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白銀の剣と黄金の世界  作者: カブヤン
第二章 黄金の世界
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幕間 ロンディアナ騎士団

 ――男は、笑う。世界において一人心の底から、笑う。




 翼の無い者はこの世界では生きてはいけない。


 そこにあるのは差別、そして迫害。翼の無い者は、有る者にただひたすらに、迫害される。


 ある者は、生まれ故郷から追い出され、旅先でのたれ死んだ。


 ある者は、生まれた瞬間に自分の親に殺された。


 ある者は、ただの道具として、生きることを強いられた。


 翼の無い者は、存在してはいけない。胸に魂の石を持つ精霊たちの共通の掟。




 ――ある男が、それを壊す。




 黄金色の髪を持つ、壮年の男。老化することがない精霊において、世界にただ一人、壮年の男。


 彼は強かった。数多の人を救った。ただ剣を振るだけで。


 その凶悪な鞘から放たれる漆黒の刃を持つ剣は、対峙する敵を恐怖させ、背にする味方を鼓舞した。


 彼の下には、多くの弟子ができた。そして、彼に妻ができ、子供ができた。


 彼に愛情はあったのだろうか。それはきっと彼の家族も知らないだろう。


 そして、彼と彼の弟子たちは、翼無しを救うために騎士団を創った。彼らの剣は守る剣。そして壊す剣。


 世界に点在する翼無しを迫害していた幾多の領主が、彼らの手によって裁かれた。


 そして、彼らはさらに大きくなる。


 『ロンディアナ騎士団』


 北の果てに、一つの都市を有する騎士団。


 精霊の世界において間違いなく最強の戦闘集団。彼らにはむかう者はおらず、彼らに敵う者もおらず。


 彼らの存在は、翼の無い者にとっての希望。


 彼らの存在は、翼の有る者にとっての恐怖。


 彼らは世界で唯一の、精霊を裁ける者たち。


 彼らの悲願、それは嘗てこの世界を救った王を迎え、精霊の世界に秩序を取り戻すこと。




 ――この世界に争いはいらない。




 それは、美しく、そして歪んだ願い。


 嘗ての翼無したちを助けていた黄金色の騎士の想いはもうどこにもなく、今は迫害から生まれた悪を憎む悪だけが残った。


 彼らの願いは世界平和。世界は彼らの法の下にあればいい。そうすればきっと、誰も泣くことはない。誰も、死なないでもいい。


 歪みの世界に生まれた歪みの願い。彼らは力を持った被害者。


 人の世界におけるルクメリア騎士団の影の部分、力で争いを終わらせるという部分。その部分だけを肥大化させたのがロンディアナ騎士団。




 ――彼らは今日も、精霊を殺す者を、殺すのだ。

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