、頭部と胴体部に分断され、アスファルトの路面に叩き付けられたんだ。




